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遺言の種類
遺言には.自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の三種類があります(滅多に使わない特殊なものは除いています。)。自筆証書遺言はご自身で直筆で書くもの。日付、署名押印など形式を整えなければ無効になってしまいます。ドラマとかでよく出てくるのは自筆証書遺言ですね。公正証書遺言は、2名以上の証人立ち会いのもと公証人に遺言内容を伝え、公証人が筆記します。形式的な不備によって無効になることはないのがメリット。半面、公証人に支払う手数料がかかったり戸籍謄本など資料を揃える手間がかかります。そして秘密証書遺言、これは自分で遺言を書いたあと公証人や証人に遺言の存在を公にしてもらいます。遺言の内容を人に見せることなく、その存在を公にできることが特徴です。この三種類の遺言の中で、一番お勧めしたいのは「公正証書遺言」費用や手間はかかっても、無効になるリスクが一番低いためです。遺言の書き方や公証人とのやりとり、証人の準備等お手伝い致します。ご連絡ください。
今日あたりから土曜くらいまで帰省なされる方も多いんですかね。ゆっくり骨休めしてください(^▽^)/
下北沢司法書士事務所 竹内友章
遺言はみんな書く必要あるのか?
結論:遺言がなくても円満に相続が進むケースとは
「うちは家族仲も良いし、財産もそれほどない。本当に遺言なんて必要なんだろうか?」相続を考え始めたとき、多くの方が抱く素朴な疑問だと思います。結論から申し上げますと、遺言書がなくても円満に相続が進むケースは、確かに存在します。
具体的には、以下の条件がすべて揃っているような場合です。
- 相続人が一人しかいない(例:配偶者も親も亡くなっており、子どもが一人だけ)
- 相続人全員の仲が極めて良好で、財産の分け方について一切の揉め事なく合意できると確信できる
- 財産が預貯金など、物理的に分けやすいものだけで構成されている
これらのケースでは、相続が発生した後、相続人全員で話し合って財産の分け方を決める「遺産分割協議」によって、スムーズに手続きを進められる可能性があります。
しかし、正直にお伝えすると、これほど条件が綺麗に揃うご家庭は、決して多くはありません。「うちは大丈夫」と思っていても、想定していなかった問題が生じることもあります。安易な自己判断はせず、この記事を最後まで読み進めて、ご自身の状況を客観的に見つめ直してみてくださいね。
司法書士も「遺言は不要」と判断することがあります
私たち司法書士は、いつも「遺言を書きましょう」とだけお伝えしているわけではありません。ご家庭の状況を丁寧にお伺いした結果、「このご家庭なら、遺言がなくてもきっと大丈夫でしょう」と判断し、その旨を正直にお伝えすることもあるのです。
以前、杉並区にお住まいのお客様から遺言作成のご相談を受けた際のことをお話しさせてください。その方は、以前に登記のお仕事でお世話になった方でした。ご家族は、奥様とお子様がお一人。お話を伺うと、ご家族の仲はとても良好で、将来の相続についても「まず妻がすべて相続して、その次は娘に」というお考えがご家族の中で共有されているようでした。
私は、お客様にこうお伝えしました。
「もちろん、遺言書があれば銀行での手続きや不動産の名義変更(相続登記)はスムーズに進みます。ですが、ご家族の状況を考えると、遺言書がなくても、皆さんでの話し合い(遺産分割協議)で円満に進めることも可能だと思いますよ」と。
このケースは、必ずしも遺言がなければならない、という状況ではありませんでした。それでも、最終的にはお客様とじっくり話し合い、将来の手続きの負担を少しでも軽くするために遺言を作成されることになりました。
専門家は「遺言は重要です」と一括りにしがちですが、より正確に言えば「遺言が絶対に必要になるご家庭もあれば、なくても大丈夫なご家庭もある」というのが実情です。私たち下北沢司法書士事務所では、画一的なアドバイスではなく、一つひとつのご家庭の事情に寄り添い、本当にそのご家族にとって最適な方法をご提案することを大切にしています。中には、遺言がマイナスに働く可能性についてお話しすることさえあります。
「うちは大丈夫」と考える場合に確認したい相続トラブルのリスク
前の章で「遺言が不要なケースもある」とお伝えしましたが、安易な自己判断は禁物です。多くの方が「うちは大丈夫」と考える背景には、見過ごされがちなリスクがあります。特に「家族仲が良いから」という理由だけでは、相続時の合意形成を十分に見通せない場合があります。
相続は、お金の問題だけでなく、家族それぞれの感情が絡み合う非常にデリケートな問題。それまで良好だった関係が、相続をきっかけに一変してしまうことは、決して珍しい話ではないのです。ここでは、よくある「大丈夫」という思い込みに潜む、具体的なトラブルの火種について解説します。より詳しい内容は、遺産分割協議で起こりうる問題点の記事でも触れています。
主な財産が「不動産」の場合、共有状態がトラブルにつながることがある
ご自宅やアパートなど、主な財産が不動産である場合は特に注意が必要です。遺言がない場合、不動産は法定相続分に応じて相続人全員の「共有」状態となります。この共有状態が、後のトラブルにつながることがあります。
例えば、相続人が子ども3人だったとしましょう。長男は「親の家に住み続けたい」、次男は「売却して現金で分けたい」、長女は「人に貸して家賃収入を得たい」と考えた場合、どうなるでしょうか。共有不動産を売却したり、大規模な変更を加えたりするには、原則として共有者全員の同意が必要です。また、賃貸などの活用についても、契約内容によっては共有者間の合意形成が問題になります。意見がまとまらない場合、不動産の処分や活用が進みにくくなることがあります。
さらに注意が必要なのは、この共有状態が次の世代へ引き継がれ、共有者が増えていく可能性がある点です。もし長男が亡くなれば、長男の配偶者や子どもが新たな共有者になります。次男、長女も同様です。時間が経つにつれ、面識が少ない親戚が権利者として加わり、話し合いが難しくなることがあります。こうなる前に、不動産を売却して公平に分ける方法もありますが、遺言で「この不動産は長男に」と指定しておけば、このような混乱を避けやすくなります。

相続人同士の「口約束」や「暗黙の了解」は通用しない
「長男が家業を継ぐから、実家も継ぐのが当たり前」「親の介護を一身に引き受けてくれた長女に、多めに財産を渡してあげたい」
こうした家族内での口約束や暗黙の了解は、残念ながら法的な効力を一切持ちません。遺言書がない限り、相続手続きは法律で定められた「法定相続分」を基準とした遺産分割協議で進めるのが大原則です。
生前は皆が納得していたはずなのに、いざ相続が始まると「法律上の権利は平等なはずだ」と主張する相続人が現れるケースは少なくありません。また、相続人の配偶者など、家族の歴史を直接知らない人が「あなたの権利なのだから、ちゃんと主張すべきよ」と口を挟むことで、話がこじれてしまうこともあります。
親の介護に尽くした貢献分は、「寄与分」として主張できる可能性はありますが、その証明は非常に難しく、認められるハードルは高いのが現実です。感謝の気持ちや特定の願いは、必ず遺言書という法的な形で残しておく必要があります。
相続人の中に連絡が取りづらい人がいる
遺産分割協議の最も重要なルールは、「相続人全員の合意」がなければ成立しない、という点です。
たとえ相続人のうちの一人と音信不通であったり、海外に住んでいて連絡がつきにくかったりするだけで、預金の解約や不動産の名義変更など、すべての相続手続きが完全にストップしてしまいます。
「あの子は昔に家を飛び出して以来、どこで何をしているか分からないから…」といった事情は通用しません。法的な手続きを踏んで戸籍から現在の住所を調査し、手紙を送るなどして連絡を試みる必要があります。それでも連絡がつかない、あるいは話し合いに応じてもらえない場合、手続きが進みにくくなります。詳しい手続きについては連絡が取れない相続人がいる場合の手続きでも解説していますが、時間も費用もかかります。
しかし、遺言書があれば、遺産分割協議を経ずに手続きを進めることができます。相続人全員による遺産分割協議が不要になる場合があるため、このようなリスクを軽減できます。
遺言書を書くべきか?迷ったときの判断基準
ご自身の状況を客観的に見て、「うちの場合は、やはり遺言書があったほうが安心かもしれない」と感じ始めた方もいらっしゃるかもしれません。ここでは、特に遺言書の作成を強くおすすめする具体的なケースをご紹介します。一つでも当てはまるものがあれば、専門家への相談を検討するきっかけにしてみてください。遺言が必要なケースは、ご家庭の数だけ存在します。

子どもがいないご夫婦
子どもがいないご夫婦の場合、夫が亡くなると、相続人は妻だけだと思っていませんか?実はそうではありません。夫の両親が健在であれば「妻と夫の両親」が、両親が既に亡くなっている場合は「妻と夫の兄弟姉妹」が共同で相続人になります。
長年連れ添った配偶者が亡くなった悲しみの中、普段あまり付き合いのない義理の兄弟姉妹と、財産の分け方について話し合い(遺産分割協議)をしなければならない…。これは、残された配偶者にとって、精神的に非常に大きな負担となります。最悪の場合、住み慣れた自宅を売却して、その代金を分けなければならない事態にもなりかねません。
「全財産を妻(夫)に相続させる」という内容の遺言書を残しておけば、遺産分割協議の負担を減らし、残されたパートナーの生活を守りやすくなります。特に疎遠な義兄弟への連絡は、多くの方が頭を悩ませる問題です。
再婚していて、前の配偶者との間に子どもがいる
再婚されている方で、前の配偶者との間にお子さんがいる場合、そのお子さんにも現在の配偶者やお子さんと同じように相続権があります。つまり、現在の家族と、前婚のお子さんが、一緒に遺産分割協議をしなければならないのです。
普段ほとんど交流のない者同士が、お金の絡む話し合いを円満に進めるのは、非常に難しいと言わざるを得ません。感情的な対立も生まれやすく、相続トラブルに発展しやすい典型的なケースです。遺言書で「現在の妻に自宅を、前婚の子には預貯金を」というように、誰にどの財産を渡すかを明確に指定しておくことで、家族間の無用な争いを未然に防ぎやすくなります。このような状況は後妻と子の遺産分割という複雑な問題につながりやすいため、事前の対策が重要です。
内縁のパートナーや、お世話になった人がいる
長年連れ添い、事実上の夫婦として生活してきた「内縁のパートナー」には、法律上の相続権が一切ありません。また、ご自身の介護を熱心にしてくれた「息子の妻(お嫁さん)」や、懇意にしていたご友人など、血の繋がりのない第三者も同様です。
これらの大切な人たちに相続財産を遺したいと願うのであれば、遺言書の作成が有力な方法となります。「遺贈(いぞう)」という形で財産を渡すことを書き記すことで、あなたの感謝の気持ちを形にして届けることができます。法律の改正により、相続人以外の親族の貢献が金銭的に評価される制度もできましたが、ご自身の意思を反映させやすくするには、遺言の活用が有効です。
相続人の中に行方不明者や判断能力に不安がある人がいる
相続人の中に、認知症などで判断能力が不十分な方や、行方不明の方がいる場合、遺産分割協議は非常に困難になります。
判断能力が不十分な方がいる場合は、家庭裁判所に申し立てて「成年後見人」を選任してもらう必要があります。行方不明者がいる場合は、同じく家庭裁判所に「不在者財産管理人」の選任を申し立てなければなりません。これらの手続きは、申立てから選任まで数ヶ月単位の時間がかかり、費用も決して安くはありません。
しかし、遺言書があり、その内容を実現する「遺言執行者」が指定されていれば、遺産分割協議を前提とする手続きの負担を軽減し、預金の解約や不動産の名義変更などを進めやすくなる場合があります。これは、残された家族の負担を大きく軽減する、実務上の非常に大きなメリットと言えるでしょう。
【5分で診断】遺言の必要性セルフチェックリスト
ここまで読み進めて、ご自身の状況を色々と考えられたことと思います。最後に、ご自身の状況を客観的に整理し、遺言の必要性を判断するためのかんたんなチェックリストをご用意しました。「はい」か「いいえ」で答えてみてください。

| チェック項目 | はい | いいえ |
|---|---|---|
| 1. 主な財産に自宅などの不動産が含まれる | ||
| 2. 子どもがいない、もしくはおひとり様である | ||
| 3. 再婚しており、前の配偶者との間に子どもがいる | ||
| 4. 内縁のパートナーなど、相続人以外に財産を渡したい人がいる | ||
| 5. 各相続人に渡したい財産の割合を、法定相続分とは違うものにしたい | ||
| 6. 介護などでお世話になった特定の相続人に多く財産を渡したい | ||
| 7. 相続人同士の仲があまり良くない、または将来が少し心配だ | ||
| 8. 相続人の中に行方不明の人や、連絡が取りづらい人がいる | ||
| 9. 相続人の中に判断能力に不安がある人(認知症など)がいる | ||
| 10. 個人で事業を営んでいる、または会社の株式を所有している |
【診断結果】
いかがでしたでしょうか。もし、「はい」が一つでもついた方は、遺言書がないことで将来ご家族が困る可能性があるかもしれません。一度、専門家に相談してみることを強くおすすめします。また、ご自身ではなく、親への遺言作成の伝え方も、その伝え方にはコツがあります。
迷ったら、まずは司法書士にご相談ください
「遺言を書くべきか、書かなくても大丈夫か」
この記事を読んで、その判断がいかに難しいかを感じられたのではないでしょうか。最終的な判断は、ご家庭の財産状況、家族構成、そして何よりも「家族への想い」によって変わってきます。インターネットの情報だけでご自身で判断するのは、とても難しいことです。
そんなときは、ぜひ私たち司法書士にご相談ください。私たち下北沢司法書士事務所は、単に法律に沿って手続きを進めるだけの専門家ではありません。
実は、代表の私は心理カウンセラーの資格も持っています。それは、法律的な正しさだけでなく、お客様一人ひとりの不安や辛さ、家族への愛情といった「心」の部分に寄り添いたいという強い想いがあるからです。
「こんなことを聞いてもいいのだろうか」とためらう必要はまったくありません。あなたの想いをじっくりとお伺いし、ご家族にとって納得しやすい相続対策を一緒に検討していきたいと考えています。
初回のご相談は無料です。まずはお気軽にお気持ちをお聞かせください。
会社設立時の定款記載事項
会社設立の第一歩「定款」とは?基本を優しく解説
「会社を作ろう!」そう決意したとき、多くの方が最初に耳にする専門用語の一つが「定款(ていかん)」ではないでしょうか。言葉の響きから、少し難しそうだと感じてしまうかもしれませんね。でも、ご安心ください。
定款とは、一言でいえば「会社の憲法」であり、基本的なルールを定めた「会社のルールブック」のようなものです。これからあなたが創る会社が、どのような目的で、どのような仕組みで運営されていくのかを記した、とても大切な書類なのです。
会社設立の手続きは、まずこの定款を作成することから始まります。つまり、定款作成は、あなたの会社のビジョンを形にするための、記念すべき第一歩と言えるでしょう。この記事を最後までお読みいただければ、定款に何を書けばよいのか、そして将来を見据えた賢い定款の作り方まで、基本的な知識をしっかりと身につけることができます。
会社の形態には株式会社や合同会社など様々ですが、いずれの場合も定款は必要不可欠です。私たち専門家が、あなたの不安に寄り添いながら、一つひとつ丁寧に解説していきますので、安心して読み進めてくださいね。
定款に必ず記載する「絶対的記載事項」(株式会社の場合)5つのポイント
定款に記載する項目は、その重要度によって3つの種類に分けられます。その中でも最も重要なのが「絶対的記載事項」です。これは、その名の通り必ず記載しなければならない項目で、漏れがあると定款の認証や設立手続が進められない可能性があります。会社の根幹をなす、いわば「土台」の部分です。
具体的には、株式会社の場合、会社法で定められた以下の5つの項目が該当します。
- ① 商号(会社名)
- ② 目的(事業内容)
- ③ 本店の所在地
- ④ 設立に際して出資される財産の価額またはその最低額
- ⑤ 発起人の氏名または名称および住所
これらは会社を特定し、その骨格を定義するための基本情報です。一つずつ、どのような点に注意して決めればよいのか見ていきましょう。
司法書士として実務に携わっていると、これらの項目をどう決めるかで、その後の会社運営のスムーズさが変わってくることを実感します。例えば、①商号は会社の顔です。使用できる文字や記号には細かなルールがありますので、事前に法務局のWebサイトなどで確認しておくと安心です。②目的には、現在行う事業だけでなく、将来的に展開する可能性のある事業も記載しておくと、後々の変更手続きの手間を省けます。「広告・書籍の編集・制作及び販売」のように、具体的な活動がイメージできるように記載するのがポイントです。

③本店の所在地は、最小行政区画(例:「東京都世田谷区」)まで記載すれば足ります。番地まで詳細に記載することも可能ですが、同じ市区町村内で移転する際に定款変更が不要になるため、最小行政区画での記載が一般的です。自宅を本店にする方も多いですが、プライバシーの観点から注意も必要です。より詳しい情報については、会社設立時の個人情報リスクと住所・旧姓を守る手続きをご覧ください。
④設立に際して出資される財産の価額は、いわゆる資本金のことです。金銭だけでなく、不動産や自動車といった「現物出資」も可能です。⑤発起人とは、会社設立を企画し、資本金を出資する人のことです。また発行可能株式総数は、その会社が発行できる株式の上限数を定めるもので、定款に定めがない場合は株式会社の成立時までに定款変更で定めを設ける必要があります。
これらの5項目は、会社の基盤を固める上で欠かせない要素です。しっかりと検討して、間違いのないように記載しましょう。
(参照:e-Gov法令検索|会社法)
会社の個性を決める「相対的・任意的記載事項」とは?
絶対的記載事項が会社の「土台」だとすれば、これからご紹介する「相対的記載事項」と「任意的記載事項」は、その上に築く「会社の個性や独自ルール」を定めるものです。これらを適切に定めることで、より自社の実情に合った、円滑な会社運営が可能になります。
記載して初めて効力が生まれる「相対的記載事項」
「相対的記載事項」とは、定款に記載しなければその法的な効力が認められない項目のことです。定めなくても定款自体は有効ですが、会社運営の重要なルールに関わるものが多いため、慎重な検討が必要です。
特に中小企業にとって重要なのが「株式の譲渡制限に関する規定」です。これを定めておくと、株主が株式を第三者に譲渡する際に会社の承認が必要になります。これにより、意図しない人物が経営に参加してくるのを防ぎ、経営権の安定化を図ることができます。円滑な事業承継を考える上でも、非常に重要な規定といえるでしょう。
また、「役員の任期」も代表的な相対的記載事項です。株式の譲渡制限を設けている非公開会社の場合、役員の任期を最長10年まで伸長できます。役員変更登記は任期満了ごとに行う必要があり、その都度手間と費用(登録免許税)がかかります。任期を伸長することで、これらの負担を軽減できるという実務的なメリットがあるのです。
その他にも、以下のような項目が相対的記載事項にあたります。
- 株主総会や取締役会以外の機関の設置(監査役など)
- 現物出資に関する事項
- 株主名簿の管理人についての定め
- 取締役会の設置
これらの項目は、会社の規模や将来の展望に合わせて、戦略的に定めていくことが肝心です。
より円滑な会社運営のための「任意的記載事項」
「任意的記載事項」は、法律上の定めはなく、定款に記載しなくても特に問題がない項目です。しかし、あえて記載することで社内ルールが明確になり、将来の無用なトラブルを防ぐ効果が期待できます。
代表的な例としては、「事業年度(決算期)」が挙げられます。会社の決算をいつにするかというルールですが、これは会社の繁忙期を避けたり、消費税の納税義務のタイミングを考慮したりと、税務戦略にも関わってくる重要な決定です。自由に決めることができますが、一度定款に明記しておけば、社内の共通認識となります。
ほかにも、以下のような項目が任意的記載事項として定められることがあります。
- 定時株主総会の招集時期
- 役員の員数(例:「取締役は3名以内とする」など)
- 公告の方法(官報、日刊新聞紙、電子公告など)
これらは、いわば会社の「ハウスルール」です。法律の範囲内であれば自由に定めることができますので、自社の運営がよりスムーズになるようなルールを盛り込んでいくとよいでしょう。

戦略的な定款作成|相続対策や将来の変更も見据えて
定款は、ただ会社を設立するためだけの書類ではありません。長期的な視点を持って作成することで、将来起こりうる様々なリスクに備え、経営の安定化を図るための強力なツールとなり得ます。
会社設立を「相続対策」に活かすための定款の工夫
近年、ご自身の資産管理や相続対策を目的として会社を設立する方が増えています。特に、不動産を多く所有している方が「資産管理会社」を設立するケースは少なくありません。
このような目的で会社を設立する場合、定款の作り方にも工夫が必要です。まず、定款の「目的」の欄に、「不動産の賃貸、管理、保有及び運用」といった文言を明確に記載しておく必要があります。これにより、会社が資産管理を主たる業務とすることが対外的にも明らかになります。
さらに、相続を円滑に進める上で鍵となるのが、先ほども触れた「株式の譲渡制限規定」です。この規定を設けておくことで、相続によって会社の株式が意図せず親族外に流出してしまう事態を防げます。また、合同会社の場合は、定款で持分の承継について特定の相続人に引き継がせる旨を定めることも可能で、財産の分散を防ぎ、円満な法人資産の承継に繋がります。
このように、定款の規定を戦略的に活用することで、節税というメリットだけでなく、大切な資産を誰にどう引き継いでいくかをコントロールし、親族間の無用なトラブルを未然に防ぐことにも繋がるのです。
将来の事業変更に備える「定款変更」の注意点
会社は生き物です。設立当初は想定していなかった新しい事業を始めたり、事業の成長に伴って本店を移転したりすることもあるでしょう。そうした会社の変化に合わせて、定款も変更していく必要があります。
定款の内容を変更するには、原則として「株主総会の特別決議」という、非常に厳格な手続きが必要です。これは、議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の3分の2以上の賛成がなければ可決されないというものです。さらに、商号や目的、本店所在地といった登記事項を変更した場合は、法務局で変更登記の手続きが必要となり、登録免許税(例:本店移転は管轄内3万円、管轄外は合計6万円)もかかります。
こうした将来の手間やコストを見越して、設立当初の定款作成時に工夫を凝らすことが「賢い初期設定」といえます。
- 事業目的は幅広く設定する:将来展開する可能性のある事業をあらかじめ記載しておく。
- 本店所在地は最小行政区画で記載する:同じ市区町村内での移転なら定款変更が不要になる。
- 役員の任期を伸長する:役員変更登記の頻度を減らし、コストを削減する。(非公開会社の場合)
未来を100%予測することはできませんが、少しの工夫で将来の負担を大きく減らすことが可能です。ぜひ、長期的な視点を持って定款作成に臨んでみてください。
定款作成で迷ったら司法書士に相談という選択肢
ここまで定款の記載事項について解説してきましたが、「自社の場合はどう書けばいいのだろう?」「法的に間違いがないか不安だ」と感じる点も少なくないかもしれません。
定款作成はご自身で行うことも不可能ではありません。しかし、会社の憲法ともいえる重要な書類ですから、法的な正確性は絶対に担保されなければなりません。また、将来の事業展開や相続まで見据えた戦略的な内容にするには、やはり専門的な知識と経験が不可欠です。
私たち司法書士にご相談いただければ、単に書類を作成するだけでなく、お客様一人ひとりの状況や将来のビジョンを丁寧にお伺いした上で、最適な定款の内容をご提案します。法的なミスを防ぎ、時間や手間を大幅に削減できるだけでなく、将来のリスクを回避するためのアドバイスも可能です。どのような専門家に相談すればよいか迷う場合でも、まずはお話をお聞かせください。
お客様からのご相談は相続、後見、債務整理、中小企業法務など様々ありますが、法技術や税務面など多角的に課題を検証しバランスのいい結論を出すお手伝いをするのも当事務所の特徴です。心に優しく、多角的に丁寧に課題と向き合う下北沢司法書士事務所にぜひご相談ください!
相続関係の法律用語
相続の言葉、難しく感じていませんか?司法書士がわかりやすく解説します
ご家族が亡くなられ、悲しみの中で相続の手続きを進めなければならないとき、多くの方が最初に戸惑うのが「法律用語の壁」です。「被相続人」「遺留分」「検認」…普段の生活ではまず耳にしない言葉の数々に、不安を感じてしまうのは当然のことです。
インターネットで調べても、難解な解説ばかりで余計に混乱してしまった、という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ご安心ください。この記事では、下北沢司法書士事務所の司法書士が、相続の現場で使われる重要な法律用語を、できる限り専門用語を使わず、日常の言葉に置き換えながら一つひとつ丁寧に解説していきます。私たちの事務所では、お客様との対話において、こうした平易な言葉でご説明することを常に心がけています。
この記事を読み終える頃には、相続の全体像が少しクリアになり、「何をすべきか」の道筋が見えてくるはずです。まずは肩の力を抜いて、一緒に学んでいきましょう。
まずはここから!相続の基本となる「登場人物」に関する用語
相続を一つの物語だと考えるなら、まず理解すべきは「登場人物」です。誰が財産を遺し、誰がそれを受け取る権利を持つのか。この基本的な関係性を押さえることが、複雑な相続問題を理解するための第一歩となります。ご自身の家族関係を思い浮かべながら読み進めてみてください。
被相続人(ひそうぞくにん)と相続人(そうぞくにん)
相続の物語は、必ずこの二人の登場人物から始まります。
- 被相続人(ひそうぞくにん):亡くなられた方、つまり財産を遺す方のことです。
- 相続人(そうぞくにん):財産を受け継ぐ権利を持つ方のことです。
すべての相続手続きは、「被相続人の財産を、相続人が引き継ぐ」という基本構造の上に成り立っています。新聞やニュースで「故〇〇氏の遺産相続が…」と報じられるとき、この「故〇〇氏」が被相続人にあたります。この二つの言葉の区別が、全てのスタート地点となる最も重要なポイントです。
配偶者(はいぐうしゃ)と子
相続において、中心的な役割を担うのが「配偶者」と「子」です。
- 配偶者(はいぐうしゃ):法律上の婚姻関係にある夫または妻のことです。
- 子:被相続人の実子、または法律上の養子を指します。
ここで重要なのは、法律上の「婚姻届」を提出しているかどうかという点です。長年連れ添った事実婚や内縁関係のパートナーは、残念ながら法律上の相続人にはなれません。また、配偶者が連れてきた子(連れ子)も、被相続人と養子縁組をしていなければ相続権は発生しない点に注意が必要です。
「配偶者」という言葉は、少し堅苦しく聞こえるかもしれません。実を言いますと、私も妻のことを日常で「配偶者」なんて呼んだことは一度もありません。こうした聞き慣れない言葉が、皆様を不安にさせてしまう一因だと感じています。だからこそ、専門家として、一つひとつの言葉を丁寧に解きほぐし、分かりやすくお伝えすることに努めてまいります。
法定相続人(ほうていそうぞくにん)
「誰が相続人になるのか」は、民法という法律で明確に定められています。この法律によって相続権が認められている人々のことを「法定相続人」と呼びます。
法定相続人には、優先順位があります。
- 配偶者は、どのような場合でも常に相続人となります。
- 配偶者以外の親族には順位があり、上位の順位の人がいる場合、下位の順位の人は相続人になれません。
- 第1順位:子(子が既に亡くなっている場合は孫)
- 第2順位:親(親が既に亡くなっている場合は祖父母)
- 第3順位:兄弟姉妹(兄弟姉妹が既に亡くなっている場合は甥・姪)
例えば、亡くなった方に配偶者と子がいれば、相続人はその配偶者と子になります。親や兄弟姉妹は相続人にはなりません。誰が法定相続人なのかを正確に確定させることは、遺産分割の話し合いに参加するメンバーを決めるための、極めて重要な最初のステップです。なお、戸籍を調査する過程で、誰も知らなかった相続人が見つかるケースも実務では珍しくありません。

受遺者(じゅいしゃ)と受贈者(じゅぞうしゃ)
法定相続人ではない人が、財産を受け取るケースもあります。その代表が「受遺者」と「受贈者」です。
- 受遺者(じゅいしゃ):遺言によって財産を譲り受けた人のことです。例えば、お世話になった友人や、特定の団体に財産を遺したい場合に利用されます。
- 受贈者(じゅぞうしゃ):被相続人との間で「私が死んだら、この財産をあなたにあげます」という生前の契約(死因贈与契約)を結び、財産を受け取る人のことです。
両者の違いは、財産を渡すという意思表示が、遺言という一方的なものか、契約という双方の合意に基づくものか、という点にあります。特に遺言によって財産を受け取る包括受遺者は、相続人と同様に遺産分割協議に参加する必要など、手続きが複雑になることもあります。
何をどう分ける?「財産と権利」に関する重要用語
登場人物がわかったら、次は物語の核となる「財産」と、それを分けるための「権利」について見ていきましょう。何を、どのようなルールで分けるのか。ここを理解することで、相続の具体的な中身が見えてきます。
遺産(いさん)と、みなし相続財産
相続の対象となる財産のことを「遺産」または「相続財産」と呼びます。
これには、多くの人がイメージするプラスの財産だけでなく、注意すべきマイナスの財産も含まれます。
- プラスの財産:預貯金、不動産(土地・建物)、株式、自動車など
- マイナスの財産:借金、住宅ローン、未払いの税金など
そして、もう一つ知っておきたいのが「みなし相続財産」です。これは、厳密には被相続人の遺産ではないものの、税法上、相続財産と「みなして」相続税の計算対象に含める財産のことを指します。代表的なものは、生命保険金や死亡退職金です。これらは受取人固有の財産とされますが、税金の計算上は遺産に加算されるため、注意が必要です。特に死亡退職金は、相続放棄をしても受け取れる場合があるなど、特別な扱いが定められています。
法定相続分(ほうていそうぞくぶん)と指定相続分(していそうぞくぶん)
遺産を分ける際の取り分の目安として、法律で定められている割合が「法定相続分」です。これは、遺言がない場合に、遺産分割の話し合いをする上での一つの基準となります。
一方で、遺言書で財産の分け方が具体的に指定されている場合、その割合を「指定相続分」と呼びます。相続においては、被相続人の意思が尊重されるため、原則として遺言による指定相続分が法定相続分に優先します。
法定相続分の割合は、法定相続人の組み合わせによって変わります。より詳しい相続分の計算方法については、別の記事で詳しく解説しています。
遺留分(いりゅうぶん)
「全財産を愛人に譲る」といった極端な内容の遺言があった場合、残された家族は生活に困ってしまうかもしれません。そうした事態を防ぐため、法律は兄弟姉妹を除く法定相続人(配偶者、子、親)に対して、最低限保障される財産の取り分を定めています。これが「遺留分」です。
遺留分は、遺言によっても奪うことのできない強力な権利です。もし遺言によって自身の遺留分が侵害されている場合、「遺留分侵害額請求」という手続きを通じて、財産を多く受け取った人に対して金銭の支払いを求めることができます。遺産が不動産しかない場合でも、原則として金銭での請求となります。
寄与分(きよぶん)と特別受益(とくべつじゅえき)
相続人間の公平を保つために、法定相続分を調整する制度があります。それが「寄与分」と「特別受益」です。
- 寄与分(きよぶん):被相続人の生前に、その財産の維持や増加に特別な貢献(例:長年の介護、事業の手伝いなど)をした相続人がいる場合に、その貢献度に応じて相続分を増やす制度です。
- 特別受益(とくべつじゅえき):被相続人から生前に、特別な援助(例:住宅購入資金、多額の学費など)を受けていた相続人がいる場合に、その分を遺産の前渡しとみなし、その相続人の取り分を減らす制度です。
どちらも「相続人間の公平」を目指すものですが、貢献度や援助の「特別性」を客観的に証明するのは難しく、遺産分割の話し合いで最も揉めやすいポイントの一つです。特に特別受益は、家族間の感情的なもつれと結びつきやすいため、慎重な対応が求められます。

どう進める?「手続きと書類」に関する基本用語
登場人物と財産の関係がわかったら、いよいよ物語を動かす「手続き」です。ここでは、相続を具体的に進める上で必要となる手続きや書類に関する用語を解説します。どのような流れで進んでいくのかをイメージしながら読み進めてみてください。
遺言書(ゆいごんしょ)と検認(けんにん)
遺言書は、被相続人が自身の財産の分け方などについて最終的な意思を記した、非常に重要な書類です。主に、本人が全文を手書きする「自筆証書遺言」と、公証役場で作成する「公正証書遺言」があります。遺言書を作成しておくことで、後の相続トラブルを未然に防ぐ効果が期待できます。
自筆証書遺言が見つかった場合は、原則として封を開けずに家庭裁判所に提出し、「検認(けんにん)」という手続きを受ける必要があります(ただし、法務局で保管されている自筆証書遺言に関して交付される「遺言書情報証明書」は検認の必要はありません)。これは、遺言書の存在と内容を相続人全員に知らせ、偽造や変造を防ぐための手続きです。ここで注意したいのは、検認はあくまで遺言書の「状態」を確認する手続きであり、その遺言が法的に有効かどうかを判断するものではない、という点です。
遺産分割協議(いさんぶんかつきょうぎ)と遺産分割協議書
遺言書がない場合や、遺言書で分け方が指定されていない財産がある場合、法定相続人全員で「誰が、どの財産を、どれくらい相続するか」を話し合います。この話し合いのことを「遺産分割協議」と呼びます。
協議がまとまったら、その合意内容を証明するために「遺産分割協議書」という書類を作成します。この書類には相続人全員が署名し、実印を押印します。遺産分割協議書は、不動産の名義変更(相続登記)や預貯金の解約といった、ほとんどの相続手続きで必要となる非常に重要な書類です。親族間で円満に話し合いを進めるためには、事前の準備と冷静な対話が鍵となります。
相続放棄(そうぞくほうき)と限定承認(げんていしょうにん)
被相続人に借金などのマイナスの財産が多く、プラスの財産を上回る場合に検討するのが、財産を一切引き継がないという選択です。
- 相続放棄:プラスの財産もマイナスの財産も、すべてを放棄する手続きです。
- 限定承認:相続したプラスの財産の範囲内でのみ、マイナスの財産を引き継ぐという、条件付きで相続する手続きです。
これらの手続きは、「自分が相続人になったことを知った時から3ヶ月以内」に家庭裁判所に申し立てる必要があります。この期間は非常に短いため、財産調査を迅速に行い、慎重に判断しなければなりません。安易な判断は危険であり、相続放棄と限定承認のどちらを選ぶべきかは専門家と相談することをお勧めします。
戸籍謄本(こせきとうほん)と相続関係説明図
相続手続きを進める上で、誰が法定相続人であるかを公的に証明するために不可欠な書類が「戸籍謄本」です。手続きでは、被相続人の「出生から死亡まで」の連続した戸籍謄本(戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍謄本など)をすべて集める必要があります。本籍地が何度も変わっている場合など、この収集作業は非常に煩雑になることがあります。
そして、収集した戸籍謄本の内容をもとに、被相続人と相続人の関係性を一覧にした家系図のようなものを作成します。これを「相続関係説明図」と呼びます。この図を法務局や金融機関に提出することで、大量の戸籍謄本をその都度確認してもらう手間が省け、手続きがスムーズに進みます。また、法定相続情報一覧図という公的な証明制度を活用することも可能です。
戸籍の取得方法については、法務局のウェブサイトもご参照ください。
用語がわからなくなったら、専門家への相談もご検討ください
ここまで、相続に関する基本的な法律用語を解説してきました。一つひとつの言葉の意味が分かると、これまで漠然としていた相続手続きの全体像が、少しはっきり見えてきたのではないでしょうか。
しかし、用語の理解はあくまでスタートラインです。実際の相続手続きは、ご家族の状況や財産の内容によって千差万別であり、専門的な知識や判断が求められる場面が数多くあります。
もし、少しでも手続きに不安を感じたり、ご自身のケースではどうなるのか分からなくなったりしたときは、一人で抱え込まずに私たち司法書士にご相談ください。相続に関する相談先は司法書士だけでなく弁護士や税理士も考えられますが、特に不動産が関わる手続きや、戸籍の収集、遺産分割協議書の作成など、手続き全体の司令塔として皆様をサポートするのが司法書士の役割です。
下北沢司法書士事務所では、皆様のお話を丁寧に伺い、複雑な法律用語を分かりやすい言葉に翻訳しながら、最適な解決策を一緒に考えさせていただきます。ご相談料金の有無や範囲は事前にご案内しますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。
宅建業法の改正
不動産売買などをプロとして行う「宅地建物取引業」。そのルールを定めた宅地建物取引業法の一部が改正されました。いくつか改正点がありますが、大きい点として「インスペクション」について一定の説明義務が定められたことです。インスペクションとは、建物の構造耐力上の重要な部分の状況を専門家により調査すること。宅建業者には調査者の紹介の可否、調査した場合の調査結果の説明や書面の交付が義務付けられます。中古住宅市場の活性化が狙いのようですね。施行は平成30年4月1日から。解説している記事を見つけましたので、リンクを貼っておきます。
http://suumo.jp/journal/2016/10/03/118804/
気が付いたらもうすぐゴールデンウィークですね。みなさんどこかお出かけしますか?私は子供と遊ぶか、お酒飲むくらいです。
下北沢司法書士事務所 竹内友章
会社使用の、社長名義の不動産
社長の相続で会社に影響が出る可能性も。事業で使う個人不動産の注意点
会社の事務所や工場、店舗として使っている不動産が、実は社長個人の名義になっている。多くの中小企業で当たり前のように見られる光景ですが、この状態を放置したまま社長に万が一のことがあったら、会社の事業継続に大きな影響を及ぼす問題に発展しかねません。
私がこれまで多くのご相談をお受けする中で、特に経営者の皆様にお伝えしたいのは、「もしも相続が発生してしまった場合、相続人の一人が会社での使用を反対する場合が考えられます」という現実です。社長がお元気なうちは、誰も文句を言いません。しかし、相続が始まった途端、これまで家族として、そして会社の仲間として協力してきたはずの関係が、不動産をめぐる利害関係へと変わってしまうことがあるのです。
そうなると、相続人同士の話し合いで解決するしかありませんが、感情的な対立も絡み、一筋縄ではいかないケースが少なくありません。この記事では、なぜ社長名義の不動産が危険なのか、そして会社と家族を未来のトラブルから守るために、今からできる具体的な対策を司法書士の視点から分かりやすく解説していきます。「うちもそうだ」と少しでも心当たりがある方は、ぜひ最後までお読みください。
相続と事業承継の全体像については、相続と事業承継の基本で体系的に解説しています。
なぜ危険?会社が使う社長個人の不動産が抱える3つのリスク
「うちは家族仲が良いから大丈夫」と思っていても、相続をきっかけに状況が一変することは珍しくありません。社長の個人資産を事業に利用している状態には、具体的に次のようなリスクが潜んでいます。
- 事業継続が困難になるリスク
相続によって不動産が社長の後継者以外の相続人との共有状態になった場合、事業に必要な不動産を安定して使用できなくなるおそれがあります。例えば、事業を継がない兄弟から「来月から賃料を今の3倍に上げてほしい」「この土地を売りたいから出ていってくれ」と突然要求されるかもしれません。会社の経営基盤である不動産の使用権が不安定になれば、最悪の場合、事業の移転や廃業を迫られる可能性も出てきます。 - 資金調達が難しくなるリスク
会社が新たな設備投資や運転資金のために金融機関から融資を受けたい場合、不動産を担保にすることがあります。しかし、不動産が社長個人名義のままだと、それは会社の資産ではありません。社長の相続が発生し、所有権が複数の相続人に分散してしまうと、担保提供のために相続人全員の同意を取り付ける必要が出てきます。一人でも反対すれば、必要な資金調達ができず、事業拡大のチャンスを逃してしまうかもしれません。 - 家族関係が悪化するリスク
相続は「争続」とも言われるように、家族間に深刻な亀裂を生むことがあります。「会社を継ぐ長男だけが、価値の高い土地を相続するのは不公平だ」と他の相続人が不満を抱けば、遺産分割協議は紛糾します。後継者も、他の兄弟姉妹から事業の継続に必要な不動産の利用を前提に無理な要求を突き付けられ、精神的に追い詰められてしまうことも。お金の問題だけでなく、家族関係の悪化につながる可能性もあります。
【もし相続発生後なら】相続人が使用に反対…どう対処する?

生前対策が間に合わず、実際に相続が開始してしまった後に、一部の相続人から「会社に土地を貸したくない」と反対の声が上がった場合、どうすればよいのでしょうか。打つ手がないわけではありません。冷静かつ粘り強い話し合いが解決に向けて重要です。
まず基本となるのが、相続人全員で行う「遺産分割協議」です。この話し合いで、全員が納得できる着地点を探ります。反対する相続人との交渉では、感情的に対立するのではなく、以下のような具体的な選択肢を提示し、現実的な解決策を模索することが重要です。
- 会社の存続メリットを伝える:まず、会社が事業を継続することが、反対している相続人自身にとっても経済的なメリットがあることを丁寧に説明します。例えば、会社から安定した地代収入を得られることや、将来的に役員報酬や配当を受け取れる可能性など、具体的な数字を示して理解を求めます。
- 代償分割を提案する:事業用不動産は後継者が単独で相続し、その代わりに後継者から他の相続人へ、相続分に見合う現金(代償金)を支払う「代償分割」という方法があります。後継者に十分な自己資金があれば、公平性を保ちつつ、事業に必要な不動産を確保できる有効な手段です。
- 会社への売却を検討する:会社に資金的な余裕があれば、不動産を会社自身が買い取り、その売却代金を相続人全員で分割する方法もあります。これにより、不動産は会社の資産となり、経営の安定化につながります。
もし、当事者間での話し合いがどうしてもまとまらない場合は、家庭裁判所に「遺産分割調停」を申し立てるという次のステップもあります。調停委員という第三者を交えて、冷静に話し合いを進めることができます。
より具体的な手順については、相続人が多い不動産の売却方法をご覧ください。
事業と家族を守る生前対策「遺言」か「家族信託」か
相続が起きてから慌てるのではなく、問題が起こる前に手を打っておく「生前対策」こそが、円満な事業承継の特に重要です。特に有効な手段として挙げられるのが「遺言」と「家族信託」です。
この二つの制度は似ているようで、その役割と効果は大きく異なります。どちらが自社にとって最適かを見極めるためには、単に制度を比較するだけでなく、「事業承継をどのような形で進めたいか」という視点で考えることが大切です。
例えば、こんなことを自問自答してみてください。
- 社長が元気なうちから、後継者に経営の権限を少しずつ委譲していきたいか?
- 将来、社長が認知症などで判断能力が衰えてしまった場合のリスクに備えたいか?
- 後継者の次の代(孫の代など)の承継先まで、ある程度決めておきたいか?
これらの問いに対する答えによって、選ぶべき道筋が見えてきます。ここからは、それぞれの制度の特徴と、事業承継における具体的な活用法を詳しく見ていきましょう。認知症対策という観点では、任意後見・家族信託・法定後見の違いも参考になるでしょう。
「遺言」で後継者に不動産を相続させる方法と限界点
最もシンプルで直接的な方法は、社長が「会社の事業で使っている不動産は、後継者である長男〇〇に相続させる」という内容の遺言書を作成しておくことです。これにより、社長の死後、不動産は遺産分割協議を経ることなく、スムーズに後継者へ引き継がれ、事業の継続性を確保できます。
遺言書には自分で書く「自筆証書遺言」と、公証役場で作成する「公正証書遺言」がありますが、法的な不備がなく、より確実性が高いのは公正証書遺言です。専門家である司法書士に相談しながら作成することで、ご自身の意思を正確に反映した、争いの起きにくい遺言を残すことができます。
しかし、この遺言書にも万能ではない「限界点」が存在します。
- 遺留分の問題:兄弟姉妹以外の相続人には、法律で最低限保障された財産の取り分である「遺留分」という権利があります。もし遺言の内容が、他の相続人の遺留分を侵害するほど後継者に偏ったものであった場合、相続開始後に他の相続人から遺留分に相当する金銭を請求され、新たな紛争につながる可能性があります。
- 生前の財産管理には対応できない:遺言は、あくまで社長が亡くなった後に効力を発揮するものです。そのため、社長が認知症などで判断能力を失ってしまった場合、不動産の売却や担保設定といった重要な法律行為ができなくなり、事業運営に支障が出る「資産凍結」のリスクには対応できません。
- 二次相続は指定できない:遺言で指定できるのは、ご自身の財産を次に誰に渡すか(一次相続)までです。後継者に相続させた不動産が、その後継者の死後(二次相続)、誰に渡るかまではコントロールできません。例えば、後継者に子供がいない場合、その配偶者や兄弟姉妹に不動産が渡り、創業家の手から離れてしまう可能性もあります。
遺言書を作成すべきケースについては、遺言書を作成すべき典型的な5つのケースで詳しく解説しています。
「家族信託」で事業承継を円滑に進める仕組み

遺言の限界点をカバーし、より柔軟で計画的な事業承継を可能にするのが「家族信託」という仕組みです。「信託」と聞くと難しく感じるかもしれませんが、要は「信頼できる家族に財産の管理を託す」契約のことです。
事業承継における家族信託では、一般的に以下のように設計します。
- 委託者(財産を託す人):社長
- 受託者(財産を託される人):後継者
- 受益者(利益を受ける人):社長
この契約を結ぶことで、社長が元気なうちに、事業用不動産の名義を後継者に移します。しかし、これは贈与や売買とは違い、あくまで管理・運用を任せるだけ。不動産から生じる賃料などの利益は、引き続き受益者である社長が受け取ります。
家族信託を活用すると、遺言にはない以下のような大きなメリットが生まれます。
- 認知症による資産凍結を防げる:万が一、社長の判断能力が低下しても、不動産の管理権限はすでに受託者である後継者に移っているため、会社の資金繰りや設備投資のために不動産を売却したり、担保に入れたりといった経営判断を、後継者が滞りなく行えます。
- 二次相続以降の承継先を指定できる:信託契約の中で、「社長の死後は後継者が受益権を引き継ぎ、その後継者の死後はその子(社長の孫)に引き継がせる」といったように、一定の範囲で、将来の資産の承継先を決めておくことができます。これにより、会社の重要な資産が創業家以外に流出するのを防げます。
- 他の相続人にも配慮できる:事業を継がない他の相続人に対して、不動産から生じる賃料収入の一部を受け取れる権利(受益権)を与える設計も可能です。これにより、後継者に経営の安定に必要な不動産を集中させつつ、他の相続人にも経済的な利益を分配し、公平性を保ちやすくなります。
このように、認知症対策としての家族信託は事業承継において非常に柔軟で強力なツールとなり得るのです。
【ケース別】あなたの会社に最適なのはどっち?判断基準を解説
では、結局のところ「遺言」と「家族信託」、どちらを選べば良いのでしょうか。最終的な判断は、会社の状況やご家族の関係性によって異なります。ここでは、判断の目安となるいくつかのケースをご紹介します。
| こんなケースなら | おすすめの対策 | 理由 |
|---|---|---|
| 後継者が決まっており、他の相続人との関係も良好。主な心配事は相続時の名義変更だけ。 | 遺言 | 手続きが比較的シンプルでコストも抑えられます。遺留分に配慮した内容であれば、遺言だけで十分対応できる可能性があります。 |
| 社長が高齢で、認知症などによる判断能力の低下が心配。 | 家族信託 | 社長が元気なうちに後継者に財産管理権限を移せるため、将来の資産凍結リスクに備えやすくなります。遺言ではこの点に対応できません。 |
| 後継者の次の代まで、事業用資産の承継先を決めておきたい。 | 家族信託 | 二次相続以降の承継先を指定できるのは家族信託だけの機能です。会社の永続的な経営基盤を守ることができます。 |
| 事業を継がない相続人からの反対が予想され、円満な分割が難しそう。 | 家族信託 | 受益権を分割することで、他の相続人にも経済的なメリットを提供し、不満を和らげることができます。遺言よりも柔軟な財産配分が可能です。 |
もちろん、これはあくまで一般的な目安です。コスト面や手続きの煩雑さも考慮する必要があります。各制度の費用についてより詳しくは、任意後見・信託・法定後見の費用比較|実務家司法書士が解説の記事もご参照ください。最終的には専門家と相談の上、ご自身の会社と家族にとって最適なプランを設計することが何よりも大切です。
選択肢としての「不動産の法人化」メリットと注意点
生前対策のもう一つの選択肢として、社長個人名義の不動産を会社名義にしてしまう「法人化」という方法も考えられます。これは、社長から会社へ不動産を売却、または現物出資する形で行います。
法人化の主なメリット
- 相続財産から切り離せる:不動産が会社の資産になるため、社長個人の相続財産ではなくなります。これにより、不動産そのものが遺産分割の対象から外れ、相続トラブルの直接的な原因になることを避けられます。
- 株式で計画的に承継できる:事業承継は、不動産ではなく会社の「株式」の承継という形になります。株式であれば、生前贈与などを活用して、計画的に少しずつ後継者へ移転していくことが可能です。
法人化の注意点・デメリット
- 移転コストがかかる:個人から法人へ不動産の名義を移す際には、社長側に譲渡所得税、会社側に不動産取得税や登録免許税といった税金・登記費用が発生します。
- 株式の評価額が上がる:不動産という大きな資産が会社に移ることで、会社の株価評価が上昇します。その結果、将来的に株式を相続する際の相続税負担が重くなる可能性があります。
- 法人の維持コスト:会社の資産が増えることで、税理士費用や社会保険料などの法人の維持コストが増加することも考慮に入れる必要があります。
法人化は、相続トラブルの回避という点では有効ですが、税務面で新たな課題を生む可能性もあります。実行する際は、税理士とも連携しながら慎重に検討を進める必要があります。ひとくちに会社といっても様々な種類があり、自社に合った形態を選択することが重要です。
円満な事業承継へ、今すぐ始めるべきこと

ここまで見てきたように、社長個人名義の不動産を会社が使っているという状況には、様々なリスクが潜んでおり、その対策も一つではありません。遺言、家族信託、法人化、それぞれの方法にメリットとデメリットがあり、どの選択がベストかは、会社の財務状況、後継者の有無、そして何よりご家族の関係性によって大きく変わってきます。
これほど複雑な問題を、経営者の方が一人で抱え込み、最善の答えを導き出すのは非常に困難です。だからこそ、「一人で悩まず、専門家に相談すること」が、円満な事業承継に向けた有効な第一歩となります。
私たち司法書士は、不動産登記の専門家であると同時に、遺言や信託、会社法務に関するご相談にも対応しています。今回のような問題についても、状況を整理しながら必要な手続きを検討できます。
ご相談いただく際に、以下のような資料をお手元にご準備いただくと、よりスムーズにお話を進めることができます。
- 不動産の登記簿謄本(全部事項証明書)や固定資産税の課税明細書
- 会社の定款や直近の決算書
- ご家族の状況がわかる簡単なメモ(誰に事業を継がせたいか、など)
当事務所は、法律面を中心に課題を整理し、税務面については必要に応じて税理士等と連携しながら検討するだけでなく、心理カウンセラーの資格を持つ司法書士が、ご家族間の感情的な側面にも配慮しながら、皆様のお話を丁寧にお伺いします。まずは無料相談をご利用いただき、あなたの不安や悩みを率直にお聞かせください。一緒に、会社とご家族の未来を守るための最適な道筋を見つけましょう。
法定相続情報証明制度
5月29日(月)から「法定相続情報証明制度」が始まります。この制度は、相続が発生した際に戸籍謄本をたくさん用意したり持ち運ぶ手間を減らそうというもの。亡くなられた方の戸籍一式と相続関係の説明図を提出すると、提出した説明図に「認証文」が付された写しが交付され戸籍の代わりに使うことで、1通で相続関係を証明できるのがメリットです。相続関係の説明図の作成は不動産の相続登記の際にも行いますので、司法書士にとっては日常業務です。文章だとどうしても伝わりにくいと思いますので、宜しければお問い合わせください。
法務省の関連ページのリンク、貼っておきます。http://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00284.html
下北沢司法書士事務所 竹内友章
小規模事業者向けの補助金
中小企業庁が音頭を取る小規模事業者向けの補助金「小規模事業者持続化補助金」。追加公募がなされるみたいですね。平成29年4月14日から平成29年5月31日までに応募して審査を通過すると、原則50万円までを上限として補助金がでるようです。対象経費の3分の2以内である(つまり75万円経費を使うと50万円以内の補助金がでる)、申請をして審査を通過し、申請通り適正に経費が使われことを報告してから補助金が支給される(かかった経費の補助金対象分があとからもどってくるのであり、事業開始前から支給されるわけではない。申請書を作る手間もかかる。)など大変な面もありますが、新規の事業計画がある方は活用してみてもいいかもしれません。なお、今回の追加公募分では事業承継に向けた取り組みを支援するため、代表者が60歳以上で後継者が中心になって取り組む事業が重点的に支援されるようです。
商工会議所の事務局のリンク、貼っておきます。
http://h28.jizokukahojokin.info/tsuika/
下北沢司法書士事務所 竹内友章
拒否権付種類株式
【事例】拒否権付株式が相続で「守り神」にも「悪魔」にもなる理由
「会社と家族の未来を、たった1株で守り抜いた社長」と「たった1株が原因で、会社と家族がバラバラになった社長」。もし、拒否権付種類株式(黄金株)の物語を語るなら、このような対照的な2つの結末が考えられます。
成功したA社長のケースは、まさに理想的な事業承継でした。彼は早くから後継者である長男に経営を任せたいと考えていましたが、まだ経験が浅い長男の独断で会社が傾くことを心配していました。そこで彼は、自身の引退後も重要事項に対する拒否権を持つ「黄金株」を1株だけ手元に残したのです。さらに、長男以外の子供たちには、遺言で十分な金融資産を残し、遺留分にも配慮しました。A社長が亡くなった後も、長男は安心して経営に専念でき、他の兄弟も納得のいく相続ができたため、争いは起きませんでした。黄金株は、まさに会社の未来を守る「守り神」となったのです。
一方で、B社長のケースは悲劇でした。彼もまた、後継者である長男に会社を継がせるため黄金株を導入しました。しかし、他の相続人への配慮を怠ったまま、突然亡くなってしまったのです。結果、黄金株は他の相続人との準共有となり、「権利行使者を誰にするか」で大揉めに。権利行使者を1人に定めて会社へ通知できなければ、黄金株に基づく権利を行使できず、会社の重要な決定が進まなくなるおそれがあります。役員の選任も、設備投資も、すべてがストップ。会社は経営不能に陥り、家族の間には修復不可能な亀裂が入ってしまいました。黄金株は、会社を縛り付ける「悪魔」へと豹変したのです。
この2つの事例の違いは、一体どこにあったのでしょうか。それは、拒否権付株式という強力なツールの「使い方」と「相続への備え」を正しく理解していたかどうか、ただそれだけです。この記事では、拒否権付株式があなたの会社とご家族にとって「守り神」となるよう、その基本から具体的な相続対策まで、専門家の視点で詳しく解説していきます。
拒否権付種類株式(黄金株)の基本と相続における役割
株式会社が発行する株式は、内容の違うものをいくつか発行することができます。その中でも、ひときわ強力な権限を持つのが「拒否権付種類株式」、通称「黄金株(おうごんかぶ)」です。なぜ、このように呼ばれるのでしょうか。
この株式をたった1株持っているだけで、株主総会や取締役会で決議された特定の重要事項に対して「NO!」を突きつけることができるからです。まさに、会社の意思決定における切り札(ジョーカー)のような存在と言えるでしょう。
具体的には、会社法で定められた株主総会の決議事項のうち、例えば「取締役の選任・解任」「会社の合併や事業譲渡」「定款の変更」といった会社の根幹に関わる決議に対して、「この黄金株を持つ株主の承認も必要とする」とあらかじめ定款で定めておきます。そうすると、たとえ他の株主全員が賛成したとしても、黄金株を持つ株主がたった一人で反対すれば、その議案は否決されてしまうのです。これは、まさに絶大な権力です。拒否権付種類株式は、株主総会や取締役会で決議すべき事項のうち、定款で定めた特定の事項について「当該決議に加えて、拒否権付種類株式の株主で構成する種類株主総会の決議(承認)も必要」とすることで、実質的な拒否権を持たせる株式です。例えば、合併に対して拒否権付種類株式を発行すると、他の株主全員が賛成しても拒否権付種類株式をもっている人が1人反対するとその会社は合併できません。
この強力な黄金株が、事業承継や相続の場面で重要な役割を果たします。後継者の経営をサポートしたり、経営権が相続によって意図しない人物に渡るのを防いだりするために活用されるのです。ただし、その強力さゆえに、設計を間違えると深刻な事態を招きかねない、諸刃の剣であることも忘れてはなりません。
より詳しい種類株式の仕組みについては、種類株式の基本の記事で解説していますので、併せてご覧ください。
メリット:後継者の経営を見守り、経営権を守る
事業承継で黄金株を活用する最大のメリットは、円滑な権力移譲をサポートできる点にあります。例えば、先代経営者が引退し、息子や娘に社長の座を譲るケースを考えてみましょう。
後継者がまだ若く、経営手腕に少し不安が残る場合、先代経営者が黄金株を1株だけ保有し続けることで、いわば「後見人」として経営に関与し続けることができます。後継者は日々の業務に集中し、大胆な挑戦もできます。一方で、会社にとってリスクが大きすぎる判断をしようとした際には、先代が黄金株の力でブレーキをかけることができるのです。これにより、後継者の成長を促しつつ、会社の暴走を防ぐという、理想的な段階的承継が実現可能になります。
また、「経営権の分散防止」という観点でも非常に有効です。相続が発生すると、自社株式が後継者以外の相続人(例えば、経営に関心のない兄弟姉妹など)に分散してしまうことがあります。そうなると、重要な経営判断のたびに他の相続人の同意が必要になり、経営のスピードが著しく落ちる可能性があります。しかし、黄金株を後継者、あるいは先代経営者が持っていれば、会社の重要な意思決定権は確保され、経営の安定性を保つことができるのです。
デメリット:相続を機に経営がストップする危険性
しかし、黄金株にはその強力さゆえの深刻なデメリットも潜んでいます。特に危険なのが、何の対策もせずに黄金株の株主が亡くなってしまった場合です。
黄金株も相続財産の一つですから、遺言などがなければ法定相続人全員の共有財産(準共有)となります。もし、相続人同士の仲が悪かったり、経営方針で意見が対立したりした場合、誰もが黄金株の権利行使に同意せず、結果として会社は重要事項を何も決められなくなってしまいます。取締役を一人選ぶことさえできなくなるかもしれません。
さらに、経営に全く関心のない相続人や、会社に敵対的な感情を持つ相続人に黄金株が渡ってしまった場合、彼らが私情で拒否権を乱用すれば、会社は完全に機能不全に陥ります。これは、会社にとってまさに「死」を意味する一大事です。このように、相続によって株式が分散してしまうリスクは、黄金株の存在によって、より深刻な問題へと発展する可能性があるのです。
詳しい株式分散のリスクについては、株式分散が招く経営上のリスクもご参照ください。
【事例で学ぶ】黄金株の相続対策3つのシナリオ
では、黄金株が「悪魔」に変わるのを防ぎ、「守り神」として機能しやすい設計にするためには、具体的にどうすればよいのでしょうか。ここでは、事業承継における3つのシナリオを通して、具体的な対策とそのポイントを学んでいきましょう。
①成功シナリオ:取得条項と遺言で円滑な事業承継を実現
最も理想的な対策が施されたA社の事例です。A社の先代経営者は、後継者である長男への事業承継を考え、自身が保有する1株の黄金株に特別な仕掛けを施しました。
それは、「私(先代経営者)が死亡したことを条件に、会社がこの黄金株を相続人から取得できる」という「取得条項」を定款に定めたことです。これにより、相続が発生した瞬間に、会社は黄金株を自動的に回収(買い取り)し、経営の混乱を未然に防ぐ仕組みを構築しました。
さらに、先代経営者は公正証書遺言を作成。普通株式はすべて後継者である長男に相続させる一方、他の子供たちには預貯金などの金融資産を十分に相続させることで、遺留分にも万全の配慮をしました。
結果、先代の死後、会社はスムーズに黄金株を回収。長男は安定した経営基盤のもとで事業に集中でき、他の兄弟も納得して相続を受け入れたため、家族間の争いは一切起こりませんでした。このように、取得条項と遺言という二段構えの対策が、円満な事業承継を実現させたのです。
②失敗シナリオ:遺留分への配慮不足で紛争へ発展
次に、黄金株の設計はしたものの、相続全体のバランスを見誤ったために失敗したB社の事例を見てみましょう。
B社の先代経営者も、後継者である長男に経営権を集中させるため、「会社の株式すべて(黄金株1株と普通株式)を長男に相続させる」という内容の遺言書を作成しました。これで万全だと安心していました。
しかし、会社の株式が全財産のほとんどを占めていたため、この遺言は他の兄弟の「遺留分」を大きく侵害するものでした。遺留分とは、兄弟姉妹以外の法定相続人に保障された、最低限の遺産取得分のことです。
先代の死後、当然ながら他の兄弟は長男に対して遺留分侵害額請求を行いました。長男は多額の金銭を支払う必要に迫られ、会社の運転資金に手をつけざるを得なくなりました。最悪の場合、支払いのために株式の一部を手放すことになり、せっかく集中させたはずの経営権が再び不安定になる事態も考えられます。
この事例が示す教訓は、「黄金株の設計だけでは事業承継対策は不十分」だということです。相続人全員の権利、特に遺留分に配慮した遺産分割の計画が不可欠なのです。
③応用シナリオ:「属人的株式」でより柔軟な支配権を設計
最後に、少し専門的になりますが、「属人的株式」という別の選択肢をご紹介します。これは、黄金株(拒否権付株式)と似た効果を持ちながら、より柔軟な設計が可能な制度です。
黄金株が「特定の種類の株式」に特別な権利を与えるのに対し、属人的株式は「特定の株主」個人に特別な権利(例えば、剰余金の配当や議決権について他の株主と異なる定め)を与えるものです。例えば、「株主Aさんが持つ株式は、1株につき100個の議決権を持つ」といった定め方ができます。
この制度の大きな特徴は、その効力が「特定の株主」に紐づく点です。そのため、相続などで株式の保有者が変わると、原則として、相続人に同じ特別な権利がそのまま引き継がれる設計にはなりません。そのため、黄金株のように相続をきっかけに経営がストップするリスクを根本的に回避できます。
また、この定めは定款に置きますが、商業登記上は種類株式として扱われず登記されないと整理されるため、登記事項からは外部に伝わりにくいという特徴もあります。先代経営者が少数の株式を持ちながらも会社の支配権を維持し、相続時にはスムーズに後継者へバトンタッチしたい、といったケースでは非常に有効な選択肢となり得ます。拒否権付株式とどちらが自社に適しているか、専門家と相談して検討する価値はあるでしょう。
拒否権付株式の導入と相続対策で押さえるべき法的ポイント
実際に拒否権付株式を導入し、相続対策を講じる際には、法務・税務上のいくつかの重要なポイントがあります。専門家へ相談する前に、ご自身で基本的な知識を整理しておきましょう。
手続きの流れと定款記載例
拒否権付株式を導入するには、以下の手続きが必要です。
- 定款変更案の作成:どのような事項に拒否権を設定するのか、取得条項をどうするかなどを具体的に決めます。
- 株主総会の招集・開催:定款変更は会社の最重要事項ですので、株主総会の「特別決議」(原則として、議決権を行使できる株主の議決権の過半数が出席し、出席株主の議決権の3分の2以上の賛成)が必要となります。
- 法務局への変更登記申請:株主総会で定款変更が承認されたら、法務局へ発行済株式の内容や総数などの変更登記を申請します。
特に重要なのが、定款への記載です。例えば、取締役の選任について拒否権を設定する場合、以下のような条文を定款に加えることになります。
【定款記載例】
(種類株主総会の決議)
第〇条 当会社が取締役を選任する旨の株主総会の決議は、当該決議のほか、A種類株式を有する株主を構成員とする種類株主総会の決議がなければ、その効力を生じない。
このように、自社の状況に合わせて適切な定款記載事項を設計することが、すべての始まりとなります。
Q&A:相続税評価額はどうなりますか?
Q. 黄金株は強力な権利がある分、相続税の評価額も普通株式より高くなってしまうのでしょうか?
A. いいえ、国税庁の文書回答事例では、拒否権付株式(拒否権付種類株式)については「拒否権を考慮せずに評価する」とされています。
これは多くの方が懸念される点ですが、ご安心ください。黄金株が持つ拒否権という特別な権利は、会社の財産価値を直接的に増減させるものではないと考えられています。そのため、相続税の計算においては、他の普通株式と同じ基準(会社の純資産額や収益力など)で評価されるのが一般的です。
この点は、相続税申告の際にも重要な知識となります。税負担が増えることを心配して導入をためらう必要はありません。
参照:国税庁「相続等により取得した種類株式の評価について(照会)」
後悔しない事業承継のために、今すぐ専門家へ相談を
ここまで見てきたように、拒否権付種類株式(黄金株)は、事業承継を円滑に進めるための非常に強力なツールです。しかし、その設計には会社法、民法(相続)、そして税法といった専門知識が複雑に絡み合います。
事例で見たように、少しの設計ミスや知識不足が、将来の経営を揺るがし、大切なご家族の間に争いを引き起こす引き金になりかねません。安易な自己判断はできるだけ避け、専門家に確認することが望ましいでしょう。
私たち下北沢司法書士事務所は、お客様からのご相談に対し、法技術や税務面など多角的に課題を検証し、バランスの取れた結論を導き出すことを得意としています。必要であれば、信頼できる税理士や弁護士と連携し、チームでお客様の課題解決にあたります。どの専門家に相談すればよいか分からない、という方もご安心ください。まずはお話をお伺いし、最適な専門家への橋渡しをすることも私たちの重要な役割です。
また、事業承継や相続の問題は、法律やお金だけの問題ではありません。家族間の感情的な対立といった、非常にデリケートな側面も持ち合わせています。代表司法書士は心理カウンセラーの資格も有しており、法的な解決策をご提案するだけでなく、ご家族の皆様のお気持ちにも寄り添いながら、円満な解決を目指します。
後悔しない事業承継の第一歩は、信頼できる専門家に相談することから始まります。心に優しく、多角的に課題と向き合う当事務所へ、ぜひお気軽にご相談ください。
相続は誰に相談するのか?
相続問題を取り扱うことをうたう士業や会社は非常に多いと思います。税金なら税理士、遺産分割でトラブルになったら弁護士、登記は司法書士、更には信託銀行、保険会社、コンサルティング会社など・・・。結局誰に相談すればいいのでしょうか?あくまで私の場合ですが、自分の専門分野でないことも、現在の問題点を洗い出し適切な他の専門家の紹介などで皆様のお役に立ちたいと考えております。このように士業や会社にはそれぞれスタンスがあると思いますので、皆様にあった相談しやすい専門家をお選びください。
下北沢司法書士事務所 竹内友章
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