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仮登記

2017-06-12

相続した不動産に「仮登記」が…ご安心ください、解決への道筋を解説します

相続の手続きを進める中で、初めて目にする登記簿謄本(登記事項証明書)。そこに「仮登記」という見慣れない言葉を見つけて、不安な気持ちになっていませんか?「この不動産は本当に自分のものになるのだろうか…」「何か面倒なことに巻き込まれるのでは…」と、心配が頭をよぎっているかもしれません。

でも、ご安心ください。相続した不動産に仮登記が設定されていることは、決して珍しいことではありません。そして、その問題を解決するための手続きは、きちんと法律で定められています。

この記事では、不動産と相続の専門家である司法書士が、仮登記の正体から、放置した場合のリスク、そして具体的な抹消手続きのステップまで、一つひとつ丁寧に解説していきます。この記事では、仮登記の基本、放置した場合のリスク、抹消手続きの一般的な流れを整理し、ご自身の状況で確認すべき点を把握できるよう解説します。

当事務所の代表は、心理カウンセラーの資格も有しており、法的な問題解決だけでなく、皆様の不安な心に寄り添うことを何よりも大切にしています。まずは知識を得て、心を落ち着けることから始めましょう。

そもそも「仮登記」とは?わかりやすく解説します

「仮登記」という言葉は、少し難しく聞こえるかもしれませんが、その本質は「将来行われる『本登記』の順番を確保しておくための予約」のようなものです。権利の変動があった際、すぐに本登記ができない何らかの事情がある場合に、暫定的に登記簿に記録しておく制度、と考えるとイメージしやすいでしょう。

この仮登記には、大きく分けて2つの種類があり、それぞれ性質が異なります。ご自身の状況がどちらに近いのかを知ることが、解決への第一歩となります。

なぜ仮登記が存在するの?目的と効力

仮登記の最大の目的は、「順位保全」にあります。仮登記自体には、その不動産の所有権を第三者に主張する力(対抗力)はありません。しかし、将来的に条件が整い「本登記」をすると、仮登記をした時点にさかのぼって権利の順位が確保される、という強力な効力を持っています。

例えば、AさんがBさんに不動産を売る約束(仮登記)をした後、Bさんが本登記をする前に、AさんがCさんにも同じ不動産を売って本登記をしてしまったとします。この場合でも、Bさんが後から本登記をすれば、Cさんよりも先に権利を取得していたことになるのです。

仮登記の順位保全効力を示す図解。後から本登記をしても、仮登記の時点に順位がさかのぼる仕組みを説明しています。

また、過去には現在とは異なる目的で仮登記が利用されていた背景もあります。例えば、金融機関から融資を受ける際の抵当権設定登記にかかる登録免許税を節約するために、代わりに仮登記が使われることがありました。さらに、古い登記記録の中には、お金を貸した側が「万が一返済が滞ったら、不動産の所有権をこちらに移す」という担保のような目的で、所有権移転の仮登記が設定されているケースも散見されます。相続した古い不動産に謎の仮登記が残っている場合、こうした歴史的背景が関係している可能性も考えられます。

相続で問題になることが多い「2つの仮登記」

仮登記には不動産登記法上、1号仮登記と2号仮登記の2種類があります。

1号仮登記(物権的請求権保全の仮登記)
これは、実質的には権利変動が起きているものの、登記識別情報(権利証)を紛失したなど、申請に必要な書類が揃わない場合に利用されます。権利そのものは存在するため、比較的解決しやすいケースが多いです。

2号仮登記(債権的請求権保全の仮登記)
こちらは、将来的に権利を取得する「権利」を保全するための仮登記です。例えば、「農地を宅地に転用する許可が下りたら所有権を移転する」といった売買予約や、前述した「借金を返せなかったら代わりに不動産で支払う」という代物弁済予約などがこれにあたります。相続の場面で問題となりやすいのは、まさにこの2号仮登記、特に「所有権移転請求権仮登記」が長年放置されているケースです。

このテーマの全体像については、不動産の権利についてで体系的に解説しています。

仮登記を放置するのは危険!起こりうる3つのリスク

「昔の登記みたいだし、そのままでも大丈夫だろう」と考えるのは非常に危険です。仮登記を放置すると、主に3つの大きなリスクが考えられます。

  1. ある日突然、不動産の権利を失う可能性
    これが最大のリスクです。仮登記権利者が本登記を実行すると、あなたは不動産の所有権を失ってしまいます。何十年も前の仮登記であっても、法律上の権利が消滅していなければ、このリスクは存在し続けます。
  2. いざという時に売却や担保設定ができない
    不動産を売却しようとしたり、融資を受けるために担保に設定しようとしても、仮登記が付いている物件は買い手や金融機関から敬遠されます。事実上、資産として活用することが非常に困難になるのです。
  3. 子や孫にさらに大きな負担を残してしまう
    問題を先送りすると、時間の経過とともに権利関係者が増え、解決はさらに複雑になります。仮登記の相手方が亡くなり、その相続人が何人もいる…という状況になれば、話し合いもままなりません。あなたが今解決しなければ、将来、あなたのお子さんやお孫さんが、より重い負担を背負うことになってしまうのです。

相続した不動産の仮登記を抹消する3つのステップ

では、具体的にどのように仮登記を抹消すればよいのでしょうか。手続きは大きく3つのステップに分かれます。この流れを理解することで、全体像が見え、落ち着いて行動できるようになります。

STEP1:まずは相続登記を完了させる

仮登記の抹消手続きを進める大前提として、まずその不動産の名義を亡くなった方(被相続人)からあなた(相続人)へ変更する「相続登記」を完了させる必要があります。なぜなら、法的に不動産の所有者にならなければ、仮登記の名義人に対して「抹消してください」と要求する当事者としての立場に立てないからです。

2024年4月からは相続登記が義務化されており、いずれにせよ必要な手続きです。遺産分割協議で誰が不動産を相続するかを決め、必要書類を集めて法務局に申請しましょう。

参照:相続登記の申請義務化

STEP2:仮登記名義人(またはその相続人)と連絡・協議する

無事にあなたの名義になったら、次は仮登記の名義人(仮登記権利者)と連絡を取るステップです。登記簿謄本に記載されている氏名と住所を手がかりに、手紙を送るなどして接触を試みます。

しかし、古い仮登記の場合、名義人ご本人がすでに亡くなっている可能性が非常に高いでしょう。その場合は、戸籍謄本を遡ってその方の相続人を特定する「相続人調査」が必要になります。この作業は、古い戸籍の解読など専門的な知識が求められ、時間も手間もかかる大変な作業です。

無事に連絡が取れたら、仮登記が設定された経緯を確認し、現在はその原因が消滅していることなどを説明して、抹消手続きへの協力を依頼します。より詳しい手順については、相続人への連絡方法をご覧ください。

司法書士に戸籍調査について相談する夫婦。複雑な書類を前に、専門家から説明を受けている様子。

STEP3:法務局へ仮登記抹消登記を申請する

相手方の協力が得られたら、いよいよ最終ステップ、法務局への申請です。仮登記の抹消は、仮登記名義人が単独で申請できるほか、仮登記名義人の承諾がある場合には、現在の不動産所有者など登記上の利害関係人が単独で申請することもできます。実務上は、仮登記名義人またはその相続人の協力を得て、必要書類を整えたうえで法務局へ申請します。

主な必要書類は以下の通りです。

  • 登記申請書
  • 登記原因証明情報(抹消に合意したことがわかる書類)
  • 仮登記名義人の登記識別情報(または登記済証)
  • 仮登記名義人の印鑑証明書
  • あなたの実印と本人確認書類

手続きが完了すると、登記記録上の仮登記が抹消されます。申請内容に応じて登記完了証などを確認し、関係書類は大切に保管してください。なお、手続きには登録免許税として、不動産1個につき1,000円がかかります。

【お悩み別】仮登記の抹消ができない場合の対処法

「手続きの流れは分かったけれど、相手と連絡が取れなかったらどうしよう…」そんな不安をお持ちの方も多いと思います。実際、仮登記の抹消はスムーズにいかないケースも少なくありません。ここでは、よくあるお悩みのケース別に、専門家としての対処法をお伝えします。

ケース1:仮登記名義人が行方不明・連絡が取れない

前述の通り、まずは戸籍をたどって相続人を徹底的に調査するのが第一歩です。しかし、調査を尽くしても相続人が見つからない、あるいは相続人全員が相続放棄をしている、といった場合があります。

このように通常の連絡や調査では手続きが進められない場合には、「相続財産清算人」の選任を家庭裁判所に申し立てるという方法があります。選任された清算人が、行方不明の相続人に代わって抹消手続きの相手方となってくれるのです。ただし、この手続きは予納金などの費用がかかり、時間も要するため、最終手段の一つと考えるのがよいでしょう。

ケース2:名義人や相続人が抹消に協力してくれない

連絡は取れたものの、「よく分からない」「協力する義理はない」といった理由で、抹消手続きに協力してもらえないケースもあります。話し合いでの解決が難しい場合の最終手段が、「仮登記抹消登記請求訴訟」です。

裁判所に訴えを起こし、仮登記の原因となった権利がすでに時効で消滅していることなどを主張・立証します。そして、裁判で勝訴判決を得ることができれば、相手の協力がなくても、あなた一人で仮登記の抹消手続き(単独申請)が可能になります。訴訟は負担を伴う手続きですが、話し合いで解決できない場合に、法的な判断を得るための選択肢となります。どのような専門家に依頼すべきかについては、司法書士の視点から見た弁護士の選び方も参考にしてください。

ケース3:相続人が多数いて、全員の協力が得られない

世代をまたいで相続が繰り返された結果、仮登記名義人の相続人が多数となり、数十人にのぼるという複雑なケースもあります。こうなると、一人ひとりに連絡を取り、事情を説明して実印と印鑑証明書をもらう、という作業は現実的ではありません。

このような場合も、まずは主要な相続人と交渉を試みますが、協力が得られない人が一人でもいれば、最終的には相続人全員を相手取って訴訟を起こすことを検討せざるを得ません。関係者が多い場合は、早い段階で専門家に相談し、必要な調査や手続きの進め方を確認することが重要です。特に、多数の相続人がいるケースでは、専門家のサポートが不可欠といえるでしょう。

相続した不動産の登記簿を見て悩む女性。仮登記の抹消ができずに困っている状況を象徴しています。

また、そもそも相続人と連絡が取れないという状況自体が、大きな課題となります。

複雑な仮登記問題は、司法書士への相談が解決への近道です

ここまでご覧いただいたように、仮登記の抹消手続き、特に相続が絡むケースは非常に専門的で複雑です。古い戸籍の収集・解読から始まり、会ったこともない多数の関係者との交渉、そして法的な知識を要する書類の作成まで、これらすべてを個人で対応するのは、時間的にも精神的にも大きな負担となります。

私たち司法書士は、不動産登記のプロフェッショナルです。ご依頼いただければ、以下のようなサポートが可能です。

  • 戸籍調査による正確な権利関係の把握
  • 法令上認められる範囲での相手方への連絡、必要書類の案内・やり取り
  • 法務局に提出する登記申請書の作成と申請代行
  • 必要に応じた訴訟手続きのサポート(提携弁護士と連携)

専門家に相談することで、必要な手続きや今後の見通しを整理しやすくなります。当事務所では、単なる手続きの代行にとどまらず、皆様の心に寄り添い、最善の解決策を一緒に見つけていくことを信条としています。

初回のご相談は無料です。仮登記が残っている不動産を相続した場合は、登記記録や関係資料を確認したうえで、お気軽にご相談ください。状況に応じた手続きの進め方をご案内します。

まずは無料相談から、あなたの状況をお聞かせください。下北沢司法書士事務所が、あなたと一緒に問題解決に取り組みます。

遺言が無効になってしまうケース

2017-06-05

遺言が無効になる主なケースと確認すべきポイント

残されたご家族への最後のメッセージであり、愛情のしるしでもある遺言書。しかし、その大切な想いが、ほんの些細な形式的な不備によって、遺言としての法的効力が認められない場合があります。

特に、手軽さから選ばれがちな「自筆証書遺言」には、知らず知らずのうちに無効と判断される原因になりやすい不備が複数あります。「自分で書いたこの遺言は、本当に大丈夫だろうか?」「親族が残したこの遺言書は、法的に有効なのだろうか?」そんな不安を抱えている方も少なくないでしょう。

遺言が無効になれば、故人の意思は実現されず、相続人同士の紛争につながる可能性があります。この記事では、司法書士という専門家の視点から、遺言が無効になってしまう具体的なケースと、そうした事態を避けるために検討したい対策を分かりやすく解説します。あなたの、そしてご家族の未来を守るための知識を、ここでお伝えします。

遺言書を作成する理由について、さらに詳しく知りたい方は、遺言書を作成する必要性もご参照ください。

自筆証書遺言でやりがちな無効4大ポイント

公正証書遺言と違い、自筆証書遺言はご自身で作成するため、法律で定められた厳格な要件を満たしていないケースが後を絶ちません。ここでは、特に無効の原因となりやすい4つのポイントを、実務上の注意点を交えて詳しく見ていきましょう。

遺言書の様式に関する詳細なルールについては、法務省のウェブサイトでも確認することができます。

参照:遺言書の様式等についての注意事項(法務省)

①全文手書きの原則:PC作成や代筆は無効

自筆証書遺言は、その名の通り「全文を、遺言者本人が手書き(自書)する」ことが大原則です。これは、筆跡によって遺言者本人の意思であることを確認し、偽造を防ぐための極めて重要な要件です。

そのため、パソコン(ワープロ)で作成した遺言書や、たとえ本人の意思であっても他人が代筆したものは、原則として無効となります。

自筆証書遺言の有効な例と無効な例を比較した図解。有効な例として手書き、正確な日付、氏名、押印が挙げられ、無効な例としてPC作成、日付不備、署名・押印漏れが挙げられている。

「病気で手が震えてうまく字が書けない」という場合に、他人が手を添えて補助すること(添え手)が認められた判例もあります。しかし、どこまでが有効な補助で、どこからが無効な代筆と判断されるかは非常に専門的で難しく、争いの原因になりやすいのが実情です。もしご自身で書くことに不安がある場合は、無理をせず、初めから公証人が作成する公正証書遺言を選択するのが賢明な判断と言えるでしょう。

なお、法改正により、相続財産の詳細を記した「財産目録」については、パソコンでの作成や、通帳のコピー・登記事項証明書などを添付することが認められるようになりました。ただし、その目録の全てのページに署名と押印が必要です。より具体的な方式については、相続法改正のポイント-自筆証書遺言の方式についてで詳しく解説していますので、ご参照ください。

②日付の欠落・不備:「○月吉日」はNG

遺言書には、作成した「年月日」を正確に手書きで記載する必要があります。日付は意外と忘れがちなポイントですが、これが抜けているだけで遺言書全体が無効になってしまいます。

なぜ日付がそれほど重要なのでしょうか。理由は主に二つあります。

  1. 遺言書を作成した時点で、遺言者に十分な判断能力(遺言能力)があったかを判断するため。
  2. もし複数の遺言書が見つかった場合に、どちらが新しい(=有効な)ものかを確定させるため。

日付はゴム印や日付スタンプの使用は認められず、必ず手書きでなければなりません。また、「令和〇年7月吉日」といった、日付が特定できない記載も無効です。過去の判例(最判昭和54年5月31日)でも、「昭和41年7月吉日」と記載された遺言書が無効と判断されており、いかに厳格に特定性が求められているかが分かります。

③氏名の記載漏れ:戸籍上の氏名が最も確実

当然のことながら、誰が書いた遺言書なのかを明確にするため、氏名も手書きで記載する必要があります。

過去には、ペンネームや通称でも、様々な状況から本人だと特定できれば有効とされた判例もあります。しかし、これはあくまで例外的なケースです。相続手続きでは、亡くなった方の戸籍謄本と遺言書を照合して本人確認を行います。その際に、通称などでは本人であることの証明が難しくなり、手続きが滞ったり、相続人間の争いの原因になったりする可能性があります。

無用なトラブルを避けるためにも、戸籍に記載されている正式な氏名を、正確に記載すべきです。これが最も確実で間違いのない方法です。

④押印忘れ:認印でも有効だが実印を推奨

最後に、署名の横に印鑑を押す「押印」も必須の要件です。押印がなければ、たとえ他の要件をすべて満たしていても遺言書は無効となってしまいます。

法律上は認印や、極端な例では拇印(指印)でも有効とされています。しかし、実務家の立場からは、実印を使用し、印鑑登録証明書を遺言書に添付しておくことを強くお勧めします。なぜなら、実印は市区町村に登録された公的な印鑑であり、本人の意思に基づいて押印されたことの証明力(証拠としての価値)が格段に高いからです。将来、「この印鑑は本人のものではない」といった疑義が生じるリスクを最小限に抑え、紛争を未然に防ぐ効果が期待できます。

遺言書の種類について、さらに詳しく知りたい方は、遺言書の種類もご参照ください。

公正証書遺言でも安心できない?無効になる意外な落とし穴

「それなら、公証人が作成する公正証書遺言なら安心できる」と思われるかもしれません。確かに、公証人が関与するため、これまで述べたような形式的な不備で無効になることはまずありません。

しかし、公正証書遺言であっても無効になるケースが存在します。それが「遺言能力の欠如」を理由とする場合です。

遺言能力とは、遺言の内容を正しく理解し、その結果どうなるかを判断できる能力のことです。認知症が進行しているなど、遺言者にこの能力がなかったと判断されると、たとえ公正証書であっても遺言は無効とされてしまうのです。

公証役場で公正証書遺言を作成する高齢男性。公証人から説明を受け、遺言能力の重要性について考えている様子。

実際に、司法書士が関与して作成された公正証書遺言が、後に遺言者の認知症を理由に「遺言能力がなかった」として無効と判断された裁判例(東京高裁平成22年7月15日判決)もあります。この事例は、専門家が立ち会ったからといって、遺言能力の問題が常に解消されるわけではない、という厳しい現実を示しています。

このことから分かるのは、形式を整えるだけでなく、遺言者がしっかりとした判断能力を持っている状態で遺言を作成することの重要性です。この判断は非常にデリケートであり、家族信託はなぜ失敗?令和3年判例に学ぶ意思確認の重要性がいかに重要であるかを物語っています。

無効な遺言を放置した場合に起こり得る3つの問題

もし、残された遺言書が無効だと判断された場合、具体的にどのような事態が待ち受けているのでしょうか。単に「相続争いになる」という言葉だけでは済まされない、ご家族に生じる可能性がある3つの問題を確認します。

  1. 遺産分割協議が必須になり、手続きが長期化する
    遺言が無効になると、相続は法律の定めに従うことになり、相続人全員で遺産の分け方を話し合う「遺産分割協議」が必須となります。相続人の中に一人でも合意しない人がいれば協議は成立せず、家庭裁判所での調停や審判へと移行し、解決までに数年を要することも珍しくありません。
  2. 想定外の相続人が出現し、話し合いが難航する
    遺産分割協議には、法律上の相続人全員が参加しなければなりません。長年連絡を取っていない親族や、存在すら知らなかった親族(前妻の子など)が相続人として現れる可能性もあります。疎遠な関係の当事者が加わることで、感情的な対立が生まれ、話し合いはさらに困難を極めるでしょう。
  3. 不動産が「塩漬け」状態になる
    遺産分割協議がまとまらないと、不動産は相続人全員の共有名義のままとなります。この状態では、売却や担保設定など共有物の処分に当たる行為には共有者全員の同意が必要となり、賃貸に出す場合も契約内容や期間によって必要な同意の範囲を確認する必要があります。結果として、不動産の活用が進まず、固定資産税や管理費用の負担が継続することがあります。具体的な多数の相続人がいる不動産の売却は、非常に複雑な手続きを要します。

故人の想いを実現するために残したはずの遺言が、かえって家族間の紛争や手続きの長期化を避けるためにも、遺言の有効性を事前に確認しておくことが重要です。

遺言の有効性に疑問を感じたら?司法書士が示す最初のステップ

「この遺言、もしかしたら無効かもしれない…」そう感じたとき、どう行動すればよいのでしょうか。まず大切なのは、感情的に他の相続人と対立する前に、冷静に専門家へ相談することです。

私たち司法書士は、遺言の有効性に関する問題に対し、次のようなサポートを提供できます。

  • 遺言書の形式チェック
    まずは、法律で定められた要件を満たしているか、専門家の目で厳密にチェックします。形式不備の有無を正確に判断することが、すべての始まりです。
  • 遺言作成時の状況調査
    遺言能力が争点になる場合、遺言が作成された当時のご本人の心身の状態や、周囲の状況などを調査する必要があります。ご家族からお話を伺ったり、医療記録や介護記録を参考にしたりしながら、遺言能力を判断するための材料を集めるお手伝いをします。
  • 法的手続きのサポートと専門家連携
    相続人間での話し合いで解決しない場合は、家庭裁判所での調停や、地方裁判所などでの遺言無効確認訴訟といった法的手続きに進むことがあります。司法書士は、これらの手続きに必要な書類作成をサポートします。また、代理人として交渉や訴訟活動が必要な場合は、弁護士などの他士業と連携し、最適な解決策をご提案します。

一人で悩まず、まずは専門家の客観的な意見を聞くことが、問題をこじらせずに解決へと向かうための重要な第一歩です。

遺言書の有効性に疑問を感じ、司法書士に相談する女性。専門家が親身に話を聞いている。

有効性に配慮した遺言作成は司法書士へ。下北沢司法書士事務所が選ばれる理由

故人の大切な想いを確実に未来へ繋ぎ、残されたご家族が円満に相続手続きを進められるようにするためには、遺言書作成の段階から専門家である司法書士に相談することは、有効性に配慮した遺言を作成するための有力な方法です。

下北沢司法書士事務所では、単に法律の要件を満たすだけの書類作成に留まらない、お客様一人ひとりに寄り添ったサポートを心がけています。

  • 不動産実務経験を活かした提案
    代表司法書士は不動産業界での実務経験が豊富です。相続財産に不動産が含まれるケースでは、将来の相続登記や売却までを見据え、将来のトラブルを予防する観点から遺言内容をご提案します。
  • 心理カウンセラーの資格を持つ司法書士
    相続や遺言は、ご家族の歴史やデリケートな人間関係が深く関わる問題です。代表は心理カウンセラーの資格も有しており、法律的な問題だけでなく、お客様が抱える不安や心の葛藤にも丁寧に耳を傾け、安心してご相談いただける環境を整えています。
  • 気軽に話せる無料相談
    「何から話せばいいか分からない」「費用が心配」という方でも、安心して最初の一歩を踏み出せるよう、無料相談を実施しています。まずはお客様のお話をじっくり伺うことを最優先に、問題解決への道筋を一緒に考えます。当事務所の料金一覧についても、事前に丁寧にご説明いたしますのでご安心ください。

大切なご家族のために、そしてご自身の想いを確かに残すために。遺言書の作成や、その有効性について少しでもご不安があれば、どうぞお気軽に下北沢司法書士事務所までお問い合わせください。あなたの心に優しく寄り添い、状況に応じた解決策をご提案します。

株式会社-残余財産の分配請求権

2017-06-01

株式会社は当然、株を発行しますが同一の会社において数種類の株式を発行することも可能です。「普通株式と比較して、どのように違う株式を発行できるか?」について会社法108条において、9種類定められています。その中の1つ「残余財産分配請求権の優先株式」。いつか会社を清算するときに、普通株式の株主より優先して残余財産の分配を受けられます。ちょっとややこしいですが、①創業して②会社が成長し出資者が登場③他の会社に、自社を売却する(吸収合併される)という展開を想定してみましょう。1人で出資して資本金100万円の会社を創業したとしても、出資者が現れる時は企業価値が10倍の1000万円になっているかもしれません。新たな出資者は創業者の10倍のお金を出して株式を買うことになります。じゃあこの会社を「1500万で買います」という方が現れたらどうでしょうか?創業者と出資者で半分づつ株式をもっていたらそれぞれ750万円づつお金を手にします。創業者は「750万円ー100万円」で600万円得します。しかし、出資者は「750万円ー1000万円」で250万円損します。これでは出資者は売却に同意しません。しかし出資者の手にする株式が「会社を清算するときはまずは、1000万円優先して配当を受ける。残りの財産を普通株式の株主と1対1で分ける」との内容だったらどうでしょうか?まずは出資者が投資額の1000万円を手にし、残った500万円を2人で分けます。創業者は500万の半分の250万円から創業時に投資した100万円をひいて150万円のプラス、出資者は250万円のプラスなので創業者も出資者も得をすることになりますね.これなら話がまとまるかも知れません。仮定に仮定を重ねてしまってますが、こんなことも起こりえます。出資者と投資契約を結ぶときは契約内容を良く擦り合わせる必要があると思います。

 

仕事上、よくいく法務局世田谷出張所の写真です。この建物の2階に法務局がありますが、新しくとても綺麗な建物です。

下北沢司法書士事務所 竹内友章

遥か昔の抵当権

2017-05-27

時々、ずっと前の抵当権が登記簿に残ったままということがあります。昭和初期とかもしかしたら明治とかもあり得るかもしれません。登記簿の抵当権の欄には「この不動産はいくらの借金のために担保にとられているか?」ということが書かれます。普通は何千万とか何億になるのでしょうが、このずっと昔の抵当権(休眠抵当権)は数千円とかもありえます。遥か昔で貨幣価値が今と全然違うからです。たいした額じゃないので気にしない、別にそのままでも困らない、そもそも抵当権の存在に気が付かない・・・ということで大抵の方はそのままにしておくでしょう。ところが売却するときは商慣習上、抵当権を消さないと売却できないので、そういうときになって初めて困るのだと思います。普通、抵当権を消すときには「お金を貸した人」の協力がいりますが、どこにいるか分からないし、第一ご存命とも思えない・・・。解決方法としては裁判所を利用して判決をとってしまう、「休眠担保権の抹消」といって少し特殊な手続きを使うなどいくつかやりかたがあります。お金を返したことが証明ができるのかなど、状況によって適した制度を選んでいくことになりますがいずれにしても時間がかかります。「まずい、売買の日に間に合わない!」とならないようもしも気が付いたら早めにご相談ください。

昨日、早歩きで法務局まで歩いてたらほんの少し息があがった感じがしました。「リーサルウエポン」という映画でメル・ギブソンが体力の衰えを感じてショックうけるシーンを思い出しました・・・。メルさんは犯人と格闘してですけど、私歩いただけですからね・・・。

下北沢司法書士事務所 竹内友章

 

事業年度の決め方

2017-05-23

会社設立時に決めなければならないことに、事業年度があります。4月から3月あるいは1月から12月が多いと思いますが、いつでも会社の任意の時期に決められます。ただ、事業年度の終わりが決算日になるので、その点を踏まえて決めた方がいいと思います。例えば、①決算月から2か月以内が確定申告の期限なので、繁忙期と確定申告の時期をずらし忙しくなりすぎないようにする。②在庫を抱える仕事内容であれば、棚卸作業に備えて在庫が少ない時期を選ぶ③1期目をなるべく長くするようにする(会社を5月に設立して6月が決算月だと、設立してすぐ確定申告なので大変です。また消費税免税事業者である期間を長くとるために1期目を長くした方がいい場合も考えられます)ざっとこんなポイントがあげられます。相談しながら決めていきましょう。

http://start-setagaya.com/

上のリンク、当事務所が参加する会社設立パッケージのサイトです。税理士さんも参加しています。

下北沢司法書士事務所 竹内友章

 

 

 

 

 

法定相続情報証明制度

2017-05-18

5月29日(月)からはじまる「法定相続情報証明制度」。亡くなられた方の戸籍一式をそろえて、法務局に提出すると法定相続関係を法務局が提出してくれる制度です。司法書士以外の各士業も代理できますが、不動産の相続登記と用意する書類がかなり重なります。下北沢司法書士事務所では、相続登記をご依頼の方は、この制度の代理も当面の間サービスで代理します。法務局に支払う手数料などもかかりません。また「不動産はないけどこの制度は利用したい」という場合、亡くなられたの戸籍を集めるが大変かと思います。そういった場合も、司法書士が戸籍を代理取得することが可能です。よろしければお問い合わせください。

「法定相続情報証明制度」の説明文  http://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00284.html

絵を描いた人のプロフィール https://www.creema.jp/c/yuninona

なんで子供ってアイス買ったことママに報告しちゃうんでしょうね。また怒られました。

下北沢司法書士事務所 竹内友章

 

 

 

 

 

創業・事業承継の補助金

2017-05-16

創業・事業承継をお考えの方へ。補助金活用の第一歩、踏み出せていますか?

これから会社を立ち上げよう、あるいは大切な事業を次の世代へ引き継ごうとお考えのとき、資金計画は大きな課題の一つではないでしょうか。「返済不要の補助金が使えるらしいけど、種類が多すぎて何から調べればいいか分からない」「応募要件が複雑で、自分が対象になるのか判断できない」そんな声もよく耳にします。情報が溢れているからこそ、かえって混乱し、貴重な一歩を踏み出せずにいる方も少なくありません。

この記事では、創業や事業承継で補助金を検討する際に確認したい基本事項を整理します。単に制度を解説するだけでなく、創業や事業承継という人生の大きな転機において、補助金をどう活用できるのか、その具体的な道筋を明らかにします。私たち下北沢司法書士事務所は、これまで多くの起業家や経営者様の法務サポートに携わってきました。司法書士が、複雑な制度の内容を一つひとつ整理し、必要な手続きを検討する際のサポートを行います。まずは、どのような選択肢があるのか、一緒に見ていきましょう。

相続と事業承継に関するより深い情報も、ぜひご参照ください。相続と事業承継

まずは知っておきたい代表的な2つの補助金

創業や事業承継で活用できる補助金は数多くありますが、まずは代表的な2つの柱を理解することから始めましょう。それは「新たに事業を始める人」を応援する補助金と、「事業を引き継ぐ人」を応援する補助金です。ご自身の状況がどちらに近いか考えながら読み進めてみてください。

創業補助金と事業承継補助金の比較図。創業補助金は「これから事業を始める人」向け、事業承継補助金は「事業を引き継ぐ人」向けであることを示している。

① 新たに事業を始める方向け「創業補助金」

「創業補助金」は、その名の通り、新しいビジネスアイデアで起業する方を後押しするための制度です。事業をゼロから立ち上げる時期は、オフィスや店舗の家賃、設備の購入費、広告宣伝費など、何かと物入り。こうした初期投資の負担を和らげ、事業が軌道に乗るまでを経済的にサポートすることを目的としています。

代表的なものに「地方創生起業支援事業(起業支援金)」があります。これは、地域の課題解決に繋がるような事業を支援する制度で、補助率は経費の2分の1、上限額は最大200万円程度となるケースが多いです。新たな挑戦を始める創業者にとって、非常に心強い味方となってくれるでしょう。こうした制度を活用することで、会社設立時の税金の節約だけでなく、事業そのものの資金調達も有利に進められる可能性があります。

【参考情報】
より詳しい情報については、以下の公式サイトで最新の公募要領をご確認ください。
地方創生サイト:起業支援金

② 事業を引き継ぐ方向け「事業承継補助金」

一方、「事業承継補助金」は、後継者不足に悩む中小企業の事業を、次世代へ円滑に引き継ぐための制度です。単に事業を引き継ぐだけでなく、その機会を捉えて新しい挑戦(経営革新)を行うことを力強く後押しします。事業承継(会社の引継ぎ)は、司法書士が専門性を発揮できる分野でもあります。

代表例である「事業承継・M&A補助金」では、事業を引き継いだ後の設備投資や販路開拓、M&A(企業の合併・買収)にかかる専門家への依頼費用などが対象となります。補助率は類型により3分の1から3分の2、補助上限額は最大2,000万円とされています。事業の歴史を守りつつ、未来に向けた新たな一歩を踏み出す経営者にとって、大きな支えとなる制度です。

【参考情報】
制度の詳細や最新情報は、公式サイトで確認することをおすすめします。
事業承継・M&A補助金事務局サイト

私は対象?創業補助金の応募要件セルフチェック

「魅力的な制度なのは分かったけれど、果たして自分は対象になるのだろうか?」ここが一番気になるところですよね。公募要領の難しい言葉を読み解くのは大変です。そこで、多くの創業補助金で共通して問われるポイントを、簡単なチェックリストにまとめました。ご自身の計画と照らし合わせながら、確認してみてください。

チェック1:事業を開始する場所はどこですか?

多くの創業補助金は、地域経済の活性化を大きな目的としています。そのため、「どこで事業を始めるか」は非常に重要な要件です。

特に「地方創生起業支援事業」では、原則として東京圏(東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県)以外で起業することが条件となっています。これは、地方での新しいビジネスの創出を促すためです。ただし、東京圏内であっても「条件不利地域」に指定されているエリアであれば対象となる例外もあります。まずは、ご自身の創業予定地がどの地域に該当するのかを確認してみましょう。自治体によっては、独自の創業融資制度を設けている場合もありますので、あわせて調べてみることをお勧めします。

チェック2:どのような事業を計画していますか?

補助金は、どんな事業でも支援対象となるわけではありません。国の政策目的に合致している必要があります。特に創業補助金では、「地域の課題解決に資する社会的事業」というキーワードが非常に重要になります。

例えば、以下のようなテーマが挙げられます。

  • 子育て支援や地域コミュニティの活性化に繋がる事業
  • 地域の特産品や観光資源を活用した新しいサービス
  • 高齢者など、いわゆる買い物弱者を支援する事業
  • 地域のまちづくりや活性化を推進する事業

あなたのビジネスプランが、どのように地域社会に貢献できるのか。その「社会性」や「地域貢献性」が、審査において高く評価されるポイントになります。

チェック3:申請するのはいつのタイミングですか?

申請のタイミングは、応募資格を左右する非常に重要な問題です。特に、法人設立の登記や個人事業の開業届を出す「前」か「後」かは、注意深く確認しなければなりません。

多くの創業補助金では、「国の交付決定日以降、補助事業期間が完了する日までに設立・開業を行うこと」が要件とされています。つまり、フライングで会社を作ってしまうと対象外になる可能性があるのです。一方で、すでに開業・設立済みの場合でも、「創業後5年未満」などを対象とする補助金も存在します。ご自身の状況に合わせて最適な制度を選ぶことが大切です。会社設立時の定款記載事項を検討する段階で、補助金の申請スケジュールも視野に入れておくとスムーズに進められるでしょう。

司法書士事務所で相談する若い起業家。司法書士が親身にアドバイスしている。

事業承継補助金の申請要件、3つの重要ポイント

次に、事業承継補助金の申請を考える上で、絶対に押さえておきたい3つの重要ポイントを解説します。こちらも複雑な要件を分かりやすく整理しましたので、ご自身の状況と照らし合わせてみてください。円滑な相続と事業承継を実現するためにも、ぜひ参考にしてください。

ポイント1:承継の形態(誰が、誰から引き継ぐか)

まず、どのような形で事業を引き継ぐかがポイントです。事業承継補助金は、多様な承継の形に対応しています。

  • 親族内承継:親から子へなど、親族間で事業を引き継ぐケース
  • 従業員承継:会社の役員や従業員が事業を引き継ぐケース
  • M&A:社外の第三者が事業を引き継ぐケース

現在の事業承継・M&A補助金では、補助対象となる取組や経費に応じて「事業承継促進枠」「専門家活用枠」「廃業・再チャレンジ枠」「PMI推進枠」などに分かれています。まずはご自身のケースがどの類型に当てはまるのかを確認することが第一歩です。事業承継では、名義株式の整理といった法的な課題も生じやすいため、専門家のアドバイスが役立ちます。

ポイント2:承継のタイミング(未来の承継も対象に)

「もう承継が終わっていないと申請できないのでは?」と誤解されがちですが、実は未来の承継も対象になる場合があります。

例えば、「5年以内に親族内承継や従業員承継を予定している」後継者候補でも申請できる制度があります。これは、まだ準備段階にある方も含めて、早い時期から計画的に事業承継を進めてもらうための支援です。ただし、制度上定められた期限までに事業承継を完了する計画が必要となるため、これから承継を考えている方にとっては非常に心強い制度と言えるでしょう。将来を見据え、有限会社から株式会社への変更などを検討するのも一つの戦略です。

ポイント3:承継後の取り組み(経営革新など)

事業承継補助金で最も重視されるのが、「事業承継をきっかけとした、新しい取り組み」です。単に事業を引き継ぐだけでは対象にならず、その後の成長戦略が問われます。

具体的には、以下のような「経営革新」が求められます。

  • 生産性を向上させるための新しい設備投資
  • 時代に合わせた新商品や新サービスの開発
  • 新たな顧客を獲得するための販路開拓

そして、これらの取り組みは「後継者が主導して行う」ことが要件となる場合が多いです。これは、後継者が自身のビジョンを実現し、会社をさらに発展させていくことを応援するための制度だからです。補助金は、守りのためだけでなく、「攻め」の経営にも大いに活用できるのです。事業承継時には、株主分散によるリスクを解消し、経営の自由度を高めておくことも重要になります。

【重要】補助金の併用はできる?できない?基本ルールを解説

「もし使えるなら、複数の補助金を組み合わせて、もっと有利に資金調達したい」と考えるのは自然なことです。結論から言うと、補助金の併用は「条件付きで可能」です。しかし、そこには絶対に守らなければならない大原則があります。ここでそのルールをしっかり理解しておきましょう。

補助金の併用ルールについての図解。同じ経費に複数の補助金は使えないが、経費を分ければ併用可能であることを示している。

大原則:「同じ経費」に複数の補助金は使えない

補助金併用の最も重要なルールは、「一つの経費に対して、複数の補助金を重複して申請することはできない」というものです。これは、公的な資金を公平に配分するための大原則です。

NG例:「Aという機械の購入費500万円」に対して、国の補助金と県の補助金を両方申請する。

これはできません。しかし、経費の使い道を明確に分ければ話は変わってきます。

OK例:「Aという機械の購入費」には国の補助金を、「Bというシステムの導入費」には県の補助金を申請する。

このように、どの経費にどの補助金を使うかを明確に切り分けることができれば、併用は可能になります。

賢い組み合わせ方:目的が違えば併用できるケース

大原則を踏まえた上で、より戦略的に併用を考えるなら、「事業の目的」に着目するのがポイントです。目的が異なる事業であれば、それぞれに別の補助金を活用できる可能性があります。

例えば、こんな組み合わせが考えられます。

  • 目的A「生産性向上」:ものづくり補助金を活用して、新しい製造機械を導入する。
  • 目的B「販路開拓」:小規模事業者持続化補助金を活用して、新商品のPR用ウェブサイトを制作する。

このように、事業計画全体を確認し、各施策の目的に合わせて補助金の対象経費を整理することで、自己負担を軽減できる可能性があります。

国の補助金と自治体の補助金の組み合わせ

併用戦略の中でも特に有効なのが、「国」「都道府県」「市区町村」といった、階層の違う機関が提供する補助金を組み合わせる方法です。

国の大きな補助金(例:事業再構築補助金)で大規模な設備投資を行い、同時に、より地域に密着した市区町村の補助金(例:〇〇市創業支援補助金)で店舗の改装費を賄う、といった活用法が考えられます。これにより、より手厚い支援を受けられる可能性があります。

ただし、一点だけ注意が必要です。自治体の補助金の中には、公募要領で「国の補助金との併用は不可」と明確に定めている場合があります。必ずそれぞれの制度のルールを個別に確認することが、専門家としてのアドバイスです。地域独自の融資制度と組み合わせるなど、様々な選択肢を検討してみましょう。

補助金申請で迷ったら。司法書士ができること

ここまで読んでいただき、「自分にもチャンスがあるかもしれない」と感じられた一方で、「でも、一人で全部手続きを進めるのはやっぱり不安だ…」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。そのお気持ちは、とてもよく分かります。

私たち司法書士は、単に会社設立の登記手続きをするだけではありません。お客様のお話を丁寧に聞き取り、事業計画の前提となる法的な課題を整理し、必要な手続きがスムーズに進むようサポートします。補助金の申請は、事業計画の策定から始まり、法人設立、各種契約、そして実績報告まで、長期間にわたるプロセスです。その複雑な道のりにおいて、法律の専門家が伴走することで、安心して本業に集中していただける環境を整えることができます。

司法書士は、お客様からお伺いした状況やご希望と法律を照らし合わせ、そのご希望を叶える、あるいは最も近い形を実現するにはどうすればよいかを一緒に考え、ご提案します。心に優しく、多角的に丁寧に課題と向き合うこと。それが私たち下北沢司法書士事務所の信条です。もし少しでも迷うことがあれば、まずは無料相談をご利用ください。あなたの一歩を、私たちが全力でサポートします。

無料相談はこちらから

相続対策としての生前贈与

2017-05-09

相続対策の選択肢である生前贈与。生前贈与とは被相続人の方が亡くなる前に、節税対策として行われる贈与のことを指します。贈与によって発生する不動産の名義変更の登記については司法書士の専門分野ですが、本質である節税効果は勉強不足ですので調べてみました。生前贈与を行うのは「相続時精算課税制度」を利用できるからのようです。「相続時精算課税制度」とは、贈与税を2500万円まで非課税にできる制度。この制度を理由するために、相続が発生した際に被相続人から相続される予定の財産を、存命中に相続予定者に贈与しておきます(要するに生前贈与しておきます)。制度利用するための要件は、贈与を実地する歳の1月1日現在で贈与者が満60歳以上で、親または祖父母から子又は孫である推定相続人への贈与であること。ただし住宅資金の贈与の場合は親の年齢制限をなくすための特例もあるようです。

 

下北沢司法書士事務所 竹内友章

株式会社を選択する理由

2017-05-06

はじめに:会社の選択は「設計思想」の違いを理解することから

「さあ、いよいよ会社を立ち上げるぞ!」その第一歩として、多くの起業家が直面するのが「株式会社と合同会社、どちらを選ぶべきか?」という問いではないでしょうか。設立費用の安さから合同会社に魅力を感じつつも、将来の事業拡大を考えると株式会社も捨てがたい…。そんな風に頭を悩ませているかもしれません。

この記事では、そんなあなたの迷いを解消するため、単なるメリット・デメリットの比較にとどまらない、より本質的な判断基準を提示します。

まず、株式会社と合同会社には大きな共通点があります。それは、どちらも「有限責任」であるという点です。これは、万が一会社が倒産しても、出資者は自分が出資した金額の範囲内でしか責任を負わない、という重要なルールです。この有限責任という仕組みがあるからこそ、安心して事業に挑戦できるわけですね。そのため、現代において会社設立を考える場合、事実上、株式会社か合同会社の二択となります。

では、この二つの本質的な違いはどこにあるのでしょうか。それは、会社の「設計思想」そのものにあります。

  • 株式会社:広く外部から資金と人材を集め、事業を大きく成長させるための「器」
  • 合同会社:気心の知れた仲間内で、柔軟かつスピーディーに事業を行うための「器」

このように、どちらが良い・悪いという話ではなく、目指す事業の形によって最適な「器」が異なるのです。この記事を読み終える頃には、あなたのビジネスの未来像にどちらの会社形態がふさわしいか、きっと明確になっているはずです。会社の種類と特徴の全体像については、会社の種類と特徴で体系的に解説しています。

株式会社の核心:「所有と経営の分離」が事業成長の鍵を握る

株式会社を理解する上で、絶対に欠かせない最も重要な原則が「所有と経営の分離」です。

これは、会社の所有者(株主)と、会社の経営を行う人(取締役)が、必ずしも一致しないという考え方です。株主は、株式という形で会社にお金を出す「出資者」であり、会社のオーナーです。一方、取締役は株主から会社の経営を委任された「経営のプロフェッショナル」という位置づけになります。

もちろん、中小企業では「株主=社長(取締役)」というケースがほとんどですが、この「分離できる」という仕組みは、事業を大きく成長させるための重要な制度的基盤となります。

なぜなら、この仕組みには2つの大きなメリットがあるからです。

  1. 経営能力の高い人材を外部から登用できる:
    会社の成長には、優れた経営手腕を持つ人材が不可欠です。所有と経営が分離されていれば、創業メンバー以外からでも、その事業に最適な経営のプロを「取締役」として迎え入れることができます。
  2. 多くの投資家から資金を集めやすくなる:
    出資者である株主は、経営の最前線に立つ責任を負う必要がありません。そのため、経営に直接関わるつもりはないけれど、事業の将来性に期待して資金を提供したい、という投資家が出資しやすくなります。

対照的に、合同会社は原則として「所有と経営の一致」が前提です。出資者(社員)自らが経営を行うため、意思決定はスピーディーですが、外部から広く資金や人材を集める仕組みとしては設計されていません。

このように、「所有と経営の分離」は単なる法律上のルールではなく、事業をスケールさせるための戦略的な仕組みなのです。より具体的な株式の種類については、こちらの記事で詳しく解説しています。

株式会社の「所有と経営の分離」を解説する図解。株主が経営を取締役会に委任し、取締役会が事業の利益を株主に還元する仕組みを示している。

株式会社を選ぶべき3つの戦略的メリット

「所有と経営の分離」という設計思想は、具体的にどのようなビジネス上のメリットをもたらすのでしょうか。ここでは、あなたの事業を成長させる上で特に重要となる3つの戦略的メリットを掘り下げて解説します。株式会社と合同会社のメリット・デメリットを比較しながら、なぜこれらのメリットが株式会社に特有のものなのか、その理由を明らかにしていきましょう。

① 資金調達の選択肢が圧倒的に広い

事業を大きく成長させるには、いずれどこかのタイミングでまとまった資金が必要になります。その点、株式会社は資金調達の選択肢が圧倒的に豊富です。

「大きくお金を集めて大きな仕事をする場合、株式会社の方が断然使いやすい」。これは、多くの起業家が株式会社を選ぶ大きな理由の一つです。

株式会社は「株式」を発行することで、多様な投資家から出資を募ることができます。

  • エンジェル投資家やベンチャーキャピタルからの出資
  • 株式投資型クラウドファンディングの活用
  • 将来的な株式上場(IPO)による大規模な資金調達

投資家が合同会社の「持分」よりも株式会社の「株式」を好むのには、明確な理由があります。株式は譲渡の自由度が高く(流動性)、株主としての権利も法律で明確に定められているため、投資対象として非常に分かりやすいのです。事業の成長ステージに合わせて、最適な資金調達手段を選べる柔軟性こそ、株式会社最大の強みと言えるでしょう。もちろん、出資だけでなく補助金などを活用する方法もあります。

② 「社会的信用」を具体的な力に変える

「株式会社は社会的信用が高い」とよく言われますが、これは単なるイメージではありません。ビジネスの現場では、この「信用」が具体的な力となって事業を後押ししてくれます。

この社会的信用は、主に3つの側面で実感できるでしょう。

  1. 取引与信:
    特に大手企業と取引をする際、相手方はあなたの会社の信頼性を厳しくチェックします。株式会社には決算公告の義務があり、情報開示性が合同会社よりも高いと見なされるため、与信審査で有利に働くことがあります。
  2. 人材採用:
    「代表取締役」という肩書は、やはり対外的な信頼を得やすいものです。また、ストックオプション制度のように、将来の会社の成長をインセンティブとして優秀な人材を惹きつける制度設計ができるのも、株式会社ならではの魅力です。
  3. 融資審査:
    金融機関から融資を受ける際にも、株主総会や取締役など、会社法上の機関設計に基づいて運営される株式会社は、経営管理の仕組みを説明しやすい場合があります。取締役会を設置している会社であれば、意思決定や監督体制の面で透明性を示しやすくなることもあります。

会社の登記情報には代表者の住所も記載されますが、プライバシー保護の観点から住所を非表示にする手続きも可能になっています。こうした制度も活用しつつ、社会的信用を築いていくことが重要です。

③ 「役員任期」が経営の健全性と安定性を生む

合同会社の役員(業務執行社員)には任期がありません。これは一見、役員変更の手間がなくて楽なように思えます。しかし、株式会社の「役員任期」(最長10年)という制度には、長期的な経営の安定性を生み出すという重要な役割があるのです。

多くのサイトでは合同会社の任期のなさをメリットとして挙げますが、専門家の視点からは、むしろ任期があることのメリットを強調したいと思います。

  • 経営の硬直化を防ぐ:
    任期があることで、定期的に経営体制を見直す機会が生まれます。これにより、事業環境の変化に対応できない経営陣が居座り続けるといった事態を防ぎ、組織の新陳代謝を促します。
  • 経営の健全性を維持する:
    万が一、経営方針がずれてしまったり、能力に問題があったりする役員がいても、任期満了のタイミングで交代させることが比較的容易です。これは、健全なガバナンスを維持する上で重要な機能です。
  • 共同経営者とのビジョン共有:
    役員の再任を検討するタイミングは、共同経営者同士が改めて会社の未来像や各自の役割について真剣に話し合い、ビジョンをすり合わせる絶好の機会となります。

役員任期は、単なる面倒な手続きではありません。長期的に安定した経営を実現するために、定期的に経営体制を確認するガバナンス機能といえます。役員変更の手続きについては、「役員変更登記の注意点」で詳しく解説していますので、ご参照ください。

活気のあるオフィスで事業計画について議論する起業家チーム。会社の将来性やチームワークの良さを象徴している。

あなたのビジネスに最適なのは?株式会社を選ぶべきケース

ここまで株式会社のメリットを解説してきましたが、あなたのビジネスプランに当てはめて考えてみましょう。もし、以下のケースに一つでも当てはまるのであれば、設立時のコストが多少高くても、株式会社を選ぶ戦略的な価値は非常に大きいと言えます。

  • 将来、外部からの出資や融資を積極的に活用したい
    エンジェル投資家やベンチャーキャピタルからの出資を視野に入れているなら、株式会社は必須の選択です。事業の成長に必要な資金調達の選択肢を広げやすくなります。
  • BtoBビジネスで、大手企業との取引を目指している
    社会的信用や情報開示性が重視されるBtoB、特に大企業をターゲットとするビジネスでは、株式会社という形態が、取引先に対して一定の組織性や継続性を説明する材料となり、取引開始時の検討材料になることがあります。
  • 共同経営者と長期的に安定した関係を築きたい
    役員任期や株主総会といったルールが、感情的な対立を避け、客観的な基準で経営判断を下す助けとなります。長期的なパートナーシップを見据えるなら、株式会社のガバナンス体制は関係者間のルールを整理するうえで有効です。

会社を設立すると、様々な義務も発生します。詳しくは「会社設立をした後の義務」もご覧ください。

専門家が語る「合同会社の落とし穴」と株式会社の優位性

合同会社は設立費用が安く、定款で柔軟なルールを定められる(定款自治)ため、スモールスタートには魅力的な選択肢です。しかし、司法書士として、そして心理カウンセラーとして多くの人間関係のトラブルを見てきた立場からすると、その「柔軟性」が時として大きな落とし穴になることをお伝えしなければなりません。

合同会社の「所有と経営の一致」は、創業メンバーの関係が良好なうちはスピーディーな意思決定につながります。しかし、意見が対立すると、意思決定が停滞しやすいという側面もあります。

例えば、こんなケースが考えられます。

  • 重要な経営判断をしたいのに、社員の1人が反対するだけで話が進まない。
  • 共同経営者との関係を解消したくなっても、相手の同意がなければ簡単に退社や地位の変更を進められない。
  • 利益の配分を巡って対立が深刻化し、会社が機能不全に陥る。

個人的な感覚では、定款自治の広さを生かせる場面は、実はそれほど多くないように感じます。むしろ、人間関係のもつれから、こうしたトラブルに発展するケースの方が多いのが実情です。

その点、株式会社であれば、株主総会の多数決や役員任期といった、法律で定められた客観的なルールに基づいて問題を解決する仕組みが備わっています。感情論ではなく、ルールに則って冷静に判断を下せる。この仕組みこそが、長期的なリスク管理の観点から見た株式会社の大きな優位性なのです。

もちろん、後から合同会社から株式会社へ組織変更することも可能ですが、それには手間もコストもかかります。最初から将来を見据えた選択をすることが賢明です。

参照:e-Gov法令検索|会社法

まとめ:未来への投資として株式会社という選択を

株式会社を選ぶか、合同会社を選ぶか。この選択は、単なる手続きの違いではありません。あなたが「どのような未来を築きたいか」という、事業のビジョンそのものを問う選択です。

確かに、株式会社の設立は、合同会社に比べて初期費用がかかります。しかし、そのコストは、将来の事業展開に備えるための投資と考えることができます。

  • 将来の資金調達の可能性への投資
  • 社会的な信用を獲得するための投資
  • 長期的に安定した経営を実現するための投資

事業の成長を目指すのであれば、株式会社という会社形態は有力な選択肢になります。

会社設立は、事業を始めるうえで重要な手続きです。将来のリスクを避け、スムーズなスタートを切るためにも、ぜひ一度、専門家にご相談ください。当事務所では、あなたのビジョンを形にするお手伝いをさせていただきます。会社設立・商業登記に関する無料相談も実施しておりますので、まずはお気軽にお問い合わせいただければと思います。

会社設立に関する無料相談

世田谷区の創業融資制度

2017-05-05

会社設立時に切り離せないのが事業資金の問題。世田谷区にも、創業融資制度があるようなので先日伺って概要を聞いてきました。創業融資制度といっても区から融資がでるわけではなく、金融機関に支払う利子の一部を区が補助する制度です。窓口になるのは三軒茶屋にある「世田谷区産業振興公社 経営支援係」。まずはここで金融機関に提出する事業計画書の作り方を相談します。予約して、4回以上は相談するルールのようです。その上で完成した事業計画書をもとに金融機関から融資を受けると利子の一部が区から補助されるのがおおまかな流れ。世田谷区内に本店が必要がある、過去2年以内に事業主の経験がないなどの要件がありますから利用を検討される方は窓口でパンフレットをもらってくるといいかも知れません。ちなみに私も何部かもらったのでお渡しできます。

世田谷区産業支援公社 ホームページ https://www.setagaya-icl.or.jp/3.html

 

ワンピースの最新刊、発売されてたんですね。コンビニで見かけて買っちゃいました(^▽^)/

下北沢司法書士事務所 竹内友章

 

 

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