叔父叔母の財産管理|甥姪ができる認知症・相続対策3選

叔父・叔母の将来、一人で悩んでいませんか?

「子どもがいない叔父さん、叔母さんのことが最近なんとなく気になる…」
「もし認知症になったら、銀行口座はどうなってしまうんだろう?」
「自分が何かしてあげたいけれど、何から手をつければいいのか分からない…」

大切な叔父様・叔母様の将来を想い、このページにたどり着いたあなたは、とても優しい方なのだと思います。しかし同時に、どうすれば力になれるのか分からず、漠然とした不安や責任感に一人で悩んでいらっしゃるのではないでしょうか。

そのお気持ち、とてもよく分かります。この記事では、そのような不安を整理し、検討すべき制度や進め方を解説します。

この記事では、世田谷で多くのお子さんがいない方の財産管理・相続のサポートをしてきた司法書士が、甥・姪という立場のあなたに「今できること」を具体的にお伝えします。法律の専門用語をできるだけ使わず、あなたの不安が安心に変わるよう、一つひとつ丁寧に解説していきますので、どうぞ最後までお付き合いください。

「もしも」の時、甥・姪が直面する3つの壁

「まだ元気だから大丈夫」と思っていても、人の判断能力はいつ低下するか分かりません。もし何の対策もしないまま叔父様・叔母様の判断能力が衰えてしまったら、甥・姪であるあなたが対応に困る場面として、主に次の3つが考えられます。

問題①:銀行口座の取引制限で介護費用を支払えないおそれがある

認知症などで叔父様・叔母様の意思確認ができなくなると、預金の払出しには原則として本人の意思確認が必要なため、金融機関で取引が制限されることがあります。これは、たとえ家族であっても例外ではありません。

「叔父さんのために介護費用を引き出したい」と思っても、甥・姪であるあなたが窓口に行っても、本人の意思確認や代理権を確認できなければ、預金を下ろせないのが原則です。ただし、医療費・施設入所費用・生活費など本人のための支払いであることが明らかな場合には、金融機関が限定的に応じることもあります。キャッシュカードを預かって暗証番号を知っていたとしても、それは本来認められた使い方ではなく、後々大きなトラブルに発展しかねません。本人の財産を守るための確認手続により、介護費用など本人のための支払いが難しくなる場合があります。

成年後見制度を利用する前の金銭管理については、注意すべき点が多くあります。詳しくは成年後見申立前の金銭管理の記事もご参照ください。

問題②:自宅を売却できず施設入居費用を用意できないおそれがある

もし叔父様・叔母様が介護施設に入居し、ご自宅が空き家になったとします。その家を売却して施設の費用に充てたいと考えても、所有者である本人に十分な判断能力がなければ、不動産の売買契約という重要な法律行為はできません。

結果として、誰も住んでいない家の固定資産税や管理費だけが毎年かかり続けることに…。大切な資産を有効活用できないばかりか、固定資産税や管理費の負担だけが続く状態になるおそれがあります。空き家の問題は、世田谷区の空き家放置リスクでも解説している通り、多くのご家庭で深刻な問題となっています。

叔父・叔母の財産管理について悩む女性

問題③:遺言がなく、交流の少ない相続人と遺産分割協議が必要になる

お子さんのいない方の相続では、配偶者がいる場合は配偶者が常に相続人となり、血族相続人については直系尊属(父母・祖父母等)が先順位、直系尊属もいない場合にご兄弟姉妹(あなたの親など)が相続人になります。兄弟姉妹が相続人となるケースで、その兄弟姉妹がすでに亡くなっている場合は、その子どもである甥・姪たちが代わりに相続人(代襲相続人)となります。

これにより、相続人の数が十数人に膨れ上がることも珍しくありません。そうなると、お世話になった叔父様・叔母様の財産を、普段付き合いのない、時には顔も知らない親戚たちと「どう分けるか」を話し合う「遺産分割協議」が必要になります。

「お世話になったお前に財産を遺したい」という叔父様・叔母様の生前の言葉も、法的な効力を持つ遺言書がなければ、残念ながら単なる口約束に過ぎません。話し合いがまとまらず、叔父様・叔母様の想いとは裏腹に、財産が分散してしまう可能性が高いのです。口約束の危うさについては、生前の財産分配に関する念書という記事で詳しく解説しています。

叔父・叔母の状況別に検討できる対策

ここまで読んで、不安が大きくなってしまったかもしれません。でも、大丈夫です。叔父様・叔母様がお元気な今だからこそ、打てる手はたくさんあります。対策は早ければ早いほど、選択肢も広がります。

まずは、叔父様・叔母様の現在の状況を客観的に見てみましょう。ご状況に合わせて、検討すべき対策は変わってきます。

叔父・叔母の健康状態に応じた認知症・相続対策の選択肢を示すマップ。元気なうちは任意後見・民事信託・遺言が選べるが、認知症診断後は法定後見が主となる。

ステージ①:元気で判断能力もはっきりしている
判断能力が十分にある段階では、本人の意思に基づいて対策を検討しやすい時期です。本人の意思で自由に、将来の財産管理(任意後見・民事信託)や相続(遺言)の準備ができます。

ステージ②:少し物忘れが気になる・体調に不安がある
本格的に判断能力が低下する前に、急いで対策を検討すべき時期です。ご本人の意思が確認できるうちに、任意後見契約や民事信託、遺言作成を進めましょう。

ステージ③:認知症の診断を受け、判断能力の低下が進んでいる
任意後見や民事信託などの契約は、契約内容を理解して判断できる能力が必要です。遺言も、作成時に遺言能力が必要です。そのため、診断名だけで一律に判断せず、医師や専門家に確認したうえで、契約や遺言作成が難しい場合には、家庭裁判所に申し立てて成年後見制度の利用を検討することになります。

このように、どのステージにいるかによって選べる道筋は大きく異なります。各制度の費用や特徴については任意後見・民事信託・法定後見の費用の記事で詳しく解説していますので、併せてご覧ください。

甥・姪ができる3つの生前対策|目的別に徹底比較

それでは、叔父様・叔母様が元気なうちに甥・姪であるあなたができる具体的な3つの対策、「任意後見」「民事信託」「遺言」について、それぞれの目的と役割を詳しく見ていきましょう。特に、判断能力が低下した後に自宅を売却するといった場面では、どの制度を選ぶかが重要になります。

①【任意後見】財産管理と身上監護を任せたい場合に

任意後見制度とは、本人が元気なうちに、将来判断能力が不十分になった場合に備えて、あらかじめ自分で選んだ代理人(任意後見人)に財産管理などを任せる契約を公証役場で結んでおく制度です。欠格事由等がなければ、甥・姪であるあなたが任意後見受任者となり、将来、任意後見監督人が選任された後に任意後見人として支援することも可能です。

任意後見人の役割は大きく2つです。

  • 財産管理:預貯金の管理、不動産の管理、年金の受領など
  • 身上監護(しんじょうかんご):介護サービスの契約、入院手続き、施設への入所契約など

主なメリットは、契約で定めた範囲で「身上監護」に関する法律行為を支援できる点です。介護や医療に関する手続きまで幅広くサポートできるため、「叔父・叔母の生活全般を支えたい」という想いに応えることができます。
一方で、任意後見契約は、家庭裁判所が任意後見監督人を選任した時から効力が生じます。効力発生後は任意後見監督人の監督を受けるため、本人保護の観点から、投資や大規模なリフォームなどの積極的な財産活用は慎重に検討する必要があります。

当事務所では法定後見・任意後見のどちらのご相談も承っております。

参照:法務省:Q16~Q20 「任意後見制度について」

②【民事信託】柔軟な財産管理・承継を実現したい場合に

民事信託(家族信託とも呼ばれます)は、特定の財産(自宅やアパートなど)を、信頼できる家族(受託者)に託し、契約で定めた目的に従って管理・承継してもらう制度です。こちらも、甥・姪が受託者になることが可能です。

主な特徴は、契約内容に応じて財産管理の方法を設計しやすい点です。

  • 契約内容に売却や建て替えの権限を適切に定めておけば、後見制度より柔軟に不動産の売却や建て替えを検討しやすい
  • 自分が亡くなった後の財産の承継先だけでなく、さらにその次の承継先まで指定できる(二次相続対策)

「将来、この家を売って施設の費用に充ててほしい」「自分が亡くなったらこの家は甥の〇〇に、〇〇が亡くなったらその子に」といった、本人の希望に合わせて、信託の目的や財産の管理・承継方法を具体的に定められる点が特徴です。

ただし、民事信託でできるのはあくまで「財産の管理・承継」のみ。「身上監護」は含まれないため、介護施設の契約などはできません。そのため、任意後見契約と組み合わせて利用するケースも多くあります。

なお、信託した不動産の売却時には税金の特例が使えなくなる場合があるなど、専門的な注意点も存在します。詳しくは家族信託と空き家特例の関係の記事で解説しています。

③【遺言】亡くなった後の財産の承継先を明確にしたい場合に

遺言は、本人が亡くなった後の財産の分け方を決めておくためのものです。ここで重要なのは、遺言の効力は「亡くなった後」にしか発生しないという点。つまり、生前の財産管理や認知症対策にはなりません。

しかし、お子さんのいない叔父様・叔母様が、お世話になったあなたを財産の承継先として指定したい場合には、遺言の作成が有効です。遺言がなければ、先述の通り、会ったこともない親族との煩雑な遺産分割協議が必要になってしまいます。

特に、専門家である公証人が作成に関与する「公正証書遺言」は、自筆証書遺言と比べて方式不備や紛失・改ざんのリスクを抑えやすく、家庭裁判所での検認も不要なため、有力な選択肢となります。

遺言作成やその後の手続きにかかる費用については、遺言作成・執行にかかる費用の記事で詳しく解説していますので、参考にしてください。

参考動画:公正証書遺言の作成手続に関する参考動画

【司法書士からの実践アドバイス】叔父・叔母への切り出し方

制度のことは分かっても、多くの人が一番ためらうのが「この話をどうやって叔父・叔母に切り出せばいいの?」という点ではないでしょうか。お金や相続の話は、とてもデリケートです。

杉並区にお住まいのAさんの事例をご紹介します。Aさんは、近所に住む叔母様の銀行手続きを嫌がる様子や動きが鈍くなってきたことに気づき、「このままではまずいかもしれない」と直感しました。そして、将来の施設入居やお金の管理、さらには相続のことを心配し、当事務所にご相談に来られました。

私はAさんのお話を伺い、Aさんの感覚の鋭さに感心すると同時に、認知症対策としての任意後見、相続対策としての遺言、そして両方を兼ねる民事信託についてご説明しました。後日、Aさんと一緒に叔母様のご自宅へ伺い、私たちの話をじっくりと聞いた叔母様は、将来に備えて任意後見契約と遺言を作成することを決意されました。

この事例のように、スムーズに話を進めるには少しコツがあります。心理カウンセラーの資格を持つ司法書士として、3つのポイントをお伝えします。

  1. 自分の「心配」を素直に伝える
    「財産が欲しい」と誤解されないよう、「叔父さん(叔母さん)のことが心配なんだ」という気持ちを主語にして話しましょう。「最近、色々な手続きが面倒になっていないかな?」「もしもの時に、僕(私)が慌てずしっかり動けるようにしておきたいんだ」と、あくまで相手を思いやる気持ちからであることを伝えます。
  2. 「自分のためでもある」と伝える
    「万が一の時、どうすればいいか分からなくて困ってしまうのは僕(私)なんだ。だから、元気なうちにルールを決めておいてくれると、僕(私)がすごく助かる」というように、自分自身の安心のためでもあると伝えることで、相手も「それなら協力してあげよう」という気持ちになりやすくなります。
  3. 第三者(専門家)の力を借りる
    当事者同士だと言いにくいことも、専門家という第三者が間に入ることで、客観的で冷静な話し合いがしやすくなります。「一度、専門家の話を一緒に聞いてみない?」と誘ってみるのも良い方法です。Aさんのケースのように、私たちがご自宅まで伺ってお話しすることも可能です。

より詳しい伝え方については、遺言作成の切り出し方の記事でも解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。

まとめ:最初の一歩は専門家への相談から

ここまで、お子さんのいない叔父様・叔母様のために、甥・姪であるあなたができる3つの生前対策について解説してきました。

司法書士に叔父・叔母の財産管理について相談し、安心する女性

  • 任意後見:生活全般を幅広くサポートしたい場合に
  • 民事信託:特定の財産を柔軟に管理・承継したい場合に
  • 遺言:亡くなった後の財産を確実に託してほしい場合に

これらの対策は、どれか一つだけというわけではなく、目的によって組み合わせることも可能です。しかし、どの方法が最適かは、叔父様・叔母様の想いやご家族の状況、財産の内容によって全く異なります。まさに「オーダーメイド」の対策が必要なのです。

インターネットの情報だけで判断してしまうと、かえってご家族にとって不利益な結果を招くこともあります。状況に合った対策を検討するには、専門家である司法書士に相談することも有効です。

下北沢司法書士事務所では、単に法律手続きを進めるだけでなく、ご家族の事情や希望を確認しながら、利用できる制度や手続きの選択肢を一緒に検討します。最初の一歩を踏み出すのは勇気がいるかもしれませんが、一人で悩む必要はありません。まずはあなたの不安なお気持ちを、私たちに聞かせてください。

当事務所では無料法律相談も実施しておりますので、お気軽にご連絡いただければと思います。

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下北沢司法書士事務所 竹内友章

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