Archive for the ‘相続・遺言’ Category

相続対策としての生前贈与

2017-05-09

相続対策の選択肢である生前贈与。生前贈与とは被相続人の方が亡くなる前に、節税対策として行われる贈与のことを指します。贈与によって発生する不動産の名義変更の登記については司法書士の専門分野ですが、本質である節税効果は勉強不足ですので調べてみました。生前贈与を行うのは「相続時精算課税制度」を利用できるからのようです。「相続時精算課税制度」とは、贈与税を2500万円まで非課税にできる制度。この制度を理由するために、相続が発生した際に被相続人から相続される予定の財産を、存命中に相続予定者に贈与しておきます(要するに生前贈与しておきます)。制度利用するための要件は、贈与を実地する歳の1月1日現在で贈与者が満60歳以上で、親または祖父母から子又は孫である推定相続人への贈与であること。ただし住宅資金の贈与の場合は親の年齢制限をなくすための特例もあるようです。

 

下北沢司法書士事務所 竹内友章

遺言の種類

2017-05-04

遺言には.自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の三種類があります(滅多に使わない特殊なものは除いています。)。自筆証書遺言はご自身で直筆で書くもの。日付、署名押印など形式を整えなければ無効になってしまいます。ドラマとかでよく出てくるのは自筆証書遺言ですね。公正証書遺言は、2名以上の証人立ち会いのもと公証人に遺言内容を伝え、公証人が筆記します。形式的な不備によって無効になることはないのがメリット。半面、公証人に支払う手数料がかかったり戸籍謄本など資料を揃える手間がかかります。そして秘密証書遺言、これは自分で遺言を書いたあと公証人や証人に遺言の存在を公にしてもらいます。遺言の内容を人に見せることなく、その存在を公にできることが特徴です。この三種類の遺言の中で、一番お勧めしたいのは「公正証書遺言」費用や手間はかかっても、無効になるリスクが一番低いためです。遺言の書き方や公証人とのやりとり、証人の準備等お手伝い致します。ご連絡ください。

 

今日あたりから土曜くらいまで帰省なされる方も多いんですかね。ゆっくり骨休めしてください(^▽^)/

 

下北沢司法書士事務所 竹内友章

 

 

 

遺言はみんな書く必要あるのか?

2017-05-03

結論:遺言がなくても円満に相続が進むケースとは

「うちは家族仲も良いし、財産もそれほどない。本当に遺言なんて必要なんだろうか?」相続を考え始めたとき、多くの方が抱く素朴な疑問だと思います。結論から申し上げますと、遺言書がなくても円満に相続が進むケースは、確かに存在します。

具体的には、以下の条件がすべて揃っているような場合です。

  • 相続人が一人しかいない(例:配偶者も親も亡くなっており、子どもが一人だけ)
  • 相続人全員の仲が極めて良好で、財産の分け方について一切の揉め事なく合意できると確信できる
  • 財産が預貯金など、物理的に分けやすいものだけで構成されている

これらのケースでは、相続が発生した後、相続人全員で話し合って財産の分け方を決める「遺産分割協議」によって、スムーズに手続きを進められる可能性があります。

しかし、正直にお伝えすると、これほど条件が綺麗に揃うご家庭は、決して多くはありません。「うちは大丈夫」と思っていても、想定していなかった問題が生じることもあります。安易な自己判断はせず、この記事を最後まで読み進めて、ご自身の状況を客観的に見つめ直してみてくださいね。

司法書士も「遺言は不要」と判断することがあります

私たち司法書士は、いつも「遺言を書きましょう」とだけお伝えしているわけではありません。ご家庭の状況を丁寧にお伺いした結果、「このご家庭なら、遺言がなくてもきっと大丈夫でしょう」と判断し、その旨を正直にお伝えすることもあるのです。

以前、杉並区にお住まいのお客様から遺言作成のご相談を受けた際のことをお話しさせてください。その方は、以前に登記のお仕事でお世話になった方でした。ご家族は、奥様とお子様がお一人。お話を伺うと、ご家族の仲はとても良好で、将来の相続についても「まず妻がすべて相続して、その次は娘に」というお考えがご家族の中で共有されているようでした。

私は、お客様にこうお伝えしました。
「もちろん、遺言書があれば銀行での手続きや不動産の名義変更(相続登記)はスムーズに進みます。ですが、ご家族の状況を考えると、遺言書がなくても、皆さんでの話し合い(遺産分割協議)で円満に進めることも可能だと思いますよ」と。

このケースは、必ずしも遺言がなければならない、という状況ではありませんでした。それでも、最終的にはお客様とじっくり話し合い、将来の手続きの負担を少しでも軽くするために遺言を作成されることになりました。

専門家は「遺言は重要です」と一括りにしがちですが、より正確に言えば「遺言が絶対に必要になるご家庭もあれば、なくても大丈夫なご家庭もある」というのが実情です。私たち下北沢司法書士事務所では、画一的なアドバイスではなく、一つひとつのご家庭の事情に寄り添い、本当にそのご家族にとって最適な方法をご提案することを大切にしています。中には、遺言がマイナスに働く可能性についてお話しすることさえあります。

「うちは大丈夫」と考える場合に確認したい相続トラブルのリスク

前の章で「遺言が不要なケースもある」とお伝えしましたが、安易な自己判断は禁物です。多くの方が「うちは大丈夫」と考える背景には、見過ごされがちなリスクがあります。特に「家族仲が良いから」という理由だけでは、相続時の合意形成を十分に見通せない場合があります。

相続は、お金の問題だけでなく、家族それぞれの感情が絡み合う非常にデリケートな問題。それまで良好だった関係が、相続をきっかけに一変してしまうことは、決して珍しい話ではないのです。ここでは、よくある「大丈夫」という思い込みに潜む、具体的なトラブルの火種について解説します。より詳しい内容は、遺産分割協議で起こりうる問題点の記事でも触れています。

主な財産が「不動産」の場合、共有状態がトラブルにつながることがある

ご自宅やアパートなど、主な財産が不動産である場合は特に注意が必要です。遺言がない場合、不動産は法定相続分に応じて相続人全員の「共有」状態となります。この共有状態が、後のトラブルにつながることがあります。

例えば、相続人が子ども3人だったとしましょう。長男は「親の家に住み続けたい」、次男は「売却して現金で分けたい」、長女は「人に貸して家賃収入を得たい」と考えた場合、どうなるでしょうか。共有不動産を売却したり、大規模な変更を加えたりするには、原則として共有者全員の同意が必要です。また、賃貸などの活用についても、契約内容によっては共有者間の合意形成が問題になります。意見がまとまらない場合、不動産の処分や活用が進みにくくなることがあります。

さらに注意が必要なのは、この共有状態が次の世代へ引き継がれ、共有者が増えていく可能性がある点です。もし長男が亡くなれば、長男の配偶者や子どもが新たな共有者になります。次男、長女も同様です。時間が経つにつれ、面識が少ない親戚が権利者として加わり、話し合いが難しくなることがあります。こうなる前に、不動産を売却して公平に分ける方法もありますが、遺言で「この不動産は長男に」と指定しておけば、このような混乱を避けやすくなります。

遺言がない場合の不動産相続で共有者が増えていく問題を示す図解。一次相続で子供3人が共有し、二次相続以降で孫の世代まで権利者が増え、問題が複雑化する様子が描かれている。

相続人同士の「口約束」や「暗黙の了解」は通用しない

「長男が家業を継ぐから、実家も継ぐのが当たり前」「親の介護を一身に引き受けてくれた長女に、多めに財産を渡してあげたい」

こうした家族内での口約束や暗黙の了解は、残念ながら法的な効力を一切持ちません。遺言書がない限り、相続手続きは法律で定められた「法定相続分」を基準とした遺産分割協議で進めるのが大原則です。

生前は皆が納得していたはずなのに、いざ相続が始まると「法律上の権利は平等なはずだ」と主張する相続人が現れるケースは少なくありません。また、相続人の配偶者など、家族の歴史を直接知らない人が「あなたの権利なのだから、ちゃんと主張すべきよ」と口を挟むことで、話がこじれてしまうこともあります。

親の介護に尽くした貢献分は、「寄与分」として主張できる可能性はありますが、その証明は非常に難しく、認められるハードルは高いのが現実です。感謝の気持ちや特定の願いは、必ず遺言書という法的な形で残しておく必要があります。

相続人の中に連絡が取りづらい人がいる

遺産分割協議の最も重要なルールは、「相続人全員の合意」がなければ成立しない、という点です。

たとえ相続人のうちの一人と音信不通であったり、海外に住んでいて連絡がつきにくかったりするだけで、預金の解約や不動産の名義変更など、すべての相続手続きが完全にストップしてしまいます。

「あの子は昔に家を飛び出して以来、どこで何をしているか分からないから…」といった事情は通用しません。法的な手続きを踏んで戸籍から現在の住所を調査し、手紙を送るなどして連絡を試みる必要があります。それでも連絡がつかない、あるいは話し合いに応じてもらえない場合、手続きが進みにくくなります。詳しい手続きについては連絡が取れない相続人がいる場合の手続きでも解説していますが、時間も費用もかかります。

しかし、遺言書があれば、遺産分割協議を経ずに手続きを進めることができます。相続人全員による遺産分割協議が不要になる場合があるため、このようなリスクを軽減できます。

遺言書を書くべきか?迷ったときの判断基準

ご自身の状況を客観的に見て、「うちの場合は、やはり遺言書があったほうが安心かもしれない」と感じ始めた方もいらっしゃるかもしれません。ここでは、特に遺言書の作成を強くおすすめする具体的なケースをご紹介します。一つでも当てはまるものがあれば、専門家への相談を検討するきっかけにしてみてください。遺言が必要なケースは、ご家庭の数だけ存在します。

遺言書を作成すべきかリビングで話し合う初老の夫婦。夫は腕を組んで考え込み、妻は心配そうに見守っている。

子どもがいないご夫婦

子どもがいないご夫婦の場合、夫が亡くなると、相続人は妻だけだと思っていませんか?実はそうではありません。夫の両親が健在であれば「妻と夫の両親」が、両親が既に亡くなっている場合は「妻と夫の兄弟姉妹」が共同で相続人になります。

長年連れ添った配偶者が亡くなった悲しみの中、普段あまり付き合いのない義理の兄弟姉妹と、財産の分け方について話し合い(遺産分割協議)をしなければならない…。これは、残された配偶者にとって、精神的に非常に大きな負担となります。最悪の場合、住み慣れた自宅を売却して、その代金を分けなければならない事態にもなりかねません。

「全財産を妻(夫)に相続させる」という内容の遺言書を残しておけば、遺産分割協議の負担を減らし、残されたパートナーの生活を守りやすくなります。特に疎遠な義兄弟への連絡は、多くの方が頭を悩ませる問題です。

再婚していて、前の配偶者との間に子どもがいる

再婚されている方で、前の配偶者との間にお子さんがいる場合、そのお子さんにも現在の配偶者やお子さんと同じように相続権があります。つまり、現在の家族と、前婚のお子さんが、一緒に遺産分割協議をしなければならないのです。

普段ほとんど交流のない者同士が、お金の絡む話し合いを円満に進めるのは、非常に難しいと言わざるを得ません。感情的な対立も生まれやすく、相続トラブルに発展しやすい典型的なケースです。遺言書で「現在の妻に自宅を、前婚の子には預貯金を」というように、誰にどの財産を渡すかを明確に指定しておくことで、家族間の無用な争いを未然に防ぎやすくなります。このような状況は後妻と子の遺産分割という複雑な問題につながりやすいため、事前の対策が重要です。

内縁のパートナーや、お世話になった人がいる

長年連れ添い、事実上の夫婦として生活してきた「内縁のパートナー」には、法律上の相続権が一切ありません。また、ご自身の介護を熱心にしてくれた「息子の妻(お嫁さん)」や、懇意にしていたご友人など、血の繋がりのない第三者も同様です。

これらの大切な人たちに相続財産を遺したいと願うのであれば、遺言書の作成が有力な方法となります。「遺贈(いぞう)」という形で財産を渡すことを書き記すことで、あなたの感謝の気持ちを形にして届けることができます。法律の改正により、相続人以外の親族の貢献が金銭的に評価される制度もできましたが、ご自身の意思を反映させやすくするには、遺言の活用が有効です。

相続人の中に行方不明者や判断能力に不安がある人がいる

相続人の中に、認知症などで判断能力が不十分な方や、行方不明の方がいる場合、遺産分割協議は非常に困難になります。

判断能力が不十分な方がいる場合は、家庭裁判所に申し立てて「成年後見人」を選任してもらう必要があります。行方不明者がいる場合は、同じく家庭裁判所に「不在者財産管理人」の選任を申し立てなければなりません。これらの手続きは、申立てから選任まで数ヶ月単位の時間がかかり、費用も決して安くはありません。

しかし、遺言書があり、その内容を実現する「遺言執行者」が指定されていれば、遺産分割協議を前提とする手続きの負担を軽減し、預金の解約や不動産の名義変更などを進めやすくなる場合があります。これは、残された家族の負担を大きく軽減する、実務上の非常に大きなメリットと言えるでしょう。

参照:裁判所「不在者財産管理人選任」

【5分で診断】遺言の必要性セルフチェックリスト

ここまで読み進めて、ご自身の状況を色々と考えられたことと思います。最後に、ご自身の状況を客観的に整理し、遺言の必要性を判断するためのかんたんなチェックリストをご用意しました。「はい」か「いいえ」で答えてみてください。

リビングでノートパソコンを見ながら遺言の必要性セルフチェックリストに回答し、真剣に考える女性。
チェック項目はいいいえ
1. 主な財産に自宅などの不動産が含まれる
2. 子どもがいない、もしくはおひとり様である
3. 再婚しており、前の配偶者との間に子どもがいる
4. 内縁のパートナーなど、相続人以外に財産を渡したい人がいる
5. 各相続人に渡したい財産の割合を、法定相続分とは違うものにしたい
6. 介護などでお世話になった特定の相続人に多く財産を渡したい
7. 相続人同士の仲があまり良くない、または将来が少し心配だ
8. 相続人の中に行方不明の人や、連絡が取りづらい人がいる
9. 相続人の中に判断能力に不安がある人(認知症など)がいる
10. 個人で事業を営んでいる、または会社の株式を所有している
遺言の必要性セルフチェック

【診断結果】
いかがでしたでしょうか。もし、「はい」が一つでもついた方は、遺言書がないことで将来ご家族が困る可能性があるかもしれません。一度、専門家に相談してみることを強くおすすめします。また、ご自身ではなく、親への遺言作成の伝え方も、その伝え方にはコツがあります。

迷ったら、まずは司法書士にご相談ください

「遺言を書くべきか、書かなくても大丈夫か」
この記事を読んで、その判断がいかに難しいかを感じられたのではないでしょうか。最終的な判断は、ご家庭の財産状況、家族構成、そして何よりも「家族への想い」によって変わってきます。インターネットの情報だけでご自身で判断するのは、とても難しいことです。

そんなときは、ぜひ私たち司法書士にご相談ください。私たち下北沢司法書士事務所は、単に法律に沿って手続きを進めるだけの専門家ではありません。

実は、代表の私は心理カウンセラーの資格も持っています。それは、法律的な正しさだけでなく、お客様一人ひとりの不安や辛さ、家族への愛情といった「心」の部分に寄り添いたいという強い想いがあるからです。

「こんなことを聞いてもいいのだろうか」とためらう必要はまったくありません。あなたの想いをじっくりとお伺いし、ご家族にとって納得しやすい相続対策を一緒に検討していきたいと考えています。

初回のご相談は無料です。まずはお気軽にお気持ちをお聞かせください。

遺言に関する無料相談はこちら

相続関係の法律用語

2017-04-27

相続の言葉、難しく感じていませんか?司法書士がわかりやすく解説します

ご家族が亡くなられ、悲しみの中で相続の手続きを進めなければならないとき、多くの方が最初に戸惑うのが「法律用語の壁」です。「被相続人」「遺留分」「検認」…普段の生活ではまず耳にしない言葉の数々に、不安を感じてしまうのは当然のことです。

インターネットで調べても、難解な解説ばかりで余計に混乱してしまった、という方もいらっしゃるのではないでしょうか。

ご安心ください。この記事では、下北沢司法書士事務所の司法書士が、相続の現場で使われる重要な法律用語を、できる限り専門用語を使わず、日常の言葉に置き換えながら一つひとつ丁寧に解説していきます。私たちの事務所では、お客様との対話において、こうした平易な言葉でご説明することを常に心がけています。

この記事を読み終える頃には、相続の全体像が少しクリアになり、「何をすべきか」の道筋が見えてくるはずです。まずは肩の力を抜いて、一緒に学んでいきましょう。

まずはここから!相続の基本となる「登場人物」に関する用語

相続を一つの物語だと考えるなら、まず理解すべきは「登場人物」です。誰が財産を遺し、誰がそれを受け取る権利を持つのか。この基本的な関係性を押さえることが、複雑な相続問題を理解するための第一歩となります。ご自身の家族関係を思い浮かべながら読み進めてみてください。

被相続人(ひそうぞくにん)と相続人(そうぞくにん)

相続の物語は、必ずこの二人の登場人物から始まります。

  • 被相続人(ひそうぞくにん):亡くなられた方、つまり財産を遺す方のことです。
  • 相続人(そうぞくにん):財産を受け継ぐ権利を持つ方のことです。

すべての相続手続きは、「被相続人の財産を、相続人が引き継ぐ」という基本構造の上に成り立っています。新聞やニュースで「故〇〇氏の遺産相続が…」と報じられるとき、この「故〇〇氏」が被相続人にあたります。この二つの言葉の区別が、全てのスタート地点となる最も重要なポイントです。

配偶者(はいぐうしゃ)と子

相続において、中心的な役割を担うのが「配偶者」と「子」です。

  • 配偶者(はいぐうしゃ):法律上の婚姻関係にある夫または妻のことです。
  • :被相続人の実子、または法律上の養子を指します。

ここで重要なのは、法律上の「婚姻届」を提出しているかどうかという点です。長年連れ添った事実婚や内縁関係のパートナーは、残念ながら法律上の相続人にはなれません。また、配偶者が連れてきた子(連れ子)も、被相続人と養子縁組をしていなければ相続権は発生しない点に注意が必要です。

「配偶者」という言葉は、少し堅苦しく聞こえるかもしれません。実を言いますと、私も妻のことを日常で「配偶者」なんて呼んだことは一度もありません。こうした聞き慣れない言葉が、皆様を不安にさせてしまう一因だと感じています。だからこそ、専門家として、一つひとつの言葉を丁寧に解きほぐし、分かりやすくお伝えすることに努めてまいります。

法定相続人(ほうていそうぞくにん)

「誰が相続人になるのか」は、民法という法律で明確に定められています。この法律によって相続権が認められている人々のことを「法定相続人」と呼びます。

法定相続人には、優先順位があります。

  • 配偶者は、どのような場合でも常に相続人となります。
  • 配偶者以外の親族には順位があり、上位の順位の人がいる場合、下位の順位の人は相続人になれません。
    • 第1順位:子(子が既に亡くなっている場合は孫)
    • 第2順位:親(親が既に亡くなっている場合は祖父母)
    • 第3順位:兄弟姉妹(兄弟姉妹が既に亡くなっている場合は甥・姪)

例えば、亡くなった方に配偶者と子がいれば、相続人はその配偶者と子になります。親や兄弟姉妹は相続人にはなりません。誰が法定相続人なのかを正確に確定させることは、遺産分割の話し合いに参加するメンバーを決めるための、極めて重要な最初のステップです。なお、戸籍を調査する過程で、誰も知らなかった相続人が見つかるケースも実務では珍しくありません。

法定相続人の順位を分かりやすく解説した図解。配偶者が常に相続人であり、第1順位が子、第2順位が親、第3順位が兄弟姉妹であることが示されている。

受遺者(じゅいしゃ)と受贈者(じゅぞうしゃ)

法定相続人ではない人が、財産を受け取るケースもあります。その代表が「受遺者」と「受贈者」です。

  • 受遺者(じゅいしゃ)遺言によって財産を譲り受けた人のことです。例えば、お世話になった友人や、特定の団体に財産を遺したい場合に利用されます。
  • 受贈者(じゅぞうしゃ):被相続人との間で「私が死んだら、この財産をあなたにあげます」という生前の契約(死因贈与契約)を結び、財産を受け取る人のことです。

両者の違いは、財産を渡すという意思表示が、遺言という一方的なものか、契約という双方の合意に基づくものか、という点にあります。特に遺言によって財産を受け取る包括受遺者は、相続人と同様に遺産分割協議に参加する必要など、手続きが複雑になることもあります。

何をどう分ける?「財産と権利」に関する重要用語

登場人物がわかったら、次は物語の核となる「財産」と、それを分けるための「権利」について見ていきましょう。何を、どのようなルールで分けるのか。ここを理解することで、相続の具体的な中身が見えてきます。

遺産(いさん)と、みなし相続財産

相続の対象となる財産のことを「遺産」または「相続財産」と呼びます。
これには、多くの人がイメージするプラスの財産だけでなく、注意すべきマイナスの財産も含まれます。

  • プラスの財産:預貯金、不動産(土地・建物)、株式、自動車など
  • マイナスの財産:借金、住宅ローン、未払いの税金など

そして、もう一つ知っておきたいのが「みなし相続財産」です。これは、厳密には被相続人の遺産ではないものの、税法上、相続財産と「みなして」相続税の計算対象に含める財産のことを指します。代表的なものは、生命保険金や死亡退職金です。これらは受取人固有の財産とされますが、税金の計算上は遺産に加算されるため、注意が必要です。特に死亡退職金は、相続放棄をしても受け取れる場合があるなど、特別な扱いが定められています。

法定相続分(ほうていそうぞくぶん)と指定相続分(していそうぞくぶん)

遺産を分ける際の取り分の目安として、法律で定められている割合が「法定相続分」です。これは、遺言がない場合に、遺産分割の話し合いをする上での一つの基準となります。

一方で、遺言書で財産の分け方が具体的に指定されている場合、その割合を「指定相続分」と呼びます。相続においては、被相続人の意思が尊重されるため、原則として遺言による指定相続分が法定相続分に優先します。

法定相続分の割合は、法定相続人の組み合わせによって変わります。より詳しい相続分の計算方法については、別の記事で詳しく解説しています。

遺留分(いりゅうぶん)

「全財産を愛人に譲る」といった極端な内容の遺言があった場合、残された家族は生活に困ってしまうかもしれません。そうした事態を防ぐため、法律は兄弟姉妹を除く法定相続人(配偶者、子、親)に対して、最低限保障される財産の取り分を定めています。これが「遺留分」です。

遺留分は、遺言によっても奪うことのできない強力な権利です。もし遺言によって自身の遺留分が侵害されている場合、「遺留分侵害額請求」という手続きを通じて、財産を多く受け取った人に対して金銭の支払いを求めることができます。遺産が不動産しかない場合でも、原則として金銭での請求となります。

寄与分(きよぶん)と特別受益(とくべつじゅえき)

相続人間の公平を保つために、法定相続分を調整する制度があります。それが「寄与分」と「特別受益」です。

  • 寄与分(きよぶん):被相続人の生前に、その財産の維持や増加に特別な貢献(例:長年の介護、事業の手伝いなど)をした相続人がいる場合に、その貢献度に応じて相続分を増やす制度です。
  • 特別受益(とくべつじゅえき):被相続人から生前に、特別な援助(例:住宅購入資金、多額の学費など)を受けていた相続人がいる場合に、その分を遺産の前渡しとみなし、その相続人の取り分を減らす制度です。

どちらも「相続人間の公平」を目指すものですが、貢献度や援助の「特別性」を客観的に証明するのは難しく、遺産分割の話し合いで最も揉めやすいポイントの一つです。特に特別受益は、家族間の感情的なもつれと結びつきやすいため、慎重な対応が求められます。

相続における寄与分と特別受益を比較する図解。左側には介護などで貢献した場合に相続分が増える「寄与分」、右側には生前贈与などで相続分が減る「特別受益」がイラスト付きで解説されている。

どう進める?「手続きと書類」に関する基本用語

登場人物と財産の関係がわかったら、いよいよ物語を動かす「手続き」です。ここでは、相続を具体的に進める上で必要となる手続きや書類に関する用語を解説します。どのような流れで進んでいくのかをイメージしながら読み進めてみてください。

遺言書(ゆいごんしょ)と検認(けんにん)

遺言書は、被相続人が自身の財産の分け方などについて最終的な意思を記した、非常に重要な書類です。主に、本人が全文を手書きする「自筆証書遺言」と、公証役場で作成する「公正証書遺言」があります。遺言書を作成しておくことで、後の相続トラブルを未然に防ぐ効果が期待できます。

自筆証書遺言が見つかった場合は、原則として封を開けずに家庭裁判所に提出し、「検認(けんにん)」という手続きを受ける必要があります(ただし、法務局で保管されている自筆証書遺言に関して交付される「遺言書情報証明書」は検認の必要はありません)。これは、遺言書の存在と内容を相続人全員に知らせ、偽造や変造を防ぐための手続きです。ここで注意したいのは、検認はあくまで遺言書の「状態」を確認する手続きであり、その遺言が法的に有効かどうかを判断するものではない、という点です。

遺産分割協議(いさんぶんかつきょうぎ)と遺産分割協議書

遺言書がない場合や、遺言書で分け方が指定されていない財産がある場合、法定相続人全員で「誰が、どの財産を、どれくらい相続するか」を話し合います。この話し合いのことを「遺産分割協議」と呼びます。

協議がまとまったら、その合意内容を証明するために「遺産分割協議書」という書類を作成します。この書類には相続人全員が署名し、実印を押印します。遺産分割協議書は、不動産の名義変更(相続登記)や預貯金の解約といった、ほとんどの相続手続きで必要となる非常に重要な書類です。親族間で円満に話し合いを進めるためには、事前の準備と冷静な対話が鍵となります。

相続放棄(そうぞくほうき)と限定承認(げんていしょうにん)

被相続人に借金などのマイナスの財産が多く、プラスの財産を上回る場合に検討するのが、財産を一切引き継がないという選択です。

  • 相続放棄:プラスの財産もマイナスの財産も、すべてを放棄する手続きです。
  • 限定承認:相続したプラスの財産の範囲内でのみ、マイナスの財産を引き継ぐという、条件付きで相続する手続きです。

これらの手続きは、「自分が相続人になったことを知った時から3ヶ月以内」に家庭裁判所に申し立てる必要があります。この期間は非常に短いため、財産調査を迅速に行い、慎重に判断しなければなりません。安易な判断は危険であり、相続放棄と限定承認のどちらを選ぶべきかは専門家と相談することをお勧めします。

戸籍謄本(こせきとうほん)と相続関係説明図

相続手続きを進める上で、誰が法定相続人であるかを公的に証明するために不可欠な書類が「戸籍謄本」です。手続きでは、被相続人の「出生から死亡まで」の連続した戸籍謄本(戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍謄本など)をすべて集める必要があります。本籍地が何度も変わっている場合など、この収集作業は非常に煩雑になることがあります。

そして、収集した戸籍謄本の内容をもとに、被相続人と相続人の関係性を一覧にした家系図のようなものを作成します。これを「相続関係説明図」と呼びます。この図を法務局や金融機関に提出することで、大量の戸籍謄本をその都度確認してもらう手間が省け、手続きがスムーズに進みます。また、法定相続情報一覧図という公的な証明制度を活用することも可能です。

戸籍の取得方法については、法務局のウェブサイトもご参照ください。

参照:戸籍謄本(戸籍謄抄本)の請求方法(法務局)

用語がわからなくなったら、専門家への相談もご検討ください

ここまで、相続に関する基本的な法律用語を解説してきました。一つひとつの言葉の意味が分かると、これまで漠然としていた相続手続きの全体像が、少しはっきり見えてきたのではないでしょうか。

しかし、用語の理解はあくまでスタートラインです。実際の相続手続きは、ご家族の状況や財産の内容によって千差万別であり、専門的な知識や判断が求められる場面が数多くあります。

もし、少しでも手続きに不安を感じたり、ご自身のケースではどうなるのか分からなくなったりしたときは、一人で抱え込まずに私たち司法書士にご相談ください。相続に関する相談先は司法書士だけでなく弁護士や税理士も考えられますが、特に不動産が関わる手続きや、戸籍の収集、遺産分割協議書の作成など、手続き全体の司令塔として皆様をサポートするのが司法書士の役割です。

下北沢司法書士事務所では、皆様のお話を丁寧に伺い、複雑な法律用語を分かりやすい言葉に翻訳しながら、最適な解決策を一緒に考えさせていただきます。ご相談料金の有無や範囲は事前にご案内しますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。

法定相続情報証明制度

2017-04-21

5月29日(月)から「法定相続情報証明制度」が始まります。この制度は、相続が発生した際に戸籍謄本をたくさん用意したり持ち運ぶ手間を減らそうというもの。亡くなられた方の戸籍一式と相続関係の説明図を提出すると、提出した説明図に「認証文」が付された写しが交付され戸籍の代わりに使うことで、1通で相続関係を証明できるのがメリットです。相続関係の説明図の作成は不動産の相続登記の際にも行いますので、司法書士にとっては日常業務です。文章だとどうしても伝わりにくいと思いますので、宜しければお問い合わせください。

法務省の関連ページのリンク、貼っておきます。http://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00284.html

下北沢司法書士事務所 竹内友章

相続は誰に相談するのか?

2017-04-14

相続問題を取り扱うことをうたう士業や会社は非常に多いと思います。税金なら税理士、遺産分割でトラブルになったら弁護士、登記は司法書士、更には信託銀行、保険会社、コンサルティング会社など・・・。結局誰に相談すればいいのでしょうか?あくまで私の場合ですが、自分の専門分野でないことも、現在の問題点を洗い出し適切な他の専門家の紹介などで皆様のお役に立ちたいと考えております。このように士業や会社にはそれぞれスタンスがあると思いますので、皆様にあった相談しやすい専門家をお選びください。

 

下北沢司法書士事務所 竹内友章

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