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創業・事業承継の補助金
創業・事業承継をお考えの方へ。補助金活用の第一歩、踏み出せていますか?
これから会社を立ち上げよう、あるいは大切な事業を次の世代へ引き継ごうとお考えのとき、資金計画は大きな課題の一つではないでしょうか。「返済不要の補助金が使えるらしいけど、種類が多すぎて何から調べればいいか分からない」「応募要件が複雑で、自分が対象になるのか判断できない」そんな声もよく耳にします。情報が溢れているからこそ、かえって混乱し、貴重な一歩を踏み出せずにいる方も少なくありません。
この記事では、創業や事業承継で補助金を検討する際に確認したい基本事項を整理します。単に制度を解説するだけでなく、創業や事業承継という人生の大きな転機において、補助金をどう活用できるのか、その具体的な道筋を明らかにします。私たち下北沢司法書士事務所は、これまで多くの起業家や経営者様の法務サポートに携わってきました。司法書士が、複雑な制度の内容を一つひとつ整理し、必要な手続きを検討する際のサポートを行います。まずは、どのような選択肢があるのか、一緒に見ていきましょう。
相続と事業承継に関するより深い情報も、ぜひご参照ください。相続と事業承継
まずは知っておきたい代表的な2つの補助金
創業や事業承継で活用できる補助金は数多くありますが、まずは代表的な2つの柱を理解することから始めましょう。それは「新たに事業を始める人」を応援する補助金と、「事業を引き継ぐ人」を応援する補助金です。ご自身の状況がどちらに近いか考えながら読み進めてみてください。

① 新たに事業を始める方向け「創業補助金」
「創業補助金」は、その名の通り、新しいビジネスアイデアで起業する方を後押しするための制度です。事業をゼロから立ち上げる時期は、オフィスや店舗の家賃、設備の購入費、広告宣伝費など、何かと物入り。こうした初期投資の負担を和らげ、事業が軌道に乗るまでを経済的にサポートすることを目的としています。
代表的なものに「地方創生起業支援事業(起業支援金)」があります。これは、地域の課題解決に繋がるような事業を支援する制度で、補助率は経費の2分の1、上限額は最大200万円程度となるケースが多いです。新たな挑戦を始める創業者にとって、非常に心強い味方となってくれるでしょう。こうした制度を活用することで、会社設立時の税金の節約だけでなく、事業そのものの資金調達も有利に進められる可能性があります。
【参考情報】
より詳しい情報については、以下の公式サイトで最新の公募要領をご確認ください。
地方創生サイト:起業支援金
② 事業を引き継ぐ方向け「事業承継補助金」
一方、「事業承継補助金」は、後継者不足に悩む中小企業の事業を、次世代へ円滑に引き継ぐための制度です。単に事業を引き継ぐだけでなく、その機会を捉えて新しい挑戦(経営革新)を行うことを力強く後押しします。事業承継(会社の引継ぎ)は、司法書士が専門性を発揮できる分野でもあります。
代表例である「事業承継・M&A補助金」では、事業を引き継いだ後の設備投資や販路開拓、M&A(企業の合併・買収)にかかる専門家への依頼費用などが対象となります。補助率は類型により3分の1から3分の2、補助上限額は最大2,000万円とされています。事業の歴史を守りつつ、未来に向けた新たな一歩を踏み出す経営者にとって、大きな支えとなる制度です。
【参考情報】
制度の詳細や最新情報は、公式サイトで確認することをおすすめします。
事業承継・M&A補助金事務局サイト
私は対象?創業補助金の応募要件セルフチェック
「魅力的な制度なのは分かったけれど、果たして自分は対象になるのだろうか?」ここが一番気になるところですよね。公募要領の難しい言葉を読み解くのは大変です。そこで、多くの創業補助金で共通して問われるポイントを、簡単なチェックリストにまとめました。ご自身の計画と照らし合わせながら、確認してみてください。
チェック1:事業を開始する場所はどこですか?
多くの創業補助金は、地域経済の活性化を大きな目的としています。そのため、「どこで事業を始めるか」は非常に重要な要件です。
特に「地方創生起業支援事業」では、原則として東京圏(東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県)以外で起業することが条件となっています。これは、地方での新しいビジネスの創出を促すためです。ただし、東京圏内であっても「条件不利地域」に指定されているエリアであれば対象となる例外もあります。まずは、ご自身の創業予定地がどの地域に該当するのかを確認してみましょう。自治体によっては、独自の創業融資制度を設けている場合もありますので、あわせて調べてみることをお勧めします。
チェック2:どのような事業を計画していますか?
補助金は、どんな事業でも支援対象となるわけではありません。国の政策目的に合致している必要があります。特に創業補助金では、「地域の課題解決に資する社会的事業」というキーワードが非常に重要になります。
例えば、以下のようなテーマが挙げられます。
- 子育て支援や地域コミュニティの活性化に繋がる事業
- 地域の特産品や観光資源を活用した新しいサービス
- 高齢者など、いわゆる買い物弱者を支援する事業
- 地域のまちづくりや活性化を推進する事業
あなたのビジネスプランが、どのように地域社会に貢献できるのか。その「社会性」や「地域貢献性」が、審査において高く評価されるポイントになります。
チェック3:申請するのはいつのタイミングですか?
申請のタイミングは、応募資格を左右する非常に重要な問題です。特に、法人設立の登記や個人事業の開業届を出す「前」か「後」かは、注意深く確認しなければなりません。
多くの創業補助金では、「国の交付決定日以降、補助事業期間が完了する日までに設立・開業を行うこと」が要件とされています。つまり、フライングで会社を作ってしまうと対象外になる可能性があるのです。一方で、すでに開業・設立済みの場合でも、「創業後5年未満」などを対象とする補助金も存在します。ご自身の状況に合わせて最適な制度を選ぶことが大切です。会社設立時の定款記載事項を検討する段階で、補助金の申請スケジュールも視野に入れておくとスムーズに進められるでしょう。

事業承継補助金の申請要件、3つの重要ポイント
次に、事業承継補助金の申請を考える上で、絶対に押さえておきたい3つの重要ポイントを解説します。こちらも複雑な要件を分かりやすく整理しましたので、ご自身の状況と照らし合わせてみてください。円滑な相続と事業承継を実現するためにも、ぜひ参考にしてください。
ポイント1:承継の形態(誰が、誰から引き継ぐか)
まず、どのような形で事業を引き継ぐかがポイントです。事業承継補助金は、多様な承継の形に対応しています。
- 親族内承継:親から子へなど、親族間で事業を引き継ぐケース
- 従業員承継:会社の役員や従業員が事業を引き継ぐケース
- M&A:社外の第三者が事業を引き継ぐケース
現在の事業承継・M&A補助金では、補助対象となる取組や経費に応じて「事業承継促進枠」「専門家活用枠」「廃業・再チャレンジ枠」「PMI推進枠」などに分かれています。まずはご自身のケースがどの類型に当てはまるのかを確認することが第一歩です。事業承継では、名義株式の整理といった法的な課題も生じやすいため、専門家のアドバイスが役立ちます。
ポイント2:承継のタイミング(未来の承継も対象に)
「もう承継が終わっていないと申請できないのでは?」と誤解されがちですが、実は未来の承継も対象になる場合があります。
例えば、「5年以内に親族内承継や従業員承継を予定している」後継者候補でも申請できる制度があります。これは、まだ準備段階にある方も含めて、早い時期から計画的に事業承継を進めてもらうための支援です。ただし、制度上定められた期限までに事業承継を完了する計画が必要となるため、これから承継を考えている方にとっては非常に心強い制度と言えるでしょう。将来を見据え、有限会社から株式会社への変更などを検討するのも一つの戦略です。
ポイント3:承継後の取り組み(経営革新など)
事業承継補助金で最も重視されるのが、「事業承継をきっかけとした、新しい取り組み」です。単に事業を引き継ぐだけでは対象にならず、その後の成長戦略が問われます。
具体的には、以下のような「経営革新」が求められます。
- 生産性を向上させるための新しい設備投資
- 時代に合わせた新商品や新サービスの開発
- 新たな顧客を獲得するための販路開拓
そして、これらの取り組みは「後継者が主導して行う」ことが要件となる場合が多いです。これは、後継者が自身のビジョンを実現し、会社をさらに発展させていくことを応援するための制度だからです。補助金は、守りのためだけでなく、「攻め」の経営にも大いに活用できるのです。事業承継時には、株主分散によるリスクを解消し、経営の自由度を高めておくことも重要になります。
【重要】補助金の併用はできる?できない?基本ルールを解説
「もし使えるなら、複数の補助金を組み合わせて、もっと有利に資金調達したい」と考えるのは自然なことです。結論から言うと、補助金の併用は「条件付きで可能」です。しかし、そこには絶対に守らなければならない大原則があります。ここでそのルールをしっかり理解しておきましょう。

大原則:「同じ経費」に複数の補助金は使えない
補助金併用の最も重要なルールは、「一つの経費に対して、複数の補助金を重複して申請することはできない」というものです。これは、公的な資金を公平に配分するための大原則です。
NG例:「Aという機械の購入費500万円」に対して、国の補助金と県の補助金を両方申請する。
これはできません。しかし、経費の使い道を明確に分ければ話は変わってきます。
OK例:「Aという機械の購入費」には国の補助金を、「Bというシステムの導入費」には県の補助金を申請する。
このように、どの経費にどの補助金を使うかを明確に切り分けることができれば、併用は可能になります。
賢い組み合わせ方:目的が違えば併用できるケース
大原則を踏まえた上で、より戦略的に併用を考えるなら、「事業の目的」に着目するのがポイントです。目的が異なる事業であれば、それぞれに別の補助金を活用できる可能性があります。
例えば、こんな組み合わせが考えられます。
- 目的A「生産性向上」:ものづくり補助金を活用して、新しい製造機械を導入する。
- 目的B「販路開拓」:小規模事業者持続化補助金を活用して、新商品のPR用ウェブサイトを制作する。
このように、事業計画全体を確認し、各施策の目的に合わせて補助金の対象経費を整理することで、自己負担を軽減できる可能性があります。
国の補助金と自治体の補助金の組み合わせ
併用戦略の中でも特に有効なのが、「国」「都道府県」「市区町村」といった、階層の違う機関が提供する補助金を組み合わせる方法です。
国の大きな補助金(例:事業再構築補助金)で大規模な設備投資を行い、同時に、より地域に密着した市区町村の補助金(例:〇〇市創業支援補助金)で店舗の改装費を賄う、といった活用法が考えられます。これにより、より手厚い支援を受けられる可能性があります。
ただし、一点だけ注意が必要です。自治体の補助金の中には、公募要領で「国の補助金との併用は不可」と明確に定めている場合があります。必ずそれぞれの制度のルールを個別に確認することが、専門家としてのアドバイスです。地域独自の融資制度と組み合わせるなど、様々な選択肢を検討してみましょう。
補助金申請で迷ったら。司法書士ができること
ここまで読んでいただき、「自分にもチャンスがあるかもしれない」と感じられた一方で、「でも、一人で全部手続きを進めるのはやっぱり不安だ…」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。そのお気持ちは、とてもよく分かります。
私たち司法書士は、単に会社設立の登記手続きをするだけではありません。お客様のお話を丁寧に聞き取り、事業計画の前提となる法的な課題を整理し、必要な手続きがスムーズに進むようサポートします。補助金の申請は、事業計画の策定から始まり、法人設立、各種契約、そして実績報告まで、長期間にわたるプロセスです。その複雑な道のりにおいて、法律の専門家が伴走することで、安心して本業に集中していただける環境を整えることができます。
司法書士は、お客様からお伺いした状況やご希望と法律を照らし合わせ、そのご希望を叶える、あるいは最も近い形を実現するにはどうすればよいかを一緒に考え、ご提案します。心に優しく、多角的に丁寧に課題と向き合うこと。それが私たち下北沢司法書士事務所の信条です。もし少しでも迷うことがあれば、まずは無料相談をご利用ください。あなたの一歩を、私たちが全力でサポートします。
株式会社を選択する理由
ホームページの会社設立のページで株式会社と合同会社の違いについて少し触れています。ここでは違う角度から、株式会社と合同会社について考えてみたいと思います。まず株式、合同両方に共通している特徴は「有限責任」であるということ。実は株式と合同以外にも「合名会社」と「合資会社」という類型がありますが、こちらは「無限責任」を負う方が存在します。「有限責任」と「無限責任」の違いは、出資者が会社の債務を負うか否かにあります。「有限責任」だと会社が1億の借り入れをしたら出資をした方も1億の債務を負うことになってしまいます。これでは、安心して出資ができませんね。有限責任では、出資者が出資した額以上に責任を負いません。この点から会社設立の場合の選択肢は事実上、株式会社か合同会社の二択になります。ではこの2つの違いについてですが、合同会社の方が定款自治が広く認められている(つまり社内ルールを柔軟に決めることができる)と一般的に言われます。ただ、個人的な感覚ではこの点を生かせる場面て実際にはそんなに無いようが気がします。やはり合同会社は設立費用の安さが魅力ですね。一方株式会社の場合、将来の株式上場が視野に入る、また投資家から出資を受ける場合は株式での投資が一般的です。大きくお金を集めて大きな仕事をする場合、株式会社のが断然使いやすそうですね。この辺も会社設立の際は株式会社が選ばれることが多い大きな理由だと思います。
クジラの絵、かわいいですよね。描いた人のプロフィールです。https://minne.com/@yuninona/profile
下北沢司法書士事務所 竹内友章
世田谷区の創業融資制度
会社設立時に切り離せないのが事業資金の問題。世田谷区にも、創業融資制度があるようなので先日伺って概要を聞いてきました。創業融資制度といっても区から融資がでるわけではなく、金融機関に支払う利子の一部を区が補助する制度です。窓口になるのは三軒茶屋にある「世田谷区産業振興公社 経営支援係」。まずはここで金融機関に提出する事業計画書の作り方を相談します。予約して、4回以上は相談するルールのようです。その上で完成した事業計画書をもとに金融機関から融資を受けると利子の一部が区から補助されるのがおおまかな流れ。世田谷区内に本店が必要がある、過去2年以内に事業主の経験がないなどの要件がありますから利用を検討される方は窓口でパンフレットをもらってくるといいかも知れません。ちなみに私も何部かもらったのでお渡しできます。
世田谷区産業支援公社 ホームページ https://www.setagaya-icl.or.jp/3.html
ワンピースの最新刊、発売されてたんですね。コンビニで見かけて買っちゃいました(^▽^)/
下北沢司法書士事務所 竹内友章
会社設立時の定款記載事項
会社設立の第一歩「定款」とは?基本を優しく解説
「会社を作ろう!」そう決意したとき、多くの方が最初に耳にする専門用語の一つが「定款(ていかん)」ではないでしょうか。言葉の響きから、少し難しそうだと感じてしまうかもしれませんね。でも、ご安心ください。
定款とは、一言でいえば「会社の憲法」であり、基本的なルールを定めた「会社のルールブック」のようなものです。これからあなたが創る会社が、どのような目的で、どのような仕組みで運営されていくのかを記した、とても大切な書類なのです。
会社設立の手続きは、まずこの定款を作成することから始まります。つまり、定款作成は、あなたの会社のビジョンを形にするための、記念すべき第一歩と言えるでしょう。この記事を最後までお読みいただければ、定款に何を書けばよいのか、そして将来を見据えた賢い定款の作り方まで、基本的な知識をしっかりと身につけることができます。
会社の形態には株式会社や合同会社など様々ですが、いずれの場合も定款は必要不可欠です。私たち専門家が、あなたの不安に寄り添いながら、一つひとつ丁寧に解説していきますので、安心して読み進めてくださいね。
定款に必ず記載する「絶対的記載事項」(株式会社の場合)5つのポイント
定款に記載する項目は、その重要度によって3つの種類に分けられます。その中でも最も重要なのが「絶対的記載事項」です。これは、その名の通り必ず記載しなければならない項目で、漏れがあると定款の認証や設立手続が進められない可能性があります。会社の根幹をなす、いわば「土台」の部分です。
具体的には、株式会社の場合、会社法で定められた以下の5つの項目が該当します。
- ① 商号(会社名)
- ② 目的(事業内容)
- ③ 本店の所在地
- ④ 設立に際して出資される財産の価額またはその最低額
- ⑤ 発起人の氏名または名称および住所
これらは会社を特定し、その骨格を定義するための基本情報です。一つずつ、どのような点に注意して決めればよいのか見ていきましょう。
司法書士として実務に携わっていると、これらの項目をどう決めるかで、その後の会社運営のスムーズさが変わってくることを実感します。例えば、①商号は会社の顔です。使用できる文字や記号には細かなルールがありますので、事前に法務局のWebサイトなどで確認しておくと安心です。②目的には、現在行う事業だけでなく、将来的に展開する可能性のある事業も記載しておくと、後々の変更手続きの手間を省けます。「広告・書籍の編集・制作及び販売」のように、具体的な活動がイメージできるように記載するのがポイントです。

③本店の所在地は、最小行政区画(例:「東京都世田谷区」)まで記載すれば足ります。番地まで詳細に記載することも可能ですが、同じ市区町村内で移転する際に定款変更が不要になるため、最小行政区画での記載が一般的です。自宅を本店にする方も多いですが、プライバシーの観点から注意も必要です。より詳しい情報については、会社設立時の個人情報リスクと住所・旧姓を守る手続きをご覧ください。
④設立に際して出資される財産の価額は、いわゆる資本金のことです。金銭だけでなく、不動産や自動車といった「現物出資」も可能です。⑤発起人とは、会社設立を企画し、資本金を出資する人のことです。また発行可能株式総数は、その会社が発行できる株式の上限数を定めるもので、定款に定めがない場合は株式会社の成立時までに定款変更で定めを設ける必要があります。
これらの5項目は、会社の基盤を固める上で欠かせない要素です。しっかりと検討して、間違いのないように記載しましょう。
(参照:e-Gov法令検索|会社法)
会社の個性を決める「相対的・任意的記載事項」とは?
絶対的記載事項が会社の「土台」だとすれば、これからご紹介する「相対的記載事項」と「任意的記載事項」は、その上に築く「会社の個性や独自ルール」を定めるものです。これらを適切に定めることで、より自社の実情に合った、円滑な会社運営が可能になります。
記載して初めて効力が生まれる「相対的記載事項」
「相対的記載事項」とは、定款に記載しなければその法的な効力が認められない項目のことです。定めなくても定款自体は有効ですが、会社運営の重要なルールに関わるものが多いため、慎重な検討が必要です。
特に中小企業にとって重要なのが「株式の譲渡制限に関する規定」です。これを定めておくと、株主が株式を第三者に譲渡する際に会社の承認が必要になります。これにより、意図しない人物が経営に参加してくるのを防ぎ、経営権の安定化を図ることができます。円滑な事業承継を考える上でも、非常に重要な規定といえるでしょう。
また、「役員の任期」も代表的な相対的記載事項です。株式の譲渡制限を設けている非公開会社の場合、役員の任期を最長10年まで伸長できます。役員変更登記は任期満了ごとに行う必要があり、その都度手間と費用(登録免許税)がかかります。任期を伸長することで、これらの負担を軽減できるという実務的なメリットがあるのです。
その他にも、以下のような項目が相対的記載事項にあたります。
- 株主総会や取締役会以外の機関の設置(監査役など)
- 現物出資に関する事項
- 株主名簿の管理人についての定め
- 取締役会の設置
これらの項目は、会社の規模や将来の展望に合わせて、戦略的に定めていくことが肝心です。
より円滑な会社運営のための「任意的記載事項」
「任意的記載事項」は、法律上の定めはなく、定款に記載しなくても特に問題がない項目です。しかし、あえて記載することで社内ルールが明確になり、将来の無用なトラブルを防ぐ効果が期待できます。
代表的な例としては、「事業年度(決算期)」が挙げられます。会社の決算をいつにするかというルールですが、これは会社の繁忙期を避けたり、消費税の納税義務のタイミングを考慮したりと、税務戦略にも関わってくる重要な決定です。自由に決めることができますが、一度定款に明記しておけば、社内の共通認識となります。
ほかにも、以下のような項目が任意的記載事項として定められることがあります。
- 定時株主総会の招集時期
- 役員の員数(例:「取締役は3名以内とする」など)
- 公告の方法(官報、日刊新聞紙、電子公告など)
これらは、いわば会社の「ハウスルール」です。法律の範囲内であれば自由に定めることができますので、自社の運営がよりスムーズになるようなルールを盛り込んでいくとよいでしょう。

戦略的な定款作成|相続対策や将来の変更も見据えて
定款は、ただ会社を設立するためだけの書類ではありません。長期的な視点を持って作成することで、将来起こりうる様々なリスクに備え、経営の安定化を図るための強力なツールとなり得ます。
会社設立を「相続対策」に活かすための定款の工夫
近年、ご自身の資産管理や相続対策を目的として会社を設立する方が増えています。特に、不動産を多く所有している方が「資産管理会社」を設立するケースは少なくありません。
このような目的で会社を設立する場合、定款の作り方にも工夫が必要です。まず、定款の「目的」の欄に、「不動産の賃貸、管理、保有及び運用」といった文言を明確に記載しておく必要があります。これにより、会社が資産管理を主たる業務とすることが対外的にも明らかになります。
さらに、相続を円滑に進める上で鍵となるのが、先ほども触れた「株式の譲渡制限規定」です。この規定を設けておくことで、相続によって会社の株式が意図せず親族外に流出してしまう事態を防げます。また、合同会社の場合は、定款で持分の承継について特定の相続人に引き継がせる旨を定めることも可能で、財産の分散を防ぎ、円満な法人資産の承継に繋がります。
このように、定款の規定を戦略的に活用することで、節税というメリットだけでなく、大切な資産を誰にどう引き継いでいくかをコントロールし、親族間の無用なトラブルを未然に防ぐことにも繋がるのです。
将来の事業変更に備える「定款変更」の注意点
会社は生き物です。設立当初は想定していなかった新しい事業を始めたり、事業の成長に伴って本店を移転したりすることもあるでしょう。そうした会社の変化に合わせて、定款も変更していく必要があります。
定款の内容を変更するには、原則として「株主総会の特別決議」という、非常に厳格な手続きが必要です。これは、議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の3分の2以上の賛成がなければ可決されないというものです。さらに、商号や目的、本店所在地といった登記事項を変更した場合は、法務局で変更登記の手続きが必要となり、登録免許税(例:本店移転は管轄内3万円、管轄外は合計6万円)もかかります。
こうした将来の手間やコストを見越して、設立当初の定款作成時に工夫を凝らすことが「賢い初期設定」といえます。
- 事業目的は幅広く設定する:将来展開する可能性のある事業をあらかじめ記載しておく。
- 本店所在地は最小行政区画で記載する:同じ市区町村内での移転なら定款変更が不要になる。
- 役員の任期を伸長する:役員変更登記の頻度を減らし、コストを削減する。(非公開会社の場合)
未来を100%予測することはできませんが、少しの工夫で将来の負担を大きく減らすことが可能です。ぜひ、長期的な視点を持って定款作成に臨んでみてください。
定款作成で迷ったら司法書士に相談という選択肢
ここまで定款の記載事項について解説してきましたが、「自社の場合はどう書けばいいのだろう?」「法的に間違いがないか不安だ」と感じる点も少なくないかもしれません。
定款作成はご自身で行うことも不可能ではありません。しかし、会社の憲法ともいえる重要な書類ですから、法的な正確性は絶対に担保されなければなりません。また、将来の事業展開や相続まで見据えた戦略的な内容にするには、やはり専門的な知識と経験が不可欠です。
私たち司法書士にご相談いただければ、単に書類を作成するだけでなく、お客様一人ひとりの状況や将来のビジョンを丁寧にお伺いした上で、最適な定款の内容をご提案します。法的なミスを防ぎ、時間や手間を大幅に削減できるだけでなく、将来のリスクを回避するためのアドバイスも可能です。どのような専門家に相談すればよいか迷う場合でも、まずはお話をお聞かせください。
お客様からのご相談は相続、後見、債務整理、中小企業法務など様々ありますが、法技術や税務面など多角的に課題を検証しバランスのいい結論を出すお手伝いをするのも当事務所の特徴です。心に優しく、多角的に丁寧に課題と向き合う下北沢司法書士事務所にぜひご相談ください!
会社使用の、社長名義の不動産
社長の相続で会社に影響が出る可能性も。事業で使う個人不動産の注意点
会社の事務所や工場、店舗として使っている不動産が、実は社長個人の名義になっている。多くの中小企業で当たり前のように見られる光景ですが、この状態を放置したまま社長に万が一のことがあったら、会社の事業継続に大きな影響を及ぼす問題に発展しかねません。
私がこれまで多くのご相談をお受けする中で、特に経営者の皆様にお伝えしたいのは、「もしも相続が発生してしまった場合、相続人の一人が会社での使用を反対する場合が考えられます」という現実です。社長がお元気なうちは、誰も文句を言いません。しかし、相続が始まった途端、これまで家族として、そして会社の仲間として協力してきたはずの関係が、不動産をめぐる利害関係へと変わってしまうことがあるのです。
そうなると、相続人同士の話し合いで解決するしかありませんが、感情的な対立も絡み、一筋縄ではいかないケースが少なくありません。この記事では、なぜ社長名義の不動産が危険なのか、そして会社と家族を未来のトラブルから守るために、今からできる具体的な対策を司法書士の視点から分かりやすく解説していきます。「うちもそうだ」と少しでも心当たりがある方は、ぜひ最後までお読みください。
相続と事業承継の全体像については、相続と事業承継の基本で体系的に解説しています。
なぜ危険?会社が使う社長個人の不動産が抱える3つのリスク
「うちは家族仲が良いから大丈夫」と思っていても、相続をきっかけに状況が一変することは珍しくありません。社長の個人資産を事業に利用している状態には、具体的に次のようなリスクが潜んでいます。
- 事業継続が困難になるリスク
相続によって不動産が社長の後継者以外の相続人との共有状態になった場合、事業に必要な不動産を安定して使用できなくなるおそれがあります。例えば、事業を継がない兄弟から「来月から賃料を今の3倍に上げてほしい」「この土地を売りたいから出ていってくれ」と突然要求されるかもしれません。会社の経営基盤である不動産の使用権が不安定になれば、最悪の場合、事業の移転や廃業を迫られる可能性も出てきます。 - 資金調達が難しくなるリスク
会社が新たな設備投資や運転資金のために金融機関から融資を受けたい場合、不動産を担保にすることがあります。しかし、不動産が社長個人名義のままだと、それは会社の資産ではありません。社長の相続が発生し、所有権が複数の相続人に分散してしまうと、担保提供のために相続人全員の同意を取り付ける必要が出てきます。一人でも反対すれば、必要な資金調達ができず、事業拡大のチャンスを逃してしまうかもしれません。 - 家族関係が悪化するリスク
相続は「争続」とも言われるように、家族間に深刻な亀裂を生むことがあります。「会社を継ぐ長男だけが、価値の高い土地を相続するのは不公平だ」と他の相続人が不満を抱けば、遺産分割協議は紛糾します。後継者も、他の兄弟姉妹から事業の継続に必要な不動産の利用を前提に無理な要求を突き付けられ、精神的に追い詰められてしまうことも。お金の問題だけでなく、家族関係の悪化につながる可能性もあります。
【もし相続発生後なら】相続人が使用に反対…どう対処する?

生前対策が間に合わず、実際に相続が開始してしまった後に、一部の相続人から「会社に土地を貸したくない」と反対の声が上がった場合、どうすればよいのでしょうか。打つ手がないわけではありません。冷静かつ粘り強い話し合いが解決に向けて重要です。
まず基本となるのが、相続人全員で行う「遺産分割協議」です。この話し合いで、全員が納得できる着地点を探ります。反対する相続人との交渉では、感情的に対立するのではなく、以下のような具体的な選択肢を提示し、現実的な解決策を模索することが重要です。
- 会社の存続メリットを伝える:まず、会社が事業を継続することが、反対している相続人自身にとっても経済的なメリットがあることを丁寧に説明します。例えば、会社から安定した地代収入を得られることや、将来的に役員報酬や配当を受け取れる可能性など、具体的な数字を示して理解を求めます。
- 代償分割を提案する:事業用不動産は後継者が単独で相続し、その代わりに後継者から他の相続人へ、相続分に見合う現金(代償金)を支払う「代償分割」という方法があります。後継者に十分な自己資金があれば、公平性を保ちつつ、事業に必要な不動産を確保できる有効な手段です。
- 会社への売却を検討する:会社に資金的な余裕があれば、不動産を会社自身が買い取り、その売却代金を相続人全員で分割する方法もあります。これにより、不動産は会社の資産となり、経営の安定化につながります。
もし、当事者間での話し合いがどうしてもまとまらない場合は、家庭裁判所に「遺産分割調停」を申し立てるという次のステップもあります。調停委員という第三者を交えて、冷静に話し合いを進めることができます。
より具体的な手順については、相続人が多い不動産の売却方法をご覧ください。
事業と家族を守る生前対策「遺言」か「家族信託」か
相続が起きてから慌てるのではなく、問題が起こる前に手を打っておく「生前対策」こそが、円満な事業承継の特に重要です。特に有効な手段として挙げられるのが「遺言」と「家族信託」です。
この二つの制度は似ているようで、その役割と効果は大きく異なります。どちらが自社にとって最適かを見極めるためには、単に制度を比較するだけでなく、「事業承継をどのような形で進めたいか」という視点で考えることが大切です。
例えば、こんなことを自問自答してみてください。
- 社長が元気なうちから、後継者に経営の権限を少しずつ委譲していきたいか?
- 将来、社長が認知症などで判断能力が衰えてしまった場合のリスクに備えたいか?
- 後継者の次の代(孫の代など)の承継先まで、ある程度決めておきたいか?
これらの問いに対する答えによって、選ぶべき道筋が見えてきます。ここからは、それぞれの制度の特徴と、事業承継における具体的な活用法を詳しく見ていきましょう。認知症対策という観点では、任意後見・家族信託・法定後見の違いも参考になるでしょう。
「遺言」で後継者に不動産を相続させる方法と限界点
最もシンプルで直接的な方法は、社長が「会社の事業で使っている不動産は、後継者である長男〇〇に相続させる」という内容の遺言書を作成しておくことです。これにより、社長の死後、不動産は遺産分割協議を経ることなく、スムーズに後継者へ引き継がれ、事業の継続性を確保できます。
遺言書には自分で書く「自筆証書遺言」と、公証役場で作成する「公正証書遺言」がありますが、法的な不備がなく、より確実性が高いのは公正証書遺言です。専門家である司法書士に相談しながら作成することで、ご自身の意思を正確に反映した、争いの起きにくい遺言を残すことができます。
しかし、この遺言書にも万能ではない「限界点」が存在します。
- 遺留分の問題:兄弟姉妹以外の相続人には、法律で最低限保障された財産の取り分である「遺留分」という権利があります。もし遺言の内容が、他の相続人の遺留分を侵害するほど後継者に偏ったものであった場合、相続開始後に他の相続人から遺留分に相当する金銭を請求され、新たな紛争につながる可能性があります。
- 生前の財産管理には対応できない:遺言は、あくまで社長が亡くなった後に効力を発揮するものです。そのため、社長が認知症などで判断能力を失ってしまった場合、不動産の売却や担保設定といった重要な法律行為ができなくなり、事業運営に支障が出る「資産凍結」のリスクには対応できません。
- 二次相続は指定できない:遺言で指定できるのは、ご自身の財産を次に誰に渡すか(一次相続)までです。後継者に相続させた不動産が、その後継者の死後(二次相続)、誰に渡るかまではコントロールできません。例えば、後継者に子供がいない場合、その配偶者や兄弟姉妹に不動産が渡り、創業家の手から離れてしまう可能性もあります。
遺言書を作成すべきケースについては、遺言書を作成すべき典型的な5つのケースで詳しく解説しています。
「家族信託」で事業承継を円滑に進める仕組み

遺言の限界点をカバーし、より柔軟で計画的な事業承継を可能にするのが「家族信託」という仕組みです。「信託」と聞くと難しく感じるかもしれませんが、要は「信頼できる家族に財産の管理を託す」契約のことです。
事業承継における家族信託では、一般的に以下のように設計します。
- 委託者(財産を託す人):社長
- 受託者(財産を託される人):後継者
- 受益者(利益を受ける人):社長
この契約を結ぶことで、社長が元気なうちに、事業用不動産の名義を後継者に移します。しかし、これは贈与や売買とは違い、あくまで管理・運用を任せるだけ。不動産から生じる賃料などの利益は、引き続き受益者である社長が受け取ります。
家族信託を活用すると、遺言にはない以下のような大きなメリットが生まれます。
- 認知症による資産凍結を防げる:万が一、社長の判断能力が低下しても、不動産の管理権限はすでに受託者である後継者に移っているため、会社の資金繰りや設備投資のために不動産を売却したり、担保に入れたりといった経営判断を、後継者が滞りなく行えます。
- 二次相続以降の承継先を指定できる:信託契約の中で、「社長の死後は後継者が受益権を引き継ぎ、その後継者の死後はその子(社長の孫)に引き継がせる」といったように、一定の範囲で、将来の資産の承継先を決めておくことができます。これにより、会社の重要な資産が創業家以外に流出するのを防げます。
- 他の相続人にも配慮できる:事業を継がない他の相続人に対して、不動産から生じる賃料収入の一部を受け取れる権利(受益権)を与える設計も可能です。これにより、後継者に経営の安定に必要な不動産を集中させつつ、他の相続人にも経済的な利益を分配し、公平性を保ちやすくなります。
このように、認知症対策としての家族信託は事業承継において非常に柔軟で強力なツールとなり得るのです。
【ケース別】あなたの会社に最適なのはどっち?判断基準を解説
では、結局のところ「遺言」と「家族信託」、どちらを選べば良いのでしょうか。最終的な判断は、会社の状況やご家族の関係性によって異なります。ここでは、判断の目安となるいくつかのケースをご紹介します。
| こんなケースなら | おすすめの対策 | 理由 |
|---|---|---|
| 後継者が決まっており、他の相続人との関係も良好。主な心配事は相続時の名義変更だけ。 | 遺言 | 手続きが比較的シンプルでコストも抑えられます。遺留分に配慮した内容であれば、遺言だけで十分対応できる可能性があります。 |
| 社長が高齢で、認知症などによる判断能力の低下が心配。 | 家族信託 | 社長が元気なうちに後継者に財産管理権限を移せるため、将来の資産凍結リスクに備えやすくなります。遺言ではこの点に対応できません。 |
| 後継者の次の代まで、事業用資産の承継先を決めておきたい。 | 家族信託 | 二次相続以降の承継先を指定できるのは家族信託だけの機能です。会社の永続的な経営基盤を守ることができます。 |
| 事業を継がない相続人からの反対が予想され、円満な分割が難しそう。 | 家族信託 | 受益権を分割することで、他の相続人にも経済的なメリットを提供し、不満を和らげることができます。遺言よりも柔軟な財産配分が可能です。 |
もちろん、これはあくまで一般的な目安です。コスト面や手続きの煩雑さも考慮する必要があります。各制度の費用についてより詳しくは、任意後見・信託・法定後見の費用比較|実務家司法書士が解説の記事もご参照ください。最終的には専門家と相談の上、ご自身の会社と家族にとって最適なプランを設計することが何よりも大切です。
選択肢としての「不動産の法人化」メリットと注意点
生前対策のもう一つの選択肢として、社長個人名義の不動産を会社名義にしてしまう「法人化」という方法も考えられます。これは、社長から会社へ不動産を売却、または現物出資する形で行います。
法人化の主なメリット
- 相続財産から切り離せる:不動産が会社の資産になるため、社長個人の相続財産ではなくなります。これにより、不動産そのものが遺産分割の対象から外れ、相続トラブルの直接的な原因になることを避けられます。
- 株式で計画的に承継できる:事業承継は、不動産ではなく会社の「株式」の承継という形になります。株式であれば、生前贈与などを活用して、計画的に少しずつ後継者へ移転していくことが可能です。
法人化の注意点・デメリット
- 移転コストがかかる:個人から法人へ不動産の名義を移す際には、社長側に譲渡所得税、会社側に不動産取得税や登録免許税といった税金・登記費用が発生します。
- 株式の評価額が上がる:不動産という大きな資産が会社に移ることで、会社の株価評価が上昇します。その結果、将来的に株式を相続する際の相続税負担が重くなる可能性があります。
- 法人の維持コスト:会社の資産が増えることで、税理士費用や社会保険料などの法人の維持コストが増加することも考慮に入れる必要があります。
法人化は、相続トラブルの回避という点では有効ですが、税務面で新たな課題を生む可能性もあります。実行する際は、税理士とも連携しながら慎重に検討を進める必要があります。ひとくちに会社といっても様々な種類があり、自社に合った形態を選択することが重要です。
円満な事業承継へ、今すぐ始めるべきこと

ここまで見てきたように、社長個人名義の不動産を会社が使っているという状況には、様々なリスクが潜んでおり、その対策も一つではありません。遺言、家族信託、法人化、それぞれの方法にメリットとデメリットがあり、どの選択がベストかは、会社の財務状況、後継者の有無、そして何よりご家族の関係性によって大きく変わってきます。
これほど複雑な問題を、経営者の方が一人で抱え込み、最善の答えを導き出すのは非常に困難です。だからこそ、「一人で悩まず、専門家に相談すること」が、円満な事業承継に向けた有効な第一歩となります。
私たち司法書士は、不動産登記の専門家であると同時に、遺言や信託、会社法務に関するご相談にも対応しています。今回のような問題についても、状況を整理しながら必要な手続きを検討できます。
ご相談いただく際に、以下のような資料をお手元にご準備いただくと、よりスムーズにお話を進めることができます。
- 不動産の登記簿謄本(全部事項証明書)や固定資産税の課税明細書
- 会社の定款や直近の決算書
- ご家族の状況がわかる簡単なメモ(誰に事業を継がせたいか、など)
当事務所は、法律面を中心に課題を整理し、税務面については必要に応じて税理士等と連携しながら検討するだけでなく、心理カウンセラーの資格を持つ司法書士が、ご家族間の感情的な側面にも配慮しながら、皆様のお話を丁寧にお伺いします。まずは無料相談をご利用いただき、あなたの不安や悩みを率直にお聞かせください。一緒に、会社とご家族の未来を守るための最適な道筋を見つけましょう。
小規模事業者向けの補助金
中小企業庁が音頭を取る小規模事業者向けの補助金「小規模事業者持続化補助金」。追加公募がなされるみたいですね。平成29年4月14日から平成29年5月31日までに応募して審査を通過すると、原則50万円までを上限として補助金がでるようです。対象経費の3分の2以内である(つまり75万円経費を使うと50万円以内の補助金がでる)、申請をして審査を通過し、申請通り適正に経費が使われことを報告してから補助金が支給される(かかった経費の補助金対象分があとからもどってくるのであり、事業開始前から支給されるわけではない。申請書を作る手間もかかる。)など大変な面もありますが、新規の事業計画がある方は活用してみてもいいかもしれません。なお、今回の追加公募分では事業承継に向けた取り組みを支援するため、代表者が60歳以上で後継者が中心になって取り組む事業が重点的に支援されるようです。
商工会議所の事務局のリンク、貼っておきます。
http://h28.jizokukahojokin.info/tsuika/
下北沢司法書士事務所 竹内友章
拒否権付種類株式
【事例】拒否権付株式が相続で「守り神」にも「悪魔」にもなる理由
「会社と家族の未来を、たった1株で守り抜いた社長」と「たった1株が原因で、会社と家族がバラバラになった社長」。もし、拒否権付種類株式(黄金株)の物語を語るなら、このような対照的な2つの結末が考えられます。
成功したA社長のケースは、まさに理想的な事業承継でした。彼は早くから後継者である長男に経営を任せたいと考えていましたが、まだ経験が浅い長男の独断で会社が傾くことを心配していました。そこで彼は、自身の引退後も重要事項に対する拒否権を持つ「黄金株」を1株だけ手元に残したのです。さらに、長男以外の子供たちには、遺言で十分な金融資産を残し、遺留分にも配慮しました。A社長が亡くなった後も、長男は安心して経営に専念でき、他の兄弟も納得のいく相続ができたため、争いは起きませんでした。黄金株は、まさに会社の未来を守る「守り神」となったのです。
一方で、B社長のケースは悲劇でした。彼もまた、後継者である長男に会社を継がせるため黄金株を導入しました。しかし、他の相続人への配慮を怠ったまま、突然亡くなってしまったのです。結果、黄金株は他の相続人との準共有となり、「権利行使者を誰にするか」で大揉めに。権利行使者を1人に定めて会社へ通知できなければ、黄金株に基づく権利を行使できず、会社の重要な決定が進まなくなるおそれがあります。役員の選任も、設備投資も、すべてがストップ。会社は経営不能に陥り、家族の間には修復不可能な亀裂が入ってしまいました。黄金株は、会社を縛り付ける「悪魔」へと豹変したのです。
この2つの事例の違いは、一体どこにあったのでしょうか。それは、拒否権付株式という強力なツールの「使い方」と「相続への備え」を正しく理解していたかどうか、ただそれだけです。この記事では、拒否権付株式があなたの会社とご家族にとって「守り神」となるよう、その基本から具体的な相続対策まで、専門家の視点で詳しく解説していきます。
拒否権付種類株式(黄金株)の基本と相続における役割
株式会社が発行する株式は、内容の違うものをいくつか発行することができます。その中でも、ひときわ強力な権限を持つのが「拒否権付種類株式」、通称「黄金株(おうごんかぶ)」です。なぜ、このように呼ばれるのでしょうか。
この株式をたった1株持っているだけで、株主総会や取締役会で決議された特定の重要事項に対して「NO!」を突きつけることができるからです。まさに、会社の意思決定における切り札(ジョーカー)のような存在と言えるでしょう。
具体的には、会社法で定められた株主総会の決議事項のうち、例えば「取締役の選任・解任」「会社の合併や事業譲渡」「定款の変更」といった会社の根幹に関わる決議に対して、「この黄金株を持つ株主の承認も必要とする」とあらかじめ定款で定めておきます。そうすると、たとえ他の株主全員が賛成したとしても、黄金株を持つ株主がたった一人で反対すれば、その議案は否決されてしまうのです。これは、まさに絶大な権力です。拒否権付種類株式は、株主総会や取締役会で決議すべき事項のうち、定款で定めた特定の事項について「当該決議に加えて、拒否権付種類株式の株主で構成する種類株主総会の決議(承認)も必要」とすることで、実質的な拒否権を持たせる株式です。例えば、合併に対して拒否権付種類株式を発行すると、他の株主全員が賛成しても拒否権付種類株式をもっている人が1人反対するとその会社は合併できません。
この強力な黄金株が、事業承継や相続の場面で重要な役割を果たします。後継者の経営をサポートしたり、経営権が相続によって意図しない人物に渡るのを防いだりするために活用されるのです。ただし、その強力さゆえに、設計を間違えると深刻な事態を招きかねない、諸刃の剣であることも忘れてはなりません。
より詳しい種類株式の仕組みについては、種類株式の基本の記事で解説していますので、併せてご覧ください。
メリット:後継者の経営を見守り、経営権を守る
事業承継で黄金株を活用する最大のメリットは、円滑な権力移譲をサポートできる点にあります。例えば、先代経営者が引退し、息子や娘に社長の座を譲るケースを考えてみましょう。
後継者がまだ若く、経営手腕に少し不安が残る場合、先代経営者が黄金株を1株だけ保有し続けることで、いわば「後見人」として経営に関与し続けることができます。後継者は日々の業務に集中し、大胆な挑戦もできます。一方で、会社にとってリスクが大きすぎる判断をしようとした際には、先代が黄金株の力でブレーキをかけることができるのです。これにより、後継者の成長を促しつつ、会社の暴走を防ぐという、理想的な段階的承継が実現可能になります。
また、「経営権の分散防止」という観点でも非常に有効です。相続が発生すると、自社株式が後継者以外の相続人(例えば、経営に関心のない兄弟姉妹など)に分散してしまうことがあります。そうなると、重要な経営判断のたびに他の相続人の同意が必要になり、経営のスピードが著しく落ちる可能性があります。しかし、黄金株を後継者、あるいは先代経営者が持っていれば、会社の重要な意思決定権は確保され、経営の安定性を保つことができるのです。
デメリット:相続を機に経営がストップする危険性
しかし、黄金株にはその強力さゆえの深刻なデメリットも潜んでいます。特に危険なのが、何の対策もせずに黄金株の株主が亡くなってしまった場合です。
黄金株も相続財産の一つですから、遺言などがなければ法定相続人全員の共有財産(準共有)となります。もし、相続人同士の仲が悪かったり、経営方針で意見が対立したりした場合、誰もが黄金株の権利行使に同意せず、結果として会社は重要事項を何も決められなくなってしまいます。取締役を一人選ぶことさえできなくなるかもしれません。
さらに、経営に全く関心のない相続人や、会社に敵対的な感情を持つ相続人に黄金株が渡ってしまった場合、彼らが私情で拒否権を乱用すれば、会社は完全に機能不全に陥ります。これは、会社にとってまさに「死」を意味する一大事です。このように、相続によって株式が分散してしまうリスクは、黄金株の存在によって、より深刻な問題へと発展する可能性があるのです。
詳しい株式分散のリスクについては、株式分散が招く経営上のリスクもご参照ください。
【事例で学ぶ】黄金株の相続対策3つのシナリオ
では、黄金株が「悪魔」に変わるのを防ぎ、「守り神」として機能しやすい設計にするためには、具体的にどうすればよいのでしょうか。ここでは、事業承継における3つのシナリオを通して、具体的な対策とそのポイントを学んでいきましょう。
①成功シナリオ:取得条項と遺言で円滑な事業承継を実現
最も理想的な対策が施されたA社の事例です。A社の先代経営者は、後継者である長男への事業承継を考え、自身が保有する1株の黄金株に特別な仕掛けを施しました。
それは、「私(先代経営者)が死亡したことを条件に、会社がこの黄金株を相続人から取得できる」という「取得条項」を定款に定めたことです。これにより、相続が発生した瞬間に、会社は黄金株を自動的に回収(買い取り)し、経営の混乱を未然に防ぐ仕組みを構築しました。
さらに、先代経営者は公正証書遺言を作成。普通株式はすべて後継者である長男に相続させる一方、他の子供たちには預貯金などの金融資産を十分に相続させることで、遺留分にも万全の配慮をしました。
結果、先代の死後、会社はスムーズに黄金株を回収。長男は安定した経営基盤のもとで事業に集中でき、他の兄弟も納得して相続を受け入れたため、家族間の争いは一切起こりませんでした。このように、取得条項と遺言という二段構えの対策が、円満な事業承継を実現させたのです。
②失敗シナリオ:遺留分への配慮不足で紛争へ発展
次に、黄金株の設計はしたものの、相続全体のバランスを見誤ったために失敗したB社の事例を見てみましょう。
B社の先代経営者も、後継者である長男に経営権を集中させるため、「会社の株式すべて(黄金株1株と普通株式)を長男に相続させる」という内容の遺言書を作成しました。これで万全だと安心していました。
しかし、会社の株式が全財産のほとんどを占めていたため、この遺言は他の兄弟の「遺留分」を大きく侵害するものでした。遺留分とは、兄弟姉妹以外の法定相続人に保障された、最低限の遺産取得分のことです。
先代の死後、当然ながら他の兄弟は長男に対して遺留分侵害額請求を行いました。長男は多額の金銭を支払う必要に迫られ、会社の運転資金に手をつけざるを得なくなりました。最悪の場合、支払いのために株式の一部を手放すことになり、せっかく集中させたはずの経営権が再び不安定になる事態も考えられます。
この事例が示す教訓は、「黄金株の設計だけでは事業承継対策は不十分」だということです。相続人全員の権利、特に遺留分に配慮した遺産分割の計画が不可欠なのです。
③応用シナリオ:「属人的株式」でより柔軟な支配権を設計
最後に、少し専門的になりますが、「属人的株式」という別の選択肢をご紹介します。これは、黄金株(拒否権付株式)と似た効果を持ちながら、より柔軟な設計が可能な制度です。
黄金株が「特定の種類の株式」に特別な権利を与えるのに対し、属人的株式は「特定の株主」個人に特別な権利(例えば、剰余金の配当や議決権について他の株主と異なる定め)を与えるものです。例えば、「株主Aさんが持つ株式は、1株につき100個の議決権を持つ」といった定め方ができます。
この制度の大きな特徴は、その効力が「特定の株主」に紐づく点です。そのため、相続などで株式の保有者が変わると、原則として、相続人に同じ特別な権利がそのまま引き継がれる設計にはなりません。そのため、黄金株のように相続をきっかけに経営がストップするリスクを根本的に回避できます。
また、この定めは定款に置きますが、商業登記上は種類株式として扱われず登記されないと整理されるため、登記事項からは外部に伝わりにくいという特徴もあります。先代経営者が少数の株式を持ちながらも会社の支配権を維持し、相続時にはスムーズに後継者へバトンタッチしたい、といったケースでは非常に有効な選択肢となり得ます。拒否権付株式とどちらが自社に適しているか、専門家と相談して検討する価値はあるでしょう。
拒否権付株式の導入と相続対策で押さえるべき法的ポイント
実際に拒否権付株式を導入し、相続対策を講じる際には、法務・税務上のいくつかの重要なポイントがあります。専門家へ相談する前に、ご自身で基本的な知識を整理しておきましょう。
手続きの流れと定款記載例
拒否権付株式を導入するには、以下の手続きが必要です。
- 定款変更案の作成:どのような事項に拒否権を設定するのか、取得条項をどうするかなどを具体的に決めます。
- 株主総会の招集・開催:定款変更は会社の最重要事項ですので、株主総会の「特別決議」(原則として、議決権を行使できる株主の議決権の過半数が出席し、出席株主の議決権の3分の2以上の賛成)が必要となります。
- 法務局への変更登記申請:株主総会で定款変更が承認されたら、法務局へ発行済株式の内容や総数などの変更登記を申請します。
特に重要なのが、定款への記載です。例えば、取締役の選任について拒否権を設定する場合、以下のような条文を定款に加えることになります。
【定款記載例】
(種類株主総会の決議)
第〇条 当会社が取締役を選任する旨の株主総会の決議は、当該決議のほか、A種類株式を有する株主を構成員とする種類株主総会の決議がなければ、その効力を生じない。
このように、自社の状況に合わせて適切な定款記載事項を設計することが、すべての始まりとなります。
Q&A:相続税評価額はどうなりますか?
Q. 黄金株は強力な権利がある分、相続税の評価額も普通株式より高くなってしまうのでしょうか?
A. いいえ、国税庁の文書回答事例では、拒否権付株式(拒否権付種類株式)については「拒否権を考慮せずに評価する」とされています。
これは多くの方が懸念される点ですが、ご安心ください。黄金株が持つ拒否権という特別な権利は、会社の財産価値を直接的に増減させるものではないと考えられています。そのため、相続税の計算においては、他の普通株式と同じ基準(会社の純資産額や収益力など)で評価されるのが一般的です。
この点は、相続税申告の際にも重要な知識となります。税負担が増えることを心配して導入をためらう必要はありません。
参照:国税庁「相続等により取得した種類株式の評価について(照会)」
後悔しない事業承継のために、今すぐ専門家へ相談を
ここまで見てきたように、拒否権付種類株式(黄金株)は、事業承継を円滑に進めるための非常に強力なツールです。しかし、その設計には会社法、民法(相続)、そして税法といった専門知識が複雑に絡み合います。
事例で見たように、少しの設計ミスや知識不足が、将来の経営を揺るがし、大切なご家族の間に争いを引き起こす引き金になりかねません。安易な自己判断はできるだけ避け、専門家に確認することが望ましいでしょう。
私たち下北沢司法書士事務所は、お客様からのご相談に対し、法技術や税務面など多角的に課題を検証し、バランスの取れた結論を導き出すことを得意としています。必要であれば、信頼できる税理士や弁護士と連携し、チームでお客様の課題解決にあたります。どの専門家に相談すればよいか分からない、という方もご安心ください。まずはお話をお伺いし、最適な専門家への橋渡しをすることも私たちの重要な役割です。
また、事業承継や相続の問題は、法律やお金だけの問題ではありません。家族間の感情的な対立といった、非常にデリケートな側面も持ち合わせています。代表司法書士は心理カウンセラーの資格も有しており、法的な解決策をご提案するだけでなく、ご家族の皆様のお気持ちにも寄り添いながら、円満な解決を目指します。
後悔しない事業承継の第一歩は、信頼できる専門家に相談することから始まります。心に優しく、多角的に課題と向き合う当事務所へ、ぜひお気軽にご相談ください。
役員任期
会社設立の際に、ご依頼人の方とご相談しなければならないことの1つが役員の任期です。原則2年ですが、最長10年まで伸ばすことが可能。任期を伸ばしておけば、その分役員改選と登記の手間が省けます。お1人で会社を始める場合はこれで問題ないかなと思いますが、役員の方が2人以上いる場合は注意が必要です。もしも役員同士の方向性が違っても、辞任しない限り任期までは一緒に頑張ることになるので・・・。場合によっては「解任」することも可能ですが登記簿に「解任」と記録が残るので、対外上の印象が良くありません。
下北沢司法書士事務所 竹内友章
会社設立時の税金の節約
皆さんが株式会社を作ろうと思ったら登録免許税という税金が基本的に15万円かかってしまいます。
ただ、一定の要件を満たせば7万5000円節約できます。ものすごくざっくりですが、
①会社を作る本店予定地の自治体が、「創業支援事業計画」の認定を受けている
(受けている自治体が多いと思います。)
②その自治体の「特定創業支援事業」を受ける(セミナー、窓口相談等)
③支援を受けたことの証明書を自治体からもらって、法務局に提出
こんな流れです。
お金がかかることも多いでしょうし、時間もかかるので
お得な感じはそんなにしないかもしれません。
世田谷区役所の関連リンク、張っておきます。
http://www.city.setagaya.lg.jp/kurashi/101/116/294/295/d00144901.html
下北沢司法書士事務所 竹内 友章
