Archive for the ‘会社関係’ Category
創業・事業承継の補助金
中小企業庁による、起業や事業承継をされる方向けの補助金が募集中です。応募期間は6月2日(金)まで。新たに創業する方向けの創業補助金は補助率2分の1で、50万円以上100万円以内(外部からの資金調達があると200万円以内)の補助。ざっくりですが、「200万円お金がかかる事業をしますと100万円補助します。でも2分の1をかけて50万円を切ってしまう事業は補助金の対象外です。」ということですね。事業承継を行う方向けの事業承継補助金は、補助率が3分の2で100万円以上200万円以内(事業所を廃止するなど、例外の場合は500万円以内)になっています。応募や審査、検査などをクリアすると補助される仕組み。また、創業・事業承継共に応募要件がありますのでそれらをクリアすれば申し込めるようになっております。確かに大変な面もありますが、補助金額もそれなりに大きいと思いますので検討されてもいいかも知れませんね。中小企業庁の特設ページのリンク張っておきます。
こちらは当事務所が参加する会社設立用特設ページ。税理士、WEB制作者と連携して割引きにしてます。
下北沢司法書士事務所 竹内友章
株式会社を選択する理由
ホームページの会社設立のページで株式会社と合同会社の違いについて少し触れています。ここでは違う角度から、株式会社と合同会社について考えてみたいと思います。まず株式、合同両方に共通している特徴は「有限責任」であるということ。実は株式と合同以外にも「合名会社」と「合資会社」という類型がありますが、こちらは「無限責任」を負う方が存在します。「有限責任」と「無限責任」の違いは、出資者が会社の債務を負うか否かにあります。「有限責任」だと会社が1億の借り入れをしたら出資をした方も1億の債務を負うことになってしまいます。これでは、安心して出資ができませんね。有限責任では、出資者が出資した額以上に責任を負いません。この点から会社設立の場合の選択肢は事実上、株式会社か合同会社の二択になります。ではこの2つの違いについてですが、合同会社の方が定款自治が広く認められている(つまり社内ルールを柔軟に決めることができる)と一般的に言われます。ただ、個人的な感覚ではこの点を生かせる場面て実際にはそんなに無いようが気がします。やはり合同会社は設立費用の安さが魅力ですね。一方株式会社の場合、将来の株式上場が視野に入る、また投資家から出資を受ける場合は株式での投資が一般的です。大きくお金を集めて大きな仕事をする場合、株式会社のが断然使いやすそうですね。この辺も会社設立の際は株式会社が選ばれることが多い大きな理由だと思います。
クジラの絵、かわいいですよね。描いた人のプロフィールです。https://minne.com/@yuninona/profile
下北沢司法書士事務所 竹内友章
世田谷区の創業融資制度
会社設立時に切り離せないのが事業資金の問題。世田谷区にも、創業融資制度があるようなので先日伺って概要を聞いてきました。創業融資制度といっても区から融資がでるわけではなく、金融機関に支払う利子の一部を区が補助する制度です。窓口になるのは三軒茶屋にある「世田谷区産業振興公社 経営支援係」。まずはここで金融機関に提出する事業計画書の作り方を相談します。予約して、4回以上は相談するルールのようです。その上で完成した事業計画書をもとに金融機関から融資を受けると利子の一部が区から補助されるのがおおまかな流れ。世田谷区内に本店が必要がある、過去2年以内に事業主の経験がないなどの要件がありますから利用を検討される方は窓口でパンフレットをもらってくるといいかも知れません。ちなみに私も何部かもらったのでお渡しできます。
世田谷区産業支援公社 ホームページ https://www.setagaya-icl.or.jp/3.html
ワンピースの最新刊、発売されてたんですね。コンビニで見かけて買っちゃいました(^▽^)/
下北沢司法書士事務所 竹内友章
会社設立時の定款記載事項
会社設立の第一歩「定款」とは?基本を優しく解説
「会社を作ろう!」そう決意したとき、多くの方が最初に耳にする専門用語の一つが「定款(ていかん)」ではないでしょうか。言葉の響きから、少し難しそうだと感じてしまうかもしれませんね。でも、ご安心ください。
定款とは、一言でいえば「会社の憲法」であり、基本的なルールを定めた「会社のルールブック」のようなものです。これからあなたが創る会社が、どのような目的で、どのような仕組みで運営されていくのかを記した、とても大切な書類なのです。
会社設立の手続きは、まずこの定款を作成することから始まります。つまり、定款作成は、あなたの会社のビジョンを形にするための、記念すべき第一歩と言えるでしょう。この記事を最後までお読みいただければ、定款に何を書けばよいのか、そして将来を見据えた賢い定款の作り方まで、基本的な知識をしっかりと身につけることができます。
会社の形態には株式会社や合同会社など様々ですが、いずれの場合も定款は必要不可欠です。私たち専門家が、あなたの不安に寄り添いながら、一つひとつ丁寧に解説していきますので、安心して読み進めてくださいね。
定款に必ず記載する「絶対的記載事項」(株式会社の場合)5つのポイント
定款に記載する項目は、その重要度によって3つの種類に分けられます。その中でも最も重要なのが「絶対的記載事項」です。これは、その名の通り必ず記載しなければならない項目で、漏れがあると定款の認証や設立手続が進められない可能性があります。会社の根幹をなす、いわば「土台」の部分です。
具体的には、株式会社の場合、会社法で定められた以下の5つの項目が該当します。
- ① 商号(会社名)
- ② 目的(事業内容)
- ③ 本店の所在地
- ④ 設立に際して出資される財産の価額またはその最低額
- ⑤ 発起人の氏名または名称および住所
これらは会社を特定し、その骨格を定義するための基本情報です。一つずつ、どのような点に注意して決めればよいのか見ていきましょう。
司法書士として実務に携わっていると、これらの項目をどう決めるかで、その後の会社運営のスムーズさが変わってくることを実感します。例えば、①商号は会社の顔です。使用できる文字や記号には細かなルールがありますので、事前に法務局のWebサイトなどで確認しておくと安心です。②目的には、現在行う事業だけでなく、将来的に展開する可能性のある事業も記載しておくと、後々の変更手続きの手間を省けます。「広告・書籍の編集・制作及び販売」のように、具体的な活動がイメージできるように記載するのがポイントです。

③本店の所在地は、最小行政区画(例:「東京都世田谷区」)まで記載すれば足ります。番地まで詳細に記載することも可能ですが、同じ市区町村内で移転する際に定款変更が不要になるため、最小行政区画での記載が一般的です。自宅を本店にする方も多いですが、プライバシーの観点から注意も必要です。より詳しい情報については、会社設立時の個人情報リスクと住所・旧姓を守る手続きをご覧ください。
④設立に際して出資される財産の価額は、いわゆる資本金のことです。金銭だけでなく、不動産や自動車といった「現物出資」も可能です。⑤発起人とは、会社設立を企画し、資本金を出資する人のことです。また発行可能株式総数は、その会社が発行できる株式の上限数を定めるもので、定款に定めがない場合は株式会社の成立時までに定款変更で定めを設ける必要があります。
これらの5項目は、会社の基盤を固める上で欠かせない要素です。しっかりと検討して、間違いのないように記載しましょう。
(参照:e-Gov法令検索|会社法)
会社の個性を決める「相対的・任意的記載事項」とは?
絶対的記載事項が会社の「土台」だとすれば、これからご紹介する「相対的記載事項」と「任意的記載事項」は、その上に築く「会社の個性や独自ルール」を定めるものです。これらを適切に定めることで、より自社の実情に合った、円滑な会社運営が可能になります。
記載して初めて効力が生まれる「相対的記載事項」
「相対的記載事項」とは、定款に記載しなければその法的な効力が認められない項目のことです。定めなくても定款自体は有効ですが、会社運営の重要なルールに関わるものが多いため、慎重な検討が必要です。
特に中小企業にとって重要なのが「株式の譲渡制限に関する規定」です。これを定めておくと、株主が株式を第三者に譲渡する際に会社の承認が必要になります。これにより、意図しない人物が経営に参加してくるのを防ぎ、経営権の安定化を図ることができます。円滑な事業承継を考える上でも、非常に重要な規定といえるでしょう。
また、「役員の任期」も代表的な相対的記載事項です。株式の譲渡制限を設けている非公開会社の場合、役員の任期を最長10年まで伸長できます。役員変更登記は任期満了ごとに行う必要があり、その都度手間と費用(登録免許税)がかかります。任期を伸長することで、これらの負担を軽減できるという実務的なメリットがあるのです。
その他にも、以下のような項目が相対的記載事項にあたります。
- 株主総会や取締役会以外の機関の設置(監査役など)
- 現物出資に関する事項
- 株主名簿の管理人についての定め
- 取締役会の設置
これらの項目は、会社の規模や将来の展望に合わせて、戦略的に定めていくことが肝心です。
より円滑な会社運営のための「任意的記載事項」
「任意的記載事項」は、法律上の定めはなく、定款に記載しなくても特に問題がない項目です。しかし、あえて記載することで社内ルールが明確になり、将来の無用なトラブルを防ぐ効果が期待できます。
代表的な例としては、「事業年度(決算期)」が挙げられます。会社の決算をいつにするかというルールですが、これは会社の繁忙期を避けたり、消費税の納税義務のタイミングを考慮したりと、税務戦略にも関わってくる重要な決定です。自由に決めることができますが、一度定款に明記しておけば、社内の共通認識となります。
ほかにも、以下のような項目が任意的記載事項として定められることがあります。
- 定時株主総会の招集時期
- 役員の員数(例:「取締役は3名以内とする」など)
- 公告の方法(官報、日刊新聞紙、電子公告など)
これらは、いわば会社の「ハウスルール」です。法律の範囲内であれば自由に定めることができますので、自社の運営がよりスムーズになるようなルールを盛り込んでいくとよいでしょう。

戦略的な定款作成|相続対策や将来の変更も見据えて
定款は、ただ会社を設立するためだけの書類ではありません。長期的な視点を持って作成することで、将来起こりうる様々なリスクに備え、経営の安定化を図るための強力なツールとなり得ます。
会社設立を「相続対策」に活かすための定款の工夫
近年、ご自身の資産管理や相続対策を目的として会社を設立する方が増えています。特に、不動産を多く所有している方が「資産管理会社」を設立するケースは少なくありません。
このような目的で会社を設立する場合、定款の作り方にも工夫が必要です。まず、定款の「目的」の欄に、「不動産の賃貸、管理、保有及び運用」といった文言を明確に記載しておく必要があります。これにより、会社が資産管理を主たる業務とすることが対外的にも明らかになります。
さらに、相続を円滑に進める上で鍵となるのが、先ほども触れた「株式の譲渡制限規定」です。この規定を設けておくことで、相続によって会社の株式が意図せず親族外に流出してしまう事態を防げます。また、合同会社の場合は、定款で持分の承継について特定の相続人に引き継がせる旨を定めることも可能で、財産の分散を防ぎ、円満な法人資産の承継に繋がります。
このように、定款の規定を戦略的に活用することで、節税というメリットだけでなく、大切な資産を誰にどう引き継いでいくかをコントロールし、親族間の無用なトラブルを未然に防ぐことにも繋がるのです。
将来の事業変更に備える「定款変更」の注意点
会社は生き物です。設立当初は想定していなかった新しい事業を始めたり、事業の成長に伴って本店を移転したりすることもあるでしょう。そうした会社の変化に合わせて、定款も変更していく必要があります。
定款の内容を変更するには、原則として「株主総会の特別決議」という、非常に厳格な手続きが必要です。これは、議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の3分の2以上の賛成がなければ可決されないというものです。さらに、商号や目的、本店所在地といった登記事項を変更した場合は、法務局で変更登記の手続きが必要となり、登録免許税(例:本店移転は管轄内3万円、管轄外は合計6万円)もかかります。
こうした将来の手間やコストを見越して、設立当初の定款作成時に工夫を凝らすことが「賢い初期設定」といえます。
- 事業目的は幅広く設定する:将来展開する可能性のある事業をあらかじめ記載しておく。
- 本店所在地は最小行政区画で記載する:同じ市区町村内での移転なら定款変更が不要になる。
- 役員の任期を伸長する:役員変更登記の頻度を減らし、コストを削減する。(非公開会社の場合)
未来を100%予測することはできませんが、少しの工夫で将来の負担を大きく減らすことが可能です。ぜひ、長期的な視点を持って定款作成に臨んでみてください。
定款作成で迷ったら司法書士に相談という選択肢
ここまで定款の記載事項について解説してきましたが、「自社の場合はどう書けばいいのだろう?」「法的に間違いがないか不安だ」と感じる点も少なくないかもしれません。
定款作成はご自身で行うことも不可能ではありません。しかし、会社の憲法ともいえる重要な書類ですから、法的な正確性は絶対に担保されなければなりません。また、将来の事業展開や相続まで見据えた戦略的な内容にするには、やはり専門的な知識と経験が不可欠です。
私たち司法書士にご相談いただければ、単に書類を作成するだけでなく、お客様一人ひとりの状況や将来のビジョンを丁寧にお伺いした上で、最適な定款の内容をご提案します。法的なミスを防ぎ、時間や手間を大幅に削減できるだけでなく、将来のリスクを回避するためのアドバイスも可能です。どのような専門家に相談すればよいか迷う場合でも、まずはお話をお聞かせください。
お客様からのご相談は相続、後見、債務整理、中小企業法務など様々ありますが、法技術や税務面など多角的に課題を検証しバランスのいい結論を出すお手伝いをするのも当事務所の特徴です。心に優しく、多角的に丁寧に課題と向き合う下北沢司法書士事務所にぜひご相談ください!
会社使用の、社長名義の不動産
社長さんがご高齢になってきて、社長名義の不動産を会社で使用している場合注意が必要です。もしも相続が発生してしまった場合、相続人の一人が会社での使用を反対する場合が考えられます。こうなると事業を継続する上で大きな問題ですし、遺言や信託などで対応しておかなくては相続人同士の話し合いで解決しなけれなばりません。こればかりは相続発生前の対策が胆だと思います。一番わかりやすいのは、会社の後継者である相続人に相続させる若しくは会社に譲渡することでしょう。しかしこれだけだと後継者以外の相続人から不満がでるかも知れません。解決方法として信託が考えられます。具体的には、少し複雑になるので次の回のブログに書きます。
今日、多分生まれてはじめてレンタルDVDを延滞してしまいました。自分じゃなくて、子供が見るのだったので油断してました(泣)
下北沢司法書士事務所 竹内友章
小規模事業者向けの補助金
中小企業庁が音頭を取る小規模事業者向けの補助金「小規模事業者持続化補助金」。追加公募がなされるみたいですね。平成29年4月14日から平成29年5月31日までに応募して審査を通過すると、原則50万円までを上限として補助金がでるようです。対象経費の3分の2以内である(つまり75万円経費を使うと50万円以内の補助金がでる)、申請をして審査を通過し、申請通り適正に経費が使われことを報告してから補助金が支給される(かかった経費の補助金対象分があとからもどってくるのであり、事業開始前から支給されるわけではない。申請書を作る手間もかかる。)など大変な面もありますが、新規の事業計画がある方は活用してみてもいいかもしれません。なお、今回の追加公募分では事業承継に向けた取り組みを支援するため、代表者が60歳以上で後継者が中心になって取り組む事業が重点的に支援されるようです。
商工会議所の事務局のリンク、貼っておきます。
http://h28.jizokukahojokin.info/tsuika/
下北沢司法書士事務所 竹内友章
拒否権付種類株式
【事例】拒否権付株式が相続で「守り神」にも「悪魔」にもなる理由
「会社と家族の未来を、たった1株で守り抜いた社長」と「たった1株が原因で、会社と家族がバラバラになった社長」。もし、拒否権付種類株式(黄金株)の物語を語るなら、このような対照的な2つの結末が考えられます。
成功したA社長のケースは、まさに理想的な事業承継でした。彼は早くから後継者である長男に経営を任せたいと考えていましたが、まだ経験が浅い長男の独断で会社が傾くことを心配していました。そこで彼は、自身の引退後も重要事項に対する拒否権を持つ「黄金株」を1株だけ手元に残したのです。さらに、長男以外の子供たちには、遺言で十分な金融資産を残し、遺留分にも配慮しました。A社長が亡くなった後も、長男は安心して経営に専念でき、他の兄弟も納得のいく相続ができたため、争いは起きませんでした。黄金株は、まさに会社の未来を守る「守り神」となったのです。
一方で、B社長のケースは悲劇でした。彼もまた、後継者である長男に会社を継がせるため黄金株を導入しました。しかし、他の相続人への配慮を怠ったまま、突然亡くなってしまったのです。結果、黄金株は他の相続人との準共有となり、「権利行使者を誰にするか」で大揉めに。権利行使者を1人に定めて会社へ通知できなければ、黄金株に基づく権利を行使できず、会社の重要な決定が進まなくなるおそれがあります。役員の選任も、設備投資も、すべてがストップ。会社は経営不能に陥り、家族の間には修復不可能な亀裂が入ってしまいました。黄金株は、会社を縛り付ける「悪魔」へと豹変したのです。
この2つの事例の違いは、一体どこにあったのでしょうか。それは、拒否権付株式という強力なツールの「使い方」と「相続への備え」を正しく理解していたかどうか、ただそれだけです。この記事では、拒否権付株式があなたの会社とご家族にとって「守り神」となるよう、その基本から具体的な相続対策まで、専門家の視点で詳しく解説していきます。
拒否権付種類株式(黄金株)の基本と相続における役割
株式会社が発行する株式は、内容の違うものをいくつか発行することができます。その中でも、ひときわ強力な権限を持つのが「拒否権付種類株式」、通称「黄金株(おうごんかぶ)」です。なぜ、このように呼ばれるのでしょうか。
この株式をたった1株持っているだけで、株主総会や取締役会で決議された特定の重要事項に対して「NO!」を突きつけることができるからです。まさに、会社の意思決定における切り札(ジョーカー)のような存在と言えるでしょう。
具体的には、会社法で定められた株主総会の決議事項のうち、例えば「取締役の選任・解任」「会社の合併や事業譲渡」「定款の変更」といった会社の根幹に関わる決議に対して、「この黄金株を持つ株主の承認も必要とする」とあらかじめ定款で定めておきます。そうすると、たとえ他の株主全員が賛成したとしても、黄金株を持つ株主がたった一人で反対すれば、その議案は否決されてしまうのです。これは、まさに絶大な権力です。拒否権付種類株式は、株主総会や取締役会で決議すべき事項のうち、定款で定めた特定の事項について「当該決議に加えて、拒否権付種類株式の株主で構成する種類株主総会の決議(承認)も必要」とすることで、実質的な拒否権を持たせる株式です。例えば、合併に対して拒否権付種類株式を発行すると、他の株主全員が賛成しても拒否権付種類株式をもっている人が1人反対するとその会社は合併できません。
この強力な黄金株が、事業承継や相続の場面で重要な役割を果たします。後継者の経営をサポートしたり、経営権が相続によって意図しない人物に渡るのを防いだりするために活用されるのです。ただし、その強力さゆえに、設計を間違えると深刻な事態を招きかねない、諸刃の剣であることも忘れてはなりません。
より詳しい種類株式の仕組みについては、種類株式の基本の記事で解説していますので、併せてご覧ください。
メリット:後継者の経営を見守り、経営権を守る
事業承継で黄金株を活用する最大のメリットは、円滑な権力移譲をサポートできる点にあります。例えば、先代経営者が引退し、息子や娘に社長の座を譲るケースを考えてみましょう。
後継者がまだ若く、経営手腕に少し不安が残る場合、先代経営者が黄金株を1株だけ保有し続けることで、いわば「後見人」として経営に関与し続けることができます。後継者は日々の業務に集中し、大胆な挑戦もできます。一方で、会社にとってリスクが大きすぎる判断をしようとした際には、先代が黄金株の力でブレーキをかけることができるのです。これにより、後継者の成長を促しつつ、会社の暴走を防ぐという、理想的な段階的承継が実現可能になります。
また、「経営権の分散防止」という観点でも非常に有効です。相続が発生すると、自社株式が後継者以外の相続人(例えば、経営に関心のない兄弟姉妹など)に分散してしまうことがあります。そうなると、重要な経営判断のたびに他の相続人の同意が必要になり、経営のスピードが著しく落ちる可能性があります。しかし、黄金株を後継者、あるいは先代経営者が持っていれば、会社の重要な意思決定権は確保され、経営の安定性を保つことができるのです。
デメリット:相続を機に経営がストップする危険性
しかし、黄金株にはその強力さゆえの深刻なデメリットも潜んでいます。特に危険なのが、何の対策もせずに黄金株の株主が亡くなってしまった場合です。
黄金株も相続財産の一つですから、遺言などがなければ法定相続人全員の共有財産(準共有)となります。もし、相続人同士の仲が悪かったり、経営方針で意見が対立したりした場合、誰もが黄金株の権利行使に同意せず、結果として会社は重要事項を何も決められなくなってしまいます。取締役を一人選ぶことさえできなくなるかもしれません。
さらに、経営に全く関心のない相続人や、会社に敵対的な感情を持つ相続人に黄金株が渡ってしまった場合、彼らが私情で拒否権を乱用すれば、会社は完全に機能不全に陥ります。これは、会社にとってまさに「死」を意味する一大事です。このように、相続によって株式が分散してしまうリスクは、黄金株の存在によって、より深刻な問題へと発展する可能性があるのです。
詳しい株式分散のリスクについては、株式分散が招く経営上のリスクもご参照ください。
【事例で学ぶ】黄金株の相続対策3つのシナリオ
では、黄金株が「悪魔」に変わるのを防ぎ、「守り神」として機能しやすい設計にするためには、具体的にどうすればよいのでしょうか。ここでは、事業承継における3つのシナリオを通して、具体的な対策とそのポイントを学んでいきましょう。
①成功シナリオ:取得条項と遺言で円滑な事業承継を実現
最も理想的な対策が施されたA社の事例です。A社の先代経営者は、後継者である長男への事業承継を考え、自身が保有する1株の黄金株に特別な仕掛けを施しました。
それは、「私(先代経営者)が死亡したことを条件に、会社がこの黄金株を相続人から取得できる」という「取得条項」を定款に定めたことです。これにより、相続が発生した瞬間に、会社は黄金株を自動的に回収(買い取り)し、経営の混乱を未然に防ぐ仕組みを構築しました。
さらに、先代経営者は公正証書遺言を作成。普通株式はすべて後継者である長男に相続させる一方、他の子供たちには預貯金などの金融資産を十分に相続させることで、遺留分にも万全の配慮をしました。
結果、先代の死後、会社はスムーズに黄金株を回収。長男は安定した経営基盤のもとで事業に集中でき、他の兄弟も納得して相続を受け入れたため、家族間の争いは一切起こりませんでした。このように、取得条項と遺言という二段構えの対策が、円満な事業承継を実現させたのです。
②失敗シナリオ:遺留分への配慮不足で紛争へ発展
次に、黄金株の設計はしたものの、相続全体のバランスを見誤ったために失敗したB社の事例を見てみましょう。
B社の先代経営者も、後継者である長男に経営権を集中させるため、「会社の株式すべて(黄金株1株と普通株式)を長男に相続させる」という内容の遺言書を作成しました。これで万全だと安心していました。
しかし、会社の株式が全財産のほとんどを占めていたため、この遺言は他の兄弟の「遺留分」を大きく侵害するものでした。遺留分とは、兄弟姉妹以外の法定相続人に保障された、最低限の遺産取得分のことです。
先代の死後、当然ながら他の兄弟は長男に対して遺留分侵害額請求を行いました。長男は多額の金銭を支払う必要に迫られ、会社の運転資金に手をつけざるを得なくなりました。最悪の場合、支払いのために株式の一部を手放すことになり、せっかく集中させたはずの経営権が再び不安定になる事態も考えられます。
この事例が示す教訓は、「黄金株の設計だけでは事業承継対策は不十分」だということです。相続人全員の権利、特に遺留分に配慮した遺産分割の計画が不可欠なのです。
③応用シナリオ:「属人的株式」でより柔軟な支配権を設計
最後に、少し専門的になりますが、「属人的株式」という別の選択肢をご紹介します。これは、黄金株(拒否権付株式)と似た効果を持ちながら、より柔軟な設計が可能な制度です。
黄金株が「特定の種類の株式」に特別な権利を与えるのに対し、属人的株式は「特定の株主」個人に特別な権利(例えば、剰余金の配当や議決権について他の株主と異なる定め)を与えるものです。例えば、「株主Aさんが持つ株式は、1株につき100個の議決権を持つ」といった定め方ができます。
この制度の大きな特徴は、その効力が「特定の株主」に紐づく点です。そのため、相続などで株式の保有者が変わると、原則として、相続人に同じ特別な権利がそのまま引き継がれる設計にはなりません。そのため、黄金株のように相続をきっかけに経営がストップするリスクを根本的に回避できます。
また、この定めは定款に置きますが、商業登記上は種類株式として扱われず登記されないと整理されるため、登記事項からは外部に伝わりにくいという特徴もあります。先代経営者が少数の株式を持ちながらも会社の支配権を維持し、相続時にはスムーズに後継者へバトンタッチしたい、といったケースでは非常に有効な選択肢となり得ます。拒否権付株式とどちらが自社に適しているか、専門家と相談して検討する価値はあるでしょう。
拒否権付株式の導入と相続対策で押さえるべき法的ポイント
実際に拒否権付株式を導入し、相続対策を講じる際には、法務・税務上のいくつかの重要なポイントがあります。専門家へ相談する前に、ご自身で基本的な知識を整理しておきましょう。
手続きの流れと定款記載例
拒否権付株式を導入するには、以下の手続きが必要です。
- 定款変更案の作成:どのような事項に拒否権を設定するのか、取得条項をどうするかなどを具体的に決めます。
- 株主総会の招集・開催:定款変更は会社の最重要事項ですので、株主総会の「特別決議」(原則として、議決権を行使できる株主の議決権の過半数が出席し、出席株主の議決権の3分の2以上の賛成)が必要となります。
- 法務局への変更登記申請:株主総会で定款変更が承認されたら、法務局へ発行済株式の内容や総数などの変更登記を申請します。
特に重要なのが、定款への記載です。例えば、取締役の選任について拒否権を設定する場合、以下のような条文を定款に加えることになります。
【定款記載例】
(種類株主総会の決議)
第〇条 当会社が取締役を選任する旨の株主総会の決議は、当該決議のほか、A種類株式を有する株主を構成員とする種類株主総会の決議がなければ、その効力を生じない。
このように、自社の状況に合わせて適切な定款記載事項を設計することが、すべての始まりとなります。
Q&A:相続税評価額はどうなりますか?
Q. 黄金株は強力な権利がある分、相続税の評価額も普通株式より高くなってしまうのでしょうか?
A. いいえ、国税庁の文書回答事例では、拒否権付株式(拒否権付種類株式)については「拒否権を考慮せずに評価する」とされています。
これは多くの方が懸念される点ですが、ご安心ください。黄金株が持つ拒否権という特別な権利は、会社の財産価値を直接的に増減させるものではないと考えられています。そのため、相続税の計算においては、他の普通株式と同じ基準(会社の純資産額や収益力など)で評価されるのが一般的です。
この点は、相続税申告の際にも重要な知識となります。税負担が増えることを心配して導入をためらう必要はありません。
参照:国税庁「相続等により取得した種類株式の評価について(照会)」
後悔しない事業承継のために、今すぐ専門家へ相談を
ここまで見てきたように、拒否権付種類株式(黄金株)は、事業承継を円滑に進めるための非常に強力なツールです。しかし、その設計には会社法、民法(相続)、そして税法といった専門知識が複雑に絡み合います。
事例で見たように、少しの設計ミスや知識不足が、将来の経営を揺るがし、大切なご家族の間に争いを引き起こす引き金になりかねません。安易な自己判断はできるだけ避け、専門家に確認することが望ましいでしょう。
私たち下北沢司法書士事務所は、お客様からのご相談に対し、法技術や税務面など多角的に課題を検証し、バランスの取れた結論を導き出すことを得意としています。必要であれば、信頼できる税理士や弁護士と連携し、チームでお客様の課題解決にあたります。どの専門家に相談すればよいか分からない、という方もご安心ください。まずはお話をお伺いし、最適な専門家への橋渡しをすることも私たちの重要な役割です。
また、事業承継や相続の問題は、法律やお金だけの問題ではありません。家族間の感情的な対立といった、非常にデリケートな側面も持ち合わせています。代表司法書士は心理カウンセラーの資格も有しており、法的な解決策をご提案するだけでなく、ご家族の皆様のお気持ちにも寄り添いながら、円満な解決を目指します。
後悔しない事業承継の第一歩は、信頼できる専門家に相談することから始まります。心に優しく、多角的に課題と向き合う当事務所へ、ぜひお気軽にご相談ください。
役員任期
会社設立の際に、ご依頼人の方とご相談しなければならないことの1つが役員の任期です。原則2年ですが、最長10年まで伸ばすことが可能。任期を伸ばしておけば、その分役員改選と登記の手間が省けます。お1人で会社を始める場合はこれで問題ないかなと思いますが、役員の方が2人以上いる場合は注意が必要です。もしも役員同士の方向性が違っても、辞任しない限り任期までは一緒に頑張ることになるので・・・。場合によっては「解任」することも可能ですが登記簿に「解任」と記録が残るので、対外上の印象が良くありません。
下北沢司法書士事務所 竹内友章
会社設立時の税金の節約
皆さんが株式会社を作ろうと思ったら登録免許税という税金が基本的に15万円かかってしまいます。
ただ、一定の要件を満たせば7万5000円節約できます。ものすごくざっくりですが、
①会社を作る本店予定地の自治体が、「創業支援事業計画」の認定を受けている
(受けている自治体が多いと思います。)
②その自治体の「特定創業支援事業」を受ける(セミナー、窓口相談等)
③支援を受けたことの証明書を自治体からもらって、法務局に提出
こんな流れです。
お金がかかることも多いでしょうし、時間もかかるので
お得な感じはそんなにしないかもしれません。
世田谷区役所の関連リンク、張っておきます。
http://www.city.setagaya.lg.jp/kurashi/101/116/294/295/d00144901.html
下北沢司法書士事務所 竹内 友章
