後見監督人との悩み解決法|司法書士が教える正しい対応

「後見監督人が理不尽…」その悩み、あなただけではありません

「一生懸命やっているのに、後見監督人の対応が高圧的でつらい…」
「質問しても、はっきりしない返事ばかりでどう動けばいいか分からない…」

ご家族のためにと親族後見人になったあなたが、専門家であるはずの後見監督人との関係で、このような理不尽さや孤独を感じているのではありませんか。そのお悩み、決してあなた一人だけのものではありません。

司法書士として多くの成年後見のご相談をお受けする中で、真面目な方ほど監督人との関係に悩み、疲弊してしまうケースを数多く目の当たりにしてきました。これは、あなただけの問題ではなく、制度が抱える構造的な側面もあるのです。

この記事では、感情的に対立して消耗するのではなく、冷静に、そして戦略的に問題を解決していくための「正しい対応法」を具体的にお伝えします。後見人としてのあなたの負担を少しでも軽くし、本来の目的である「ご本人のためのサポート」に集中できるよう、専門家として、そして一人の人間として、あなたの隣で一緒に考えていきたいと思います。

司法書士が経験した、後見監督人との向き合い方

以前、別のお客様からのご紹介でAさんという方のご相談に乗ったことがあります。Aさんはお母様の成年後見人を務めていらっしゃいました。認知症が進んだお母様のためにと成年後見制度を利用したものの、監督人である司法書士との関係に深く悩んでおられたのです。

とても真面目なAさんは、お母様のお金を使うたびに「これは正当なのだろうか」と不安になり、その都度、監督人に質問をしていました。しかし、返ってくるのは「監督人が判断することではありませんが、ご本人の希望や経済状況を鑑みて適正に判断してください」といった、結局どうしていいか分からない曖昧な答えばかり。

その結果、Aさんは後から問題になることを恐れ、お母様に必要なものでもご自身の預貯金から支払うようになってしまっていました。「これからどうやって後見業務を進めていけばいいのか…」と、途方に暮れていらっしゃったのです。

私はAさんにこのようにお伝えしました。
「まず、介護ベッドや車いすなど、ご本人の生活に必要なものは常識の範囲で自信を持って購入して大丈夫です。監督人が気になるなら、『〇〇を買っていいですか?』と許可を求めるのではなく、『〇〇を買います』と事後に報告する形にしてみましょう。もし判断に迷うことがあれば、ご自身の意見を添えて『こうしたいのですが、いかがでしょうか』と相談してみてください。それでも曖昧な答えしか返ってこない時は、『では、このように進めます。もし問題があるなら、どうすれば良いか具体的に指示してください』と、YESかNOで答えられるように話を絞り込んでいくのが有効です。本当に話が進まず困ったときは、家庭裁判所に直接相談するという選択肢もありますよ」と。

Aさんのように真面目な方ほど、「法律を知らないから」と気後れしてしまいがちですが、過度に心配する必要はありません。ご本人のためを思うあなたの常識的な感覚と、その理由を伝えることができれば、それで十分なのです。

後見人として「本人が施設移転を拒否…費用不足時の対処法」でお困りの方は、施設移転を拒否された場合の費用不足への対処法も参考にしてください。

まず知るべき「後見監督人」の役割と限界

後見監督人との無用な対立を避け、冷静に対処するためには、まず彼らの法的な立ち位置を正しく理解することが不可欠です。彼らは一体何をする人で、何ができないのでしょうか。

この点を押さえるだけで、あなたが感じている「理不尽さ」の背景が見え、感情的な反発を「構造の理解」へと変えることができます。より詳しい役割の違いについては、後見監督人と成年後見人の役割の違いの記事もぜひご覧ください。

後見監督人の主な仕事は「チェック」と「報告」

後見監督人の役割は、一言でいえば後見人の業務を「監督」することです。決して、後見人の業務を代行したり、何でも相談に乗ってくれるサポーターというわけではありません。主な仕事は以下の3つに集約されます。

  • 後見人が作成した財産目録や収支報告書などをチェックする
  • 後見業務がご本人のために適切に行われているかを監督する
  • 監督した結果を家庭裁判所に報告する

つまり、彼らは後見人の「上司」ではなく、家庭裁判所の「目」として機能している、とイメージすると分かりやすいかもしれません。そのため、一つひとつの支出に事前許可を与える立場にはないのです。

なぜ監督人の対応は理不尽に感じるのか?

では、なぜ彼らの対応が冷たく、理不尽に感じられるのでしょうか。それには、成年後見制度の構造が関係しています。

後見監督人の多くは、私たち司法書士や弁護士といった法律の専門家です。そして、彼らは後見人に対してではなく、家庭裁判所に対して責任を負っています。もし後見人の業務に問題があれば、監督不行き届きとして裁判所から責任を問われる可能性があるのです。

この立場から、以下のような対応が生まれやすくなります。

  • リスク回避的な言動:断定的なことを言わず、責任を回避しようとする。
  • 曖昧な指示:最終的な判断を後見人に委ねることで、自身の責任範囲を限定しようとする。
  • 形式的な対応:親族と深く関わりすぎず、あくまで報告書ベースでのやり取りを好む。

これは監督人個人の人柄だけの問題ではなく、「裁判所に報告する」という職務の特性から、慎重な対応になりやすい面があると考えられます。この背景を理解するだけでも、少し冷静に相手の言動を受け止められるようになるのではないでしょうか。専門家である成年後見人とのコミュニケーションにおいても、こうした構造的な課題は存在します。

参照:任意後見監督人の職務について (裁判所)

明日からできる!後見監督人との関係改善3ステップ

監督人の立場を理解した上で、次はこちらからアプローチを変えてみましょう。感情的にならず、建設的な関係を築くための具体的な3つのステップをご紹介します。これは精神論ではなく、誰でも今日から実践できる具体的な行動です。

司法書士に相談し、悩みが解決して安心した表情を浮かべる女性後見人。

ステップ1:できるだけやり取りを「記録」する

まず、自己防衛と状況整理の第一歩として、監督人との全てのやり取りを記録する習慣をつけましょう。

  • 電話:日時、相手の名前、話した内容の要点をメモする
  • メールやFAX:全て保管しておく
  • 郵送物:届いた書類は日付を書いてファイリングする

ノートやスマートフォンのメモアプリで構いません。時系列で記録を残しておくことで、「言った・言わない」といった水掛け論を防ぐことができます。さらに、この記録は、後々、家庭裁判所などに相談する際に、客観的な状況を説明するための強力な「証拠」となります。あなた自身を守るためにも、ぜひ今日から始めてみてください。特に金銭の動きは重要で、後見申立て前の財産管理の段階から記録は重要になります。

ステップ2:相談は「〇〇したいが問題ないか」と具体的に

監督人から明確な回答を引き出すには、質問の仕方を工夫することが非常に効果的です。

【悪い例】「どうすればいいですか?」

これでは、相手に判断を丸投げしていることになり、曖昧な答えが返ってきやすくなります。

【良い例】「母の生活のために介護ベッドを購入したいと考えています。費用は約10万円です。この支出について、後見業務として何か法的な問題はありますでしょうか?」

このように、「自分の意思と具体的な計画」を示した上で、法的な問題の有無を問う形にしてみましょう。こうすることで、監督人は単純な「イエス・ノー」で答えやすくなり、もし「ノー」なのであれば、その具体的な理由を説明する責任が生じます。主導権をこちらが握ることで、相手を動かすことができるのです。例えば、病院から連帯保証を求められたといった専門的な判断が必要な場面でも、この質問形式は有効です。

ステップ3:連絡は「事後報告」を基本にする

監督人との信頼関係を築く上で、「報告」の仕方も大切なポイントです。日常的な食費や消耗品の購入といった細かな支出まで、お伺いをたてるのはいささかやりすぎです。

もちろん、ご本人の居住用不動産の売却などの重要な財産処分は、家庭裁判所の許可が必要になるため、必ず事前に確認しましょう。しかし、常識の範囲内で行える日々の業務については、ある程度まとめて「事後報告」するスタイルに切り替えてみましょう。

例えば、毎月の収支報告の際に「今月は本人の衣類代として〇円支出しました」と報告するのです。これにより、あなたは「自分で適切に判断できる後見人」として監督人に認識され、無用な干渉を減らすことができます。これは、あなたの主体性を示すと同時に、監督人の業務負担を軽減することにも繋がり、結果として良好な関係を築きやすくなるのです。

それでも改善しない場合の「正しい詰め方」

コミュニケーションの改善を試みても、なお状況が変わらない…。そんな時は、より一歩踏み込んだ対処法を考える必要があります。ここで言う「詰め方」とは、感情的に相手を問い詰めることではありません。法的な手続きに則って、冷静に、しかし着実にこちらの要求を伝えていく方法です。

後見監督人とのトラブルを解決するための4ステップを示したフローチャート。準備、コミュニケーション改善、家庭裁判所への相談、最終手段の流れを解説。

まずは家庭裁判所の書記官に相談する

やはりどう考えも監督人の対応がおかしい、または後見人としての仕事がまわらず困っている時は、家庭裁判所への相談を考えても良いかも知れません。本来であれば、監督人がいるときは後見人は裁判所と直接やりとりすことはないのですが、いたしかたがないでしょう。とはいえ、「解任申立て」のような大げさな手続きをいきなり考える必要はありません。

まずは、後見事件を担当している部署に電話をし、「〇〇(被後見人名)の後見事件について、監督人の対応で困っていることがある」と伝えて、担当の書記官につないでもらいましょう。

相談する際は、ステップ1で記録した内容が役立ちます。以下のポイントを整理して、冷静に伝えましょう。

  • これまでの経緯(いつから、どのようなことで困っているか)
  • 具体的なやり取りの内容(記録したメモを元に)
  • 現在、具体的に何ができずに困っているか

家庭裁判所は、後見制度全体の監督機関です。親族後見人からの相談が届けば、裁判所から監督人に対して状況確認や指導が入ることがあります。これだけで、監督人の態度が大きく改善されることもあると思います。一人で抱え込まず、公的な機関に状況を共有し、必要な助言を受けるという視点を持つことも大切です。裁判所への説明の仕方に不安があれば、成年後見の理由書作成のポイントも参考になるかもしれません。

最終手段としての「後見監督人解任申立て」

家庭裁判所に相談してもなお改善が見られず、ご本人の利益が著しく害されていると感じる場合には、最終手段として「後見監督人の解任申立て」という手続きがあります。

ただし、これは非常にハードルが高い手続きであるとご理解ください。「対応が気に入らない」「コミュニケーションが取りづらい」といった主観的な理由だけでは、解任が認められることはまずありません。解任が認められるのは、以下のような客観的な事実がある場合に限られます。

  • 不正な行為:財産の横領など
  • 著しい不行跡:監督業務の放棄など
  • その他後見の任務に適しない事由

申立てを行うには、これらの事実を証明する客観的な証拠(記録したメモやメールなど)が不可欠です。安易に申し立てるべきではありませんが、万が一の際の選択肢として知っておくことは重要です。この段階に至った場合は、手続きが複雑になるため、必ず専門家にご相談ください。

参照:後見人等解任の申立てについて (裁判所)

後見監督人とのトラブルでお困りの方はご相談ください

【立ち止まって考える】そもそも成年後見制度は必要でしたか?

後見監督人とのトラブルを経験し、大変な思いをされた今だからこそ、少し立ち止まって考えてみていただきたいことがあります。それは、「そもそも、あなたのご家族にとって成年後見制度は本当に唯一の選択肢だったのでしょうか?」ということです。

先ほどのAさんのケースを振り返ると、実はお母様には成年後見制度を使わなければ解決できないような、差し迫った法的な課題はありませんでした。Aさんはその真面目さから、「認知症になったら、成年後見制度を使わなければならない」と思い込んでいらっしゃったのです。

しかし、「認知症=成年後見」は必ずしも正解ではありません。大切なのは、ご本人にとってどのような課題があり、その課題を解決するために最も利益となる制度は何か、という視点で判断することです。

例えば、判断能力がしっかりしているうちであれば、将来に備えて任意後見契約を結んだり、家族信託といった他の選択肢を検討することもできます。制度の利用で苦しむ前に、ぜひ一度、その必要性を根本から見直してみることをお勧めします。

既に制度を利用してしまった方は認知症などが回復しない限り・・つまり現実的にはこのまま続けるしかありませんが、もしかしたらご親類の方等、別の方のケースで約にたつ視点になるかも知れません。

まとめ:成年後見制度の利用は、専門家にご相談を

後見監督人との関係が難しい、そもそも成年後見制度は必要だったのかなど、いざ制度利用してから課題や問題に直面することは珍しくありません。こういう問題を起こらなくしたり、小さくしたりするコツは初動から専門家に相談して、段取りを整理しながら進めることです。う。

私たち司法書士は、法律の専門家であると同時に、ご家族の悩みに寄り添うパートナーでもあります。もし、現在の対応に不安や負担を感じている場合は、どうぞお気軽にご相談ください。法律的なサポートはもちろん、心理カウンセラーの資格を持つ司法書士として、あなたのお話を丁寧に伺いながら、状況に応じた対応方法を一緒に検討します。

詳しい事務所の考え方については、なぜ司法書士が心理カウンセラーの資格をとったのか?もご覧いただけると幸いです。

早めに相談することで、状況を整理し、次に取るべき対応を検討しやすくなります。

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