所有不動産記録証明制度とは?相続での使い方を司法書士が解説

親の不動産、すべて把握できていますか?相続の不安を解消する新制度

「親が亡くなったけれど、持っていた不動産が全部どこにあるのか、正直よくわからない…」
相続を目の前にして、多くの方がこのような不安にぶつかります。ご実家が遠方だったり、昔のままになっている田舎の土地や、ご先祖様から引き継いだ共有名義の不動産があったりすると、その全容を把握するのは本当に大変なことです。

固定資産税の納税通知書だけを頼りにしていても、非課税の私道や価値が低い山林などは記載されていないことも多く、「これで全部だろう」と思っていたら、後から登記漏れの不動産が見つかって大慌て…というケースは決して珍しくありません。

そんな相続手続きにおける不動産調査の悩みを、大きく解決してくれる新しい制度が、2026年2月2日から始まります。それが「所有不動産記録証明制度」です。

この記事では、相続手続きを専門とする司法書士が、この新しい制度がどのようなもので、あなたの相続にどう役立つのか、そして専門家から見た注意点まで、わかりやすく解説していきます。この記事を読み終える頃には、不動産調査への不安が和らぎ、次の一歩を踏み出すための知識が身についているはずです。どうぞ、肩の力を抜いて読み進めてみてくださいね。

所有不動産記録証明制度とは?3つのポイントでわかる基本のキ

「所有不動産記録証明制度」と聞くと、少し難しく感じるかもしれませんね。でも、ご安心ください。この制度のすごいところは、実はとてもシンプルです。ここでは、特に重要な3つのポイントに絞って、その基本を解説します。

所有不動産記録証明制度の3つのポイントを解説した図解。全国の不動産を一度に調査、相続人が請求できる、法務局が公的に証明という特徴がアイコン付きで示されている。

ポイント1:全国どこでも「一括」で不動産を探せる

この制度の最大のメリットは、なんといっても亡くなった方(被相続人)名義の不動産を、全国の法務局から一度の請求で探し出せる点です。

これまでは、故人が所有する不動産を調べるには、市区町村ごとに「名寄帳(なよせちょう)」という書類を取得する必要がありました。もし「もしかしたら、昔住んでいた〇〇県にも土地があるかもしれない…」と思ったら、その市区町村の役所に一つひとつ問い合わせなければならず、時間も手間も非常にかかっていたのです。

この新制度を使えば、最寄りの法務局で手続きをするだけで、故人が日本全国に所有している登記された不動産のリスト(証明書)を手に入れることができます。故郷が遠方にある方や、親が転勤族で複数の場所に住んでいた可能性がある方にとって、これまでの負担が劇的に軽くなる、画期的な仕組みと言えるでしょう。

ポイント2:誰が請求できる?費用はいくら?

この便利な制度ですが、誰でも利用できるわけではありません。プライバシー保護の観点から、請求できる人は限定されています。

請求できる主な人

  • 不動産の所有者本人(所有権の登記名義人)
  • 相続人等(相続人その他の一般承継人)
  • 上記から委任を受けた代理人

相続手続きで利用する場合、あなたが故人の相続人であることを証明する書類(戸籍謄本など)を提出すれば請求が可能です。

手数料と請求場所

手数料は、証明書1通につき1,600円です。(2026年1月29日現在)
請求は、全国の法務局で行うことができ、オンラインでの請求も可能です。

これまでの「名寄帳」とは何が違うのか?

不動産調査で使われてきた「名寄帳」と、新しい「所有不動産記録証明制度」。この二つはどう違うのでしょうか。それぞれの特徴を理解し、うまく使い分けることが大切です。

所有不動産記録証明制度名寄帳
調査範囲全国市区町村ごと
発行元法務局市区町村役場(都税事務所など)
元になる情報登記記録固定資産課税台帳
わかること登記されている不動産の一覧課税されている不動産の一覧
特徴非課税の私道などもわかる可能性がある未登記の建物(家屋番号がないもの)もわかる場合がある
所有不動産記録証明書と名寄帳の比較

一番大きな違いは、調査範囲です。全国を一度に調べられる新制度は、故人の不動産の全体像を大まかに把握するのに非常に強力です。一方、名寄帳は市区町村単位ですが、固定資産税の課税情報が元になっているため、登記されていない建物が見つかる可能性があるなど、より詳細な調査に向いています。

どちらか一方が優れているというわけではありません。「まずは新制度で全国の不動産を広く浅く洗い出し、不動産がありそうな市区町村がわかったら、今度は名寄帳で深く掘り下げて確認する」というように、両者を組み合わせるのが、専門家が実践する確実な調査方法です。相続登記の漏れを防ぐための複合的な調査が重要になります。

より詳しい情報については、法務省の公式サイトもご参照ください。
参照:法務省「所有不動産記録証明制度について」

司法書士が語る「所有不動産記録証明制度」の本当の価値と限界

ここからは、私たち司法書士が実務の現場でこの制度をどう見ているか、少し踏み込んだお話をさせてください。この制度は非常に強力なツールですが、決して「万能薬」ではありません。その本当の価値と、知っておくべき限界について解説します。

司法書士に相続の相談をする夫婦。専門家からの説明を受け、不安が和らいでいる様子。

実録:こんな場面で役立つ!相続登記での活用ケース

この制度が特に力を発揮するのは、次のようなケースです。

  • ケース1:親が転勤族で、どこに不動産があるか見当もつかない
    全国を転々とされていた方の不動産を、これまでの方法で探し出すのは至難の業でした。この制度を使えば、相続人の記憶にない場所にある不動産も発見できる可能性が飛躍的に高まります。
  • ケース2:価値が低いと思われがちな地方の山林や原野の存在が判明
    固定資産税がほとんどかからないような山林や原野は、納税通知書にも載らず、家族もその存在を忘れがちです。相続登記が義務化された今、これらの不動産も見逃すわけにはいきません。この制度は、そうした忘れられた不動産の発見に繋がります。
  • ケース3:売却時に発覚しがちな「私道持分」の見落としを防ぐ
    ご自宅を売却しようとした時に、前面道路の「私道」の持分だけ相続登記が漏れていたことが発覚し、慌てて手続きする…というのは典型的なトラブルです。この制度は、こうした見落としがちな権利の発見にも役立ちます。

【要注意】この制度でも見つからない不動産とは?

非常に便利な制度ですが、弱点もあります。それは、氏名・住所等を条件に検索する制度であるため、登記簿上の氏名・住所と請求時の検索条件に差異がある場合、リストに反映されない不動産が生じ得るという点です。

具体的には、以下のような不動産は見つからない可能性があります。

  • 登記簿上の住所が古いまま更新されていない不動産
    例えば、親が若い頃に購入した不動産の登記住所が、結婚前の古い住所のままになっているケースです。現在の住所で検索しても、この不動産はヒットしません。
  • 結婚や養子縁組で姓が変わる前の、旧姓のまま登記されている不動産
    同様に、現在の姓で検索しても、旧姓で登記された不動産は見つけることができません。
  • そもそも登記されていない建物(未登記建物)
    昔建てた離れや物置など、登記されていない建物は、この制度の調査対象外です。

このように、所有不動産記録証明制度は完璧なものではなく、使い方を間違えると重大な見落としに繋がる可能性があるのです。こうした相続登記でありがちなミスを避けるためにも、制度の限界を知っておくことが重要です。

プロの技:制度の穴を埋める「戸籍の附票」活用術

では、どうすれば制度の穴を埋め、調査の精度を上げることができるのでしょうか。その鍵を握るのが「戸籍の附票(こせきのふひょう)」という書類です。

戸籍の附票とは、その戸籍が作られてから現在までの住所の履歴が記録された公的な書類です。本籍地の市区町村役場で取得できます。

私たち専門家は、相続が開始したら、まず亡くなった方の出生から死亡までの戸籍謄本をすべて集めます。そして、それらの戸籍に対応する「戸籍の附票」もすべて取得するのです。ただ古いものは破棄されてしまっていることも多いのですがそれでもかなり遡れると思います。

所有不動産記録証明制度を請求する際に、附票で判明した過去の住所と姓をすべて検索条件として指定するのです。

手間はかかりますが、ここまでやって初めて、制度の検索漏れのリスクを最小限に抑えることができます。これは、正確な相続手続きを行うための、いわばプロの技です。こうした地道な戸籍の読み込みと調査が、後々のトラブルを防ぐことに繋がります。

事務所の体験談から学ぶ、新制度への向き合い方

相続のお手伝いをしていると、ご家族も知らなかった山林や、ご自宅のほんのわずかな私道持分など、不動産の見落としは本当に多く発生します。後から見つかると、遺産分割協議をやり直さなければならなかったり、売却の直前で慌てて手続きをしたりと、大変なことになりがちです。

そうした登記漏れを防ぐために、これまでは市区町村ごとの「名寄帳」が主な調査手段でした。しかし、名寄帳はあくまで課税台帳がベースなので、例えば共有名義の建物が載ってこなかったり、非課税の小さな土地は正確性に欠ける部分があったり、そして何よりその市区町村内の不動産しかわからないという限界がありました。

その点、今回の新制度は全国を網羅してくれるので、相続登記の漏れを防ぐ上で非常に心強い味方になってくれると期待しています。

下北沢司法書士事務所の代表司法書士。オフィスで親しみやすい笑顔を見せている。

ただ、この制度にも弱点はあります。先ほども説明があったように、この制度は「住所と名前」で検索をかけます。そのため、例えば登記簿上の住所が昔のままだったりすると、今の住所で検索しても見つからないのです。これは、ご高齢で亡くなった方の場合、過去の住所や旧姓をすべて洗い出すのが現実的ではないケースもあり、悩ましい点です。

実は、これと似たような仕組みは既に他の分野にもあります。それは株式の相続調査です。亡くなった方がどの証券会社に口座を持っていたかわからない時、「ほふり(証券保管振替機構)」という機関に照会をかけるのですが、これも住所と氏名で名寄せをするため、引っ越し前の古い住所もすべて指定しないと正確な調査ができません。

これまでも私たちは、権利証や売買契約書を確認し、名寄帳を取得するなど、様々な方法を組み合わせて登記漏れがないかを確認してきました。この新制度は、そこに新たな選択肢を加えてくれるものです。確認できる方法が増えることは、相続人の方にとっても、私たち専門家にとっても、間違いなく良いことだと考えています。

まとめ:相続不動産調査の「次の一歩」を踏み出しましょう

今回は、2026年2月2日から始まる「所有不動産記録証明制度」について解説しました。

この記事のポイントを振り返ってみましょう。

  • 所有不動産記録証明制度は、全国の不動産を一度に調査できる画期的な制度です。
  • 相続人も、戸籍謄本などで関係を証明すれば請求できます。
  • ただし、「登記簿上の氏名・住所」が一致しないと検索にヒットしないという限界があります。
  • 制度の穴を埋めるには、「戸籍の附票」で過去の住所や旧姓をすべて洗い出し、検索条件に加えることが有効です。
  • 従来からの「名寄帳」と組み合わせることで、より精度の高い調査が可能になります。

この新しい制度は、相続手続きにおける不動産調査の負担を大きく減らしてくれる強力な味方です。しかし、それだけで安心するのではなく、制度の特性をよく理解し、必要に応じて他の調査方法と組み合わせることが、正確な財産目録を作成し、後のトラブルを防ぐためには不可欠です。

もし、ご自身での手続きに不安を感じたり、戸籍の収集が複雑で難しいと感じたりした際には、決して一人で抱え込まないでください。私たち司法書士は、こうした複雑な調査や手続きの専門家です。あなたの不安に寄り添い、何から手をつければ良いのかを一緒に整理し、最も良い方法をご提案します。

下北沢司法書士事務所では、ご相談内容を伺ったうえで、費用の目安や進め方をご案内しています。まずはお気軽に、あなたの状況をお聞かせいただけませんか。東京23区はもちろん、埼玉・神奈川・千葉などからご依頼をいただくことも多いです。この記事をお読みの方みなさんに、お気軽ご相談いただけたら嬉しいです。

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