司法書士が解説!遺言書を作成すべき典型的な5つのケース

遺言書があれば…司法書士が現場で感じること

こんにちは。下北沢司法書士事務所の竹内です。
当事務所では、相続人が10名を超えるような複雑な相続手続き(遺産承継業務)も得意としております。相続人の方を一人ひとり調査し、ご連絡を取り、皆様にご納得いただける形で遺産分割協議書を作成し、不動産の名義変更まで一貫してサポートさせていただく。それはまさに、司法書士としての専門性が問われる仕事です。

しかしそのような複雑な案件に携わるたび、ふと思わずにはいられません。
「もし遺言書があったらなぁ・・・」

もちろん遺言がなくても、依頼者様のご負担が少ないように最大限サポートします。ただ、どうしてもかかる時間には大きな差がでますし、ご判断いただいたり相談させていただいたりする場面は遺言がある時と比べて増えてしまいます。

この記事では、遺言書がないことで手続きが複雑になりがちな典型的なケースを、現場の視点から具体的にお伝えします。ご自身の状況と照らし合わせ、「我が家には関係ない」と思わず、ぜひ最後までお読みいただければ幸いです。このテーマの全体像については、遺言が必要なケースとは?司法書士が相談事例で解説でも解説しています。

司法書士が解説!遺言書を作成すべき5つの典型ケース

相続は、どのご家庭でも起こることです。そして、少しでも法律で定められた相続人の関係が複雑になると、遺言書がない場合にトラブルへと発展する可能性が格段に高まります。ここでは、特に遺言書の作成を強くお勧めする5つのケースをご紹介します。

リビングで遺言書について悩んでいる様子の熟年夫婦のイラスト

ケース1:お子さんがいないご夫婦

「夫婦二人だけだから、私に何かあっても全財産は妻(夫)にいくはず」
このように考えていらっしゃる方は非常に多いのですが、実は法律上のルールは異なります。お子さんがいないご夫婦の場合、亡くなった方の親がご存命であれば親も相続人になります。もし親もすでに亡くなっている場合は、亡くなった方の兄弟姉妹(その兄弟姉妹が亡くなっている場合は甥や姪)が相続人になるのです。

遺言書がなければ、残された配偶者は、亡き夫(妻)の兄弟姉妹という、普段あまり付き合いのない、場合によっては何十年も会っていない親族と、遺産の分け方について話し合う「遺産分割協議」をしなければなりません。思い出の詰まったご自宅も、話し合いの結果によっては売却して代金を分けなければならなくなったり、共有名義になったりする可能性もあります。

最愛のパートナーに全財産を確実に遺し、無用な心労をかけないために、「全財産を妻(夫)〇〇に相続させる」という一文を記した遺言書は、大切な「お守り」と言えるでしょう。

ケース2:再婚していて、前配偶者との間にお子さんがいる

再婚されている方の相続は、特に複雑化しやすいケースです。遺言書がない場合、現在の配偶者やその間のお子さんと、前配偶者との間のお子さんが、同じ立場で相続人となります。

長年顔を合わせていない、あるいは全く面識のない者同士が、財産について話し合いをしなければならない状況を想像してみてください。感情的な対立が生まれやすく、お互いの生活状況もわからないため、協議がまとまらずに長期化・泥沼化する典型的な例です。

現在の家族の生活を守りたい、あるいは前妻の子と後妻との間で公平に財産を分けたいなど、ご自身の想いを実現するためには、遺言書で明確に意思表示をしておくことが不可欠です。

ケース3:相続人同士の仲が良くない、または疎遠である

「うちは財産も少ないし、揉めることなんてない」と思っていても、相続をきっかけに、それまで表面化しなかった兄弟間の不満や確執が噴出し、「争続」へと発展するケースは後を絶ちません。

遺産分割協議は、相続人全員の合意がなければ成立しません。一人でも納得しない人がいれば、話し合いは平行線をたどり、家庭裁判所での調停や審判へと進むことになります。そうなれば、解決までに数年単位の時間がかかることも珍しくなく、弁護士費用などの金銭的負担はもちろん、家族関係に修復不可能な亀裂が入ってしまう精神的なコストは計り知れません。

遺言書は、誰に、どの財産を、どれだけ遺すかを明確に指定することで、相続人同士が直接話し合う必要性をなくし、無用な争いを防ぐ「防波堤」の役割を果たします。そこには、相続における感情的な対立を未然に防ぐという、大きな価値があるのです。

ケース4:内縁の配偶者など、相続人以外に財産を渡したい人がいる

婚姻届は出していないものの、長年連れ添ったパートナー(内縁の配偶者)や、我が子同然に面倒を見てくれた長男のお嫁さん、あるいはご自身の介護で大変お世話になった方。こうした方々に「感謝の気持ちとして財産を遺したい」と考えても、遺言書がなければその想いは叶いません。

なぜなら、内縁の配偶者や子の配偶者は、法律上の相続人ではないため、相続する権利がないためです。遺言書がない場合、財産は基本的に全て法定相続人が相続します。

感謝の気持ちを形にし、特定の人に財産を遺す方法の一つが「遺言(遺贈)」です。また、お世話になった団体などに遺言によって寄付をすることも可能です。あなたの想いを確実に届けるために、遺言書の作成を検討することが重要です。

ケース5:個人事業主や会社経営者で、事業用の財産がある

個人で事業を営んでいる方や、会社の経営者にとって、遺言書は事業の未来を左右する極めて重要なツールです。事業で使っている土地・建物や、会社の株式(自社株)も、個人の財産として相続の対象となります。

もし遺言書がないまま相続が発生すると、これらの事業用資産が法定相続分に応じて相続人全員に分散されてしまう可能性があります。その結果、後継者が事業に必要な議決権を確保できなくなったり、不動産が共有状態となり事業継続に支障をきたしたりと、最悪の場合、事業そのものが立ち行かなくなるリスクを孕んでいます。

信頼できる後継者に事業用資産を集中して相続させ、会社の経営を安定させるためには、遺言書による明確な指定が不可欠です。相続財産に株式が含まれる場合の手続きは複雑であり、専門家のアドバイスを受けながら計画的に準備を進めることが重要です。

司法書士に遺言書作成の相談をし、安心している夫婦の様子

もし遺言書がなかったら?相続手続きの過酷な現実

では、もし遺言書がないまま相続が発生した場合、残されたご家族はどのような現実に直面するのでしょうか。その手続きの流れは、多くの方が想像する以上に過酷なものです。

  1. 戸籍謄本の収集:まず、亡くなった方の出生から死亡までの連続した戸籍謄本(除籍謄本、改製原戸籍謄本など)をすべて集める必要があります。本籍地が何度も変わっている場合、全国の役所に請求しなければならず、これだけで数ヶ月かかることもあります。
  2. 相続人の確定:集めた戸籍を読み解き、法律上の相続人が誰なのかを確定させます。前妻との間に子がいたり、認知した子がいたり、あるいは兄弟姉妹が相続人になる場合、会ったこともない相続人が見つかるケースも少なくありません。
  3. 財産調査:不動産、預貯金、有価証券、借金など、プラスの財産もマイナスの財産もすべて調査し、一覧(財産目録)を作成します。
  4. 遺産分割協議:確定した相続人全員で、財産の分け方を話し合います。この協議は、一人でも欠けたり、一人でも合意しなかったりすると成立しません。
  5. 遺産分割協議書の作成:全員の合意内容を書面にまとめ、相続人全員が署名し、実印を押印します。
  6. 各種名義変更:遺産分割協議書に、相続人全員印鑑証明書を添付して、ようやく銀行預金の解約や不動産の名義変更などの手続きに進むことができます。

このプロセスの最大の関門は、「相続人全員の協力が不可欠」という点です。一人でも非協力的な方、連絡が取れない方、行方がわからない方がいれば、手続きは完全にストップしてしまいます。この煩雑さと精神的ストレスは、多数の相続人がいるケースでは特に顕著となり、多くの方が「とても自分たちだけでは無理だ」と感じられるのが実情です。

想いを確実に実現する「有効な遺言書」作成の3つの要点

ご自身の想いを確実に実現し、残された家族を守るためには、法的に「有効な」遺言書を作成することが何よりも重要です。ここでは、最低限押さえておくべき3つの要点をご紹介します。

有効な遺言書を作成するための3つの要点をまとめた図解。種類の選択、形式の厳守、遺留分への配慮の3点。

要点1:自筆証書遺言と公正証書遺言、どちらを選ぶべきか

遺言書には主に2つの種類があります。それぞれのメリット・デメリットを理解し、ご自身の状況に合わせて選択することが大切です。

  • 自筆証書遺言:
    全文、日付、氏名を自筆で書き、押印することで作成できる遺言書です。手軽で費用がかからないのがメリットですが、形式の不備で無効になったり、紛失・改ざんされたりするリスクがあります。また、相続開始後、(自宅等で保管していた場合は)家庭裁判所での「検認」という手続きが原則として必要になります(ただし、法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用して保管された遺言書は検認不要です)。
  • 公正証書遺言:
    公証役場で、公証人と証人2名の立会いのもと作成する遺言書です。作成に費用と手間はかかりますが、法律の専門家である公証人が関与するため、形式不備で無効になる心配がほぼなく、原本が公証役場に保管されるため紛失・改ざんのリスクもありません。検認手続きも不要で、一般に確実性が高い方法です。

どちらが良いか一概には言えませんが、財産が多い方や相続関係が複雑な方は、後々のトラブルを避けるためにも公正証書遺言の作成を強くお勧めします。

法務省のウェブサイトでも自筆証書遺言に関する情報が公開されていますので、ご参照ください。
参照:法務省:自筆証書遺言に関するルールが変わります。

要点2:無効にならないための絶対条件(日付・署名・押印)

特に自筆証書遺言で注意が必要なのが、法律で定められた厳格な形式です。一つでも欠けていると、せっかく書いた遺言書が「ただの紙切れ」になってしまいます。

  • 全文の自筆:財産目録を除き、本文はすべて自分で手書きする必要があります。(※法改正により財産目録はパソコン作成や通帳コピーの添付が可能になりましたが、その全ページに署名・押印が必要です。)
  • 日付の明記:「令和〇年〇月〇日」のように、作成した年月日を正確に記載します。「〇月吉日」といった曖昧な記載は無効です。
  • 氏名の自署:戸籍上の氏名を正確に自分で書きます。
  • 押印:必ず印鑑を押します。認印でも法律上は有効ですが、後々の紛争を避けるためにも実印を使用するのが望ましいでしょう。

これらの要件は絶対です。安易な自己判断はせず、少しでも不安があれば専門家に相談することが賢明です。

要点3:トラブルの火種「遺留分」への配慮

「全財産を、介護をしてくれた長男に相続させる」
このような遺言は、一見すると親心のように思えますが、実は大きなトラブルの火種になる可能性があります。なぜなら、法律では兄弟姉妹以外の相続人(配偶者、子、親)に、最低限の財産の取り分として「遺留分」という権利が保障されているからです。

遺留分を侵害された他の相続人は、財産を多く受け取った相続人に対して、侵害された分に相当する金銭を請求することができます(遺留分侵害額請求)。この請求をきっかけに、家族間で深刻な争いに発展するケースは少なくありません。

もちろん、特定の相続人に多くの財産を遺したいという想いは尊重されるべきです。しかし、なぜそのような分け方にしたのかという理由を付言事項として記したり、他の相続人の遺留分にも配慮した内容にしたりすることで、将来の争いを防ぐことができます。

遺言書作成から複雑な相続まで、司法書士にご相談ください

遺言書の必要性を感じても、「何から手をつければいいのか分からない」「自分の場合はどう書けばいいのか」と悩まれるのは当然のことです。そんな時は、ぜひ私たち司法書士にご相談ください。

法的に有効な遺言書の作成をトータルサポート

司法書士にご依頼いただければ、まずお客様のお気持ちやご希望を丁寧にお伺いすることから始めます。その想いを法的に有効な形にするための文案を作成し、財産調査や必要書類の収集、そして最も確実な公正証書遺言を作成する際の公証役場との調整や証人の手配まで、一貫してサポートいたします。煩雑で専門的な手続きはすべて専門家にお任せいただき、安心して想いを形にすることができます。

万が一の場合も安心!遺産承継業務もお任せください

この記事を読んで、「うちはもう遺言書がないまま相続が始まってしまった…」と不安に思われた方もいらっしゃるかもしれません。ご安心ください。当事務所は、遺言書作成のサポートだけでなく、もし遺言書がなくて相続が複雑になってしまった場合の解決も得意としています。

相続人調査から、遺産分割協議のサポート、不動産の名義変更、預貯金の解約手続きのサポートまで、司法書士の資格が許す限り最大限の範囲で相続手続きをまとめて支援する遺産承継業務もお任せいただけます。相続人同士で直接やり取りするのが難しい場合でも、私たちが中立な立場で間に入り、円満な解決を目指します。実は遺言がない人の方が多いと思います。事前に作れてなかったとしてもごく普通のことですので、お気軽にご相談ください。

不安な気持ちに寄り添う、下北沢司法書士事務所の無料相談

相続や遺言の問題は、法律や手続きの話だけでは終わりません。そこには、ご家族の歴史や様々な想いが複雑に絡み合っています。少しでもみなさんに心を軽くしたいと思い、上級心理カウンセラーの資格も取得しました。相続の背景にある不安や辛いお気持ちにも寄り添うことを大切にしています。

「誰に相談すればいいのか分からない」「こんなことを聞いてもいいのだろうか」と一人で悩まず、まずは当事務所の無料相談をご利用ください。あなたのお話を丁寧にお伺いし、問題解決への第一歩を一緒に見つけ出します。エリアも東京23区はもちろん、首都圏全般(千葉・埼玉・神奈川・茨城)でご依頼実績があります。

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