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遠方でも成年後見人になれる?家裁の判断基準と対策を解説

2025-12-31

遠方に住んでいても成年後見人になれるのか?

遠く離れて暮らすご両親のことが気にかかり、「もし認知症が進んだら、自分が成年後見人になるべきだろうか…」と、お考えになっているかもしれませんね。しかし、いざという時に「遠方に住んでいる自分でも、後見人になれるのだろうか?」という不安が、大きな壁のように感じられることもあるでしょう。

ご安心ください。結論から申し上げますと、遠方に住んでいても成年後見人になることは可能です。法律には、後見人になる方の居住地を制限する決まりはありません。

ただし、誰でも無条件に選ばれるわけではなく、いくつかの大切なポイントがあります。この記事では、遠方にお住まいの方が成年後見人になるための具体的な道のり、家庭裁判所が何を見ているのか、そして実務上の課題をどう乗り越えればよいのかを、司法書士の視点から優しく、そして詳しく解説していきます。あなたの不安が少しでも和らぎ、次の一歩を踏み出すためのヒントになれば幸いです。

原則可能だが、家庭裁判所の判断が重要

成年後見人になるために、ご本人の近くに住んでいる必要は法律上ありません。しかし、実際に誰を後見人に選任するかを決めるのは、家庭裁判所です。家庭裁判所は、ただ一人、ご本人の「利益」や「身上保護」を第一に考えます。

そのため、「この候補者は、ご本人の財産をしっかりと守り、生活を見守る『後見の職務』をきちんと果たせるだろうか?」という視点で、候補者の方の状況を総合的に判断します。遠方に住んでいるという事実は、その意味ではマイナス要因になってしまうと考えるべきでしょう。厚生労働省の示す成年後見人等の選任と役割においても、職務を適切に行えるかどうかが重視されています。大切なのは、物理的な距離というハンディキャップがありつつも、その人が後見人になることがご本人のメリットになることを説明できることになってきます。

遠方に住む親を思い、成年後見制度についてパソコンで調べている女性のイメージ

家庭裁判所はここを見る!遠方の後見人選任における判断基準

では、家庭裁判所は具体的にどのような点を見て、遠方に住む候補者が後見人としてふさわしいかを判断するのでしょうか。後見人の主な仕事は「財産管理」と「身上監護」の二つです。家庭裁判所も、この二つの職務を遠方からでも適切に行えるかという視点で、候補者の方を評価します。

1. 財産管理を適切に行えるか

財産管理とは、ご本人の預貯金の入出金管理、不動産や有価証券の管理、年金の受領、税金や公共料金の支払いなど、お金に関する一切の管理を指します。後見人は、これらの収支をすべて記録し、定期的に家庭裁判所に報告する義務があります。

遠方にお住まいでも財産管理は過不足なく行えるとは思いますが、特に次のような点について自ら積極的に説明する姿勢を見せると、家庭裁判所としても安心だと思います。

  • 可能な限り支払いを引き落としにして、現金を取り扱う場面を少なくする
  • 近隣の管理会社と連携する等、ご本人がお持ちの不動産について適切に維持管理する
  • ご本人に定期的に現金を渡す必要がある時は交通費とのバランスも考えて適切なペースや金額を提示する

こういうポイントに聞かれてから答えるのではなく、家庭裁判所に後見申し立てをする時点で積極的に説明するのも一案です。

2. 身上監護を適切に行えるか

身上監護とは、ご本人が安心して穏やかな生活を送れるように、生活環境を整えることです。具体的には、ご本人の心身の状態や生活の様子を定期的に確認し、必要な介護サービスや医療機関との契約手続き、施設への入退所手続きなどを行います。

物理的な距離があると、この身上監護が最も難しい課題となりがちです。家庭裁判所が特に懸念するのは、「緊急時にすぐ駆けつけられない」「日々の小さな変化に気づきにくいのではないか」という点です。そのため、以下のような点を明確に説明する必要があります。この点、施設に入居しており本人を保護する体制が整えられていたり、介護関係者と連携して本人の様子を誰かしら身に行ける状況が作られているなど、遠いことで生じるマイナス面をどうフォローするのか、後見人の職務として考える必要があります。

3. 協力者や支援体制が整っているか

2とも繋がりますが、遠方にお住まいの方が後見人に選ばれる上で、最も強力な後押しとなるのが「支援体制」です。すべてを一人で抱え込むのではなく、周囲の協力を得られる環境が整っていることを示すことができれば、家庭裁判所も安心して選任しやすくなります。後見人そのものも、誰かを頼らないで自分だけで駆け込むと体力的・精神的なプレッシャーに押しつぶされてしまうかも知れません。

例えば、以下のような協力者がいると心強いでしょう。

  • ご本人の近隣に住んでいて、何かあればすぐに様子を見に行ってくれる他のご親族
  • 日々の生活をサポートしてくれるケアマネージャーやヘルパーとの良好な関係
  • 地域の民生委員や地域包括支援センターとの連携

「自分は遠くにいるけれど、これだけの人たちがチームとしてご本人を支える体制ができています」と示すことができると良いと思います。

家庭裁判所が遠方の成年後見人候補者を判断する3つの基準「財産管理」「身上監護」「支援体制」を示した図解

司法書士が解説!遠方で後見人になるデメリットと具体的な対策

家庭裁判所の判断基準をご理解いただいた上で、ここでは実務上、遠方で後見人になる際に直面しがちなデメリットと、それを乗り越えるための具体的な対策をセットで解説します。事前に課題を把握し、備えておくことで、不安は大きく軽減されます。

デメリット1:緊急時の対応が遅れる

最も心配されるのが、ご本人の急な体調変化や事故などの緊急事態です。遠方にいると、連絡を受けてもすぐに駆けつけることができません。このタイムラグが、ご本人の不利益につながってしまう可能性はゼロではありません。

【対策】
このリスクを最小限にするためには、「緊急連絡網」と「代理対応の協力者」を事前に確保しておくことが不可欠です。ご本人の状況をよく知るケアマネージャー、施設の職員、近隣にお住まいのご親族など、複数の連絡先をリストアップし、緊急時には誰がどのような役割を担うのかを明確に決めておきましょう。「何かあったら、まず〇〇さんに連絡し、病院への付き添いをお願いする」といった具体的な取り決めがもしできれば、本人も後見人も安心です。

デメリット2:日常的な見守りやコミュニケーションが困難

頻繁に会えないことで、ご本人の心身の小さな変化に気づきにくくなる可能性があります。また、コミュニケーションが不足すると、ご本人が孤独を感じたり、後見人に対して不信感を抱いてしまったりすることもあります。

【対策】
もしもご本人が対応できる状態なら、現代のテクノロジーを積極的に活用するのも一案です。スマートフォンやタブレットを使った定期的なビデオ通話はお互いの顔を見ながら話せるため、電話だけよりも安心感が高まります。また、地域の見守りサービスを利用したり、ヘルパーさんから訪問時の様子をこまめに報告してもらったりすることも有効です。ご親族間でLINEグループなどを作り、ご本人の情報を常に共有できる体制を整えておくのも良い方法です。確かに認知症がかなり進んでしまった状態ではできないでしょうが、ご本人の状態によっては有効です。

デメリット3:交通費や時間の負担が大きい

ご本人のもとへ定期的に通うための交通費や移動時間は、決して無視できない負担です。「この費用は自腹なのだろうか…」と心配される方もいらっしゃるかもしれません。

【対策】
後見事務に必要な費用(合理的な範囲の交通費等)は、民法861条2項により本人の財産から支弁します。なるべく引き落としにすると振り込む手間も省けるし、通帳に振込先も記録されるので楽です。現金の場合は支出の必要性・相当性が説明できるよう、日付・目的・経路・金額、領収書等を記録・保管し、定期報告で説明できる形にしておきましょう。エクセルなどで簡単で良いので費用内訳表を作っておくと、裁判所に説明するときもそれを提出すれば簡単なため、便利だと思います。

参考資料
後見人の費用負担に関する基本的な考え方については、以下の資料も参考になります。
裁判所|早わかり 成年後見人

遠方で成年後見人になる際のデメリット「緊急対応」「見守り」「費用負担」と、それぞれの対策をまとめた図解

【実績紹介】当事務所が担当した遠方の成年後見ケース

ここでは、実際に当事務所が司法書士として、遠方にお住まいのご本人様の成年後見人に就任したケースをいくつかご紹介します。机上の空論ではなく、実際の経験から見えてきた「遠方でも後見業務を全うするための勘所」を感じていただければと思います。

成年後見人は、ご本人の様子を見に行きやすいという点で、お住まいが近いに越したことはありません。しかし、様々な事情から、遠方に住むご親族や専門家が後見人に就任するケースは実際に存在します。当事務所がこれまでに経験した事例には、それぞれに特別な背景がありました。

ケース1:複雑な不動産売却が控えていたケース(ご本人:千葉県)

このケースでは、ご本人様が所有する不動産の売却が予定されていましたが、近隣の土地所有者と歩調を合わせて売却する必要があり、非複雑な調整が求められる状況でした。事務所からは遠方でしたが、私の不動産会社での勤務経験や売却実務の知識に期待を寄せていただき、後見人に選任されました。法律手続きだけでなく、不動産取引の機微を理解している専門家だからこそ、円滑に話を進められた事例です。

ケース2:ご家庭の事情を長年把握していたケース(ご本人:茨城県)

あるご家庭とは、相続対策の生前贈与などで長年お付き合いがありました。そのお父様が認知症となり後見人が必要になった際、ご家庭の状況や人間関係を深く理解している私に白羽の矢が立ちました。お住まいは茨城県でしたが、信頼関係が構築できていたことが、距離の壁を越える決め手となりました。

ケース3:ご親族が都内にお住まいだったケース(ご本人:神奈川県)

ご本人様は神奈川県にお住まいでしたが、後見の申立てを主導するご親族が都内の方でした。そのご親族が複数の事務所を比較検討された上で、当事務所にご依頼くださいました。後見業務は、ご本人様だけでなく、ご親族との密なコミュニケーションが不可欠です。ご親族が安心して相談できる相手であることも、後見人選びの重要なポイントだと改めて感じたケースです。

ケース4:家計の立て直しが急務だったケース(ご本人:神奈川県)

施設に入居されている方の甥御さんからご相談を受け、当初は甥御さん自身が後見人になる予定で準備を進めていました。しかし、財産状況を詳しく調べると、家計は赤字で、このままでは10年以内に預貯金が底をつくことが判明。施設の移転なども含めた抜本的な立て直しが必要な状況でした。

甥御さんを候補者として申立てをしましたが、家庭裁判所から「本当に家計の立て直しができますか?」と計画の提出を求められ、甥御さんは対応に苦慮されていました。裁判所から、専門職後見人の選任も含めて検討するよう示唆があり、最終的に専門職後見人として当職が選任されました。ご本人の生活を守るためには、時に専門家によるシビアな判断と実行力が求められるのです。

このように、一口に「遠方」と言っても事情は様々です。特にご自宅で生活されている場合は、介護関係者と密に連携し、安定した生活基盤を築けるかが鍵となります。選任可否は距離だけで一律には決まりません。面会頻度、緊急時の支援体制、財産管理の具体的方法、関係機関(ケアマネ等)との連携体制などを具体的に示せるかが重要です。

遠方からの成年後見、専門家への相談も選択肢に

ここまでお読みいただき、遠方にお住まいでも成年後見人になれる可能性と、そのために乗り越えるべき課題について、具体的なイメージが湧いてきたのではないでしょうか。

ご自身で後見人になる道を選ぶにせよ、様々な課題を前に「自分一人では難しいかもしれない」と感じる場面もあるかもしれません。特に、ご親族間の意見調整が難航しそうな場合や、不動産の売却など専門的な知識が必要な手続きが控えている場合は、無理に一人で抱え込まず、私たちのような専門家を頼ることも有効な選択肢の一つです。成年後見では、ご本人の居住用不動産(ご自宅など)を売却する場合、家庭裁判所の許可が必要であり、専門的な手続きが求められます。

司法書士は、法律の専門家として申立て手続きをサポートするだけでなく、時には自らが後見人に就任し、ご本人とご家族の皆様に寄り添いながら、財産と生活を守るお手伝いをします。

ご自身で後見人になる方も、専門家への依頼を検討する方も

「自分が後見人になるつもりだが、手続きの進め方だけ教えてほしい」
「やはり自分では難しいので、専門家にお願いすることを検討したい」

どちらの段階であっても、私たちはあなたの良き相談相手でありたいと考えています。ご自身の状況やご希望を丁寧にお伺いし、あなたとご家族にとって最善の道は何かを「一緒に考える」パートナーとして、全力でサポートいたします。どんな些細なことでも、一人で悩まずにお話しください。

東京近郊(千葉・埼玉・神奈川・茨城)からのご相談も歓迎します

当事務所は下北沢にありますが、これまでにもご紹介した通り、東京都内だけでなく、千葉県、埼玉県、神奈川県、茨城県など近隣県にお住まいの方からのご相談も数多くお受けしてきました。

主な対応エリアはこちら↓

対応エリア | 相続手続、遺言、相続放棄、会社設立、不動産売却なら下北沢司法書士事務所

「うちのケースは遠いから、相談しても断られるかもしれない」と諦めてしまう前に、ぜひ一度、当事務所のご相談をご利用ください。お話を伺った上で、私たちができること、そして最善の解決策を一緒に見つけていきましょう。あなたからのご連絡を、心よりお待ちしております。

成年後見に関するご相談はこちら

なぜ相続手続きが遅れる?司法書士選びで失敗しない秘訣

2025-12-29

「頼んだのに、なぜ?」相続手続きが遅い司法書士がいる本当の理由

年末、皆様どのようにお過ごしでしょうか。中には直近で家族を亡くされ、年末年始の休暇も葬儀に追われたり辛い気持ちに向き合っている方もいらっしゃるかも知れません。大切なご家族が亡くなられ、悲しみの中で始まる相続手続き。ただでさえ心身ともに大きな負担がかかる中、頑張って司法書士事務所に電話やメールをして相続手続きをに依頼したにもかかわらず、「一向に手続きが進んでいる気がしない…」「連絡がないけど、どうなっているんだろう?」と、新たな不安や焦りを感じていらっしゃる方は少なくありません。

実は司法書士が相続手続きが遅れてしまうのは、事務所内でその事務所が請け負っている仕事をどうすすめていくか、構造的な問題があることが多いです。今日はどういう問題が起きるのかと当事務所はどうやって予防しているのか、お伝えをしていきます。当然、当事務所にご依頼をいただけるのが一番嬉しいですが、そうでない方にも司法書士選びの参考になると思います。

司法書士側の「言いにくい」事情|手続きが遅れる2つの構造的問題

「専門家なのだから、スムーズに進めてくれるはず」そう期待するのは当然のことです。しかし、残念ながら、すべての司法書士事務所がその期待に応えられるわけではありません。その背景には、あまり表では語られることのない、司法書士事務所で起こりがちな仕事のスケジュール管理などの問題が関係していることがあります。

法人ではなく個人の方のお仕事の場合は、残念ながらこの問題に遭遇しがちです。ここでは、なぜ個人の相続手続きが後回しにされてしまうことがあるのか、その「言いにくい」内部事情を正直にお話しします。

①短期の仕事に押されてしまうケース

司法書士の仕事には、大きく分けて2つの種類があります。一つは、不動産の売買に伴う登記(決済業務)に代表される数か月以内に終わり、納期がはっきり決まっている「短期の仕事」。もう一つは、相続手続きのように、戸籍の収集や遺産分割協議など、完了までに数ヶ月から1年以上かかることもある「長期の仕事」です。

不動産会社や銀行との取引が主の事務所は、この短期の仕事がひっきりなしに舞い込んできます。納期が厳格に決まっているため、どうしてもそちらの対応に追われがちになります。その結果、相続のような長期的な案件は「まだ時間があるから」と、つい後回しにされてしまうことがあるのです。こういうことはあってはいけないのですが、短期の仕事の方が目の前に大きなプレッシャーがある状態のため、入る仕事をスケジュール管理の目線を持たないで仕事をしていると長期の仕事がおろそかになりがちです。

②大口顧客の対応で後回しにされるケース

多くの司法書士事務所は、経営を安定させるために、不動産会社や銀行、ハウスメーカーといった「お得意様」を抱えています。これらの大口顧客からは、継続的に多くの仕事が依頼されるため、事務所としては最優先で対応せざるを得ない、という力学が働きがちです。

特に規模の大きな事務所ほど、この傾向は強くなることがあります。大口顧客からの依頼をこなすために人員を割いていると、どうしても個人のご依頼者様への対応が手薄になったり、優先順位が下がってしまったりすることが起こり得るのです。その結果、「いつまで経っても自分の順番が回ってこない」という事態につながってしまうことがあります。

当事務所が「手続きを遅らせない」ために徹底していること

年に一度あるかないかですが、「他の司法書士の先生にお願いしているけれど、あまりにも遅く、進んでいる様子がない」というご相談を受け、当事務所に依頼先を変更される方がいらっしゃいます。同じ司法書士として、手続きが遅れてしまった先生のご事情も、何となく察しがつきます。だからこそ、当事務所では、先ほどお話ししたような構造的な問題に陥らないよう、独自の工夫を徹底しています。

1. 仕事の進め方の工夫
短期の仕事に長期の仕事が押されてしまう問題は、当事務所でも起こりうるリスクです。そこで、私はご依頼を受けたら、まず「できることをどんどん前倒しで」進めることを徹底しています。前倒しで進めるということは情報が出そろってない状態で進めることも増えるため、手数が増えたり効率の悪い動きにつながりがちです。業務効率からすると待った方が良いことがありますがそれよりも早く進める方を優先します。こうすることで、時間が取りにくい繁忙期に入ってもある程度作業は進んでいる状態を事前に作ります。そのままのスピードでお仕事が完結することのあり「思ったより全然早くて助かった」と評価をいただけることも少なくありません。そしてもう1つ。例え繁忙期に入って短期の仕事に追われている時でも、必ず1日のうち一定時間は長期の案件に向き合う時間を確保し、全ての案件が着実に前進するよう管理しています。

2. 「個人のお客様」を最優先する体制
私は独立して事務所を開業したとき「個人のお客様に特化する」と決めていました。大口のお客様が中心になると結局はその取引先のルールで仕事をすることになり、エンドユーザーのためになる仕事ができないからです。そこで当事務所は、特定の不動産会社や銀行といった、経営の根幹をなすような大口の取引先をあえて持っていません。もちろん、継続的にお付き合いのある不動産会社様や税理士様、弁護士様はたくさんいらっしゃいますが、「この取引先を失ったら経営が成り立たない」という関係性のところはありません。このスタンスを貫くことで、私たちはすべてのご依頼者様に対して、分け隔てなく公平に向き合うことができます。結果として、特定のお客様の都合で、他のお客様の仕事が遅れるという事態を防いでいるのです。

3. 司法書士本人による、血の通ったコミュニケーション
そして、私が何よりも大切にしているのが、ご依頼者様への丁寧な報告・説明・相談です。相続手続きは、法律や専門用語が多く、ただでさえ分かりにくいものです。私たちは、途中経過のご報告はもちろん、メールやお手紙での状況説明、お電話でのご相談など、一件一件、皆様の状況やご不安に合わせたコミュニケーションを心がけています。また案件の途中で依頼内容には入っていないけどやった方がいいと思うこと、確認した方がいいと思うことも出てくることがあります。例えば、空き家不動産があるのなら火災保険に入っているのか確認し、もしも保険が切れていたら加入の手続きについて保険会社とお客様を取り次いだりします。こういう、「対応した方がいいと思ったら社内事情を無視して対応できる」のは個人事務所にご依頼いただく大きなメリットであり、また私のやりがいでもあります。

司法書士事務所の業務は、思いのほかマニュアル化されていることがあります。もし担当が事務職員だった場合、その職員はマニュアルの範囲でしか対応できず、「聞いていることと答えが違う」といったストレスを感じさせてしまうかもしれません。

当事務所では、司法書士が窓口となり、案件の状況に応じて対応します。当事務所では、司法書士が直接担当する体制をとっています。法律を形式的に当てはめるのではなく、お一人おひとりのご事情に合わせた「ご事情に配慮した対応に努めます。」

手続きが遅れることによる3つの重大なリスク

「少しぐらい遅れても、最終的に終わればいいのでは?」と思われるかもしれません。しかし、相続手続きの遅延は、あなたが思っている以上に深刻なリスクを引き起こす可能性があります。漠然とした不安を具体的なリスクとして知ることで、迅速な対応の重要性を改めてご理解いただけるはずです。

相続手続きが遅れることによる3つの重大なリスク(金銭的・手続き的・精神的)をまとめた図解。

①金銭的リスク:過料や税金の特例が受けられない可能性

最も分かりやすいのが、金銭的な不利益です。2024年4月1日から相続登記が義務化され、正当な理由なく手続きを怠った場合、10万円以下の過料が科される可能性があります。これは、法務省のウェブサイトでも周知されている重要な変更点です。(相続登記の申請義務化に関するQ&A)

さらに、相続税の申告が必要な場合、手続きの遅れは致命的になりかねません。申告期限を過ぎると無申告加算税・延滞税などのリスクが高まり、各種特例の適用にも影響が出るおそれがあります。もしも本来は適用できた配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例が手続きの遅れにより適用できなくなってしまったら、数百万円単位で納税額が変わってしまうケースも珍しくありません。

②手続き的リスク:不動産の売却や担保設定ができない

亡くなった方名義の不動産は、原則として相続登記(必要に応じて売買や担保設定の登記と同時申請を含む)をしないと、売却や担保設定などの手続きが進められません。

例えば、「相続した実家を売却して、そのお金で介護施設の費用を支払いたい」「事業資金のために、相続した土地を担保に融資を受けたい」といった計画があっても、手続きが遅れている間は何もできず、ただ時間だけが過ぎていきます。このように、相続不動産の売却などを考えている場合、手続きの遅れはライフプランに直接的な打撃を与えてしまうのです。

③精神的リスク:相続人間のトラブルと終わらないストレス

手続きが長引くことは、精神的な負担も増大させます。最初は円満だった相続人同士の関係も、手続きが停滞することで「誰かのせいで進まないのでは?」といった疑心暗鬼が生まれ、不信感が募り、やがて深刻なトラブルに発展してしまうことがあります。

また、「いつになったら終わるのだろう」という先の見えない不安を抱え続けること自体が、大きなストレスとなります。大切な方を亡くした悲しみを乗り越えるためにも、手続きという現実的な問題を一日も早く終わらせ、心の平穏を取り戻すことは非常に重要です。私たちは、相続における感情的な対立がいかにご本人を苦しめるかを知っています。だからこそ、迅速な解決が心のケアにも繋がると考えています。

スピードと信頼性で選ぶ!後悔しない司法書士選び5つの秘訣

では、どうすれば手続きを迅速かつ丁寧に進めてくれる、信頼できる司法書士を見つけられるのでしょうか。ホームページの見た目や料金の安さだけで選んでしまうと、後悔することになりかねません。どの司法書士でも同じ、ということは決してありません。ここでは、「スピード」と「信頼性」という観点から、本当にあなたのためを思ってくれる司法書士を選ぶための5つの秘訣をお伝えします。

書類の山を前に頭を抱える人。信頼できない司法書士を選んだことによる後悔とストレスを象徴しています。

1.「個人のお客様」を大切にしているか見極める

事務所のウェブサイトやパンフレットを見て、「法人のお客様へ」「不動産業者様へ」といった言葉ばかりが多くビジネス偏重の雰囲気がする事務所は、少し注意が必要かもしれません。それは、事務所の事業の中心が法人顧客であり、個人の依頼は二の次になってしまう可能性があるからです。「個人のお客様の悩みに寄り添う」という理念やメッセージを明確に打ち出している事務所を選びましょう。

2. 担当者が「司法書士本人」であるか確認する

規模の大きな事務所では、最初の相談は司法書士が対応しても、その後の実務的なやり取りは無資格の事務員が担当するというケースが少なくありません。もちろん優秀な事務員の方もいますが、複雑な質問に答えられなかったり、マニュアル通りの対応しかできなかったりすることもあります。いくら知識があっても勝手なことを言ったり余計な確認をして時間をかけると事務所に怒られてしまうのです。初回の相談時に「最初から最後まで、司法書士の先生ご自身が担当してくださるのですか?」と必ず確認しましょう。資格者本人が直接対応してくれることは、質の高いサービスと安心感の証です。

3. 業務の進捗報告を徹底しているか質問する

依頼後に最も不安なのが「放置されている」と感じることです。これを防ぐために、相談の段階で「どのくらいの頻度で、どのような方法で進捗を報告していただけますか?」と具体的に質問してみてください。「月に一度は必ずメールでご連絡します」「大きな動きがあれば、その都度お電話します」など、明確な答えが返ってくる事務所は信頼できます。LINEやテレビ電話など、柔軟なコミュニケーション手段に対応してくれるかも確認すると良いでしょう。

4. 無理な営業で、件数を大量に受任することに偏重してないか。

「たくさんの依頼を受けていて、流行っている事務所」が、必ずしも良い事務所とは限りません。むしろ、一人ひとりのお客様に丁寧に向き合うために、事務所で受けきれないと判断仕事はあえてお断りしている事務所もあります。確かに、断られた方は辛い気持ちになるでしょう。ですが無理に大量受任して業務が遅れるようでは、誰のためにもなりません。特に「~コンサルタント」のような名前で営業部隊がいて、受任後に実務を行う司法書士に引き継ぐ場合は少し注意が必要かも知れません。どこの会社でもそうですが営業部は当然、とれるだけの仕事をとろうとし現場での齟齬を生じるリスクがあります。

5. あなたの「心」に寄り添う姿勢があるか

相続は、単なる法律手続きではありません。そこには、大切なご家族を失った悲しみ、将来への不安、他の相続人との複雑な感情など、様々な「心」の問題が絡み合っています。法律の知識を機械的に説明するだけでなく、あなたの話にじっくりと耳を傾け、不安な気持ちに寄り添ってくれる司法書士を選びましょう。言葉遣いや表情、事務所の雰囲気などから、その姿勢はきっと伝わってくるはずです。

一人で抱え込まないでください。まずはご相談から始めませんか?

今日は相続手続きがなぜ遅れるのか、そして信頼できる司法書士をどう選べばいいのか、私なりに解説させていただきました。

相続という大きな出来事に直面し、不安でいっぱいになるのは当然のことです。しかし、その手続きのことで、これ以上あなたが心を悩ませる必要はありません。一人で情報を集め、一人で悩み、一人で決断しようとすると、心も体も疲弊してしまいます。

問題が解決し、司法書士と握手をする相談者。信頼できる専門家を見つけ、安心した様子を表しています。

当事務所は、単に法律手続きを代行するだけの存在ではありません。不動産実務などの知見も活かしながら、あなたの状況を多角的に理解し、法的な問題だけでなく、その背景にある不安やストレスにも寄り添います。

エリアも事務所のある世田谷区近辺だけでなく足立区や板橋区など比較的事務所から遠いエリアも含む東京23区、神奈川・千葉・埼玉などからもご依頼をいただいております。単に近場というだけでなく、より話しやすかったり気づいた課題について積極的に説明・提案をする司法書士を探していただいた方たちです。

対応エリア | 相続手続、遺言、相続放棄、会社設立、不動産売却なら下北沢司法書士事務所

もし今、あなたが相続手続きのことで少しでもお困りでしたら、どうか一人で抱え込まないでください。最初の一歩として、まずは当事務所の無料相談を利用してみませんか?あなたのお話を、心からお待ちしています。

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下北沢司法書士事務所 竹内友章

みなし解散後、連絡が取れない法定清算人を円満に退任させる方法

2025-12-10

「みなし解散」後、会社は放置されていませんか?

最後の登記から12年以上が経過した株式会社は、法律の規定により、登記官の職権で解散させられてしまいます。これを「みなし解散(休眠会社の整理)」と呼びます。法務局から通知が届き、登記簿上も「解散」と記載されるため、多くの方が「これで会社がなくなった」と安心してしまうかもしれません。

しかし、登記上は解散したはずなのに、なぜかスッキリしない…。心のどこかで、何かやり残したことがあるような、漠然とした不安を感じてはいないでしょうか。もしそうであれば、その感覚は正しいものです。実は「みなし解散」は、会社を完全に閉じるための手続きの一部に過ぎません。

この記事では、その不安の正体を明らかにし、特に元役員と連絡が取れなくなってしまったケースで、いかにして会社を円満かつ完全に閉じることができるのか、具体的な解決策を専門家の視点から解説します。当事務所独特の解決方法をお客様に提案した事例も記載しています。ぜひご一読ください。

解散しても会社は消滅しない「清算会社」という状態

「みなし解散」の登記がされても、会社の法人格がすぐに消滅するわけではありません。会社は、残された財産の整理や債務の弁済といった後片付けを行うための「清算会社」として、法的に存続し続けます。

つまり、会社を完全に消滅させるためには、この後片付けの手続きである「清算」を完了させ、法務局に「清算結了」の登記を申請する必要があるのです。この清算結了登記が完了して初めて、会社は名実ともに消滅します。したがって、「みなし解散」の状態で放置しているということは、法的に不安定な「清算会社」を管理しないまま放置しているのと同じことなのです。

自動的に就任する「法定清算人」とその重い責任

では、誰が清算手続きを進めるのでしょうか。みなし解散の場合、原則として、解散当時に取締役だった方々が自動的に「法定清算人」に就任します。

この「法定清算人」には、会社の財産を調査・管理し、債権者に弁済し、残った財産を株主に分配するという、法律上の重い責任が課せられます。たとえご自身にそのつもりがなくても、法律上は会社の最終的な後始末を担う責任者とみなされているのです。

もし、あなたが元役員の一人であれば、知らず知らずのうちにこの責任を負っている可能性があります。そしてそれは、今では連絡が取れなくなってしまった、かつての同僚である元役員も同様なのです。

解散状態の会社を放置するリスク

解散状態の会社を放置したままにしても、永久に法定清算人としての責任が生じ続けます。更に会社が存続する以上、将来相続が発生したら、あなたの相続人がその解散状態の会社の株主となってしまいます。しっかりと清算結了させることが重要です。

法定清算人を1人に絞るには?

では、清算人からもう連絡が取れない前の取締役をはずすことができないのでしょうか。連絡が取れないのですから辞任は求められません。次に考えるのは清算人を株主総会で「解任」するという方法です。しかし、解任にも問題がないわけではありません。

解任も可能だができるなら避けたい。なぜなら・・・

株主総会の決議による清算人の「解任」は、法律で認められた手続きです。しかし、この方法にはいくつかの問題点があります。

まず、「解任」という言葉には、「クビにする」という非常にネガティブな響きがあります。たとえ連絡が取れなくても、かつて共に事業を営んだ仲間を一方的に解任することに、心理的な抵抗を感じる方も少なくありません。もし後日、その事実を知った元役員との間で、感情的なしこりが残る可能性も否定できません。

さらに、法務局に登記される際、その役員の退任理由は「解任」と明確に記録されます。これは公的な記録として残り続けるため、無用なトラブルの火種となりかねないのです。

清算人の退任方法について、「解任」と「任期満了」の2つの手続きを比較し、任期満了が円満な解決策であることを示す図解。

当事務所がこの問題を解決したケース

当事務所もこの課題に直面したことがありました。その時に依頼者さまに提案したのが、株主総会で定款を変更し、新たに「清算人の任期」を設けるという手法です。多くの会社の定款には、取締役の任期は定められていても、清算人の任期については定めがありません。任期の定めがなければ、清算人は清算結了までその職務を続けることになり、自ら辞任しない限り退任することはないのです。

そこで、以下のような手順を踏みます。

  1. 株主の確定:まず、現在の株主が誰であるかを正確に調査・確定します。
  2. 株主総会の開催:株主総会を招集し、「清算人の任期を〇年とする」という定款変更の決議を行います。
  3. 任期満了による退任:定款で定めた任期が経過すれば、連絡が取れない清算人を含め、すべての清算人は「任期満了」という非常に自然な形で退任することになります。
  4. 新清算人の選任:その後、改めて株主総会で、連絡が取れ、積極的に手続きに関与できる方のみを新しい清算人として選任します。

この方法により、解任を回避して退任理由を「任期満了」とする運用が検討できます。ただし、個々の事案により手続きの可否やリスクは異なるため、詳細は個別にご相談ください。当事務所では、関係者の感情や実情を考慮した手続きを提案しています。

【司法書士より】実体に寄り添う手続きの重要性

清算人の任期規定を定款に明記することにより得られる法的効果や手続き上の利点について、個別の事情に応じてご説明します。

長年連絡が取れなくなったとはいえ、かつては共に汗を流した仲間です。その方に、一方的に「解任」という不名誉な記録を残すことが、本当に最善の道でしょうか。また、連絡が取れないその方にとっても、知らないうちに法的な責任を負わされ続けることは本意ではないはずです。

「任期満了」という形をとることで、関係者全員にとって心理的な負担が少なく、誰も傷つかない形で問題を解決できます。手続き上のスムーズさだけでなく、関わる人々の心にも配慮すること。これこそが、将来の予期せぬトラブルを防ぎ、お客様にとって真の安心につながる「実体に即した手続き」であると、私たちは信じています。

手続きは複雑。まずは司法書士にご相談ください

ここまで解説してきた「清算人の任期規定」を設ける手続きは、非常に有効な解決策ですが、定款変更や株主総会決議、複数回にわたる登記申請など、専門的な知識と正確な手順が求められます。ご自身で進めるには、多くの時間と労力がかかり、手続きに不備があればやり直しになる可能性もあります。

このような複雑な状況にこそ、私たち司法書士がお力になれます。ぜひ一度、初回無料相談(30分・司法書士業務に関する相談に限る)をご希望の方はこちらからお申し込みください。をご利用ください。

株主の確定から定款変更、登記申請まで一括サポート

当事務所では、定款変更・登記申請等の司法書士業務を一括してサポートします。

  • 株主の調査・確定:長年放置された会社の現在の株主が誰なのか、過去の資料や記録を基に株主調査をサポートします。
  • 法的手続きのプランニング:お客様の会社の状況を丁寧にお伺し、最適な手続きの流れをご提案します。
  • 必要書類の作成:株主総会の招集通知、議事録、定款、登記申請書など、法的に有効な書類をすべて作成します。
  • 法務局への登記申請:作成した書類を基に、法務局への一連の登記申請を代行します。

お客様には、必要最低限のご負担で、スムーズかつ確実に会社を閉じることができるよう、責任をもってサポートいたします。

心に寄り添い、最適な解決策を一緒に考えます

長年放置してしまった会社の問題は、単なる法律手続き以上の、心理的なご負担も伴うものです。当事務所では皆様の手間や負担を最大限軽減するよう、心がけながら業務に取り組んでいます。以前に経営していた会社の清算手続きを済ませないでそのままになっているなら、何年たっていても構いません。ぜひ当事務所にご相談ください。エリアも東京23区はもちろん首都圏全般からご依頼をいただいております。

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下北沢司法書士事務所 竹内友章

株式会社と合同会社どっちがいい?設立費用・選び方を専門家が比較解説

2025-12-04

株式会社と合同会社、どちらを選ぶべき?違いを一覧表で比較

これから会社を設立しようとお考えの際、多くの方が最初に直面するのが「株式会社と合同会社のどちらを選ぶか」という問題ではないでしょうか。それぞれにメリット・デメリットがあり、ご自身の事業計画や将来のビジョンによって最適な選択は異なります。

まずは、両者の主な違いを一覧表で確認してみましょう。全体像を把握することで、この後の解説がより深く理解できるはずです。

株式会社と合同会社の主な違いを比較したインフォグラフィック。設立費用、社会的信用度、意思決定などの項目を分かりやすく図解。
項目株式会社合同会社
設立費用(法定費用)紙定款:約22.2万円~電子定款:約18.2万円~紙定款:約10万円~電子定款:約6万円~
社会的信用度高い株式会社に比べるとやや低い傾向
出資者株主社員
意思決定機関株主総会原則として社員全員の同意
役員の任期原則2年(最長10年まで伸長可)任期なし
決算公告の義務あり(官報掲載等)原則なし(他法令で必要な場合あり)
利益の分配出資比率(株式数)に応じて分配定款で自由に決められる
資金調達の方法株式発行による出資、融資など多様融資、社員からの追加出資が中心
株式会社と合同会社の比較

この表をご覧いただいただけでも、設立コストを抑えたいなら合同会社、将来的な事業拡大や外部からの資金調達を考えるなら株式会社、といった大まかな方向性が見えてくるかもしれません。しかし、本当に大切なのは、これらの違いがなぜ生まれるのか、そしてご自身の事業にどう影響するのかを正しく理解することです。以降の章で、それぞれの項目を専門家の視点から詳しく掘り下げて解説していきます。

【司法書士の視点】株式会社と合同会社のメリット・デメリット

法律の専門書に書かれている説明は、時に難解で、実際のビジネスシーンと結びつけて考えるのが難しいことがあります。そこで、ここでは司法書士として多くの会社設立に携わってきた経験から、株式会社と合同会社の本質的な違いと、それが実務上どのようなメリット・デメリットにつながるのかを解説します。

結論から申し上げると、会社の仕組みとしての優劣でいえば、株式会社の方が確実で安定した経営が可能です。ただし、その分、設立や運営にコストと手間がかかります。一方で合同会社は、シンプルでコストを抑えられる点が魅力です。この違いを生む大きなポイントは2つあります。

ポイント1:出資額と発言権の関係

株式会社では、出資した金額に応じて株式が割り当てられます。そして、会社の重要な意思決定は、原則として保有する株式の数に応じた議決権(発言権)によって行われます。例えば、100万円を出資した人と1万円を出資した人では、発言権に100対1の差がつくのが基本ですが、定款や会社法上の制度(種類株式、議決権制限株式など)により、議決権構成を変更できる場合もあります。

一方、合同会社では、法定の原則として総社員の過半数の同意で決定しますが(慣用的に「各社員が対等な議決権を持つ」と説明されることが多いです)、定款で別段の定めをすることで議決権の割合や業務執行の決め方を柔軟に設計できます。

ポイント2:出資者(所有者)と経営者の関係

株式会社の大きな特徴は「所有と経営の分離」が可能な点です。つまり、会社にお金を出資する「株主(所有者)」と、会社の経営を行う「取締役(経営者)」は、必ずしも同一人物である必要はありません。これにより、経営手腕に優れた方を外部から役員として迎え入れたり、長年の功績がある従業員を役員に登用したりすることが、その方に出資を求めることなく可能です。

対して合同会社は「所有と経営の一致」が原則です。会社の経営を行う「業務執行社員」は、必ず出資者である「社員」の中から選ばれます。つまり、経営に参加するためには、必ずその会社に出資してオーナーの一員になる必要があるのです。

この2つのポイントを踏まえると、もしあなたが「一人で出資も経営も行い、当面は外部から経営陣を迎える予定もない」という状況であれば、合同会社の設立費用や運営の手軽さは非常に大きなメリットになるでしょう。株式会社の持つ柔軟性がご自身の事業に必要かどうか、という視点で検討することが、最適な選択への第一歩となります。

司法書士が会社設立を検討している女性に、メリット・デメリットを丁寧に説明している相談風景。

設立費用はどれくらい違う?株式会社と合同会社のコスト比較

会社設立を検討する上で、費用は最も気になる要素の一つでしょう。ここでは、設立時にかかる「初期費用」と、設立後に継続的に発生する可能性のある「ランニングコスト」に分けて、両者の違いを具体的に見ていきましょう。

初期費用(法定費用)の具体的な内訳

会社設立時には、法務局や公証役場に支払う「法定費用」が必ず発生します。これは専門家に依頼しても自分で手続きをしても、必ずかかる費用です。

費用項目株式会社合同会社備考
登録免許税150,000円~60,000円~資本金の額によって変動
定款認証手数料資本金100万円未満:3万円100万円以上300万円未満:4万円その他:5万円0円合同会社は定款認証が不要
定款印紙代40,000円40,000円電子定款の場合は両社とも0円。合同会社も紙定款には印紙が必要です。
合計(紙定款の場合)約222,000円~約100,000円~
合計(電子定款の場合)約182,000円~約60,000円~
会社設立時の法定費用比較

ご覧の通り、合同会社は株式会社に比べて設立費用を大幅に抑えることができます。特に大きいのが、法務局に納める登録免許税の差(最低額で9万円)と、公証役場での定款認証が不要である点です。

また、定款を紙で作成すると4万円の収入印紙が必要ですが、司法書士などの専門家が利用する「電子定款」で作成すれば、この印紙代は不要になります。専門家への報酬は別途発生しますが、この印紙代が節約できるため、ご自身で手続きするのと費用面で大きな差が出ないケースも少なくありません。

設立後のランニングコストも忘れずにチェック

設立費用だけでなく、会社を運営していく上で発生するコストも考慮に入れる必要があります。

  • 役員変更登記の費用:株式会社の役員(取締役など)には任期があり、原則2年(非公開会社の場合は最長10年まで伸長可能)ごとに役員変更の登記が必要です。たとえ同じ人が再任(重任)する場合でも、登記手続きが必要で、登録免許税(1万円または3万円)と専門家への報酬が発生します。一方、合同会社の社員には任期がないため、この費用は原則として発生しません。
  • 決算公告の費用:株式会社は、毎年の決算を「公告」する義務があります。一般的には官報に掲載する方法がとられ、これに数万円の費用がかかります。合同会社にはこの決算公告の義務がありません。

短期的な設立費用だけでなく、こうした長期的な視点でのコストも比較検討することが、後悔のない選択につながります。

参考情報:登録免許税(国税庁)公証人手数料(日本公証人連合会)定款の印紙税(国税庁)

あなたの事業に合うのはどっち?5つの判断基準で選ぶ会社形態

費用や制度の違いを踏まえた上で、ご自身の事業内容や将来設計にどちらが適しているのかを判断するための、5つの具体的な基準をご紹介します。「自分の場合はどうだろう?」と考えながら読み進めてみてください。

株式会社と合同会社の選び方を示すインフォグラフィック。事業の目的や状況に応じた判断基準を図解。

1. 社会的信用度と将来の事業拡大

大手企業との取引や金融機関からの融資、将来的な上場(IPO)を目指すなら、株式会社が有利です。

一般的に、株式会社は合同会社よりも社会的信用度が高いと認識されています。これは、株式会社の設立・運営には厳格な法律上のルール(決算公告の義務など)が課されており、情報開示性が高いことが一因です。特に、許認可が必要な事業や、大企業を取引先として想定している場合、株式会社であることが取引開始の条件となるケースも考えられます。

2. 資金調達の方法と柔軟性

ベンチャーキャピタルなど外部から広く出資を受けたいなら、株式会社一択です。

株式会社は「株式」を発行することで、多くの投資家から資金を調達できます。将来的に事業を大きく成長させるために、外部からの出資を視野に入れている場合は、株式会社を選択する必要があります。一方、自己資金や親族からの借入、日本政策金融公庫などからの融資を中心に考えている場合は、合同会社でも大きな支障はありません。

3. 経営の自由度と意思決定のスピード

個人事業主からの法人成りや、少人数でスピーディーに事業を進めたいなら、合同会社が適しています。

合同会社は、出資者(社員)=経営者(業務執行社員)であり、重要な意思決定も原則として社員全員の同意で行います。株式会社のように株主総会を招集する必要がなく、迅速かつ柔軟な経営判断が可能です。変化の速い業界でビジネスチャンスを逃さず、機動的に事業を展開したい場合に大きなメリットとなります。

4. 利益の分配方法

出資額に関わらず、貢献度に応じて利益を分配したいなら、合同会社が有効です。

株式会社では、利益の配当は原則として出資比率(持ち株数)に応じて行われます。しかし、合同会社では、定款に定めることで利益の分配割合を自由に決めることができます。例えば、「Aさんは出資額は少ないが、事業の中心的な役割を担っているため、多くの利益を分配する」といった柔軟な対応が可能です。技術やアイデアで大きく貢献するメンバーがいる場合に適した仕組みと言えるでしょう。

5. 事業承継や相続の考え方

将来、事業を子どもに継がせたり、M&Aによる売却を考えたりするなら、株式会社がスムーズです。

株式会社の場合、株式を譲渡することで事業承継やM&Aを行います。手続きが比較的明確で、第三者への売却も行いやすいという特徴があります。一方、合同会社で社員の地位(持分)を譲渡するには、原則として他の社員全員の同意が必要となり、手続きが複雑になる可能性があります。長期的な出口戦略まで見据えるのであれば、株式会社の方が選択肢は広がるでしょう。事業承継は相続とも密接に関わる問題であり、当事務所でも相続と事業承継に関するご相談を多く承っております。

会社設立、専門家に相談する3つの大きなメリット

ここまで株式会社と合同会社の違いについて解説してきましたが、「自分の場合は結局どちらが良いのだろう?」と、かえって悩んでしまった方もいらっしゃるかもしれません。そんな時こそ、専門家への相談を検討してみてはいかがでしょうか。専門家への依頼は単なる手続きの代行ではありません。特に起業という重要な局面において、計り知れない価値をもたらします。

会社設立手続きを専門家に任せ、事業計画の策定に集中している女性起業家。

1. 自分に最適な会社形態や定款内容を判断できる

私たち司法書士は、法律の知識はもちろん、これまで数多くの会社設立に立ち会ってきた経験があります。あなたの事業内容や将来のビジョン、資金計画などを丁寧にお伺いした上で、株式会社と合同会社のどちらがより適しているか、客観的な視点からアドバイスすることが可能です。

さらに、会社の憲法ともいわれる「定款」にどのような規定を盛り込むべきか、あなたのビジネスに合わせた最適な内容をご提案します。一人で悩みながら決めるよりも、確実で安心できる選択ができるはずです。

2. 時間と手間を省き、本来の事業準備に集中できる

会社設立には、定款作成、公証役場での認証(株式会社の場合)、法務局への登記申請など、多くの書類作成と複雑な手続きが伴います。これらを一つひとつ調べながらご自身で行うには、膨大な時間と労力がかかります。

専門家に任せる最大のメリットは、その貴重な時間とあなたの集中力を、事業計画の策定、商品開発、顧客開拓といった、起業家として本来最も注力すべき活動に使えることです。専門家への依頼はコストではなく、あなたのビジネスを加速させるための「投資」と捉えることができます。

3. 手続きのミスを防ぎ、将来のトラブルを回避できる

もし定款の内容に不備があったり、登記申請でミスがあったりすると、手続きが滞るだけでなく、後から修正するために余計な手間と費用がかかってしまうことがあります。最悪の場合、設立後の会社運営に支障をきたす可能性もゼロではありません。

登記の専門家である司法書士に依頼することで、法的に不備のない、正確な手続きを迅速に完了させることができます。これは、単に会社を設立するというだけでなく、その後のスムーズな会社運営の揺るぎない土台を築くことにつながるのです。

会社設立のご相談は司法書士にお任せください

会社設立は、あなたの夢や事業を形にするための、非常に重要で希望に満ちた第一歩です。しかし、同時に多くの決断と複雑な手続きが求められ、不安を感じることも少なくないでしょう。

株式会社か、合同会社か。その選択は、今後の事業展開に大きな影響を与えます。どちらが良い・悪いということではなく、あなたのビジネスにとってどちらが最適かを見極めることが何よりも大切です。

下北沢司法書士事務所(所在地:東京都世田谷区北沢三丁目21番5号ユーワハイツ北沢201、代表司法書士:竹内 友章、所属:東京司法書士会)では、単に手続きを代行するだけでなく、心理カウンセラーの資格(日本推進カウンセラー協会認定 心理カウンセラー)を持つ司法書士が、あなたの不安や想いに寄り添いながら、最適な会社設立をサポートいたします。不動産会社での勤務経験もございますので、店舗やオフィスの契約といった不動産が関わるご相談にも対応可能です。個別の案件の結果は事案により異なり、結果を保証するものではありません。

会社設立はゴールではなく、輝かしい未来へのスタートです。その大切な一歩を、私たち専門家と一緒に、確かなものにしませんか。まずはお気軽にご状況をお聞かせください。あなたからのご連絡を心よりお待ちしております。エリアも東京23区(葛飾区、板橋区などの事務所のある世田谷から遠めの地域でももちろん大丈夫!)だけでなく、テレビ電話などを駆使することによって全国のご相談に対応可能です!

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下北沢司法書士事務所 竹内友章

相続不動産の売却費用、持ち出し不要!司法書士が解説

2025-11-10

相続不動産の売却、費用が心配で動けずにいませんか?

「親から実家を相続したけれど、どうしたらいいか分からない…」
「兄弟からは早く売却してほしいと言われるけど、手元にまとまったお金がない…」
「手続きが複雑そうで、何から手をつけていいのか…」

予期せぬ相続で不動産を引き継がれた方が、このようなお悩みを抱えてご相談に来られるケースは少なくありません。特に、相続登記や売却手続きに必要な費用をすぐに用意できないことで、一歩を踏み出せずにいらっしゃる方は多いのではないでしょうか。

周りからの期待やプレッシャーを感じながら、金銭的な不安も重なり、精神的に大きなご負担を感じていらっしゃるかもしれません。ご安心ください。そのお悩み、解決する方法があります。

この記事では、お手元の資金から持ち出しをすることなく、専門家のサポートを受けて相続不動産をスムーズに売却する方法について、具体的に解説していきます。費用の心配から解放され、安心して次の一歩を踏み出すためのお手伝いができれば幸いです。

書類を前に頭を抱える人物。相続不動産売却の費用に関する悩みを象徴している。

ご安心ください!売却代金から司法書士費用を清算できます

当事務所は、連携する不動産会社と協議のうえ、買主からの決済時に売却代金の分配を受ける仕組み(※個別事案で可否が異なります)を採用することも多いです。この手法が採用できるケースの方であれば、事実上ご自身の預貯金は使わずに専門家に任さられます。不動産会社で勤務経験があり、宅地建物取引しの資格を保有し、登録までしている当事務所だから提供できるサービスです。具体的にご紹介していきます。

【司法書士の視点】 費用支払いの意外な盲点と、私たちの解決策

相続のご相談で意外と多いのが、「財産は不動産くらいで、預貯金はほとんどない、あるいはあるかどうかも分からない」というケースです。特に、疎遠だったご親族が亡くなり、役所からの固定資産税の請求書などで初めてご自身が相続人だと知った、という方もいらっしゃいます。

このような状況では、相続手続きを依頼する司法書士への報酬を、ご自身の貯金から支払わなければならないのか、という点が大きな壁となります。大切なご自身の資産を取り崩すのは、誰しも避けたいことでしょう。

そこで下北沢司法書士事務所では、相続人調査から遺産分割協議書の作成、相続登記、そして不動産会社と連携した売却サポートまでを一貫して行い、すべての手続きが完了した後に、受け取った売却代金から費用をお支払いいただく独自のサービスを整えました。これにより、ご依頼者様は金銭的なご心配なく、相続手続きと売却活動に専念いただけます。これは、ご依頼者様のご負担を少しでも軽くしたいという想いから生まれた手法です。

「持ち出しなし」を実現する司法書士と不動産会社の連携

「なぜ、費用の後払いが可能なのか?」と疑問に思われるかもしれません。その答えは、私たち司法書士と、信頼できる不動産会社との緊密な連携にあります。ご相談から費用のご精算まで、ワンストップで手続きが進む具体的な流れを見ていきましょう。

①相続手続きを先行、終わりが見てて来た時に売却準備に入る

まず、私たち司法書士が、相続人を確定させるための戸籍収集や、相続人全員の合意を形にする遺産分割協議書の作成といった、相続に不可欠な法的手続きを開始します。
その完結が見えてきたタイミングで、連携する不動産会社が売却に向けた準備をスタートさせます。相続手続きが完全に終わる少し前のタイミングで、物件の価格査定や市場調査、効果的な販売戦略の立案などをはじめます。
これにより、手続き全体がスムーズに進み、時間的なロスがなくなります。また、ご依頼者様が個別に不動産会社を探し、連絡を取るといったお手間も一切かかりません。

②売却活動と相続登記の完了

不動産の名義変更(相続登記)は登記の申請をして完了するまである程度の時間がかかります。東京都内では、時期によっては1か月を超えることも珍しくありません。そこで、状況によっては相続登記と販売活動を同じくらいのタイミングでスタートすることがあります。
不動産は、亡くなった方の名義のままでは売却できません。事前に相続人の名義に変えておく必要があります。この登記手続きを売却活動と並行して完了させておくことで、いざ「買いたい」という方が現れた際に、売却のチャンスを逃すことなく、スムーズに売買契約へと進むことができます。

③売買契約・決済時に費用を一括清算

無事に買主が見つかり売買契約が成立すると、最終ステップとして「決済」が行われます。決済とは、買主から売主(ご依頼者様)へ売却代金が支払われ、同時に司法書士が所有権移転登記を申請する、取引の最終場面です。
この決済の場で、買主から支払われた売却代金の中から、司法書士の報酬、不動産会社の仲介手数料、その他の必要経費(印紙代など)をすべて一括で清算させていただきます。
この仕組みにより、多くの場合は売却代金から清算することが可能で、原則として事前の持ち出しを抑えることができます。ただし、事案によっては一部費用の立替えや税金等の対応が必要となる場合があります。

司法書士が相談者に安心した様子で説明している。専門家との連携による問題解決を表す。

不動産取引に精通した司法書士を選ぶべき理由

相続不動産の売却を成功させるためには、単に登記手続きができるだけでなく、不動産取引そのものに精通した専門家を選ぶことが非常に重要です。

当事務所の代表司法書士 竹内 友章は、不動産会社での勤務経験を持ち、国家資格である宅地建物取引士の資格も保有しています。そのため、法律の専門家であると同時に、不動産取引の現場を知るプロフェッショナルでもあります。この経験こそが、ご依頼者様にとって大きな安心材料となると確信しております。

不動産業界の「当たり前」を理解している安心感

不動産会社との打ち合わせでは、専門用語が飛び交い、提示された売却価格が本当に妥当なのか、契約書の内容に不利な点はないかなど、一般の方には判断が難しい場面が多くあります。
私たちは、不動産業界の実務や慣習を熟知しているため、ご依頼者様の代理人として不動産会社と対等に話し合いを進めることができます。例えば、相続不動産を売却する際に気を付けるべき専門的な観点から、売却活動全体を法務と実務の両面からサポートし、ご依頼者様の利益を守ります。

不動産契約書を指さし依頼者に寄り添う専門家の手元。不動産取引に精通した司法書士の信頼感を表現。

心理カウンセラーとして親族間の調整役も担います

相続不動産の売却は、単なる事務手続きではありません。時には、相続人であるご親族の間で意見が対立し、感情的なもつれに発展してしまうこともあります。
特に、あなたが中心となって手続きを進めている場合、他のご親族からのプレッシャーを一手に引き受け、精神的に大きなご負担を抱えてしまうかもしれません。

当事務所の代表 竹内 友章は、上級心理カウンセラーの資格(日本推進カウンセラー協会認定 心理カウンセラー)も保有しており、親族間の調整にあたって心理面の配慮を行います。法律や手続きの話だけでなく、ご依頼者様が抱える不安やお辛いお気持ちにも真摯に耳を傾け、心に寄り添うことを大切にしています。複雑な親族間の調整が必要な場面でも、第三者である専門家として、そして心の専門家として、冷静かつ円満な解決に向けてサポートいたします。

相続不動産の売却で持ち出しが発生しうる費用一覧

ここで、一般的に相続不動産を売却する際に、どのような費用がかかるのかを知っておきましょう。これらの費用も、当事務所のサービスをご利用いただくことで、原則として売却代金からの清算が可能です。

費用の種類内容
相続登記費用不動産の名義を被相続人から相続人へ変更するための司法書士報酬と登録免許税(税金)。
不動産仲介手数料売買を仲介してくれた不動産会社に支払う成功報酬。
印紙税不動産売買契約書に貼付する印紙代(税金)。
譲渡所得税・住民税不動産を売却して利益(譲渡所得)が出た場合に課される税金。
その他(必要に応じて)土地の境界を確定させるための測量費、古い建物の解体費、室内の残置物撤去費用など。
相続不動産売却時の主な費用

※事案によっては、一部費用の立て替えが難しい場合もございます。詳細はご相談の際にご説明いたします。

まとめ:費用の心配も含めて専門家へ相談を!

相続不動産の売却は、多くの方にとって初めての経験であり、分からないことだらけで不安に感じられるのは当然のことです。
しかし、「手元にお金がないから」という理由だけで、専門家への相談をためらい、大切な一歩を踏み出せないでいるのは、非常にもったいないことです。

下北沢司法書士事務所は、不動産と法律の専門知識はもちろんのこと、ご依頼者様のお気持ちに寄り添う心を持って、あなたの課題解決を「一緒に考えて提案する」パートナーでありたいと願っています。

煩わしい手続きや精神的なストレスからあなたを解放し、最善の解決策へと導くお手伝いをさせてください。
一人で悩まず、まずは私たちにお話をお聞かせいただけませんか。

まずは無料相談からはじめませんか?

対応エリアも事務所のある世田谷区をはじめとする東京23区だけはありません。調布市や府中市、吉祥寺などの東京都下からもご依頼をいただいております。相模原、川崎、横浜、柏などの首都圏でも依頼実績があります。更に出張対応では、千葉県館山市・神戸・札幌・山形などで実績があり、必要に応じて全国出張します。ズームなどテレビ電話の打ち合わせも対応します。

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相続人と連絡が取れない不動産相続|司法書士が解決策を解説

2025-11-07

他の相続人と連絡が取れない…不動産相続、最初の一歩

「兄とはもう何年も会っていないし、どこに住んでいるのかも分からない…」「叔父と連絡は取れるはずだけど、手紙を送っても返事がない…」

大切なご家族が亡くなり、不動産の相続手続きを進めなければならないのに、他の相続人と連絡が取れず、途方に暮れていらっしゃいませんか。遺産分割協議は相続人全員で行う必要があると聞き、どうしていいか分からず、ただ時間だけが過ぎていくことに焦りや不安を感じていらっしゃるかもしれません。

お一人でその重荷を抱え込む必要はありません。どうかご安心ください。相続人と連絡が取れないという問題は、決して珍しいことではなく、そして、解決に向けた複数の法的手段が存在します。

この記事では、下北沢司法書士事務所の代表で、不動産実務にも精通した司法書士の竹内が、ご状況を整理するための第一歩から、具体的な解決策、そして専門家への相談まで、あなたが「次に何をすべきか」を明確にご理解いただけるよう、丁寧に解説していきます。あなたの課題解決のお役にたつので、ぜひ読み進めてみてください。

なぜ手続きが進まない?連絡が取れない相続人がいる場合の問題点

そもそも、なぜ一人の相続人と連絡が取れないだけで、不動産の相続手続きが完全に止まってしまうのでしょうか。それは、法律で定められた大原則があるからです。

亡くなった方(被相続人)の遺産をどのように分けるかを話し合うことを「遺産分割協議」といいます。そして、この遺産分割協議は、必ず相続人“全員”の参加と合意がなければ、法的に有効なものとして認められません。一人でも欠けていたり、合意していなかったりする状態で行われた遺産分割協議は、後から無効となってしまいます。

この原則があるため、連絡が取れない相続人を無視して手続きを進めることはできないのです。具体的には、以下のような手続きが一切できなくなってしまいます。

  • 不動産の名義変更(相続登記)
  • 不動産の売却
  • 預貯金の解約・払い戻し
  • 株式などの名義変更

特に不動産は、そのまま放置しておくと管理の問題や固定資産税の負担など、新たな問題を生む原因にもなりかねません。「そのうち連絡がつくかもしれない」と問題を先送りにせず、法律に則った正しい手順で、着実に解決へ向けて歩みを進めることが大切です。

状況別|連絡が取れない相続人への具体的な対処法

「連絡が取れない」と一言でいっても、その状況は様々です。ここでは3つのケースに分け、それぞれに適した具体的な対処法を解説します。

ケース1:相続人が誰かも分からない、又は住所が分からない場合「相続人調査」

「亡くなった方に子がおらず、叔父や叔母とも長い間会っておらず全員を把握できてるわけでもない」「そもそも、どこに住んでいるのか見当もつかない」という場合は、まずその相続人の現在の住所を突き止めることから始めます。これを行うのが「相続人調査」です。

具体的には、亡くなった方の出生から死亡までの一連の戸籍謄本等を取得し、相続人となる方を法的に確定させます。その後、対象となる相続人の戸籍をたどり、現在の住民票が登録されている住所地を記載した「戸籍の附票(ふひょう)」という書類を取得することで、現住所を調べることができます。

この戸籍の収集は、ご自身で行うことも可能ですが、非常に手間と時間がかかります。特に、本籍地が何度も変わっている場合は、全国の役所に請求手続きをしなければいけないことも多いです。また、子がいない方が亡くなった場合、あなたの従兄弟が共同相続人になる可能性も強いです。このように関係性が遠い人が共同相続人になると、その人にたどりつくため自然と集める戸籍の枚数も多くなり、読み込み方も複雑になります。司法書士ならもちろん、戸籍を読み込み正確に相続人を確定することができます。

当事務所が受任した事件・事務の遂行に必要な範囲で、職務上請求書を用いて戸籍謄本や戸籍の附票の取得を代行することが可能です。正確かつスピーディーに相続人を確定し、次のステップへ進むためにも、専門家にご依頼いただくメリットは大きいといえます。

ケース2:関係性が遠い場合、または仲が悪いケース「調整」や「遺産分割調停」

相続人同士の中が悪かったり、疎遠だったりするケースも良くあります。このようなケースに弁護士さんとは違うアプローチで対応するため、当事務所では法律だけでなく人の心理にも着目し、上級心理カウンセラーの資格も取得しました。私が経験したケースの一例をご紹介します。お子さんがいない方でなくなった奥様の相続手続きの依頼を受けました。他の相続人は奥様の縁者であり、依頼をいただいた相続人であるご主人はあまり接触がなかったようです。亡くなった他の相続人を合わせると10人強の相続人がいたものの、他の方からに対しては順調に手続きが進み、ある方を除いて遺産分割協議書や他の必要書類が揃いました。1人だけ返事がこなかった方も最初の相続に関するアンケートでは協力する旨の回答だったため遺産分割協議書をお送りしましたがその後一向に連絡がありません。おかしいなと思いつつ何回か手紙や電話で連絡してもつながりませんでした。困ったな思っていたある日、非通知で電話があり、出てみたらその方でした。「なんで何回も電話してるのに出ないんだ!」と開口一番でお叱りを受けてしまい、よく話を聞いてみると非通知で何回か電話をいただいていたようですが、私が出れなかったようです。実際に対面でお会いすることになり、30分ほどの先方から私に対する段取りなどに対する叱責、私からの遺産分割協議書は全員の合意が必要であることをはじめ民法上のルール説明の時間がありました。その後、「検討する」とおっしゃっていただき、数週間後に遺産分割協議書が届きました。このお会いした時に意識したのは話を聞くのが8割、こちらからは質問されない限り相槌と叱責に対する謝罪以外、話さないことです。会う前から何となく、具体的な手続きになにかあるというより、人に話を聞いて欲しい・・意地悪くいうと年下相手にガミガミとやりたいのではないかなと感じていました。それで納得いただけるなら私はいくらでも話を聞きます。また、あまり1つ1つ正確に事実や法的説明もしてしまうと、議論のような会話の展開になってしまうため、法的に明らかに違う部分だけやんわりと訂正をしました。はっきりいって法律の話というよりご機嫌取りであったため、人の心理の面に着目しておいて良かったなと思ったケースです。お仕事で営業職をしている方、職場の人間関係を意識しながらお仕事に取り組まれている方にはこういう「ご機嫌取り」もある意味当たり前かも知れません。しかし司法書士で、この意識をもてる人間は意外に少ないです。私たち司法書士はどうしても手続きや理屈の世界で生きています。そうするとこういう人の気持ちに対する意識が薄くなってしまい、頭コチコチになってしまうのです。しかし遺産分割協議書に押印しない理由になにも制限はありません。単に「気に入らないから署名しない」と言われれば、その後は弁護士さんによる遺産分割調停に頼る必要が出てきます。そこまでいかないようにするためには、理屈ではなく人の気持ちに気を配ることも現実問題として重要になります。

ケース3:行方不明・生死不明の場合「不在者財産管理人・失踪宣告」

長年にわたって音信不通で、生きているのか亡くなっているのかさえ分からない、という最も深刻なケースです。このような場合は、家庭裁判所に申立てを行い、法的な手続きによって状況を打開する必要があります。主な方法は2つです。

不在者財産管理人制度

従来の住所や居所を去り、容易に戻る見込みのない方(不在者)に代わって、その方の財産を管理する「不在者財産管理人」を家庭裁判所に選任してもらう制度です。

この不在者財産管理人が選任されれば、行方不明の相続人に代わって遺産分割協議に参加することができます。家庭裁判所の許可を得る必要はありますが、不在者財産管理人の同意のもと、不動産を売却することも可能になります。これにより、止まっていた相続手続きを再び動かすことができます。

失踪宣告

生死が7年間明らかでない場合(普通失踪)、または戦争や海難事故などに遭遇し、その危難が去った後、1年間生死が明らかでない場合(危難失踪)に、家庭裁判所に申立てをすることで、法律上、その方を死亡したものとみなす制度です。

失踪宣告が認められると、その方は死亡したと扱われるため、遺産分割協議から除外されます。もしその方に子がいれば、その子が代わって相続人(代襲相続人)となります。不在者財産管理人制度に比べて、手続きが完了するまでに時間がかかる傾向があります。

どちらの制度を選択すべきかは、状況によって異なりますので、専門家と相談しながら慎重に判断することが重要です。

不動産売却と代金分配まで一貫サポート|当事務所の約束

連絡が取れない相続人がいるという複雑な状況では、単に書類を作成するだけでは、本当の意味での解決には至りません。「問題を根本から解決し、ご依頼者様の心労と手間を極限まで減らすこと」。それが、私たち下北沢司法書士事務所の最も大切にしている姿勢です。

私たちのサポートは、法的な手続きを整えるだけで終わりません。

まず、相続人が誰なのかを調査・確定し、その方々の住所を突き止めます。そして、私たちが窓口となり、他の相続人の方々へ丁寧な書面をお送りし、相続が発生した事実と今後の手続きについてご説明します。さらに、アンケート形式でご意向を確認し、相続人全員の意思が「不動産を売却して現金で分けたい」という方向でまとまれば、遺産分割協議書の作成から署名・押印の手配まで、すべて代行します。

そして、私たちの真価が発揮されるのはここからです。

不動産会社での勤務経験を活かし、不動産の売却手続きも全面的にサポートします。売買の現場に立ち会い、所有権移転登記の申請代理・手続きは当事務所が行います。ただし、売買契約の成立や代金回収等は取引相手や契約条件に依存します。

売却代金の分配計算や振込手続きについて、事務処理を最後まで支援します。ただし、売買代金の回収や振込の可否・時期は取引の状況に依存します。

当事務所は、ご依頼者様が煩雑な手続きや慣れないやり取りで疲弊してしまうことのないよう、法律と不動産実務、そして心理カウンセラーとしての「心に寄り添う視点」を掛け合わせ、あらゆる手間と精神的なご負担を肩代わりすることをお約束します。

もし、あなたが今、どうしようもない不安の中にいるのなら、ぜひ一度私たちにご相談ください。
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不動産相続の問題が解決し、司法書士と依頼者が固い握手を交わしている。

まとめ|不安な気持ちに寄り添い、最善の解決策をご提案します

相続人の方と連絡が取れない状況での不動産相続は、精神的にも、手続き的にも、非常に大きなご負担だと思います。しかし、この記事でお伝えしたように、解決するための方法は必ず存在します。

  • まずは「相続人調査」で相手の住所を確定させる
  • 連絡を無視されるなら家庭裁判所の「遺産分割調停」を検討する
  • 行方不明なら「不在者財産管理人」や「失踪宣告」という法的手続きがある
  • どの手続きを選ぶべきか、費用や期間の見通しを立てるためにも専門家への相談が不可欠

何より大切なのは、一人で抱え込まず、信頼できる専門家をパートナーに選ぶことです。

下北沢司法書士事務所では、単に法律手続きを代行するだけではありません。不動産会社での実務経験を活かした売却サポート、そして心理カウンセラーとして皆様の不安なお気持ちに寄り添うことまで含めて、トータルで問題解決をお手伝いします。

「こんなことを相談していいのだろうか」とためらう必要は全くありません。まずはお電話やメールで、あなたの今のお気持ちを、そのままお聞かせください。そこから、解決への第一歩が始まります。ご連絡を心よりお待ちしております。

ご依頼は世田谷区をはじめとする東京23区だけでなく、調布市や町田市、小平市などの東京都下からもいただいております。相模原、川崎、横浜、柏などの首都圏でも依頼実績があります。更に出張対応では、千葉県館山市・神戸・札幌・山形などで実績があり、必要に応じて全国出張します。

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多数の相続人がいる不動産の売却方法|お金の分け方と注意点

2025-11-05

相続人が複数…不動産を売却してお金で分ける「換価分割」とは?

「親が遺してくれた実家、相続人は兄弟姉妹で複数いるけれど、誰も住む予定がない…」「どうやって公平に分けたらいいのだろう…」

大切なご家族が亡くなられた悲しみに加え、このような不動産の相続問題は、多くの方にとって頭の痛い悩みではないでしょうか。特に相続人が多ければ多いほど、全員が納得する形で話を進めるのは簡単なことではありません。

そんなとき、とても有効な解決策となるのが「換価分割(かんかぶんかつ)」という方法です。これは、相続した不動産を売却して現金に換え、その現金を相続人同士で分け合う方法のことです。

この記事では、司法書士であり、不動産会社での実務経験も持つ筆者が、多数の相続人がいる不動産を円満に売却するための「換価分割」について、具体的な手順や注意点を一つひとつ丁寧に解説していきます。この記事を読み終える頃には、複雑に見える手続きの全体像がわかり、次の一歩を踏み出すための道筋が見えているはずです。手続きの流れや注意点を丁寧にご説明しますので、まずはご一読ください。

なぜ「換価分割」が最適な選択肢になるのか?

不動産という「分けにくい財産」を前に、なぜ「売却して現金で分ける」という換価分割が、多くのケースで最良の選択肢となるのでしょうか。それには、いくつかの明確な理由があります。

  • 公平で不満が出にくい
    不動産をそのまま誰かが相続する(現物分割)と、「もらう人」と「もらわない人」が出てしまい、不公平感が生まれがちです。また、誰か一人が相続する代わりに他の相続人にお金を払う(代償分割)方法もありますが、不動産を相続する人に十分な資力が必要になります。その点、換価分割は売却代金を法律で定められた相続分(法定相続分)など、皆で決めた割合に応じてきれいに分けられるため、最も公平で不満が出にくい方法と言えます。
  • 管理の負担や固定資産税の悩みから解放される
    誰も住まない不動産は、放置すれば老朽化が進み、資産価値が下がってしまいます。定期的な管理の手間やコスト、毎年かかる固定資産税の負担は、決して小さくありません。売却することで、こうした将来にわたる身体的・金銭的な負担から解放されます。
  • 相続税の納税資金を確保できる
    相続税は原則として現金で納める必要があります。不動産など、すぐに現金化できない財産ばかりを相続した場合、納税資金の準備に困ってしまうケースも少なくありません。換価分割であれば、売却によって得た現金でスムーズに納税することができます。

特に、相続人同士の関係性が少し複雑であったり、それぞれが不動産に対して異なる考えを持っていたりする場合に、この換価分割は皆が納得しやすい着地点を見つけるための、とても現実的で賢い選択肢となるのです。

換価分割の難しい課題と注意点

もちろん、換価分割にも注意すべき点はあります。事前に知っておくことで、落ち着いて対策を立てることができます。

  • 売却までの段取りが難しい
    通常の不動産では発生しない相続手続きを完全に済ませてから売却する必要があります。そのため、何をどの順番で進めるのか段取りが重要になります。1つ1つ進めると確実ですが時間がかかり、かといって同時並行で進め過ぎて予定通りにいかない段取りがあると、購入希望者に迷惑がかかり最悪はトラブルに発展するリスクもあります。通常の不動産売却と比較して売却がより重要になります。
  • 売却価格に対する合意形成
    遺産分割協議の内容にもよりますが、やはり相続人全員が納得した価格で売るのが今後の関係性を踏まえても望ましいでしょう。相続は複数人が関連することが多いため、売却価格の合意形成もポイントです。
  • 相続人が納得する透明性がある清算
    一口に相続人で売却代金を配分するといっても、売却には経費がかかります。相続登記の費用や司法書士手数料、不動産仲介会社の仲介手数料など。これらの費用を差し引いた分をそれぞれの按分で売却するので、結局はどの人がいくら取得するのか、計算が複雑になります。みなさんが納得する透明性のある清算が大事になってきます。

これらは換価分割独特の難題デアありますが、事前に計画を立て、専門家と相談することでリスクを軽減できる場合があります。例えば、信頼できる不動産会社を選び、その不動産会社が相続担当の司法書士と密に連携し、適切な売却戦略を立てることで、スムーズな売却を目指せます。税金についても、使える特例などを事前に知っておくことで、負担を軽減できる場合があります。大切なのは、一人で抱え込まずに専門家と相談しながら進めることです。

【5ステップで解説】換価分割の進め方と全体の流れ

「何から手をつければいいのか分からない…」そんな不安を解消するために、ここからは換価分割の具体的な流れを5つのステップに分けて解説します。全体像を把握することで、今やるべきことが明確になります。

ステップ1:相続人全員で「売却する」という意思を固める

手続きを進める上で、最も重要で、そして最も丁寧に進めるべきなのが、この「合意形成」のステップです。法律上、相続人全員の同意がなければ不動産を売却することはできません。

相続の話は、お金の話だけでなく、ご家族それぞれの思い出や感情が絡み合うデリケートな問題です。私自身、心理カウンセラーとして多くの方のお話を伺ってきましたが、まずは一方的に「売りたい」と主張するのではなく、他の相続人がどう考えているのか、それぞれの希望や状況に耳を傾けることから始めるのが良いでしょう。

「本当は住みたいと思っている人はいないか」「売却に不安を感じている人はいないか」など、一人ひとりの気持ちを尊重し、全員が納得できるゴールを一緒に探していく姿勢が大切です。もし、話し合いが難航しそうな場合や、感情的な対立が生まれそうなときは、私たちのような第三者の専門家が間に入ることで、冷静に話し合いを進めるお手伝いができます。

ステップ2:全員の合意内容を「遺産分割協議書」にまとめる

相続人全員の意思が固まったら、その内容を法的に有効な書面である「遺産分割協議書」にまとめます。口約束だけでは、後になって「言った」「言わない」といったトラブルに発展する可能性があります。全員が署名し、実印を押印した遺産分割協議書を作成することで、合意内容が確定し、後の手続きをスムーズに進めるための重要な証拠となります。

ステップ3:不動産の名義を相続人に変更する(相続登記)

亡くなられた方の名義のままでは、不動産を売却することはできません。遺産分割協議書に基づき、法務局で不動産の名義を相続人に変更する手続き、これが「相続登記」です。なお、2024年4月1日から相続登記は義務化されており、正当な理由なく怠った場合には過料が科される可能性もあります。

このとき、登記の名義を「相続人の代表者一人」にするか、「相続人全員の共有」にするかという選択肢があります。それぞれにメリット・デメリットがあり、特に税金面で注意が必要な点があるため、どちらが良いかは状況によって異なります。この点については、後ほど詳しく解説します。

ステップ4:不動産会社に依頼し、売却活動を行う

相続登記が完了したら、いよいよ不動産会社に依頼して売却活動を開始します。ここで重要なのが、不動産会社選びです。単に査定価格が高いという理由だけで選ぶのではなく、相続案件の取り扱いに慣れている、経験豊富な会社を選ぶことが手続きの円滑化に資する場合が多いです

相続不動産の売却には、通常の売却とは異なる特有の注意点があります。担当者が相続に関する知識を持っているか、親身に相談に乗ってくれるかなどをしっかりと見極めましょう。私自身、不動産業界での勤務経験があるため、どのような会社や担当者が信頼できるか、実務的な視点からアドバイスが可能です。ご希望があれば、お客様の状況に合った不動産会社との連携もサポートいたします。

ステップ5:売却代金を受け取り、精算・分配する

無事に買い手が見つかり売買契約が成立すると、買主から売却代金が支払われます。その代金から、不動産会社への仲介手数料や登記費用、税金といった諸経費を差し引くことが一般的ですが、費用負担の詳細は遺産分割協議書や売買契約で定めます。そして、最終的に手元に残った金額を、遺産分割協議書で決めた割合に基づいて各相続人に分配します。

お金の分配は、最もトラブルになりやすい場面の一つです。だからこそ、何にいくら費用が掛かったのかを明確にした精算書を作成し、全員が納得できる透明性の高い手続きを行うことが不可欠です。私たち司法書士は、こうした最終段階での精算書の作成や、各相続人への振込が間違いなく行われるかの確認まで、責任をもって立ち会うことで、最後の不安を取り除きます。

【税務トラブル回避】換価分割のための遺産分割協議書の書き方

換価分割を円滑に進める上で、遺産分割協議書の書き方は極めて重要です。特に、手続きを簡便にするために代表者一人の名義で登記して売却する場合、書き方を間違えると、思わぬ税金の問題が発生するリスクがあります。

なぜ「換価分割のため」と明記する必要があるのか?

例えば、相続人がAさん、Bさん、Cさんの3人で、手続きの便宜上、代表してAさん一人の名義で相続登記をしたとします。その後、Aさんが不動産を売却し、その代金をBさんとCさんに渡しました。このお金の流れだけを見ると、税務署は「Aさんが相続した財産を、BさんとCさんに贈与した」と判断してしまう可能性があるのです。

もし贈与とみなされてしまうと、BさんとCさんには高額な贈与税が課せられる恐れがあります。

このような事態を避けるための、有力な方法の一つとして、遺産分割協議書に「この遺産分割は、不動産を売却して現金で分ける(換価分割)ことを目的とする」と明確に記載しておくことが推奨されます。これにより、AさんがBさん・Cさんにお金を渡す行為が「贈与」ではなく、「当初からの遺産分割」の一環であることを示す有力な資料になりますが、最終的な税務判断は税務署の見解や個別事情により異なるため、税理士と連携して対応することが重要です。また手続き面での煩雑さは増えますが、お金を受け取る割合に合わせて持分を取得する形で相続登記をすると、より安全です。

【文例付き】代表者名義で売却する場合の記載例

実際に遺産分割協議書を作成する際に、どのように記載すればよいか、具体的な文例をご紹介します。これはあくまで一般的な例ですので、実際の作成にあたっては、皆様の状況に合わせて個別に作成をします。

【記載例】

第〇条 相続人らは、被相続人〇〇(亡くなった方の氏名)の遺産である下記不動産について、換価分割することに合意し、売却手続きの便宜上、相続人〇〇(代表者の氏名)が単独で取得する。

(不動産の表示)
所在:〇〇市〇〇町…
(以下、登記簿謄本の通りに記載)

第〇条 相続人〇〇(代表者の氏名)は、前条の不動産を速やかに売却し、その売却代金から譲渡費用その他一切の諸経費を控除した残金を、次の割合で各相続人に分配する。

  • 〇〇(代表者の氏名):2分の1
  • △△(他の相続人):2分の1

このように記載することで、代表者が不動産を一旦相続する目的が、あくまで換価分割のためであることを示す有力な資料になりますが、最終的な評価は関係機関の判断に依存します。

全員の共有名義で売却する場合の記載例

贈与税のリスクを避けるもう一つの方法として、相続人全員の共有名義で相続登記をする方法があります。この場合、売買契約などの手続きは全員で行う必要があり少し煩雑になりますが、税務上のリスクは低くなります。

【記載例】

第〇条 相続人らは、被相続人〇〇の遺産である下記不動産を、次の共有持分割合で相続することに合意した。

(不動産の表示)
(略)

(共有持分)
相続人 〇〇(氏名) 持分2分の1
相続人 △△(氏名) 持分2分の1

第〇条 相続人らは、前条の不動産を共同して売却し、その売却代金から譲渡費用その他一切の諸経費を控除した残金を、各自の共有持分割合に応じて取得する。

どちらの方法が良いかは、相続人の人数や関係性、手続きの手間などを総合的に考慮して判断する必要があります。ぜひ一度、当事務所にご相談ください。

相続不動産の売却で注意すべき税金の話

換価分割を行うにあたり、税金の知識は避けては通れません。ここでは、最低限知っておきたい2つのポイントについて、分かりやすく解説します。ただし、税金の計算は非常に専門的ですので、最終的には税理士への相談が必要となることをご理解ください。

売却益にかかる「譲渡所得税」とは?

相続した不動産を売却して利益(売却益)が出た場合、その利益に対して「譲渡所得税」という税金がかかります。この税金は、売却した年の翌年に確定申告をして納税します。

売却益は、簡単な式で表せます。

売却益 = 売却価格 -(取得費 + 譲渡費用)

  • 取得費:亡くなった方がその不動産を購入したときの代金や手数料などです。購入時の契約書などが見つからず取得費が不明な場合は、売却価格の5%を概算取得費とすることができますが、実際の取得費よりかなり低くなることが多く、税負担が重くなる傾向があります。
  • 譲渡費用:売却のために直接かかった費用で、不動産会社に支払った仲介手数料などがこれにあたります。

この売却益に対して、不動産の所有期間に応じた税率をかけて税額を計算します。

税負担を軽減する「取得費加算の特例」を忘れずに

相続した不動産を売却する場合、非常に有利な特例があります。それが「取得費加算の特例」です。

これは、相続税を支払った人が、相続が始まってから3年10ヶ月以内にその相続した不動産を売却した場合、支払った相続税の一部を「取得費」に加算できるという制度です。取得費が大きくなるということは、計算上の売却益が小さくなるため、結果として譲渡所得税の負担を軽減できるのです。

この特例を知っているかどうかで、手元に残る金額が大きく変わることもあります。適用には期限があるため、相続が発生したら早めに売却の計画を立てることが重要です。

参考:No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例

当事務所のワンストップサポート事例【司法書士の関わり方】

過去に、複数のご兄弟で不動産を相続され、「売却して公平に分けたい」というご相談をいただいたケースでは、相続人様の中に遠方にお住まいの方がいらっしゃり、手続きのために何度も集まるのが難しいという状況がありました。

このようなケースでは、単に書類を作成するだけでは円満な解決は望めません。私はまず、法律的な手続きの話をする前に、相続人お一人おひとりがどのようなお考えで、何に不安を感じていらっしゃるのかをじっくりと伺うことから始めました。

その上で、換価分割が全員にとって最善の選択であることをご理解いただけるよう、作成した遺産分割協議書の案に一つひとつ解説を加え、全員が「これなら納得できる」と感じてくださるまで丁寧に説明を重ねました。

そして、売却の準備段階では、売却代金から諸経費を差し引いた後の概算金額を提示し、お金の面での不安を解消。さらに、各相続人様の振込先口座を書面で確認するなど、後のトラブルを防ぐための地道な下準備も徹底しました。

不動産の売買代金の決済当日には、私も現場に立ち会いました。買主様から売却代金が間違いなく振り込まれるのを確認し、そのお金が各相続人様の口座へ送金されるまでを最後まで見届けることで、ご依頼者様が安心して手続きを終えられるようサポートいたしました。

この事例のように、相続人間の調整から最終的なお金の分配まで、一貫して寄り添い、手続きのすべてをワンストップでサポートすることが、私たちの目指す司法書士の姿です。

私たちが提供する「心に寄り添う」換価分割サポート

多くの事務所では、遺産分割協議書の作成や相続登記までが主な業務範囲かもしれません。しかし、私たちはそこからさらに一歩踏み込み、お客様の真の安心のために、以下のような当事務所独自のサービスを提供しています。

  • 相続に強い不動産会社の選定・手配
  • 透明性の高い精算表の作成
  • トラブル防止のための、各相続人様への振込先書面確認
  • 安心のための売買決済現場への立会い

当事務所では、不動産実務や法律知識、そして心理カウンセラーとしての傾聴力に基づき、これらの支援を行っています。手続きの煩わしさや精神的なストレスからお客様を解放し、円満な相続を実現することが、私たちの何よりの喜びです。

司法書士が依頼者と握手を交わし、信頼関係と円満解決を象徴しているイラスト

まとめ|多数の相続人がいる不動産売却は、まず専門家へご相談を

相続人が複数いる不動産の分割において、「換価分割」は非常に有効で公平な解決策です。しかし、その実現には、相続人全員の合意形成、法的に不備のない遺産分割協議書の作成、税務上のリスク回避、そして煩雑な登記・売却手続きなど、多くの専門的な知識と経験が不可欠です。

これらの問題を一人で、あるいはご親族だけで抱え込んでしまうと、思わぬトラブルに発展したり、精神的に疲弊してしまったりすることも少なくありません。

円満な解決への一番の近道は、できるだけ早い段階で私たちのような専門家に相談することです。下北沢司法書士事務所では、法律と不動産、そして心の問題にも精通した司法書士が、あなたの状況を丁寧にお伺いし、最適な解決策を一緒に考えます。どうぞ、一人で悩まず、お気軽な気持ちでご相談ください。

対応エリアも、世田谷区などの東京23区だけでなく横浜や川崎、相模原、柏、松戸、さいたま市浦和などの首都圏で対応実績があります。また、出張が必要なケースのご相談も承っており、神戸・札幌・山形県鶴岡市、茨城県笠間市などで業務実績があります。

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【事務所情報】
下北沢司法書士事務所
代表司法書士 竹内 友章
東京司法書士会所属
所在地:東京都世田谷区北沢三丁目21番5号ユーワハイツ北沢201

まずは無料相談から、お気軽にお問い合わせください

士業の横領。被害にあわないためには?

2025-08-15

こんにちは! 下北沢司法書士事務所の竹内です。 相続遺言、死後事務委任契約、終活支援、遺産分割、認知症対策(成年後見、信託)、賃貸トラブル対応(孤独死、家賃滞納)、不動産売却支援(共有不動産、借金による任意売却)、会社設立や事業承継に取り組む司法書士です。

 

士業による横領。どう防ぐのか?

少し前のニュースですが、遺産を預かっていた弁護士さんが連絡が取れなくなった話がありました。

https://www.msn.com/ja-jp/news/national/%E5%BC%81%E8%AD%B7%E5%A3%AB%E3%81%8C%E4%BE%9D%E9%A0%BC%E4%BA%BA%E3%81%8B%E3%82%89%E9%A0%90%E3%81%8B%E3%81%A3%E3%81%9F%E7%B4%84%EF%BC%99%EF%BC%90%EF%BC%90%EF%BC%90%E4%B8%87%E5%86%86%E3%81%AE%E9%81%BA%E7%94%A3%E3%81%AE%E8%BF%94%E9%82%84%E3%81%AB%E5%BF%9C%E3%81%98%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%AA%E3%81%84%E7%96%91%E3%81%84-%E5%85%B5%E5%BA%AB%E7%9C%8C%E5%BC%81%E8%AD%B7%E5%A3%AB%E4%BC%9A%E3%81%8C%E5%85%AC%E8%A1%A8-%E8%AA%BF%E6%9F%BB%E7%B5%90%E6%9E%9C%E3%81%AB%E3%82%88%E3%81%A3%E3%81%A6%E3%81%AF%E5%87%A6%E5%88%86%E3%82%82%E6%A4%9C%E8%A8%8E/ar-AA1JVgi4?ocid=BingNewsSerp

ニュースには「横領」や「着服」という言葉は使われてませんが、強く連想させるような記事だと思います。弁護士・司法書士・銀行など一応は資格を取ったり、努力していい就職先を選べた人の横領の話は時々ニュースになります。なぜ資格試験の突破など努力してその職業について人がこんな事件を起こしてしまうのか。あなたが相続や成年後見でこういう被害にあわないためにはどうしたらいいのか解説します。

弁護士・司法書士がお金を預かる場面

弁護士や司法書士は人のお金を良く預かる職業です。成年後見業務では、認知症になった方の通帳を預かり銀行とのやりとりを代理人として行います。銀行は、成年後見人が出金するものを基本的に否定しません。銀行からみたら正当な権限者による引き出しだからです。ということは、成年後見人はいくらでもお金をおろせてしまう環境があります。また、遺産相続の場面ではどうでしょうか。

複数の相続人に預貯金を分配するとき、亡くなった方の口座から直接相続人に入金するのは大変です。なぜなら、それぞれ相続する金額は法定相続分や遺産分割協議で決まっています。バラバラに処理すると、誰がどの銀行口座からいくら受け取るのか細かく処理しなければなりません。弁護士・司法書士の作業としても大変ですし作業過程が相続人の方からみてもなぜそうなったのか分かりにくいです。そこで、一旦、弁護士・司法書士のお金を預かるための専用の口座に集約させて、その口座から分配するのが作業手順になります。今回紹介したニュースでは、こうして預かったお金の返金に応じないということだと思います。

あなたが被害にあわないためには?

このように成年後見、相続などではお金を預かることが業務上必要になり、かつ預かったお金をいつでもおろせてしまう状況ができます。そんな中、被害を防ぐために依頼する人が気を付けるポイントはなんでしょうか。これは、人を見ていく必要があります。例えば服装が派手など見栄っ張りな人や夜遊びしてそうな人、余裕がなくギスギスしてる人とかは避けた方が無難かも知れません。SNSなどでそういう様子がないかチェックしてみるのも方法だと思います。横領が通帳の履歴からバッチリ証拠が残る犯罪です。やる方にも目先のお金に目がくらむ以外に、合理性が全くありません。そんなことをしてしまうのはなにかに依存してたり、病的なお金の使い方をしてる人の可能性が高い。難しいですが、そういう様子がないかという目線で見ていった方がいいでしょう。

当事務所がしていること。

お客様にこういった心配をさせないよう、当事務所は定期的に情報開示をしています。成年後見ならば、親族の方のご希望があれば通帳の原本を開示し、相続・遺産承継ならば預かり口口座の履歴を2か月に一度ほどは取り寄せ、お客様に開示するようにしています。成年後見・遺産相続の事案は日本中に星の数ほどある中、そういうった事件はごくまれにしかおきません。ですがニュースなどを見てしまうと、心配になるのも人間だと思います。そういった心配をお客様にさせないよう、司法書士の方から積極的に証明する姿勢を大事にしています。

相続、成年後見のご相談は下北沢司法書士事務所へ!エリアも幅広く対応します!!

今日は相続、成年後見についてお話させていただきました。当事務所では相続、成年後見や信託などの認知症対策のご相談を承っております。エリアも世田谷区、中野区、杉並区などの東京23区や狛江市、調布市などの東京都下、さらに、横浜市、川崎市、相模原市、柏市などの神奈川・埼玉・千葉などの首都圏エリアから多くのご相談をいただいております。対応エリアはこちら↓

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今すぐ電話やお問合せフォームでご相談を!あなたからのご相談、心よりお待ちしております。

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下北沢司法書士事務所 竹内友章

遺言が知らないうちに書き直される!?そんなことあるのか?

2023-12-06

こんにちは!下北沢司法書士事務所の竹内です。相続遺言、遺産分割、認知症対策(民事信託、成年後見)、大家さん向けに孤独や家賃滞納などへの対応、不動産売却支援(相続による共有不動産、借金による任意売却)、会社設立や事業承継に取り組み司法書士です!

 

知らないうちに遺言が書き換わる!?そんなことあるのか?

サボりがちだったブログ。久しぶりの更新です。さて今日のテーマは遺言。なぜか最近遺言のご依頼が増えてるんでなんか書いてみようということで頑張ります。さて遺言作成のご相談をいただくのは、遺言者ご本人とは限りません。遺言者本人のお子さんなどの「推定相続人」からのご依頼も多いです。そして「推定相続人」の全員と連携して作成する場合だけとは限りません。推定相続人の1人からご相談いただくこともあります。そんな時にお話しいただくのがこのテーマ。「遺言はあなたの知らないうちに書き換わる」です。どんな話かはじめていきましょう!

書いた人にとっては基本ない。

遺言は勝手に書き換わると言いましたが当然、勝手に紙の上の文字がグニャグニャ曲がるほらー現象が起きるわけではありません。遺言を残した人。つまりあなたのお父さんやお母さんが書き換えるのです。書き換えるというか新しい遺言を作り直すのです。遺言は基本、新しい日付のものが勝ちます。つまり「自宅はAに譲る」と書いてあってもその後に「自宅はBに譲る」と書いてあったらBの勝ち。遺言を作り直したお父さんお母さんは自分で直したのですから勝手に書き換わったのではないでしょう。しかし、最初に遺言を作ってもらったあなたにとってはまさに書き換わったといえる現象です。

現実にそんなこと起こるのか?

しかしあなたから頼まれて遺言を書いたお父さん、お母さんが勝手に遺言を作りなおしてそれをあなたに黙ってるなんてあるでしょうか。親子関係は良好でなんでも話せる仲。そんな状況で遺言を書き直すなんで起こるはずないと思うでしょう。ところがこれが起きるんです。あなたに遺言を頼まれて書いたあとに、あなたの兄弟に頼まれて違う遺言を書いてしまうことは普通にあり得ます。なぜこんなことが起きるのか詳しくはなしましょう。

こういう心境から遺言を作り直す

人間年をとってくると人に説明したり、断ったり、人と人との間を調整したりする気力も衰えてきてしまうものです。親からみたらあなたもあなたの兄弟も同じ子ども。どちらとも仲良くしていたいためにとりあえず表面上の要望にこたえてしまうのです。後から困ったりいざこざになるには分かっていますが、だからといって今「遺言はこないだAに言われて書いたよ」という気力もわきません。それを言ったら今、AとBの兄弟げんかがはじまるかも知れないし遺言の内容を自分の子ども双方から要求される親も辛いものです。なんせお金としか見られてない感覚になります。そういう嫌な状況を目の前に出現させないため、その場しのぎの発想としてそのままあなたの兄弟のいうことを聞いて遺言を作りなおしてしまうのです。

親の様子を観察するのが大事。ぐらついてても責めないであげて

こういう状態を防いだり、また書き直した事実をつかむには、やはり親の様子を観察することが大事です。決断力がなくなったとか、あやふやなことをいうことが多くなったとかそういうことを観察することが大事。あなたにとっても親の衰えと向き合うようで辛いものがあるとは思いますが、すこしずつ現実と向き合う努力もしていきましょう。そして、親を責めないことが大事。不合理に遺言を書きなおしたとしても、親もどうしていいか分からなかったのです。そういう責めない姿勢が、あなたに相談してくれる状態を作ったり書き直したらそのことをあなたに伝えてくれることにつながるでしょう。

遺言の下北沢司法書士事務所へ!心理カウンセラーの資格も取得してます。

当事務所では遺言作成のご相談を承っております。みなさんの心情に寄り添いながらスムーズに作成を進めるため心理カウンセラーの資格も取得しております。

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下北沢司法書士事務所 竹内友章

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