叔父・叔母の将来、何から始める?相続・認知症対策の検討順序
「叔父さん(叔母さん)も高齢になってきたし、もしものことがあったら…」「認知症になったら、財産管理はどうすればいいんだろう?」
お子さんのいらっしゃらない叔父様・叔母様の将来を思い、このように漠然とした不安を感じている方は少なくありません。特に、ご自身も70代を迎えられ、80代の叔父様・叔母様を支える立場となると、その責任感から「何とかしなければ」と焦るお気持ちになるのも当然のことです。
しかし、いざ対策をと考え始めても、遺言、信託、成年後見…と様々な制度があり、何から手をつければ良いのか分からなくなってしまいますよね。
これまで、ご本人の「何となく不安」というお悩みを伺い、具体的な解決策を提示してきた世田谷区の下北沢司法書士事務所が、叔父様・叔母様のための相続・認知症対策について、その「正しい順番」を分かりやすく解説します。この記事を読み終える頃には、あなたが今すべきことが明確になっているはずです。
対策は2つだけ。でも順番が重要です
複雑に見える問題も、整理すればやるべきことはシンプルです。叔父様・叔母様のために考えるべき対策は、大きく分けて次の2つしかありません。
- 相続対策:亡くなった後、誰に、どのように財産を遺すかを決めておくこと。(例:遺言、家族信託)
- 認知症対策:もし認知症などで判断能力が低下した際、誰が、どのように財産を管理するかを決めておくこと。(例:任意後見、家族信託、法定後見)
各制度にはそれぞれ特徴があり、費用も異なります。より詳しい各制度の費用の違いについては、別の記事でも詳しく解説していますので、そちらも参考にしてみてください。
結論:まず優先すべきは「相続対策」。理由は2つ
実務上の経験から、現場の専門家としての結論を先にお伝えします。まず優先すべきは、「相続対策」です。
なぜなら、理由は明確に2つあります。
- 相続は100%起こるが、誰もが認知症になるわけではないから
人は誰でもいつか亡くなります。つまり、「相続」はすべての人に100%発生する出来事です。一方で、認知症は誰もが発症するわけではありません。もちろん備えは大切ですが、確実に起こる未来への対策を先に行うのが最も合理的です。 - 相続対策は、認知症対策の土台になるから
「誰に財産を遺したいか」という相続の骨格を先に決めておくことで、その後の認知症対策もスムーズに進みます。例えば、遺言書を作成するために考えた財産の分配方法は、将来、家族信託を検討する際にもそのまま活かすことができます。先に考えたことが無駄にならないのです。
この2つの理由から、もちろん人ぞれぞれではありますが、多くの方にまずは「相続対策」から着手することをお勧めします。それでは、具体的な方法を見ていきましょう。

方法1:遺言|甥・姪へ財産を遺す意思を明確にする第一歩
相続対策の最も基本的で、かつ効果的な方法が「遺言」です。
特に、叔父様・叔母様にお子さんがいない場合でも、配偶者や直系尊属の有無によって法定相続人は変わります。子や直系尊属がいない場合には、兄弟姉妹が相続人となり、すでに兄弟姉妹が亡くなっているときは、その子である甥・姪が相続人となることがあります。普段あまり交流のない親戚まで含めて、何人もの相続人が全国に散らばっているケースも少なくありません。
遺言がないと、預金の解約や不動産の名義変更のたびに、その相続人全員から実印と印鑑証明書をもらう必要があります。これは、取りまとめる甥・姪の方にとって、想像以上に大変な手間と精神的な負担になります。
しかし、甥・姪に財産を承継させたい場合は、遺言でその意思を明確にしておくことで、相続発生後の手続きの負担を軽減できる可能性があります。まず最初のステップとして、これほど費用対効果の高い対策はありません。
さらに、遺言で手続きの担当者となる遺言執行者を指定しておけば、相続発生後の手続きはさらにスムーズに進みます。
方法2:家族信託|認知症対策も兼ねられる場合がある選択肢
もう一つの相続対策として、「家族信託」があります。家族信託は、信頼できる家族(例えば甥・姪)に財産の管理を託す契約です。
この制度の大きな特徴は、契約の中で「自分が亡くなった後、信託した財産は甥の〇〇に渡す」というように、遺言と同じように財産の承継先を指定できる点にあります。この機能があるため、家族信託も有効な相続対策の一つとなります。
さらに、家族信託は遺言にはない「生前の財産管理機能」を併せ持っています。これは、もし叔父様・叔母様が認知症になったとしても、託された甥・姪が契約に基づいて財産管理を続けられることを意味します。つまり、認知症による資産凍結のリスクにも備えることができるのです。
「相続対策と認知症対策を、できれば一度に済ませたい」という方にとっては、家族信託は非常に魅力的な選択肢と言えるでしょう。家族信託の活用場面、より詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。
次に検討すべき「認知症対策」。判断能力があるうちに
相続対策の方向性が見えたら、次のステップとして「認知症対策」を具体的に考えましょう。この対策で最も重要なのは、「叔父様・叔母様の判断能力がはっきりしているうちにしかできない」という時間的な制約です。
もし認知症が進行し、ご自身の意思で契約を結ぶことが難しくなると、様々な問題が生じます。いわゆる「資産凍結」の状態です。
- 銀行窓口で預金の引き出しを断られる
- 定期預金を解約できない
- 自宅や収益物件を売却できない
- 老人ホームの入居契約が結べない
こうなると、介護費用や医療費が必要になっても本人の預金から支払うことができず、甥・姪であるあなたが一時的に立て替えなければならない、といった事態にもなりかねません。そうなる前に、元気なうちに対策を講じることが不可欠です。

任意後見|身上監護も任せたい場合の選択肢
認知症対策の代表的な制度が「任意後見」です。これは、将来判断能力が低下したときに備えて、あらかじめご本人が信頼できる人(甥・姪など)を後見人として選び、財産管理や身の回りの手続きを任せる契約を公証役場で結んでおく制度です。
任意後見の大きな特徴は、財産管理だけでなく「身上監護」も任せられる点です。身上監護とは、介護サービスの契約、入院手続き、要介護認定の申請など、ご本人の生活や療養に関する手続きを代行することを指します。
叔父様・叔母様の生活全般を幅広くサポートしたいと考える場合には、任意後見が適した選択肢となります。ただし、実際に後見が始まると家庭裁判所が選任する「後見監督人」の監督下に置かれ、その後見監督人への報酬が継続的に発生する点には注意が必要です。
家族信託|柔軟な財産管理を実現したい場合の選択肢
認知症対策として、ここでも「家族信託」が有力な選択肢となります。先ほどは相続対策としての側面を見ましたが、ここでは「柔軟な財産管理」という点に注目します。
家族信託の最大のメリットは、家庭裁判所の監督を受けることなく、あらかじめ定めた契約内容に従って、迅速かつ柔軟に財産を管理・処分できることです。例えば、介護費用を捻出するために自宅を売却したり、収益アパートの経営を続けたりといった積極的な資産活用も可能になります。
一方で、家族信託で任せられるのはあくまで財産管理のみで、任意後見のような身上監護は行えません。また、財産を託される受託者(甥・姪など)の責任や負担が大きくなる可能性もあります。契約内容が本当にご本人の意思を反映したものか、慎重に検討する必要がある点も、家族信託が失敗するケースから学ぶべき重要なポイントです。
何もしなかったら?甥・姪を待つ最も大変なシナリオ
もし、相続対策も認知症対策も何もしないまま時が過ぎてしまったら、どうなるでしょうか。甥・姪であるあなたを待っているかもしれない、最も大変なシナリオを想像してみてください。
「ある日、叔母が認知症と診断され、施設への入所が必要になった。しかし、叔母名義の預金口座は凍結され、入居一時金が引き出せない。自宅を売却して費用に充てようにも、本人でなければ売却契約はできない。仕方なく、甥である自分が費用を立て替える日々が続く。
成年後見の申立てをしても、医師の診断書の準備などで手続きには数ヶ月。ようやく選ばれた後見人は、家族の知らない専門家だった。その専門家後見人の方針と家族の意向が合わず、財産管理を巡ってストレスを抱えることに。
やがて叔母が亡くなり、相続が開始。遺言がないため、相続人となったのは、何年も会っていない疎遠ないとこ達だった。彼ら全員を探し出し、連絡を取り、遺産の分け方を話し合う遺産分割協議は全く進まない…。精神的・事務的な負担が大きくなった。」
これは決して大げさな話ではありません。事前に対策をしていれば避けられたはずの苦労です。疎遠な相続人とのやりとりは、多くの方が直面する大きな負担なのです。
【司法書士の実例】ご本人の気持ちに寄り添うのが一番の近道
相模大野にお住いのご相談者様。その方は、ご自身の相続で大変な思いをされた経験から、「子のいない叔母の将来が心配で、何か対策をしたい」と考えていらっしゃいました。
「竹内さん、なにか相続や認知症の対策をしないと不安なのですがなにから手をつけるべきでしょうか?」
私はまず、相続が誰にとっても必ず訪れること、そして相続対策で考えたことは認知症対策にも活かせることをお伝えし、「まずは相続対策から考えてみてはいかがでしょう」と提案しました。
「具体的には、遺言や信託という方法があります。信託は認知症対策も兼ねられますが、決めることが多くて少し大変かもしれません。まずは手軽に始められる遺言から考えてみるのも一つの手ですよ」
ご本人と叔母様から聞き取りをしていると、「そんなに相続対策にばかり力を使いたくない」というお気持ちもおありでした。そこで上記のように、信託を紹介しつつもう少し手のつけやすい遺言を中心にお話ししました。
「叔母様のお気持ちが一番大切です。無理に進める必要はありません。もしよろしければ、叔母様の負担にならない範囲で時々お伺いしますので、少しずつ一緒に考えていきませんか?」
この提案にご安心いただけたようで、後日、遺言作成に向けた第一歩を踏み出すことになりました。今も、ご本人のペースに合わせて、少しずつ対策を進めている最中です。
専門家として思うのは、いくら制度的に「この人には信託が合っている」と思えても、ご本人が受け入れやすい方法でなければ意味がない、ということです。対策は、あくまでご本人の生活の質を上げ、将来の心配を減らすための一つの手段にすぎません。私たちは、ご本人の意思を中心に据え、お気持ちに寄り添いながら、最適な道を一緒に探していくことを大切にしています。
まとめ:まずは司法書士へ相談し、叔父・叔母の状況整理から
お子さんのいない叔父様・叔母様のために、今あなたができること。その正しい順番と方法について解説してきました。
まず優先すべきは、誰もが必ず直面する「相続対策」です。手軽で効果の高い「遺言」から始めるのが基本ですが、認知症対策も同時に考えるなら「家族信託」も有力な選択肢となります。
そして、相続対策に目途がついたら、判断能力がはっきりしているうちに「認知症対策」(任意後見や家族信託)を検討しましょう。
しかし、どの制度が最適かは、叔父様・叔母様の財産状況、ご家族の関係、そして何よりご本人の「想い」によって全く異なります。最も大切なのは、一人で抱え込まず、まずは専門家に相談して、現状を客観的に整理することです。
下北沢司法書士事務所では、法律的な手続きを代行するだけでなく、ご家族皆様のお気持ちに寄り添いながら、最適なプランを一緒に考えていく継続的に支援します。初回のご相談は無料ですので、まずはあなたのお話をお聞かせください。具体的な料金についても、丁寧にご説明いたします。
相続・認知症対策に不安がある場合は、まずは状況整理から始めましょう。
下北沢司法書士事務所 竹内友章

東京都世田谷区北沢にある下北沢司法書士事務所は、相続手続き、遺言作成、相続放棄、会社設立、不動産売却など、幅広い法務サービスを提供しています。代表の竹内友章は、不動産業界での経験を持ち、宅地建物取引士や管理業務主任者の資格を活かし、丁寧で分かりやすいサポートを心掛けています。下北沢駅から徒歩3分の便利な立地で、土日も対応可能です。お気軽にご相談ください。

