成年後見で司法書士が後見人に。知られざる実態と本音

成年後見制度、司法書士の「常識」に違和感ありませんか?

「成年後見制度を利用したいけど、知らない専門家が後見人になったら、家族の気持ちを無視して杓子定規なことばかり言われるんじゃないだろうか…」

成年後見制度について調べれば調べるほど、そんな不安が頭をよぎる方もいらっしゃるかもしれません。この記事は、常識感覚を大事にしている世田谷区の司法書士が、専門職後見人の知られざる実態と、家族が戸惑いがちな「常識のズレ」について、現場の本音を交えながら解説します。

成年後見制度が時に「ひどい」「使えない」と言われてしまう背景には、実は、法律の専門家である後見人の世界と、私たちが暮らす一般社会の常識との間に、見えない「ズレ」が存在することがあります。

以前の記事成年後見で家族の生活費が払えない?司法書士が解説 | では、成年後見制度が始まってもご本人の財産から家族の生活費を支払えるケースについて解説しましたが、今回はさらに一歩踏み込み、専門職後見人の考え方について、より具体的に解説します。

この記事を最後までお読みいただければ、その「ズレ」の正体が何なのか、そして、どうすれば家族の想いを尊重してくれる後見人と巡り会えるのか、具体的なヒントが見つかるはずです。

司法書士後見人の研修で見た「非常識」な光景

今日は、司法書士後見人の業界が、いかに一般常識の感覚からずれてしまう危険性をはらんでいるか、私自身が体験したエピソードをお話しします。このエピソードを通じて司法書士後見人の世界を事前につかんでいただくことで、もしもご両親やご親族に司法書士後見人が選ばれた時にもスムーズにやりとりできたり、ストレスを感じにくくなったりすると思います。これから後見制度のご利用をお考えの方はぜひお目通しください。後見人をしている司法書士には、基本的に一定の業務研修への参加が義務付けられています。その時に私が参加した研修はみんなで議論をするものでした。議論のテーマは「後見をしている人の家にある荷物の撤去について」です。自分が後見人をしている人は施設に入居中。自宅には配偶者が一人で住んでいる。その配偶者から「荷物が多すぎて困るので配偶者の荷物も含めて業者に頼んで撤去しようと思う」と言われたらどうするかというものでした。参加者から出た意見はおおむね次のようなものです。「本当に捨てていいのか、自分が後見をしている人に確認を取る」「自宅にある、後見をしている人の荷物には手をつけないよう、配偶者に指示する」「捨てるにしても、後見人に思い出の品がなにかを確認し、それだけは施設に持っていくか捨てないようにする。」これらの意見には共通点があります。それは「もし荷物を捨てられなかったら配偶者の方が困る」という目線がないこと、そして「司法書士は後見人をしている人が認知症になった後、ここ数年の間に知り合った間柄だが、配偶者との間には長い歴史があること」への尊重の視点がないことです。後見制度を利用している時点で認知症であり「感情」と「現実的に必要だったりできること」のバランス感覚を失っている可能性も高いです。そんな状況の中被後見人が駄目だと言ったから駄目という姿勢では、配偶者の方は自分の家なのに荷物を捨てる・捨てないについて部外者である司法書士に口を出されている状態になります。これでは、トラブルになるのは当たり前です。私なら、後見をしている人と配偶者の仲が悪いなどなにかしらの事情の無い限り、配偶者の方にお任せをします。私より長年連れ添った配偶者の方が、被後見人のことを分かっていると考えるのが当然だと思います。しかし、この場でこれをいうとおかしな空気になりそうだし、業務研修で空気に沿わないことをいうメリットもないので黙っておりました。おそらく、上記の意見を言った他の人でも実際には私と同じような考えの人も多いと思います。ただ建前としては「本人の考えをよく聞いて」と言わないといけない空気感ではありました。これを真面目にきいて、このとおりに仕事をしようとする司法書士がいたらご親族の方にとっては厄介だと思います。ある意味で、真面目な司法書士ほどご親族と対立しやすいかも知れません。こうした状況は、本人が施設への移転を拒否するケースなどでも起こりうることです。

なぜ?「知らない司法書士」が後見人に選ばれる3つのケース

先ほどのような、ご家族との認識の違いが生じやすい後見人が、ある日突然、家族の前に現れるとしたら…。考えただけでも不安になりますよね。では、一体どのような状況で、家庭裁判所は親族ではなく、見ず知らずの司法書士などを専門職後見人として選任するのでしょうか。

家庭裁判所が第三者の専門家を選任することがある、典型的な3つのケースをご紹介します。ご自身の状況が当てはまらないか、確認してみてください。

ケース1:財産額が多額で管理が複雑なとき

預貯金が数千万円以上ある、株式や投資信託を保有している、複数の不動産を持っているなど、財産の種類が多く管理が複雑な場合、専門職後見人が選ばれやすくなります。

これは、専門的な知識や経験がなければ適切な財産管理が難しいと判断されるためです。また、残念ながら親族による財産の使い込みは後を絶ちません。裁判所としては、財産が多額であるほどそのリスクを懸念し、第三者による客観的で厳格な管理を求める傾向があります。財産が多いことは、専門職後見人が選任される一因となる場合があります。場合によっては、後見人を監督する役割の後見監督人が選任されることもあります。

ケース2:親族間で意見が対立・紛争があるとき

親族間の仲が良くない、財産の管理方針や介護方針について意見が分かれているなど、家族間に争いがあるケースも、専門職後見人が選ばれる典型例です。

特定の親族を後見人にすると、その人が自分に有利なように財産を管理したり、他の親族の意見を聞かなくなったりして、対立がさらに激化する恐れがあります。そこで家庭裁判所は、誰の味方でもない中立的な立場の専門家を後見人に選任することで、公平性を保とうとするのです。親族間の対立は、第三者である専門職後見人が選任される一因になります。特に申立て前の財産の動きが不透明な場合は、裁判所もより慎重な判断をします。

専門職後見人が選ばれる3つのケースを示した図解。多額の財産、親族間の対立、不動産の売却が挙げられている。

ケース3:不動産の売却など法律手続きが予定されているとき

ご本人の入院費用や施設への入所費用を捻出するために、自宅などの不動産を売却する必要がある場合も、専門職後見人が選ばれやすいケースです。

ご本人の居住用不動産を売却するには、家庭裁判所から「居住用不動産処分許可」を得る必要があります。この申立てをはじめ、不動産売却には複雑な法律手続きや専門的な知識が不可欠です。こうした手続きをスムーズかつ適正に進める能力が求められるため、経験豊富な司法書士などが適任と判断されることが多いのです。認知症の方の不動産売却は、専門家でなければ対応が難しいのが実情です。

信頼できる専門職後見人を候補者にする方法

ここまで読んでこられて、「うちも専門職後見人が選ばれる可能性が高いかもしれない…」と不安に思われた方もいらっしゃるでしょう。

家庭裁判所が誰を後見人に選任するかは、申立ての時点では確定できません。どんな考え方を持った人なのか、家族の事情にどこまで寄り添ってくれる人なのか、実際に担当になるまで分かりません。運悪く、ご家族との考え方に違いがある専門家が担当になってしまう可能性もゼロではないのです。

では、このような後見人選任に関する不安を軽減する方法はないのでしょうか。

有力な方法の一つとして、次のような対応が考えられます。それは、「家庭裁判所に申立てをする段階で、自分たちが信頼できる専門家を後見人の候補者として推薦すること。ただし、最終的に誰が選任されるかは家庭裁判所の判断によります」です。

最初から「人となりが分かる専門家」を候補者に

上記で挙げたようなケースで、見ず知らずの専門職後見人が選ばれることは、ご家族にとって大きなリスクを伴います。そのため、最初から人となりが分かっている専門職後見人を候補者として立てることは、非常に有力な手段です。

成年後見の申立てをする前に、候補者としたい司法書士に直接相談し、その人柄や考え方、家族の事情への理解度などをしっかり確認しておくのです。そうすれば、冒頭で紹介したような認識の違いによるトラブルを予防しやすくなります。これは、後見制度を円滑に進めるためだけでなく、何よりご家族の精神的な安心につながる有力な対応策の一つと言えるでしょう。

下北沢司法書士事務所では、後見制度の利用を検討されている方からの成年後見制度に関するご相談を積極的にお受けしています。私たちがどのような考えで後見業務に取り組んでいるか、ぜひ直接お話しさせてください。そして、もし信頼できると感じていただけたなら、私たちがご家族のパートナーとして、後見申立てのお手伝いをさせていただきます。

成年後見に関するご相談

まとめ:後見制度は「誰がやるか」で大きく変わります

成年後見制度は、ご本人の財産と生活を守るための大切な制度です。しかし、その成否は、後見人になる人物の考え方や柔軟性に大きく左右されるという側面も持っています。

特に、財産が多かったり、親族間に争いがあったり、不動産売却を控えていたりと、専門職後見人が選ばれやすい複雑なケースほど、受け身で待つのは得策ではありません。申立ての段階から積極的に動き、事前に信頼できる専門家を見つけて後見人候補者として推薦することが、後悔しないための重要な鍵となります。

下北沢司法書士事務所は、単なる法律の専門家として手続きを代行するだけでなく、ご家族一人ひとりの想いに寄り添うパートナーでありたいと考えています。どんな些細な不安でも構いません。どうぞお気軽に、あなたの声をお聞かせください。まずは成年後見に関するお問い合わせいただくことから始めてみませんか。

下北沢司法書士事務所 竹内友章

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