合同会社の相続対策は株式会社化?組織変更登記を司法書士が解説

「うちの会社、相続で揉めないだろうか…」経営者の不安

今日は合同会社の組織変更について開業から10年たち、開業当初に会社設立した社長様から相続の相談を受けることも多くなった世田谷の司法書士が解説します。組織変更とは合同会社を株式会社にしたり、株式会社を合同会社にすることです。実はこの組織変更が相続と深い関係があるのです。

「家族には迷惑をかけたくない」「社員たちの生活も守りたい」「何より、自分が長年取り組んできたこの事業を、円満に次の世代へ引き継ぎたい」。そう願う一方で、具体的に何をすれば良いのか分からず、漠然とした不安を抱えている経営者様は少なくありません。

特に、設立時の手軽さから選ばれることの多い「合同会社」は、実は相続の場面で思わぬトラブルの火種を抱えていることがあります。大切なご家族が、会社のことでいがみ合う姿など、誰も見たくありませんよね。そうした事態は、しっかりとした遺産分割協議の準備などで未然に防げる可能性があります。

この記事では、司法書士として多くの事業承継に携わってきた経験から、合同会社の相続に潜むリスクと、その有効な対策の一つである「株式会社への組織変更」について、手続きの流れも含めて分かりやすく解説していきます。あなたの不安を、未来への安心に変えるための一歩を、ここから始めましょう。

合同会社のままでは危険?相続で家族が揉める3つの火種

「うちは家族経営だから大丈夫」そう思っていても、いざ相続が始まると状況は一変することがあります。合同会社は、株式会社と比べて設立が簡単な反面、その仕組みが原因で相続トラブルを引き起こしやすい側面を持っています。具体的にどのようなリスクがあるのか、3つの観点から確認していきましょう。

合同会社の相続で起こりうる3つの火種「分割しにくい持分」「相続人が経営に参加できない」「会社が消滅するリスク」を図解したインフォグラフィック。

リスク1:分割しにくい「持分」が争いの原因になる

合同会社の社員(出資者)の権利は「持分」と呼ばれます。これは、株式会社の「株式」のように1株、2株と細かく分けられるものではなく、「Aさんの持分」「Bさんの持分」といった、いわば一体の権利です。

この「分けにくさ」が、相続の際に大きな問題となります。例えば、経営者である父親が亡くなり、相続人である子供2人が持分を相続したとします。しかし、会社の経営方針や利益の分配方法で意見が対立してしまったらどうなるでしょうか。持分は簡単には分割できないため、身動きが取れなくなってしまうのです。

これは、相続した不動産を兄弟の共有名義にしてしまい、売るにも貸すにも意見がまとまらず、結局放置されてしまうケースと似ています。誰が経営を引き継ぐのか、経営に関与しない相続人にどう財産を分配するのか。柔軟な対応が難しい「持分」は、家族間の争いの元になりかねません。

リスク2:定款の不備で、相続人が経営に参加できない

「自分が死んだら、子供に会社を継いでもらいたい」そう考えている経営者様は多いでしょう。しかし、その想いを実現するためには、会社のルールブックである「定款」に特別な定めが必要です。

実は、会社法の原則では、合同会社の社員が死亡すると、その社員は会社を「退社」したものとして扱われます。そして、定款に「社員が死亡した場合には、その相続人が持分を承継する」といった旨の記載がなければ、相続人は経営権を引き継ぐことができません。

では、どうなるのか。相続人は、会社に対して持分の払戻しを請求する権利しか持てないのです。つまり、お金はもらえるかもしれませんが、会社の経営には一切関与できなくなります。創業者の想いや事業そのものが、ここで途絶えてしまう危険性があるのです。

多くの中小企業では、会社設立時の定款のまま何年も見直していないケースが散見されます。あなたの会社の定款は、本当に大丈夫でしょうか。

参考:持分会社の退社時の出資の評価(国税庁)

リスク3:一人会社では、社長の死亡により会社が解散する場合がある

一人で合同会社を経営されている社長様にとって、これは最も深刻なリスクかもしれません。もし、前述の定款に持分承継の定めがないまま、唯一の社員である社長がお亡くなりになった場合、会社はどうなると思いますか?

答えは、「自動的に解散する」です。

社員が一人もいなくなってしまうため、会社は存続できなくなり、法律の規定によって会社の解散手続きに入ってしまいます。これは、長年かけて築き上げてきた事業、守ってきた従業員の雇用、そして信頼関係を築いてきた取引先との関係、そのすべてが一瞬にして失われることを意味します。こんな結末は、あまりにも悲しいですよね。事前対策の重要性が、ここからもお分かりいただけるかと思います。

円満相続の鍵は「株式会社化」。組織変更がもたらす未来

ここまで合同会社に潜む相続リスクについてお話ししてきましたが、もちろん解決策はあります。その中でも、有効な選択肢の一つが「株式会社への組織変更」です。これは、単に会社の種類を変えるだけでなく、事業承継を円滑に進めるための方法の一つとなり得ます。

ここで、私が実際に担当させていただいた事例をご紹介します。

開業当初、目黒区で合同会社設立登記を担当させていただいたAさんの会社は順調に成長していました。しかし、事業のほかAさんにはもう1つ大きく気になるテーマができました。それは相続です。Aさんはまだ50代で一般的には相続を気にする世代ではないように思えますが、最近年の近い経営者仲間が亡くなったそうです。深刻な病気を抱えていたようには見えなかったこともあって「自分もいつどうなるか分からないな」と考えたようです。

そこで会社の相続、いわゆる事業承継について考えるようになり私にご相談をいただきました。Aさんの推定相続人は奥様とお子さんが1人。現状で対策しやすいことの1つとして、合同会社を組織変更し株式会社化することを提案しました。合同会社の場合、基本的に会社の所有権は「持分」という形ですが非常に分割がしにくいです。その点、株式会社化して「株」にすればいかようにも分割できます。後は遺言で奥様とお子さんに会社の資本政策も見据えながら配分すれば会社の権利が非常に相続しやすい形となります。Aさんの事業も軌道にのっていましたし、良いタイミングなので株式会社への組織変更することになりました。

司法書士に相談し、会社の相続問題について安心した表情を浮かべる経営者。

「株式」なら財産を柔軟に分けられ、争いを防げる

株式会社化する最大のメリットは、会社の権利が「株式」という単位になることです。持分と違い、株式は1株単位で細かく分割できます。これにより、遺言などを活用して、相続人ごとに柔軟な財産配分が可能になります。

例えば、「会社の経営権は、事業に意欲のある長男に集中させたい。しかし、他の子供たちにも財産として公平に何かを残したい」といった経営者様の複雑な想いに応えることができます。長男には議決権の過半数の株式を、他の子供たちには配当を受け取れる株式を、といった形で設計することで、遺産分割での揉め事を未然に防ぐことができるのです。

特定の重要事項について拒否権を持つ拒否権付種類株式(黄金株)などを活用すれば、より緻密なコントロールも可能です。

会社の信用力が高まり、事業の成長にも繋がる

株式会社化は、相続対策という「守り」の側面だけでなく、事業の成長という「攻め」の側面でもメリットがあります。一般的に、株式会社を選択することは、合同会社よりも社会的な信用度が高いと見なされる傾向にあります。

この信用力は、金融機関からの融資、大手企業との新規取引、優秀な人材の採用など、事業のあらゆる場面で有利に働く可能性があります。円満な相続を実現するための組織変更が、結果として事業継続や成長の選択肢を広げることにもつながります。これは、経営者様にとって非常に魅力的なビジョンではないでしょうか。

司法書士が解説!合同会社から株式会社への組織変更登記手続き

「なるほど、株式会社化のメリットは分かった。では、具体的にどうすればいいのか?」そう思われた方のために、ここからは専門家である司法書士の視点から、組織変更に必要な登記手続きの全体像を解説します。

手続きは大きく分けて3つのステップで進みます。全体としては、準備期間を含めて最低でも2〜3ヶ月はかかると考えておくと良いでしょう。より詳しい手続きについては、合同会社を株式会社に変更する際のポイントを解説した記事もご参照ください。

合同会社から株式会社への組織変更登記手続きの3ステップ(組織変更計画の作成、総社員の同意と債権者保護手続、法務局への登記申請)を示したフローチャート。

ステップ1:組織変更計画の作成

まず最初に行うのが、組織変更の設計図となる「組織変更計画」の作成です。これは、新しい株式会社の基本事項を定める重要な手続きです。具体的には、以下のような項目を決定します。

  • 新しい株式会社の商号(会社名)、事業目的、本店所在地
  • 取締役などの役員構成
  • 発行する株式の総数
  • 元の合同会社の社員に対して、割り当てる株式の数やその算定方法
  • 組織変更の効力が発生する日

特に重要なのが、「誰にどれだけの株式を割り当てるか」という点です。これが将来の経営権や相続に直接影響します。例えば、後継者には議決権の多くを、他の家族には少なく、といった配分をこの段階で設計します。会社の未来を左右する重要な決定ですので、安易に決めず、専門家と相談しながら慎重に進めることを強くお勧めします。場合によっては、議決権だけを制限した種類株式の発行も検討します。

ステップ2:総社員の同意と債権者保護手続

組織変更計画が固まったら、次に社内外の利害関係者からの同意を得る手続きに進みます。

【社内】総社員の同意
組織変更は会社の根本に関わる重大な変更ですので、合同会社の全社員(総社員)から同意を得る必要があります。一人でも反対する社員がいると、手続きを進めることはできません。

【社外】債権者保護手続
会社の種類が変わることは、会社にお金を貸している金融機関などの債権者にとっても重要な事柄です。そのため、法律では債権者が異議を申し立てる機会を与えることを義務付けています。具体的には、「官報」という国の新聞のようなものに組織変更する旨を掲載(公告)し、さらに把握している債権者には個別に通知(催告)します。そして、1ヶ月以上の異議申立期間を設ける必要があります。この手続きがあるため、全体のスケジュールには余裕を持つことが不可欠です。

この債権者保護手続は、会社の解散・清算など、他の重要な手続きでも求められることがあります。

参考:会社法における債権者異議手続の意義(PDF)

ステップ3:法務局への登記申請(設立と解散)

債権者保護手続が完了し、組織変更の効力発生日が来たら、いよいよ最終ステップである法務局への登記申請です。

ここが少し特殊なのですが、組織変更の登記は、「新しく設立される株式会社の設立登記」と「元の合同会社の解散登記」を同時に申請する必要があります。管轄の法務局に、以下のような書類をまとめて提出します。

  • 組織変更計画書
  • 定款
  • 総社員の同意書
  • 債権者保護手続関係の書類(官報公告の証明など)
  • 株式会社の役員の就任承諾書
  • 印鑑証明書 など

登記申請に際しては、登録免許税という税金がかかります。これは、株式会社の設立登記分として原則として資本金の額の1000分の1.5(最低3万円)、合同会社の解散登記分として3万円が必要です。ただし、組織変更直前の資本金額を超える部分については税率が異なる場合があります。会社設立にかかる費用は、こうした実費も考慮しておく必要があります。

登記が完了すれば、晴れて合同会社から株式会社への組織変更手続きは完了です。

組織変更だけが正解ではない。まず専門家にご相談ください

ここまで、相続対策としての株式会社化のメリットや手続きについて詳しく解説してきました。確かに、組織変更は多くの合同会社にとって、円満な事業承継を実現するための有効な方法となり得ます。

しかし、忘れてはならないのは、「株式会社化が全ての会社にとって唯一の正解ではない」ということです。

会社の規模や事業内容、ご家族の構成、そして何より経営者様ご自身の想いによっては、合同会社のまま定款をしっかりと整備したり、遺言書を工夫して作成したりする方が適しているケースも十分に考えられます。

大切なのは、インターネットの情報だけで判断するのではなく、ご自身の会社の状況を専門家と一緒に客観的に確認することです。私たち司法書士は、法律や登記の専門家であると同時に、多くのご家族の悩みと向き合ってきたカウンセラーでもあります。

あなたの会社にとって、そしてご家族にとって、本当に最適な相続対策は何か。それを一緒に見つけるお手伝いをさせていただけませんか。当事務所では、司法書士業務の範囲内での無料相談も実施しております。まずはお気軽にお話をお聞かせください。

初回無料相談で、あなたの会社に最適な相続対策を見つけませんか?

下北沢司法書士事務所 竹内友章

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