不動産が複数・遠方にある場合の相続登記費用と報酬計算の仕組み | 世田谷区の相続・認知症対策・事業承継は下北沢司法書士事務所

不動産が複数・遠方にある場合の相続登記費用と報酬計算の仕組み

複数・遠方の相続登記費用は実費と司法書士報酬の2種類

「実家の自宅以外にも、離れた場所にアパートや駐車場、山林など複数の不動産がある」
「世田谷区の自宅だけでなく、地方の実家や別荘もまとめて相続登記したい」

このように、所有する不動産の数が多かったり、複数の地域に散らばっていたりする場合、「相続登記の費用がどれくらい膨らむのか」「司法書士への報酬はどうやって計算されるのか」と不安に思われる方も多いのではないでしょうか。2024年4月から相続登記が義務化され、原則として不動産を相続したことを知った日から3年以内(2024年4月1日より前に取得を知った未登記不動産は2027年3月31日まで)に手続きを行わず、正当な理由なく申請義務に違反した場合は、10万円以下の過料の対象となる点にも注意が必要です。

本記事では、複数・遠方の不動産がある場合の「実費」と「司法書士報酬」の仕組みについて、わかりやすく解説します。なお、手続き全体の流れや基本知識については、不動産の名義変更(相続登記)で体系的に解説しています。

まず前提として、相続登記の費用は大きく「実費」と「司法書士報酬」の2つに分かれます。

費用の種類内容算出の考え方
実費国に納める税金や証明書の取得費用固定(登録免許税:固定資産税評価額 × 0.4% など)
司法書士報酬手続きを代行する専門家への謝礼事務所の料金体系(基本報酬+物件数・管轄数の加算等)
相続登記にかかる費用の2つの柱

登録免許税などの「実費」は、どの司法書士に頼んでも(ご自身で申請しても)金額は変わりません。一方、「司法書士報酬」は不動産の数や管轄によって計算方法が変わります。

誰が手続きしても金額が変わらない「実費」の内訳

実費とは、ご自身で法務局へ申請しても、どの司法書士事務所に依頼しても金額が一切変わらない法定の費用です。具体的には、次の3つの費用が実費として発生します。

  • 登録免許税:名義変更の際に国へ納める税金です。原則として「不動産の固定資産税評価額 × 0.4%(1,000分の4)」で計算されます(評価額の1,000円未満、および算出税額の100円未満は切り捨て)。
  • 証明書の取得費用:役所で取得する戸籍謄本(1通450円)、除籍謄本や改製原戸籍(1通750円)、住民票や固定資産評価証明書(1通300円〜400円前後)、法務局で取得する登記事項証明書(請求・受取方法により1通490円〜600円)などの発行手数料です。
  • 郵送費・通信費:遠方の役所から戸籍を取り寄せる際の切手代や、法務局と重要書類をやり取りするための書留郵便代などです。

不動産が複数ある場合、実費の中で増えるのは「対象物件ごとの登記事項証明書・評価証明書の取得費」と「評価額の合計に応じた登録免許税」です。一方で、被相続人の出生から死亡までの戸籍一式などは、不動産がいくつあっても原則として1セット揃えれば使い回すことができます。

なお、2027年(令和9年)3月31日までの時限措置として、固定資産税評価額が100万円以下の土地に係る相続登記については、登録免許税が非課税となる特例が設けられています。地方の山林や農地、共有持分の私道などでこの要件に当てはまる場合は、税金面の負担を抑えることが可能です。適用要件の詳細は、法務局が公開している登録免許税の免税措置の案内をご確認ください。

事務所の料金体系で決まる「司法書士報酬」の相場

もう一つの費用である司法書士報酬は、平成15年に報酬規定が廃止されて以降、完全な自由化となっています。現在は各司法書士事務所が独自の料金表(報酬規程)を定めており、依頼する事務所によって金額が異なります。

一般的な1件(自宅の土地1筆+建物1棟などシンプルなケース)の報酬相場は、おおむね5万〜15万円程度とされています。日本司法書士会連合会が実施したアンケート調査でも、一般的な相続登記(不動産の価格1,000万円、相続人3名等のモデルケース)における全国平均報酬額は約7.5万円前後という客観的なデータが出ています。地域ごとの傾向やアンケート結果の詳細は、日本司法書士会連合会の司法書士の報酬に関する解説ページでも公開されています。

ただし、この相場を見る際は「どこまでの業務が含まれているか」に注意が必要です。戸籍の収集代行から遺産分割協議書の作成、登記申請までをすべて含めた「パック料金制」を採用している事務所もあれば、基本報酬をベースに各項目の作業代を積み上げていく事務所もあります。そのうえで、不動産が複数ある場合や遠方にある場合には、ほとんどの事務所が「基本報酬 + 加算報酬(物件加算・管轄加算)」という仕組みで報酬を計算しています。

なお、手続きの第一歩となる戸籍集めの費用や手順については、戸籍謄本の取得・相続人調査をご覧ください。

不動産の数(筆数・棟数)が多い場合の司法書士報酬の仕組み

「土地と建物で1件ずつ」「アパートや駐車場、私道(共有持分)もある」など、同一の市区町村内に複数の不動産があり、物件の数が増える場合、司法書士の報酬はどのように決まるのでしょうか。司法書士業界で広く採用されている一般的な計算ルールを見ていきましょう。

複数・遠方の不動産がある場合の司法書士報酬の計算仕組み(基本報酬+筆数加算+複数管轄加算)を示す図解

「基本報酬+筆数加算」が多く、単純に倍増はしない

不動産登記の世界では、土地を数える単位を「筆(ふで)」、建物を数える単位を「棟(むね)」または「戸(こ)」と呼びます。たとえば「自宅の敷地と一戸建て」であれば、土地1筆+建物1棟で合計2個の不動産として扱います。

多くの司法書士事務所では、「基本セット料金(不動産2〜3筆程度まで)」を設定し、それを超える分について「1筆あたり数千円〜1万円程度(例:1,000円〜5,000円など事務所による)」の加算費用(物件加算・筆数加算)を設ける体系をとっています。

そのため、所有する物件数が5筆・10筆と増えても、司法書士報酬全体が「2倍・3倍」と単純に掛け算で跳ね上がるわけではありません。たとえば基本報酬が7万円(3筆まで含む)で、追加1筆あたり3,000円の事務所であれば、不動産が合計8筆(5筆追加)あっても加算される報酬は1万5,000円にとどまります。物件数が多いからといって過度に心配する必要はないと言えます。

私道や非課税の土地・山林も「1筆」に数える注意点

複数の不動産があるケースで特に見落としやすいのが、ご自宅の前に「私道負担(前面道路の共有持分)」がある場合や、固定資産税が非課税となっている土地、評価額が極めて低い山林・農地などが含まれている場合です。

固定資産税が非課税で固定資産課税台帳に評価額の記載がない私道などの場合、登録免許税の計算では法務局の登記官が認定する価額(近傍宅地の価格等をもとに算出)を用います。そのうえで、登録免許税上の不動産の価額が100万円以下であり、2027年3月31日までに対象の相続登記を受ける場合には、国に納める登録免許税(実費)は免税となります。しかし、司法書士の業務としては、価値の高い宅地とまったく同様に、登記記録(権利関係)の確認や、遺産分割協議書および登記申請書への正確な物件情報の記載といった名義変更の作業そのものが1筆ごとに発生します。

もし私道部分の登記だけが漏れてしまうと、将来ご自宅を売却しようとした際に「前面道路の通行・掘削の権利関係が古いままで引き渡せない」といったトラブルに直結しかねません。そのため、司法書士業界では固定資産税が非課税の私道や評価額が数万円の土地であっても、作業量と責任が生じる以上、1筆として物件加算のカウント対象とする事務所が一般的です。

筆数が多くなりがちな山林特有の注意点については、実は特殊!司法書士が教える山林の相続登記3つのポイントをご覧ください。

遠方など地域を跨いで不動産がある場合の費用と管轄の考え方

「世田谷区の自宅」と「地方の実家・山林」というように、不動産が異なる都道府県・市区町村にある場合は、物理的な距離ではなく、法務局の「管轄(かんかつ)」が費用計算の重要なポイントになります。

法務局の管轄が分かれると「申請件数」ごとに報酬が加算される

相続登記は、対象となる不動産の所在地を管轄する法務局ごとに申請を出さなければなりません。同じ市区町村内にある不動産か、地域を跨いでいるかによって、申請の回数が次のように変わります。

  • 同じ区・市内の不動産(例:世田谷区内の自宅・アパート・駐車場):すべて同じ管轄(東京法務局世田谷出張所)となるため、1つの法務局にまとめて1回で申請可能です(1件の申請)。登録免許税も評価額を合算して計算できます。
  • 世田谷区と他県・他区の不動産(例:世田谷区の自宅と長野県の別荘、または大田区の土地):管轄する法務局が異なるため、それぞれの法務局へ別々に申請書を作成して提出する必要があります(2件以上の申請)。

このように管轄が分かれて申請が2件・3件と増える場合、司法書士の業務も申請書作成や添付書類の編成、法務局ごとの審査・完了確認作業が件数分発生します。そのため、多くの司法書士事務所では「1管轄(1申請)追加につき数万円(5万円程度)」または「2件目以降の申請は基本報酬の●%(50%〜80%程度)を加算」といったルールを設けています。同じ都道府県内にあっても、市区町村が異なれば管轄法務局が別になるケースが多いため、この仕組みを知っておくと見積書の内容が理解しやすくなります。

オンライン申請で全国一括対応できるため出張費は不要

「地方の不動産は現地近くの司法書士に頼まなければいけないのでは?」「遠方の物件だと、司法書士の出張費や交通費が高くつくのではないか」と心配される方もいらっしゃいますが、その必要はありません。

現在は法務局のオンライン申請システムと郵送手続きが全国で整備されているため、司法書士が現地へ足を運ぶことなく、日本全国の法務局へ電子申請を行うことができます。特別な現地調査などが不要な通常の相続登記であれば、物理的な距離がどれだけ離れていても、出張費や交通費、日当といった費用は原則として発生しません。

むしろ、世田谷区の不動産は地元の事務所へ、地方の実家は現地の事務所へと別々に依頼してしまうと、それぞれの事務所で「基本報酬」が一からかかってしまい、費用が割高になります。さらに、同じ戸籍の束を何度もやり取りしたり、複数の担当者と打ち合わせを重ねたりする手間も増えてしまいます。お近くの司法書士事務所1か所で遠方の相続手続きまで全国すべての不動産を一括して依頼するほうが、窓口が1つにまとまり、トータルの報酬と連絡の手間を大幅に削減できます。

全国の不動産の相続登記について司法書士から説明を受け、安心しているご夫婦のイラスト

複数・遠方の不動産の相続登記で見積もりを取る際の確認点

複数の不動産をお持ちの場合や、遠方に物件が散らばっている場合、費用の内訳や算出基準は一見複雑に思えるかもしれません。しかし、ここまで解説した仕組みを押さえたうえで見積もりを取ることで、納得感を持って手続きを進めることができます。

見積書の「実費」と「加算報酬(筆数・管轄)」の内訳を確認する

複数の不動産がある場合や、世田谷区のご自宅のように固定資産税評価額が高い不動産が含まれる場合、見積もりの総額が20万〜30万円以上になることも珍しくありません。その際、合計金額だけを見て「高い」と判断するのではなく、見積書の内訳を次のステップで切り分けて確認することが大切です。

確認項目具体的なチェックポイント
実費と報酬の区別総額のうち、税金(登録免許税)や証明書代などの「実費」がいくらで、「司法書士報酬」がいくらなのか明確に分かれているか。
物件数(筆数)加算基本報酬の中に不動産何筆(何個)までが含まれており、追加分は1筆あたりいくらの加算になっているか。
複数管轄(申請件数)加算法務局の管轄がいくつに分かれており、2件目以降の申請追加費用がいくらに設定されているか。
付随業務の有無戸籍謄本の収集代行や遺産分割協議書の作成、相続関係説明図の作成費用が報酬に含まれているか(または別料金か)。
複数・遠方の相続登記における見積書チェックリスト

たとえば見積総額が25万円であっても、そのうち登録免許税や証明書の取得費・郵送費などを含めた「実費」の合計が15万円であれば、司法書士報酬は残りの10万円ということになります。このように内訳を整理して比較することで、その事務所の料金設定が適正かどうかを冷静に判断できるようになります。

正確な無料見積もりには固定資産税の納税通知書を用意する

司法書士事務所から正確な事前見積もりを出してもらうためには、「不動産の固定資産税評価額」「全体の筆数・棟数(私道持分などを含む)」「物件の所在地(管轄法務局の数)」の3つが分かる資料が必要です。

ご相談の際は、毎年春(4月〜6月頃)に各市区町村から届く「固定資産税の納税通知書(課税明細書)」と、お手元にある「権利証(登記済証または登記識別情報通知)」をご用意いただくと非常にスムーズです。課税明細書には評価額が記載されているため登録免許税を正確に計算でき、権利証と照らし合わせることで、課税明細書には載りにくい非課税の私道なども含めた相続登記の漏れを防ぐ不動産調査や正確な筆数カウントが可能になります。

次のようなお悩みをお持ちの方は、まずはこれらの資料をお手元に用意して専門家へ相談してみてはいかがでしょうか。

  • 物件数が多くて費用の見積もりが知りたい
  • 遠方の実家や山林も一緒に名義変更したい
  • 私道の扱いや戸籍の収集からまとめて任せたい

多くの司法書士事務所と同様に、当事務所(下北沢司法書士事務所)でも、事前のヒアリングをもとに明確な無料見積もりをご提示しております。「自分のケースだとどれくらいの費用になるのか」といったご質問だけでも、どうぞお気軽にお問い合わせください。

下北沢司法書士事務所 竹内友章

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