後見監督人とは?成年後見人との違いを司法書士が解説

成年後見人と後見監督人、なぜ混同しやすい?司法書士が解説

「成年後見制度」と聞くと、多くの方が「成年後見人」がご本人の財産管理や身上監護を行う制度、というイメージをお持ちかと思います。ただ成年後見制度には似たような用語で「後見監督人」というのも出てきます。会話の中だと成年後見人と後見監督人がごっちゃになるとうまく伝わらないことも少なくありません。この2つが違う立場であることを意識すると裁判所に後見人になるための面接に行くときなども話が分かりやすくなります。

まず抑えておきたいのは、成年後見制度を利用する場合「成年後見人」は必ず選ばれますが「後見監督人」は選ばれるかどうかはケースによるということです。監督人は必ずつくものではありません。一般に司法書士をはじめとする専門職だと監督人がつきにくく、親族が後見人だと監督人がつく可能性が高いです。ただ専門職でも司法書士の場合は後見の組合組織(公益社団法人成年後見センター・リーガルサポート)に属していない場合は監督人がつきやすいでしょうし、あくまで傾向性がそうだとしかコラムでは言えません。あなたのご家庭の事情や後見制度を利用したい目的などが分かればもう少し具体的にお話しできると思います。成年後見制度利用のご相談をしたい方は、ぜひ下北沢司法書士事務所までご相談ください。

もう1つお伝えしておきたいことがあります。後見人は候補者を推薦できますが監督人は基本的に候補者を推薦できません。裁判所に後見制度利用の際に提出する申し立て書に後見人候補者を書く欄はあっても、監督人候補者を書く欄はありません。監督する人まで推薦させたら、監督人がご本人よりも後見人のために仕事をしてしまうリスクが上がりますので当然かもしれません。

それでが成年後見人と後見監督人の役割や権限、費用の違いについて、私も監督人を経験しているので実務上の経験も交えながら解説していきます。

一目でわかる!成年後見人と後見監督人の違い

成年後見人と後見監督人では役割が違います。後見人は実際に財産管理をする人、監督人はその人から相談を受けて回答をしたり、後見人の業務に問題があったら注意したり、あるいは後見人が作成した報告書類をチェックするのが主な仕事です。

両者の違いをより具体的に理解するために、「役割」「選任」の観点から比較してみましょう。

成年後見人と後見監督人の違いを比較した図解。成年後見人は「実行する人」、後見監督人は「監督する人」と役割や選任方法の違いをアイコン付きで分かりやすく解説。

役割の違い:財産を「管理する人」と「監督する人」

両者の最も大きな違いは、その役割にあります。

  • 成年後見人:ご本人の代理人として、預貯金の管理、不動産の処分、施設の入所契約など、財産管理や身上監護に関する事務を「実行」するのが主な役割です。いわば、最前線で動くプレイヤーです。
  • 後見監督人:成年後見人の業務が、ご本人の利益のために、そして法律や家庭裁判所の指示に従って適切に行われているかを、第三者の客観的な視点から「チェック(監督)」するのが役割です。後見人から定期的に財産状況の報告を受け、その内容を審査し、家庭裁判所に報告します。

後見監督人は、後見人の事務を監督しますが、後見人に代わって財産管理を直接行うわけではありません。

選任の違い:必ず選ばれる後見人と、必要に応じて選ばれる監督人

選任されるプロセスにも明確な違いがあります。

  • 成年後見人:成年後見制度(法定後見)の利用が開始されると、必ず選任されます。後見人がいなければ制度は始まりません。
  • 後見監督人:常に選任されるわけではなく、家庭裁判所が「後見人の業務を監督する必要性が高い」と判断した場合に選任されます。親族が後見人になる時はかなり高い確率で選任されるでしょう。後述する任意後見制度を利用する場合には必ず選任されます。

この違いを理解することが、制度利用の全体像を掴む上で非常に重要です。成年後見制度の全体像については、「任意後見・家族信託・法定後見の違い」で体系的に解説しています。よろしければこちらも合わせてご覧ください。

【法定後見】後見監督人の権限

ここからは、家庭裁判所が判断能力の不十分な方のために後見人を選ぶ「法定後見」制度において、後見監督人がどのような権限を持つのかを詳しく見ていきましょう。

後見監督人の権限:どこまで関与するのか

後見監督人には、後見人の業務を適切に監督するため、民法でいくつかの権限が定められています。

  • 後見事務の監督と報告請求権:いつでも後見人に対して後見事務の報告を求め、財産の状況を調査することができます。
  • 財産目録の作成への立ち会い:後見人が就任後に行う財産調査と財産目録の作成に立ち会います。
  • 後見監督人の同意を要する行為:後見監督人が選任されている場合、後見人が被後見人に代わって営業や民法13条1項各号の行為をするには、原則として後見監督人の同意が必要です。
  • 利益相反行為における本人代理権:後見人とご本人の利益が相反する法律行為について、ご本人を代理します。
  • 後見人の解任請求権:後見人に不正な行為や著しい不行跡、その他後見の任務に適しない事由があるときは、家庭裁判所にその解任を請求することができます。

これらの権限は強力ですが、監督人はあくまで後見業務が適正に行われるよう見守る立場です。日常の細かな買い物や介護の方針決定などに、都度介入するわけではありません。

実際の監督人はどんなことをするのか:監督人経験者である司法書士の実体験

後見監督人の権限について民法にどう書いてあるかお話ししました。法律上の用語を使いながら説明したのでなんだか随分理屈っぽくて細かそうな人のように感じるかも知れません。実際に監督人につくのは弁護士さんや司法書士が多いです。私は司法書士ですので、自分が監督人をつとめることもあれば同業の方に監督人就任を業務としている方もたくさんいらっしゃいます。その経験と現場の雰囲気を知っている立場からすれば、ぜひみなさんに安心して頂きたいと思います。杓子定規に法律の話ばかりしたり細かい報告を求めたりする人は少数派だと思います。たまそういう人もいますが、このコラムに行きついてくれるあなたならそんな人にあたらないでしょう。大丈夫です!私も本当はいけないのかも知れませんが、裁判所向けの書類作成に慣れない親族後見人のために、ほとんど代わりに書類を作っている状態の時もあります。当然、後見人ご本人にも事実関係に間違いがないかなど良く確認して頂いてはいますが、少しでも後見業務の負担を減らしていただけるよう努力しているつもりです。ただ、不動産売却など複雑な課題が控えている場合は要注意かも知れません。あなた自身も行う作業が難しかったり、段取りにもある種のセンスが必要です。加えて監督人も実はまだ監督業務に慣れない人で、過度に慎重になったりうまくあなたに助言ができなかったりすると話が一向に進まず、先方と約束した契約期限ばかりがどんどん迫ってくるなんてことも考えられます。重いテーマがある場合は、司法書士などの専門職に後見人を任せることも検討しましょう。

後見監督人になれない人とは?(欠格事由)

後見監督人は、後見人を監督するという重要な役割を担うため、誰でもなれるわけではありません。法律で、以下の人は後見監督人になることができないと定められています(欠格事由)。

  • 未成年者
  • 家庭裁判所で解任された法定代理人、保佐人、補助人
  • 破産者
  • 本人に対して訴訟をした者、その配偶者、直系血族
  • 行方の知れない者
  • 後見人の配偶者、直系血族及び兄弟姉妹

未成年者や既に他の方の成年後見人として解任された人、自分が破産した人は財産管理をする立場としてふさわしくありません。後は後見人に近しい人も除かれています。

(参考:成年後見監督人(保佐監督人、補助監督人)の選任|裁判所

【任意後見】任意後見監督人の役割と選任の重要性

任意後見契約について司法書士と相談する老夫婦のイラスト。将来への備えをすることで安心感を得ている様子。

次に、ご本人が元気なうちに、将来判断能力が低下したときに備えて自ら後見人を選ぶ「任意後見」制度における監督人の役割を見ていきましょう。ここには、法定後見とは決定的に違う重要なポイントがあります。

任意後見では監督人の選任が必須!その理由とは

法定後見では監督人が選任されないケースもありますが、任意後見制度では、任意後見監督人が選任されて初めて契約の効力が生じます。つまり、任意後見監督人の選任は「必須条件」なのです。

なぜ必須なのでしょうか。それは、任意後見が、ご本人の意思に基づいて自由に後見人(任意後見受任者)を選び、財産管理の内容も契約で決められる、自由度の高い制度だからです。その自由度を担保する代わりに、いざ判断能力が低下して契約が発効する段階になったら、公的機関である家庭裁判所が選んだ監督人が、その契約がきちんと守られているかをチェックする仕組みになっているのです。

本人が選んだ後見人だからこそ、客観的な第三者による監督が不可欠である、という考え方が根底にあります。より詳しい制度の違いについては、「任意後見・家族信託・法定後見の違い」の記事もご参照ください。

任意後見監督人の仕事:契約内容の遵守をチェック

任意後見監督人の主な仕事は、任意後見人が事前に結ばれた「任意後見契約書」に定められた内容通りに業務を行っているかを監督し、家庭裁判所に定期的に報告することです。

法定後見監督人との違いは、監督の基準が法律だけでなく、当事者間で定めた「契約書の内容」になる点です。契約で定められた代理権の範囲を逸脱した行為をしていないか、任意後見人にために代理権を行使しているか、といった点が任意後見監督人の注目するポイントになります。

気になる費用は?後見監督人の報酬の目安

後見監督人が選任された場合、気になるのが費用面です。後見人だけでなく、監督人にも報酬を支払う必要があります。

報酬は誰が払う?金額の目安は?

後見監督人への報酬は、成年後見人への報酬と同様に、ご本人の財産の中から支払われます。後見人や親族が負担するわけではありません。

報酬額は、後見監督人が行った業務内容に応じて、家庭裁判所が決定します。明確な基準があるわけではありませんが、一般的に、管理財産額に応じて以下のような目安が示されています。

管理財産額報酬月額の目安
5,000万円以下1万円~2万円
5,000万円超2万5,000円~3万円
後見監督人の報酬額の目安

また、不動産の売却など通常の後見事務以外の特別な業務を行った場合には、上記の基本報酬とは別に「付加報酬」が認められることもあります。ご自身の状況でどの程度の費用がかかるか知りたい方は、「任意後見・信託・法定後見の費用比較」のページも参考にしてください。

(参考:成年後見人等の報酬額のめやす|東京家庭裁判所

【専門家の視点】後見監督人と上手く付き合うためのポイント

親族後見人が専門家である後見監督人と協力して業務を進めている様子。二人は良好な関係を築いている。

ご親族が成年後見人になった場合、監督人として弁護士さんや司法書士などの専門家が選任されることが多くあります。「専門家に監視されるようで、なんだかやりにくい…」と不安に感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、後見監督人は決して敵ではありません。むしろ、適正な後見業務を行うための心強いパートナーです。ここでは、監督人と良好な関係を築くためのポイントを解説します。

監督人は「味方」。定期的な報告・連絡・相談を

基本的に後見監督人はあなたの味方です。仮に監督人がいなかったとしても、どの道裁判所には監督されます。監督人がいる場合は「裁判所が納得する報告書類の作り方や説明の仕方を一緒に考えてくれる人」と考えると良いと思います。監督人になる人も色んな方がいますのでこの姿勢でいつもうまくいくわけではありませんが、少なくとも最初から警戒感ガチガチで対峙するよりはスムーズなコミュニケーションがとれると思います。

財産管理の透明性を保つための記録の付け方

監督人からの信頼を得るためには、日々の財産管理の透明性を確保することが不可欠です。ご本人の財産から支出をした場合は、必ず記録を残しましょう。といっても、難しく考える必要がありません。引き落としにできるものは極力引き落としにして、現金をおろしたときは通帳にシャーペンや鉛筆で何に使ったかメモし、領収書もとっておきましょう。これを意識するだけでかなりの部分、財産管理の透明性は保たれると思います。現金で細かい買い物をたくさんした場合は、できればエクセルなどに何にいくら使ったかまとめておくと良いです。

こうした丁寧な記録は、監督人への年次報告の際にも役立ちますし、何よりも後見人自身を他の親族からのあらぬ疑いから守ることにも繋がります。後見業務における精神的な負担を軽減するためにも、記録の習慣化は非常に重要です。

まとめ:後見人と監督人の違いを理解し、最適な制度利用を

この記事では、成年後見人と後見監督人の違いについて解説しました。最後に、重要なポイントを振り返りましょう。

  • 成年後見人は「実行者(プレイヤー)」:ご本人の代理人として財産管理や身上監護を実際に行う。
  • 後見監督人は「監督者(審判)」:後見人の業務が適正に行われているかをチェックする。
  • 法定後見では、監督人は家庭裁判所が必要と判断した場合に選任される。
  • 任意後見では、監督人の選任が契約発効の必須条件となる。
  • 監督人は、後見人を監視する「敵」ではなく、適正な業務を支える「味方」である。

後見監督人は、一見すると後見人にとって堅苦しい存在に思えるかもしれません。しかし、その役割は後見業務の透明性を確保し、ご本人の財産を守ると同時に、不慣れな後見人を支え、法的なトラブルから守ると効果もあります。

当事務所では親族が後見人になる場合も申し立て書類の作成をサポートし、その後のスムーズな後見業務に後見します。特に不動産売却などの大きなイベントが控えている場合は、事情を適切に裁判所に説明する書類を用意した方が良いケースが多いです。また、成年後見人としても東京だけでなく、千葉・埼玉・神奈川・茨城の方の後見人に就任の実績があります。皆様それぞれの背景事情を組みとってくれる司法書士を探し、ご縁あって私がつとめさせていただいております。

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下北沢司法書士事務所 竹内友章

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