故人の株式相続、何から手をつけていいか分からないあなたへ
「父が株をやっていたらしいが、詳細は何も聞かされていなかった」「証券会社から配当金の通知が届いたけれど、どうすれば…」
大切なご家族が亡くなられた悲しみの中、見慣れない書類や聞き慣れない言葉を前に、何から手をつけていいか分からず、途方に暮れていらっしゃるのではないでしょうか。
気持ちが落ちている時は、手続き書類の山も凄いプレッシャーです。実は、私たち司法書士にとっても、株式の相続手続きは意外と複雑な業務の一つです。
以前、30銘柄ほどの株式を遺された方の相続手続きを担当したことがあります。ご親族も「株が趣味だった」ということはご存知でしたが、具体的な内容は誰も把握していませんでした。
まずはお手元にある書類を探していただくことから始め、複数の証券会社からの報告書や配当金の通知書を見つけ出しました。中には、受け取られていない「未払い配当金」の通知もあり、これも大切な遺産として調査する必要がありました。
特に大変だったのが、株を管理する信託銀行とのやり取りです。まず、問い合わせの電話がなかなかつながりません。自動音声案内に従って操作し、15分以上待つことも珍しくありませんでした。ようやく担当者につながっても、「どの株について知りたいですか?」と聞かれ、「預かっている株をすべて知りたい」と伝えても、「銘柄を指定してください」という堂々巡りのような会話が続きます。
担当者の方が「少々お待ちください」と保留になり、10分以上待たされることも一度や二度ではありませんでした。今でこそ、最初に「全銘柄についての残高証明書と未払配当金の有無が知りたい」と伝えればよい、という段取りを理解していますが、最初は本当に骨が折れる作業でした。
こうした経験から断言できるのは、お仕事や家事で忙しい方が、平日の限られた時間を使ってこの手続きをご自身で進めるのは、あまりにも負担が大きいということです。
この記事では、かつての私が経験したような遠回りを皆様がしなくて済むように、複雑な株式相続の調査方法から具体的な手続きまで、専門家として一つひとつ丁寧に解説していきます。読み終える頃には、ご自身の状況と、次に何をすべきかが明確になっているはずです。どうぞ、ご安心ください。
故人の株式、どこにある?まずは全体像を把握しましょう
故人の株式がどこに、どれだけあるのかを正確に把握することが、相続手続きの第一歩です。調査を進めることで、株式が「証券会社の口座」にあるのか、あるいは「信託銀行の特別口座」という特殊な口座にあるのかが判明します。まずは、この全体像をつかむための2つのステップを見ていきましょう。

ステップ1:手元の書類を確認する
まず、故人のご自宅に残された郵便物や書類の中から、株式に関する手がかりを探します。特に重要なのが以下の書類です。
- 取引残高報告書:証券会社から定期的に送られてくる書類で、どの銘柄を何株保有しているかが一覧で分かります。ここに記載されている証券会社が、まず最初の問い合わせ先となります。
- 配当金計算書・配当金領収証:株式を保有している会社から送られてきます。株主としての権利があることの証明であり、「株主名簿管理人」として記載されている信託銀行名が、後の「特別口座」や「未払い配当金」の手続きで重要になります。
- 株主総会招集通知:これも株主であることの証明になります。
これらの書類が見つかれば、どの金融機関に連絡を取ればよいかの見当がつきます。まずは冷静に、関係しそうな書類がないか探してみてください。
ステップ2:証券保管振替機構(ほふり)で口座を調べる
手元に書類が何もなく、まったく手がかりがない場合に有効なのが、「証券保管振替機構(ほふり)」への開示請求です。「ほふり」は、日本の株式などの振替制度を運営している機関で、ここに照会することで、故人が口座を開設していた金融機関(証券会社や信託銀行など)の名称を知ることができます。
ただし、注意点があります。
- 分かること:故人が取引していた「金融機関名」「証券会社名」の一覧
- 分からないこと:具体的な保有銘柄や株数、残高
つまり、「ほふり」への開示請求は、あくまで「どこに問い合わせればよいか」を知るための手続きです。請求には、ご自身が相続人であることを証明するための戸籍謄本一式などが必要となり、費用と時間がかかりますが、調査の突破口となる非常に重要な手段です。この調査結果をもとに、判明した各金融機関へ連絡し、財産目録を作成するための詳細な情報を集めていくことになります。
【最難関】信託銀行の「特別口座」にある株式の相続手続き
株式の相続手続きで、多くの方がつまずく最大の難関が「特別口座」です。調査の結果、信託銀行に「特別口座」があることが判明した場合、手続きは格段に複雑になります。
そもそも「特別口座」とは?特定口座との違い
「特別口座」と、よく似た言葉の「特定口座」。この違いを理解することが重要です。
- 特定口座(および一般口座):私たちが株式を売買するために、証券会社に開設する一般的な取引口座です。
- 特別口座:2009年の「株券電子化」の際に、証券会社の口座で管理されていなかった株式(いわゆるタンス株券など)を保護するために、発行会社が信託銀行に開設した一時的な受け皿となる口座です。
最大のポイントは、特別口座にある株式は、そのままでは売却できないという点です。売却や贈与などを行うためには、まず相続人がご自身の証券口座を開設し、そこへ株式を移す「口座移管」という手続きが必須となります。
この「特別口座」の存在が、複数の金融機関とのやり取りを必要とし、手続きを複雑にしている大きな原因なのです。
『特別口座』の株式を相続人へ移す具体的な手順(口座移管)
ここからは、ユーザー様からのご質問が多かった「特別口座」の株式を相続人の証券口座へ移す(移管する)ための、具体的な4つのステップを詳しく解説します。

- ステップ1:相続人名義の証券口座を開設する
まず、株式を受け取る相続人ご自身の証券口座が必要です。まだお持ちでない場合は、任意の証券会社で口座を開設してください。この口座が、特別口座からの株式の「受け皿」となります。 - ステップ2:信託銀行から相続手続きの書類を取り寄せる
特別口座を管理している信託銀行の「証券代行部」や「相続センター」といった部署に連絡し、相続が発生した旨を伝えます。すると、「相続手続依頼書」などの専用書類一式が郵送されてきます。 - ステップ3:必要書類を収集・作成する
信託銀行から届いた書類に加えて、以下の書類を揃える必要があります。金融機関によって若干異なりますが、一般的に求められるものです。- 故人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本
- 相続人全員の現在の戸籍謄本
- 相続人全員の印鑑証明書
- 遺産分割協議書(法定相続分と異なる分け方をする場合)
- 相続手続依頼書(信託銀行所定の用紙。相続人全員の署名・実印の押印が必要)
- ステップ4:信託銀行へ書類を提出し、移管を依頼する
すべての書類が揃ったら、信託銀行へ提出します。書類に不備がない場合でも、移管に要する期間は金融機関や事案により異なりますが、目安としては数週間〜数ヶ月程度かかることがあります。特別口座が複数の信託銀行に分散している場合は、この一連の手続きを信託銀行ごとに行う必要があります。
見落としがちな「未払い配当金」の受け取り手続き
株式の相続では、株式そのものだけでなく、過去に支払われたものの故人が受け取っていなかった「未払い配当金」も重要な相続財産です。特に長年株式を保有していた場合、ご本人が忘れていたり、住所変更手続きをしていなかったりして、まとまった金額になっているケースもあります。
配当金の受け取り方法と手続き先の違い
未払い配当金の手続き先は、故人がどの方法で配当金を受け取っていたかによって変わります。
| 受取方法 | 概要 | 相続手続きの窓口 |
|---|---|---|
| 株式数比例配分方式 | 証券会社の口座で受け取る方法 | 証券会社 |
| 登録配当金受領口座方式 | 指定した銀行の預金口座で受け取る方法 | 証券会社(口座管理機関) |
| 配当金領収証方式 | 発行会社から郵送される「配当金領収証」を郵便局に持参して受け取る方法 | 信託銀行 |
特に注意が必要なのは、昔ながらの「配当金領収証方式」です。この場合、未受領の配当金は信託銀行が管理しているため、信託銀行での手続きが必要になります。これが、先述した特別口座の手続きをさらに複雑にする要因の一つです。
信託銀行での未払い配当金請求に必要な書類と流れ
信託銀行に未払い配当金を請求する手続きは、基本的には特別口座の株式移管手続きと並行して進めることができます。
- 信託銀行に連絡し、未払い配当金があるかを確認します。
- 未払いがある場合、専用の請求書類を取り寄せます。
- 請求書に、戸籍謄本や遺産分割協議書など、株式の相続手続きで集めた書類を添えて提出します。
- 書類に不備がなければ、指定した相続人の口座へ未払い配当金が振り込まれます。
株式の相続手続きと同時に進めることで、書類の収集などの手間を一度で済ませることができますので、忘れずに確認するようにしましょう。
複雑な株式相続は司法書士に任せるという選択肢
ここまでお読みいただき、株式の相続手続きがいかに複雑で、多くの手間と時間を要するかをご理解いただけたかと思います。
特に、
- 複数の証券会社や信託銀行に口座が点在している
- 相続人が多い、または遠方に住んでいる
- 仕事が忙しく、平日の日中に役所や金融機関へ行く時間が取れない
このような状況では、ご自身ですべての手続きを進めるのは非常に困難です。そんなとき、私たち司法書士に「遺産承継業務」として手続き全体を任せるという選択肢があります。これは、単なる手続きの代行ではありません。煩雑なやり取りや書類の収集、そして何より精神的なご負担から皆様を解放し、大切な時間を守るためのサービスです。それは銀行預金の相続手続きなど、他の財産についても同様です。
司法書士はどこまで代行してくれるのか?
司法書士に「遺産承継業務」をご依頼いただいた場合、相続人の皆様のご協力が必要な場面はありつつも、株式相続に関する手続きの多くを、代理・代行または書類作成等によりサポートすることが可能です。
- 相続人の調査:戸籍謄本を全国から収集し、法的な相続人を確定させます。
- 財産調査:「ほふり」への開示請求を含め、故人の株式がどこにあるかを徹底的に調査します。
- 金融機関との折衝:煩雑な証券会社や信託銀行とのすべてのやり取りを代行します。
- 遺産分割協議書の作成:相続人皆様のご希望を伺い、法的に有効な書類を作成します。
- 株式の名義変更(口座移管):各金融機関での複雑な移管手続きを代行します。
- 未払い配当金の請求:見落としがちな未払い配当金の調査から請求まで行います。
このように、調査から財産の引き渡しまでをワンストップでサポートすることで、相続人の皆様のご負担を最小限に抑えます。特に、多数の相続人がいるケースでは、専門家が間に入ることで手続きがスムーズに進むことが多くあります。
専門家に依頼すべきかどうかの判断基準
「自分でやるべきか、専門家に任せるべきか」と迷われたら、以下の項目に当てはまるかどうかを一つの基準としてみてください。
- 相続する株式の銘柄が10社以上ある
- 信託銀行の「特別口座」に株式があることが分かっている
- 相続人の中に、疎遠な方や遠方に住んでいる方が含まれている
- 平日に銀行や役所、証券会社へ何度も足を運ぶ時間を確保できない
- そもそも、何から手をつけていいか全く分からない
一つでも当てはまるようであれば、一度専門家に相談することを強くお勧めします。ご自身で進めてみたものの、途中で挫折してしまい、かえって時間と費用がかかってしまうケースも少なくありません。
当事務所では、株式の相続手続きに関する無料相談を承っております。まずはお気軽にご状況をお聞かせください。
まとめ:複雑な株式相続は、まず専門家へ相談を
故人が遺された大切な株式。その相続手続きは、①どこに株式があるかを調べる「調査」、②信託銀行との煩雑なやり取りが必要な「特別口座の移管」、③見落としがちな「未払い配当金の請求」など、非常に複雑なステップを踏む必要があります。
これらの手続きをご自身だけで抱え込んでしまうと、心身ともに大きな負担となりかねません。相続手続きで最も大切なのは、故人を偲び、ご自身のこれからの生活を穏やかにスタートさせることです。
複雑な手続きは、専門家である司法書士に任せることで、スムーズな解決への道が開けます。下北沢司法書士事務所では、法律的な手続きを代行するだけでなく、皆様のお気持ちに寄り添い、不安を解消することを第一に考えております。一人で悩まず、まずは私たちにご相談ください。エリアも東京23区はもちろん、神奈川・千葉・埼玉など首都圏の方からご依頼をいただいております。
対応エリア | 相続手続、遺言、相続放棄、会社設立、不動産売却なら下北沢司法書士事務所
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下北沢司法書士事務所 竹内友章

東京都世田谷区北沢にある下北沢司法書士事務所は、相続手続き、遺言作成、相続放棄、会社設立、不動産売却など、幅広い法務サービスを提供しています。代表の竹内友章は、不動産業界での経験を持ち、宅地建物取引士や管理業務主任者の資格を活かし、丁寧で分かりやすいサポートを心掛けています。下北沢駅から徒歩3分の便利な立地で、土日も対応可能です。お気軽にご相談ください。

