「この子に家を残したい」その想い、遺言で実現しませんか?
「長年、同居して身の回りの世話をしてくれているこの子に、私が亡くなった後も安心して暮らせるように自宅を残してあげたい」
「でも、他の子どもたちとの間で不公平になって、家族が揉める原因にならないだろうか…」
ご自身の人生の終焉を意識されたとき、大切なご家族への想いから、このように悩まれる方は少なくありません。ご自身の財産を誰に、どのように引き継いでほしいか。真剣に考えるそのお気持ちは、とても尊いものです。
しかし、その想いをただ心の中に秘めているだけでは、残念ながら実現が難しくなってしまうことがあります。遺言書は、単なる法律上の手続き書類ではありません。ご家族への最後の愛情、感謝、そして願いを形にし、あなたの亡き後も家族が円満でいられるようにと願う「最後の手紙」のようなものです。
私たち司法書士は、法律の専門家であると同時に、皆さまの心に寄り添うパートナーです。この記事では、ある具体的なご相談事例をもとに、あなたの「想い」を法的に実現するための具体的な道筋を、一緒に考えていきたいと思います。

【司法書士の相談事例】同居する長男に家を相続させたい
「遺言は作った方が良いのでしょうか?」というご相談は、私たちが日常的によくお受けするものです。もちろん、遺言があることで避けられるトラブルはたくさんあります。しかし、相続人同士の関係が良好で、遺産分割の話し合いがスムーズに進む見込みがあれば、必ずしも全てのケースで遺言が必須というわけではありません。
ですが、ご本人の中に「こうしたい」という明確な希望がある場合は、話が全く違ってきます。先日、ご相談にいらっしゃった方も、そのお一人でした。
その方の願いは、非常に明確でした。
「同居している長男に、この家を相続させたい」
ご長男はご病気を抱えており、せめて生活の基盤である家だけは確実に残してあげたい、という親心からの切実な願いでした。ご相談者にはご長男の他に、独立して家庭を築いているお子さんが二人いらっしゃいます。そして、財産の中心が今お住まいの自宅不動産という状況でした。
このようなケースで遺言がないまま相続が発生すると、どうなるでしょうか。法律(法定相続)に従えば、お子さん三人が平等に権利を持つことになります。ご長男が「この家に住み続けたい」と願っても、他のご兄弟が「公平に分けるために家を売却してお金で分けよう」と主張すれば、相談者の方の想いと全く違った結論になるかも知れません。仮に不動産を三人の共有名義にしたとしても、住んでいない他のご兄弟にとっては、売却しない限り何のメリットもありません。兄弟間の対立に発展してしまう可能性が十分にあります
ご本人の切実な願いを叶えるため、私は遺言書の作成をお勧めしました。しかし、そこには乗り越えるべき2つの大きな課題がありました。
課題1:避けられない「遺留分」の問題
一つ目の課題は、法律上の権利である「遺留分」です。遺留分とは、配偶者・子(代襲相続人を含む)・直系尊属といった一定の相続人に法律上保障された、最低限の遺産の取り分のことです(このケースでは、ご長男以外の二人のお子さんにも遺留分が認められます)。遺留分を侵害する遺言を作ることは可能ですし、そういう遺言も現にたくさん作成しました。ですが実際に遺留分を他の相続人が請求する可能性があるケースでは、争いの火種になりかねないのも事実です。
ご相談者の財産は、ご自宅が主要な部分を占めていました。他に小さな不動産と、わずかな預貯金があるのみ。この状況でご自宅をご長男が一人で相続すれば、他の二人のお子さんの遺留分を侵害してしまうことは明らかでした。
そこで私はまず、提携している不動産会社に依頼し、ご自宅ともう一つの不動産の査定書を取り寄せました。具体的な金額を把握することで、法的なリスクを「見える化」します。査定の結果、やはりご自宅の価値が高く、このままでは遺留分を請求されるリスクが非常に高いことが確認できました。相続財産がどのくらいになるのか、その相続分の計算は、円満な相続の第一歩です。
(参考:遺留分に関する民法特例のポイント(会社向け) – 中小企業庁)
課題2:ご本人の「全ての財産を長男に」という感情
もう一つの課題は、法律ではなく、ご本人の「感情」でした。
遺言を残すことを決意されたご本人でしたが、その内容については強いこだわりをお持ちでした。
「他の子どもたちには、これまで住宅資金の援助など、十分すぎるほどのことをしてあげてきた。だから、残りの財産は全て長男に渡すのが、私の中では一番公平なんです」
そのお気持ちは、痛いほど伝わってきました。ご本人が望むのであれば、その通りの遺言書を作成することは可能です。しかし、司法書士の仕事は、ただ言われた通りの書類を作ることではありません。その遺言が将来どのような結果をもたらす可能性があるのか、法的なリスクを正確にお伝えし、ご本人の本当の願いである「家族の幸せ」に繋がる道筋を一緒に探すことこそが、私たちの使命です。
私は、遺留分のリスクについて改めて丁寧にご説明しました。そして、同席されていたご長男ご自身も、「自分が全てをもらうなんて、そんなつもりはありません。家を残してもらえるだけで、本当にありがたいです。お父さんの気持ちは嬉しいけれど、兄弟とは揉めたくないので、遺留分を考えた内容にしてほしい」と、お父様にお話しされました。
この言葉が決め手となり、最終的に「自宅は長男に、それ以外の不動産や預貯金は他の兄弟が相続する」という、遺留分にも配慮した内容で遺言を作成する方向で、全員の気持ちが一つになりました。
解決策:遺言書で『想い』と『公平性』を両立させる工夫
遺言書の本文には、法的な効力を持つ事柄、つまり「誰に、どの財産を相続させるか」を淡々と記載します。しかし、それだけでは、なぜこのような分け方にしたのか、ご本人の真意は伝わりません。
そこで私は、ある工夫をご提案しました。それが「付言事項(ふげんじこう)」です。
付言事項とは、遺言の最後に付け加えるメッセージのことで、法的な拘束力はありません。しかし、ご自身の言葉で、ご家族への想いを伝えることができる非常に重要な部分です。

今回のケースでは、この付言事項に、
- なぜ長男に自宅を相続させることにしたのか、その理由
- 他の子どもたちへのこれまでの感謝の気持ち
- 家族みんなでこれからも仲良くしてほしいという願い
- そして、「どうか、この遺言の内容で納得し、遺留分の請求はしないでほしい」という、心からのお願い
といった内容を盛り込むことをご提案しました。ご本人も深く頷かれ、ご自身の言葉で綴られた想いを遺言書に加えることになりました。このように、遺言は家族への大切なメッセージにもなるのです。
ご自身の中に「こうしたい」という明確な希望がある場合、遺言はそれを実現するための、そしてご家族の絆を守るための、非常に有効な手段となります。
遺言だけで大丈夫?信託というもう一つの選択肢
遺言は、ご自身が亡くなった後の財産の分け方を決めるための強力なツールです。しかし、「亡くなった後」だけでなく「生きている間」の不安に備えたい、あるいは、もっと先の世代までの財産の行方を決めておきたい、といったご希望には、遺言だけでは対応しきれない場合があります。
そこで登場するのが「信託」、特にご家族に財産管理を託す「家族信託」という制度です。遺言と信託は、どちらか一方を選ぶものではなく、目的によっては併用することで、よりきめ細やかな対策が可能になります。
こんな場合は「遺言+信託」の併用も検討
遺言と信託の併用が特に有効なのは、次のようなケースです。
- 認知症による資産凍結に備えたい
もしご自身が認知症などで判断能力が低下した場合、預貯金の引き出しや不動産の売却などがスムーズに進まなくなることがある、いわゆる「資産凍結」のリスクがあります。元気なうちに信頼できるご家族(例えば長男)と信託契約を結んでおけば、ご自身の判断能力が低下した後も、長男があなたの代わりに財産の管理や処分をスムーズに行えるようになります。遺言は亡くなった後にしか効力を発揮しないため、生前の対策として信託は非常に有効です。 - 二次相続以降の財産の承継先も指定したい
「自分の死後は、まず妻に財産を渡し、妻が亡くなった後は、長男にその財産を確実に引き継がせたい」といった、数世代にわたる希望がある場合です。遺言だけで、「妻が受け取った後、その妻の死後は長男へ」といった数世代にわたる承継までを確実に拘束することは難しい場合があります。信託であれば、このような「後継ぎ遺贈型」の願いを実現することが可能です。
これらは一例ですが、任意後見や家族信託といった制度は、遺言と組み合わせることで、より強固な安心を築くことができます。信託と成年後見制度は似ているようで、お金の使い方の自由度などが大きく異なります。
司法書士が最適なプランをご提案します
「私の場合は、遺言だけでいいのだろうか?」「信託も考えた方がいいのかな?」と、一人で悩む必要はありません。
私たち司法書士は、まずご家族の状況や財産の内容、そして何よりも「あなたがどうしたいのか」という一番大切な想いを、じっくりとお聴きします。今回の事例のように不動産会社から査定書を取り付けるなど、財産額の計算ももちろん手厚くサポート。その上で、法律知識とそして現実に数多くの遺言を作成してきた経験に基づき、遺言が良いのか、信託が良いのか、あるいは両方を組み合わせるのが最適なのか、あなたのご家庭にとっての最善の方法を一緒に考え、遺言や信託の完成まであなたと併走します。

ご本人・ご家族からのご相談を、私たちが一緒に考えます
相続や遺言の悩みは、財産を残すご本人様だけのものではありません。「親が将来のことをどう考えているのか心配」「兄弟と揉めないように、親に遺言を書いてもらいたいけれど、どう切り出せばいいか分からない」といった、お子様の世代からのご相談も非常に多く寄せられます。
下北沢司法書士事務所では、ご本人様からはもちろん、そのご家族様からのご相談も心から歓迎いたします。
私たちは、単に法律手続きを代行するだけの存在ではありません。心理カウンセラーの資格も持つ司法書士が、ご家族それぞれの想いを丁寧に整理し、皆さまが納得できる円満な未来を築くためのお手伝いをさせていただきます。
何から話せばいいか分からなくても大丈夫です。まずはあなたの「気になっていること」から、お気軽にお話しください。そこから一緒に、解決への一歩を踏み出しましょう。エリアも昨年は千葉や横浜など、幅広いエリアの方の遺言を作成しました。当事務所のある世田谷から遠めと感じる方でも、ぜひお気軽にご相談ください。
対応エリア | 相続手続、遺言、相続放棄、会社設立、不動産売却なら下北沢司法書士事務所
下北沢司法書士事務所 竹内友章

東京都世田谷区北沢にある下北沢司法書士事務所は、相続手続き、遺言作成、相続放棄、会社設立、不動産売却など、幅広い法務サービスを提供しています。代表の竹内友章は、不動産業界での経験を持ち、宅地建物取引士や管理業務主任者の資格を活かし、丁寧で分かりやすいサポートを心掛けています。下北沢駅から徒歩3分の便利な立地で、土日も対応可能です。お気軽にご相談ください。

