法人解散、実は設立時より複雑です!
法人の活動を終え、「解散」を考え始めたとき、多くの方が漠然とした不安を抱えるのではないでしょうか。「何から手をつければいいのか分からない」「手続きは複雑なのだろうか」「費用は一体いくらかかるのだろう」。特に、非営利活動を目的とするNPO法人と、営利を目的とする株式会社とでは、その手続きに違いがあることをご存じない方もいらっしゃるかもしれません。
法人の解散は、設立の時とは異なり、単に登記も2回しなければなりません。更に官報公告も必要となり、実は会社設立時より複雑な手続きになるケースが非常に多いです。
この記事では、法人解散の中でも特にご相談の多い「NPO法人」と「株式会社」に焦点を当て、その手続きの流れや費用、そして最もつまずきやすい「清算人」の選任について、司法書士の視点から比較・解説していきます。この記事が、皆様の不安を少しでも和らげ、次の一歩を踏み出すための一助となれば幸いです。
NPO法人と株式会社の解散手続き、ここが違う!比較表で解説
NPO法人と株式会社の解散手続きは、大まかな流れは似ていますが、根拠となる法律や監督する行政庁が異なるため、いくつかの重要な違いがあります。まずは、両者の違いを比較表で確認してみましょう。
| 比較項目 | NPO法人 | 株式会社 |
|---|---|---|
| 根拠法 | 特定非営利活動促進法 | 会社法 |
| 解散の決議機関 | 社員総会 | 株主総会 |
| 清算人の選任 | 原則として理事全員が就任。定款の定めや社員総会決議で別途選任可。 | 原則として取締役が就任。定款の定めや株主総会決議で別途選任可。 |
| 登記費用(登録免許税) | 登録免許税は課されません(0円)。ただし、登記事項証明書の発行手数料、官報公告費用、専門家報酬等の実費は別途必要です。 | 解散及び清算人選任登記:39,000円清算結了登記:2,000円 |
| 行政庁への届出 | 必要(所轄庁へ) | 原則として不要 |
| 残余財産の帰属先 | 定款の定めにより、他のNPO法人、国、地方公共団体等に帰属。 | 株主に分配。 |
このように、特に「清算人の選任」「登記費用」「行政庁への届出」といった点で大きな違いがあることがお分かりいただけるかと思います。特にNPO法人は、所轄庁への届出が必要になるなど、株式会社にはない独自の手続きが求められます。
手続きの全体像:解散から清算結了までの流れ
法人における「解散」とは、単に活動を停止することだけを意味するわけではありません。これは「これから会社をたたむための後片付け(清算)に入ります」という宣言のようなものです。したがって、法的な手続きは「解散」と「清算」の二段階で進められ、登記も2回必要になります。
- 解散事由の発生・解散の決議
NPO法人は社員総会、株式会社は株主総会で、それぞれ解散の決議を行います。 - 解散・清算人選任の登記
決議から2週間以内に、法務局へ登記申請を行います。 - 諸官庁への届出
税務署や都道府県税事務所、市町村役場などへ解散の届出を行います。NPO法人の場合は、これに加えて所轄庁への届出も必要です。 - 財産目録・貸借対照表の作成と承認
法人の財産状況を調査し、書類を作成して総会(株主総会)の承認を得ます。 - 債権者保護手続き(官報公告・催告)
「当法人は解散しましたので、債権のある方は申し出てください」という旨を官報に掲載します。公告期間は2ヶ月以上必要です。 - 債務の弁済・残余財産の分配
債権者への支払いを終え、残った財産を分配します。NPO法人の残余財産は、法律で定められた先に帰属します。 - 決算報告書の作成と承認
清算事務のすべてが完了したら、決算報告書を作成し、総会(株主総会)で承認を受けます。 - 清算結了の登記
承認後2週間以内に法務局へ清算結了の登記を申請します。この登記が完了して、法人は法的に消滅します。
このように、解散を決議してから法人が完全に消滅するまでには、少なくとも2〜3ヶ月以上の期間と、いくつものステップを踏む必要があるのです。
費用の比較:登記費用・官報公告・専門家報酬
解散手続きにかかる費用は、大きく分けて以下の3つです。
- 登録免許税(法務局へ支払う税金)
- NPO法人:0円(非課税)
- 株式会社:合計41,000円(解散・清算人選任登記39,000円、清算結了登記2,000円)
- 官報公告費
- 法人の規模や公告の行数によって異なりますが、約3万円~5万円程度が目安です。これはNPO法人、株式会社共通で必要となります。
- 専門家(司法書士・税理士)への報酬
- 手続きを依頼する場合に発生します。報酬額は事務所や依頼内容の複雑さによって異なります。一般的には、登記申請、議事録作成、官報公告手配などをまとめて依頼するケースが多くなります。
NPO法人は登録免許税が非課税という大きなメリットがありますが、後述するように手続きが煩雑になりがちなため、結果的に専門家のサポートが必要となるケースも少なくありません。費用を考える際は、単に実費だけでなく、手続きにかかる手間や時間、リスクも総合的に判断することが大切です。

税金の注意点:解散・清算時の税務申告
「解散すれば、もう税金の申告はしなくていい」とお考えになる方もいらっしゃいますが、それは誤解です。法人は、清算結了の登記が完了するまで納税義務者であり、税務申告が必要です。
具体的には、以下の確定申告が求められます。
- 解散事業年度の確定申告:事業年度の開始日から解散日までの期間分。
- 清算事業年度の確定申告:解散日の翌日から1年ごとの期間分。財産が確定すれば、1年未満でも申告します。
- 残余財産確定事業年度の確定申告:残余財産が確定した日から1ヶ月以内に申告します。
これらの税務処理は専門的な知識を要するため、多くの場合、税理士への依頼が必要となります。法務と税務は密接に関わっており、手続きをスムーズに進めるためには、司法書士と税理士の連携が重要になります。
【要注意】NPO法人の解散でつまずく「清算人」選任の落とし穴
株式会社とNPO法人の解散手続きを比較したとき、実務上、最も大きな課題となるのが「清算人」の選任です。株式会社では比較的スムーズに進むこの手続きが、NPO法人では思わぬ落とし穴となり、手続きを複雑化させる原因となることがあります。
原則は「理事が全員清算人」に…手続きが煩雑化する現実
株式会社の場合、解散時の取締役がそのまま清算人(法定清算人)になるのが一般的です。特に小規模な会社では、代表取締役1名がそのまま清算人として手続きを進めるケースがほとんどでしょう。
ところが、NPO法の場合は事情が異なります。特定非営利活動促進法では、解散時の理事が全員、法定清算人になると定められています。NPO法人は設立の要件として理事が3名以上必要であり、実際には6名、7名と多くの理事が在籍していることも珍しくありません。
もし、この原則通りに6名の理事全員が清算人になったらどうなるでしょうか。
- 清算人会での意思決定に時間がかかる
- 登記申請や財産目録の作成など、すべての書類に清算人全員の署名・押印が必要になる
- 清算人の中に連絡が取りにくい方や、非協力的な方がいると手続きが停滞する
このように、清算人が多すぎると、かえって手続きが煩雑になり、大きな負担となってしまいます。新たに事業が増えるわけでもない清算手続きに、これだけの人数が関与するのは現実的ではありません。この点が、NPO法人を解散する際の特有の課題と言えるのです。
この課題は、ただ受け入れるしかないのでしょうか。そんなことはありません。専門家として長年、様々な法人の手続きに関わってきた経験から言えるのは、法律の規定をただ知っているだけでなく、お客様にとってよりシンプルで、より負担の少ない形で活用するための「知恵」が重要だということです。この課題には、事前の準備によって対応できる方法があります。
放置の末路:役員変更登記懈怠と過料のリスク
長年活動実態がなく、休眠状態になっているNPO法人や株式会社を解散しようとする際に、もう一つ注意すべき点があります。それは「役員の変更登記を怠っていないか」という点です。
法人の役員には任期があり、任期が満了すれば、たとえ同じ人が再任(重任)する場合でも、その旨の登記を法務局に申請する義務があります。株式会社では最長10年、NPO法人では原則2年です。
この登記を長期間怠っている(懈怠している)場合、解散登記の前提として、まず懈怠していた期間の役員変更登記をすべて行わなければなりません。そして、登記を怠ったことに対するペナルティとして、登記申請を怠った場合、裁判所により代表者に100万円以下の過料が科される場合があります(会社法等の定めによる)。
「もう活動していないから」と放置していると、いざ解散しようとした時に、過去に遡って議事録を作成したり、登記を申請したりといった余計な手間と費用が発生し、さらに過料のリスクまで負うことになってしまうのです。

複雑な法人解散は専門家への相談が賢明な理由
ここまで見てきたように、法人の解散手続き、特にNPO法人のそれは、専門的な知識と計画的な準備が不可欠です。ご自身で手続きを進めることも不可能ではありませんが、貴重な時間と労力を費やした結果、手続きの不備でやり直しになったり、思わぬリスクに直面したりする可能性も否定できません。このような複雑な手続きだからこそ、専門家である司法書士にご相談いただくメリットがあります。
最適な清算人選任で手続きをスムーズに
先ほど述べたNPO法人の「理事が全員清算人になる」という課題。これは、解散を決議する社員総会において、あらかじめ特定の1名(または少人数)を清算人として選任しておくことで回避できます。この「総会での選任」という手続きを踏むことで、法定清算の原則によらず、指名された人だけでスムーズに清算手続きを進めることが可能になるのです。
私たちは、こうした専門的な知識を活かし、お客様の法人の状況を丁寧にお伺いした上で、適切な手続きの選択肢と当事務所が提供可能なサポート内容をご説明します。
登記から公告まで、煩雑な手続きをワンストップ代行
司法書士にご依頼いただければ、手続きの要となる以下の業務をすべて代行することが可能です。
- 社員総会(株主総会)の議事録作成
- 解散・清算人選任登記、清算結了登記の申請
- 官報公告の手配
- 所轄庁(NPO法人の場合)への届出書類の作成・提出
これらの煩雑な手続きや書類作成を専門家に任せることで、皆様は時間的・精神的な負担から解放されます。私たちは、皆様が安心して次のステップに進めるよう、手続きについて事務的な代行・助言を行い、作業完了まで誠実に対応いたします。
税務申告も安心。税理士のご紹介も可能です
法人解散には、登記などの法務手続きと、確定申告などの税務手続きが必ず伴います。当事務所では、司法書士が法務手続きの窓口となり、必要に応じて税務の専門家である税理士と連携して業務を進めます。
もし、お付き合いのある税理士がいらっしゃらない場合でもご安心ください。当事務所は税理士と連携しており、必要に応じて税理士をご紹介します。法務(当事務所)と税務(紹介先税理士)双方の専門家が協働して手続きを支援します。
法人解散のお悩みは、まず無料相談をご利用ください
法人の解散は、一つの歴史に幕を閉じる大切な手続きです。だからこそ、不安や疑問を抱えたまま進めるべきではありません。当事務所では、法人解散に関する初回のご相談を無料で承っております。
「私たちの法人に合った解散の方法は?」「費用の総額はどれくらいになる?」「役員登記をずっと忘れていたけれど大丈夫?」といった、どんな些細なことでも構いません。まずはお気軽にお話しをお聞かせください。
代表:司法書士 竹内 友章(東京司法書士会所属)。併せて心理カウンセラー資格を有します。法律や手続きの話を一方的に進めるのではなく、皆様が抱えるご不安や、これまで法人を運営されてきた想いにも丁寧に耳を傾け、心に寄り添うことを大切にしています。ご予約いただければ土日祝日のご相談も可能です。
皆様からのご連絡を心よりお待ちしております。
事務所名:下北沢司法書士事務所
所在地:東京都世田谷区北沢三丁目21番5号ユーワハイツ北沢201
代表:司法書士 竹内 友章(東京司法書士会所属)

東京都世田谷区北沢にある下北沢司法書士事務所は、相続手続き、遺言作成、相続放棄、会社設立、不動産売却など、幅広い法務サービスを提供しています。代表の竹内友章は、不動産業界での経験を持ち、宅地建物取引士や管理業務主任者の資格を活かし、丁寧で分かりやすいサポートを心掛けています。下北沢駅から徒歩3分の便利な立地で、土日も対応可能です。お気軽にご相談ください。

