養子の子の代襲相続|相続人になる・ならないを分ける縁組のタイミング

「同じ兄弟なのに…」養子の子の相続権を分ける“運命のタイミング”とは?

「兄弟なのに、片方は相続人になれて、もう片方はなれない…」

にわかには信じがたい話ですが、相続の世界では、このようなことが現実に起こり得ます。当事務所にも、まさにそのような状況で頭を抱えたお客様がご相談に来られました。

【下北沢司法書士事務所にご相談いただいた事例】

  • 亡くなった方(被相続人):Aさん(高齢で死去。資産は自宅不動産と預貯金)
  • Aさんより先に亡くなっていた方:養子Bさん(Aさんの亡き夫の連れ子。Aさんと平成10年に養子縁組。令和5年に病気で急逝)
  • 養子Bさんの子どもたち:兄Cさん(昭和62年生まれ)、弟Dさん(平成12年生まれ)

杉並区にお住まいのAさんが亡くなり、Aさんの実子(Bさんから見た義理の兄弟)が相続手続きを進めようとしたところ、杉並区の相続の相談会で専門家から「養子Bさんの子どもたち(Cさん・Dさん)も関係してくるかもしれない」と言われ、当事務所に相談に来られました。

相続人の中に「養子」が入ると、それだけで手続きのハードルが上がります。さらにその養子が先に亡くなっている(代襲相続)ケースは、プロでも一瞬身構えるポイントです。

戸籍を詳しく調査した結果、判明したのは衝撃的な事実でした。

  • 兄Cさん:養子縁組(平成10年)のに生まれているため、Aさんとの間に血族関係(直系卑属)が生じず、代襲相続人になれません。
  • 弟Dさん:養子縁組(平成10年)のに生まれているため、Aさんの直系卑属となり、代襲相続人になれます。

「同じ兄弟なのに、兄のCさんは相続権がなく、弟のDさんには相続権がある」という、一般の方から見ると衝撃的な結論です。なぜ、このような結論になるのでしょうか?カギを握るのは、「養子縁組の日」「子の出生日」、この2つのタイミングです。

この記事を読めば、その不可解な状況の謎が解け、次に何をすべきかが明確になります。養子の子の代襲相続の権利が、たった1日の違いで変わってしまう法律の仕組みと、それを確かめるための具体的な戸籍調査の方法、そして相続権が判明した後の注意点まで、司法書士が詳しく解説します。複雑に思える問題も、一つひとつ紐解いていけば、必ず進むべき道が見えてきます。

養子の子の代襲相続の仕組みを図解。養子縁組前に生まれた兄は代襲相続できず、縁組後に生まれた弟は代襲相続できるという関係性を示している。

なぜ結論が分かれる?代襲相続の権利を決める法律の仕組み

兄弟で相続権の有無が分かれてしまう根本的な理由は、「養親との間に、法律上の血族関係があるかどうか」という一点に尽きます。

少し専門的な話になりますが、法律の世界では、養子縁組をすると、その日から養子と養親の間に「法定血族関係」という、実の親子と同じ関係が生まれます(民法第727条)。

そして、この効力は、養子本人だけでなく、「養子縁組をした後に生まれた養子の子」にまで及ぶのです。つまり、養子縁組後に生まれた子は、生まれた瞬間から養親の孫(法律上の直系卑属)として扱われます。

一方で、養子縁組をするにすでに生まれていた子(いわゆる連れ子)には、この効力は及びません。養親との間に法律上の親族関係が自動的に発生することはないのです。

相続について定めた民法第887条2項では、「被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる」と定められていますが、この「子」とは、法律上の「直系卑属」を指します。そのため、養子縁組のタイミングによって、養親の直系卑属になる子とならない子に分かれ、代襲相続できるかどうかの結論が変わってくる、という仕組みなのです。法律は「養子縁組をした後」に生まれた子だけを、実の孫と同じように扱うと決めているのです。

結論①:養子縁組「後」に生まれた子は代襲相続できる

養子縁組が成立したに生まれた子は、生まれたときから養親との間に法律上の親族関係(直系卑属)が生じています。これは、実の孫と全く同じ立場です。

そのため、養子が養親より先に亡くなった場合、その子は実の孫が相続人になるケースと同様に、代襲相続人として相続権を持ちます。

冒頭の事例で言えば、弟のDさん(平成12年生まれ)は、父BさんとAさんの養子縁組(平成10年)の後に生まれています。したがって、DさんはAさんの法律上の孫であり、代襲相続人として遺産分割協議に参加する権利がある、ということになります。

結論②:養子縁組「前」に生まれた子は代襲相続できない

一方で、養子縁組が成立するに生まれていた子(連れ子)は、養子縁組の効力が及ばず、養親との間に法律上の親族関係は発生しません。

そのため、残念ながら、養子が養親より先に亡くなったとしても、その子は養親の代襲相続人になることはできません。法律上は「他人」と同じ扱いになってしまうのです。

事例の兄Cさん(昭和62年生まれ)は、父BさんとAさんの養子縁組(平成10年)より前に生まれています。そのため、CさんとAさんの間には法律上の親族関係がなく、Aさんの相続人にはなれない、という結論になります。

ただし、これはあくまで法律上のルールです。もしCさんを相続人と同じように扱いたい場合は、Aさんが生前にCさんとも養子縁組をするか、遺言書で財産を遺す(遺贈する)といった方法を検討する必要がありました。

参照:民法 | e-Gov 法令検索

【実践編】戸籍で確認!相続権の有無を調査する3ステップ

法律の理屈は分かっても、次に問題になるのは「では、どうやってその事実を証明するのか?」ということです。ここで不可欠になるのが、戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)の調査です。

特にこのケースでは、養子縁組の「日付」と、子どもの「生年月日」を戸籍謄本で厳密に突き合わせる必要があります。古い戸籍は手書きで読みにくかったり、何度も作り変えられていたりと、読み解くのは一般の方には至難の業です。しかし、ポイントさえ押さえれば、必要な情報を見つけ出すことができます。

ここでは、専門家が実際に行う調査のステップを3段階に分けて解説します。

司法書士に戸籍謄本の読み方について相談している様子の写真。専門家が丁寧に書類を確認している。

ステップ1:養子の「出生から死亡まで」の戸籍をすべて集める

まず最初に行うべきは、亡くなった養子(被代襲者)の「出生から死亡まで」の連続した戸籍謄本をすべて取得することです。亡くなった方(被相続人)の戸籍だけでは不十分で、養子自身の戸籍を生まれた時まで遡って集める必要があります。

なぜなら、これにより養子に子どもが何人いるのか(代襲相続人の候補者が誰なのか)を確定させることができるからです。もし戸籍調査で知らない相続人が見つかることもあります。

戸籍は、その人の本籍地があった市区町村役場で取得します。結婚や転籍で本籍地が変わっている場合は、現在の戸籍から一つずつ古い戸籍へと遡って請求していくことになります。時には、養父母の戸籍などの追加取得が必要になるなど、さらに調査範囲が広がるケースもあり、非常に根気のいる作業です。

ステップ2:戸籍から「養子縁組日」を特定する

必要な戸籍がすべて集まったら、次にその中から「養子縁組日」という決定的な日付を探し出します。

養子縁組をすると、養子の戸籍の「身分事項」欄などに、その事実が記載されます。具体的には、以下のような記載を探します。

【縁組日】平成10年〇月〇日
【養親氏名】A
【従前戸籍】(縁組前の戸籍情報)

この「縁組日」が、相続権を判断する上での基準日となります。古い戸籍では「入籍」と書かれていることもあります。手書きのくずし字で判読が難しい場合も多いため、慎重な確認が必要です。

ステップ3:「子の生年月日」と「養子縁組日」を照合する

最後に、ステップ2で特定した「養子縁組日」と、養子の子どもたちそれぞれの戸籍に記載されている「生年月日」を比較します。

この照合作業によって、代襲相続権の有無が最終的に確定します。

  • 子の生年月日 > 養子縁組日 → 縁組に生まれた子 = 代襲相続できる
  • 子の生年月日 < 養子縁組日 → 縁組に生まれた子 = 代襲相続できない

冒頭の事例に当てはめてみましょう。

  • 兄Cさんの生年月日:昭和62年 養子縁組日:平成10年 → 相続人ではない
  • 弟Dさんの生年月日:平成12年 養子縁組日:平成10年 → 相続人である

このように、戸籍を丁寧に読み解くことで、複雑に見えた相続関係が明確になります。

相続権の有無が判明した後の注意点と司法書士の役割

戸籍調査によって相続権の有無がはっきりすると、一安心…とはいきません。むしろ、ここからが本当のスタートであり、親族間のデリケートな問題に直面することになります。

特に、「同じ兄弟なのに、なぜ弟だけ?」といった感情的なしこりが残るリスクには、細心の注意が必要です。法律上の結論をただ伝えるだけでは、かえって関係をこじらせてしまうことも少なくありません。このような時こそ、第三者である専門家が間に入る価値があります。私たち司法書士は、トラブル防止の視点から、法的な結論を伝えるだけでなく、遺産分割協議を円満に進めるためのクッションとしての役割も担います。

相続人になる子がいる場合:遺産分割協議を円満に進めるために

代襲相続人になる子がいることが確定した場合、その子も正式な相続人として遺産分割協議に参加しなければなりません。事例のDさんも、他の相続人と一緒に、Aさんの遺産をどのように分けるか話し合う必要があります。

しかし、他の相続人とは普段ほとんど交流がない、というケースも珍しくありません。そのような状況でいきなりお金の話をするのは、お互いに気まずく、話し合いが停滞する原因にもなります。

私たち司法書士は、こうした場面で皆様の間に入り、客観的な立場から法律上の権利や手続きの流れをご説明します。感情的な対立を避け、全員が納得できる円満な解決を目指すためのクッション役として、スムーズな話し合いをサポートいたします。

相続人になれない子がいる場合:親族間の感情的なしこりを防ぐ配慮

一方で、相続人になれない子がいる場合、その方への配慮も非常に重要です。事例のCさんのように、法律上は相続権がないと分かっても、「祖父母(養親)には可愛がってもらったのに…」という寂しさや、不公平感を抱くのは自然な感情でしょう。

法律はあくまで一つの基準です。もし他の相続人全員が同意するのであれば、遺産分割協議の中で、Cさんに「代償金」や「お見舞金」といった形でお金を渡すことも可能です。例えば、不動産を相続する相続人が、その代償としてCさんにも代償金を支払うといった方法が考えられます(ただし、税務上の問題はあります。)

法的な結論だけを押し通すのではなく、関係者全員の気持ちに寄り添い、誰もが「これで良かった」と思えるような柔軟な解決策を探ることも、大切な相続手続きの一部です。

複雑な相続問題は一人で悩まず、専門家にご相談ください

養子の子の代襲相続は、相続の中でも特に複雑で、判断が難しいケースの一つです。古い戸籍の解読、相続人の確定、そしてその後のデリケートな親族間の調整など、一般の方がご自身だけで進めるには、大きな負担とリスクが伴います。

「自分の場合はどうなるんだろう?」「戸籍を集めてみたけれど、読み方が分からない」「親族にどう説明すればいいか不安だ」

もし少しでもそう感じたら、どうか一人で抱え込まずに、私たち専門家にご相談ください。下北沢司法書士事務所では、単に手続きを代行するだけではありません。心理カウンセラーの資格も持つ司法書士が、皆様のお気持ちに丁寧に寄り添いながら、法律や税務の観点も踏まえた最適な解決策を一緒に考えます。

まずは状況を整理し、心の負担を軽くすることから始めてみませんか?あなたのタイミングで、お気軽にご連絡いただければと思います。

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下北沢司法書士事務所 竹内友章

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