成年後見での不動産売却|家庭裁判所の許可を得るポイント

ご自宅の売却、本当に大丈夫?成年後見制度の大きな壁

「親が施設に入所したため、空き家になった実家を売却して費用に充てたい」
「誰も住んでいない家の固定資産税や管理費が、年々重くのしかかってくる」
「遠方で管理もままならず、庭は荒れ放題。このままでは近隣に迷惑をかけてしまう…」

このような悩みがあるにも関わらず、名義人であるご両親が認知症であるため成年後見制度利用の壁に阻まれ、前に進めない方のご相談に対応してまいりました。仕事や日々の生活が忙しい中でこういうテーマになかなか行動力が出ないのは当然だと思います。しかし不動産は、管理の手間や維持費がかかるだけでなく、放置すれば資産価値の低下や思わぬトラブルを招く可能性もあることも事実。成年後見制度の利用をしなければならないと思いつつも、進んでいないという方も多いでしょう。

今日は成年後見制度を利用した場合の自宅や不動産の売却についてお話しします。既にご両親や親族の成年後見になられている方や、これから成年後見制度を利用する必要の方にとって役に立つ内容だと思います。ぜひご一読ください。

成年後見制度における家族の絆と財産保護を象徴する、重ねられた手。

不動産の売却は家庭裁判所の許可が必要

成年後見制度を利用しての自宅売却には家庭裁判所の許可が必要です(民法859条の3)。また自宅以外の収益不動産なども、売却前に売却することそのものや金額などを調整しておかないと、裁判所との間のトラブルになりかねません。事実上、とにかく不動産の売却には家裁の許可が必要と持っていく方が安全でしょう。

では裁判所はどういう状況や理由であれば、スムーズに不動産売却の許可をしてくれるのでしょうか。

今日は成年後見制度を利用している司法書士が特に意識している「裁判所の基本的な考え方」についてお話しします。

許可の判断基準は「本人の利益」になるかの一点

家庭裁判所は何を基準に許可・不許可を判断するのでしょうか。その基準は、突き詰めれば「その売却が、ご本人の利益になるか」という一点に尽きます。

具体的には、以下のような要素を総合的に考慮して判断されます。

  • 売却の必要性:なぜ今、売却する必要があるのか。
  • 価格の妥当性::売却価格は適正か。不当に安くないか。
  • 売却後の生活:売却によってご本人の生活環境が悪化しないか。
  • ご本人の意思::ご本人の意思が確認できる場合、その意向はどうか。

後見人自身の都合や、他の相続人の希望が優先されることは決してありません。あくまでも主役はご本人であり、その方の利益を守ることが絶対的な基準となります。

参考:成年被後見人(被保佐人、被補助人)の居住用不動産の処分についての許可

裁判所を納得させる「売却理由」の伝え方と具体例

家庭裁判所の許可を得るためには、「本人の利益」に繋がる売却の必要性を、客観的な証拠に基づいて論理的に説明することが不可欠です。ここでは、裁判所を納得させるための具体的な「売却理由」とその伝え方について解説します。

【王道】介護費用や医療費を捻出するため

最も一般的で、裁判所の理解を得やすいのが「ご本人のための介護費用や医療費、施設利用料を捻出する」という理由です。

ただし、単に「お金が足りません」と主張するだけでは不十分です。実際に今の預貯金がいくらで、どの程度赤字があるのか(または今後赤字が出ると予測されるのか)、このままだと後何年くらいで預貯金がショートしてしまうかなどを説明できる必要があります。この時、「売却しないと本当にギリギリ」である必要まで無いです。ある程度余裕をもった資金計画に売却が必要であれば、十分な理由になるでしょう。

成年後見での不動産売却理由として、収入と介護費用の支出バランスを図で示したインフォグラフィック。

【応用】維持費や空き家のリスクから本人を守るため

「当面、預貯金で生活費は賄える」という状況でも、不動産の売却が許可されるケースは少なくありません。それは、不動産を所有し続けること自体が、ご本人にとってデメリットになる場合です。

例えば、空き家になった実家を所有し続けることには、以下のような負担やリスクが伴います。

  • 金銭的負担:固定資産税、都市計画税、火災保険料、マンションの場合は管理費・修繕積立金、庭の手入れ費用など、継続的な支出が発生します。
  • 管理の手間:定期的な換気や清掃、郵便物の確認など、遠方であればあるほど管理の負担は大きくなります。
  • 物理的リスク:建物の老朽化による倒壊の危険、不審者の侵入や放火といった防犯上の問題、自然災害による損壊のリスクなど。

これらのデメリットを具体的に示し、「これらの負担やリスクからご本人を解放し、管理が容易で安全な預貯金に換えることこそが、ご本人の財産を守ることに繋がる」と売却理由を説明していきます。これもまた、立派な「本人の利益」と言えます。

【実例】維持費と災害リスクを伝え、売却許可を得たケース

ここで、当事務所が担当した事例をご紹介します。実際の事例とは若干変えております。

【ご相談時の状況】

  • ご本人は施設に入所しており、ご自宅に戻る見込みはなかった。
  • 地方にある自宅の市場価値はそれほど高くなく、売却しても大きな金額にはならない見込みだった。
  • ご本人には生活に困らない程度の預貯金があった。
  • 将来の相続人となる親族からも「私の自宅からかなり遠い不動産を引き継ぐことになるのは困ります。プロである竹内さんが後見人である間に、売却していただけると助かります」と要望を受けていた。

当初、家庭裁判所は売却価格があまり伸びないことから、売却に難色を示していました。預貯金が十分にある中で、あえて価格の伸びない不動産を売却する必要性を疑問視されたのです。

【私が裁判所に伝えたこと】

そこで私は、単に「不要だから売りたい」という主張ではなく、「所有し続けることのリスク」を報告書としてまとめ、資料と一緒に裁判所に提出しました。

まず、市役所のハザードマップ等を取り寄せ、当該不動産が土砂災害警戒区域に含まれており、土砂災害に巻き込まれるリスクを指摘しました。さらに、現地に赴き、野生の猪によって庭が掘り返され、荒れ果てている状況を写真に撮影しました。

そして、これらの客観的な資料を添えて、裁判所に以下のように説明したのです。

「この不動産を保有し続けることは、固定資産税などの継続的な支出が発生するほか、ハザードマップ等に基づき土砂災害のリスクが指摘される場合は将来的な資産価値低下の懸念があります。また、現実に鳥獣被害も発生しており、建物の毀損も懸念されます。価格が伸びませんが、もはや大きなリスク要因となってしまった自宅を管理責任を免れることが、ご本人にとって大きなメリットです。

【結果】

客観的な証拠と説明が認められ、家庭裁判所から無事に売却許可が下りました。ご親族からも「不安が1つ消えました。」と安堵の言葉をいただき、ご本人にとっても将来の不安要素を取り除くことができた、まさにプラスの解決となった事例です。

管理されずに庭が荒れ果てた空き家。成年後見での不動産売却を検討するきっかけとなる状況。

不動産売却を成功に導く司法書士の専門性とは

成年後見制度を利用した不動産売却は、法律の知識だけでなく、不動産取引の実務や家庭裁判所との折衝など、多岐にわたる専門性が求められます。

特に当事務所では、法定後見・任意後見の申立てから後見人としての実務まで、長年にわたり多数の案件を取り扱ってまいりました。

家庭裁判所との円滑なコミュニケーション能力

成年後見人による不動産売却を成功させる上で、実は最も重要と言っても過言ではないのが、売却活動の初期段階から家庭裁判所と丁寧なコミュニケーションを取ることです。私たちは、裁判所の考え方や手続きの進め方を熟知しているため、どのような情報を、どのタイミングで報告・相談すべきかを的確に判断できます。

許可申立ての前に、「なぜ売却が必要なのか」「どのような方法で売却を進めようと考えているか」といった方針を事前に共有し、裁判所の意向を確認しながら進めることで、後の手続きを円滑にし、許可の確度を高めることができるのです。

「宅建士資格」と不動産実務経験を持つ司法書士が最適な理由

さらに、当事務所の大きな特徴は、代表司法書士が宅地建物取引士(宅建士)の資格を保有し、不動産会社での実務経験も豊富である点です。

成年後見での不動産売却には、大きく分けて二つの側面があります。

  1. 法律手続きの側面:家庭裁判所への許可申立て、売買に伴う所有権移転登記など。
  2. 不動産実務の側面:適正な売却価格の査定、信頼できる不動産会社の選定、売買契約書の内容チェックなど。

「宅建士資格を持つ司法書士」であれば、成年後見人として2つの側面の両方に対応できます。査定価格の妥当性を判断し、契約内容に不利な点がないかを厳しくチェックすることで、ご本人の利益を最大化し、あらゆるリスクからお守りします。都心のマンションや戸建て、収益物件など、様々なタイプの物件の取り扱い経験があります。

手続きの流れと注意点|まず何から始めるべきか

ここでは、実際に不動産売却を進める際の一般的な流れと、各ステップでの注意点を解説します。

成年後見制度における不動産売却手続きの4つのステップを示したフローチャート。

STEP1:専門家への相談と方針決定

まずは専門家にご相談いただくことから始まります。ご本人の状況、財産の内容、不動産の概要などをお伺いし、売却の必要性やメリット・デメリットを一緒に整理させていただきます。その上で、家庭裁判所の許可を得るための方針をご提案し、今後の見通しをご説明します。この時点で後見制度利用そのものがまだ開始していないようでしたら、開始後にスムーズに売却につなげられる申し立て書類の作成からはじめます。

STEP2:不動産の査定と売却活動の準備

方針が決まったら、売却の準備に入ります。家庭裁判所に価格の妥当性を示すため、いくつかの購入希望者から購入と希望価格の意思表示である「買付証明書」を取り付けることをまずは目標とします。その中で一番高い価格を提示して購入希望者を中心に売却交渉を進めます。裁判所にも進捗状況の報告をしながら、指示を仰ぎます。こうすることでスムーズに売却許可を得ることにつながります。

STEP3:家庭裁判所への「居住用不動産処分許可」申立て

必要書類が揃ったら、管轄の家庭裁判所へ「居住用不動産処分許可申立」を行います。申立書には、これまで準備してきた売却の必要性を裏付ける資料(収支計画書、不動産査定書、売買契約書案など)を全て添付します。申立てから許可までは事案により異なりますが、事前にしっかり裁判所に説明できていれば、2週間程度が目安になります。

STEP4:売買契約の締結と決済・登記

無事に裁判所から許可審判書が発行されたら、いよいよ買主と正式な売買契約を締結します。その後、定められた決済日に買主から売買代金を受領すると同時に、物件の鍵を引渡し、法務局へ所有権移転登記を申請します。所有権移転登記の完了後には、裁判所に入金した通帳のコピーや登記事項証明書を資料として添付して、売買が完全に終わったことを報告します。

まとめ:一人で悩まず、まずはご相談ください

成年後見制度を利用した不動産の売却は、法律や不動産に関する専門知識が求められるだけでなく、家庭裁判所とのやり取りなど、精神的なご負担も大きい複雑な手続きです。

特に、ご家族の思い出が詰まったご実家の売却であれば、様々な思いが交錯することでしょう。司法書士として法律・手続面の支援を行い、ご相談に際しては依頼者の心情に配慮して対応します。

手続きの煩わしさやストレスからご依頼者様を解放し、ご本人にとって最善の解決策を「一緒に考えて提案する」パートナーとして、全力でサポートさせていただきます。

「何から手をつけていいか分からない」「うちのケースでも売却できるだろうか」

そんなご不安を抱えていらっしゃるなら、どうか一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。

エリアも東京だけでなく千葉、神奈川、茨城の方で成年後見人の就任実績があります。首都圏であれば対応できますので、どうぞお気軽にご相談ください

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