後見申立前のお金の使い方、ご不安ではありませんか?
成年後見の申立てを準備されている中で、ふと立ち止まり、過去の預金の動きが気になってしまう…そんな方もいらっしゃいます。「親のために良かれと思って支払ってきたけれど、この使い方は問題視されないだろうか」「真面目に管理してきたつもりが、後から何か言われたらどうしよう」。
そのようにご不安に思われるのは、あなたがご家族に対して、とても誠実で責任感が強い証拠です。そして、決してあなただけが抱える特別な悩みではありません。実は申立てを前に同じような不安を感じている方は意外と多いです。この記事では、そんなあなたの心が少しでも軽くなるよう、そして自信を持って手続きに臨めるよう、司法書士の視点から丁寧に解説していきます。
成年後見制度の全体像については、任意後見・家族信託・法定後見の違いを比較|費用・手続きで選ぶでも体系的に解説しています。

司法書士の経験談:裁判所は申立前のここを見ている
成年後見の申立てでは、ご本人の財産状況を明らかにするため、おおむね過去3ヶ月分ほどの通帳コピーを家庭裁判所に提出します。この「裁判所に見られる」という事実が、多くの方を不安にさせるのだと思います。「1円単位で使途を証明できなければ大変なことになるのでは…」と心配されるお気持ちも分かります。裁判所ってなんか怖いですよね・・・。
しかし、まず知っていただきたいのは、裁判所の主な関心は「後見人が就任した後の財産の入出金」にあるということです。申立て前の期間について、1円単位で細かくチェックするような見方は、基本的にはしていません。通帳コピーを提出する目的は、主に申立書類に記載された財産目録の残高が正しいかを確認することと、年金収入や施設費用といった大まかなお金の流れを把握するためなのです。
ただし、これは「何をしても良い」という意味ではありません。後見人には、過去にご本人の財産が不当に失われていた場合、それを取り戻す責任があります。そのため、申立て直前にあまりに高額な出金があると、やはり調査の対象になる可能性があります。
以前、私が後見人に就任した案件で、申立ての直前にご本人の口座から150万円ほどの現金が引き出されていたことがありました。やはり、家庭裁判所から「この出金について調査し、報告するように」と指示を受けました。ご親族に事情を伺ったところ、入院費用の支払いや、施設入居に伴う衣類・備品の購入などに充てられたとのことでした。その旨を領収書などと共に報告書にまとめ、無事に裁判所の理解を得ることができましたが、客観的な説明が求められる良い例と言えるでしょう。
これはセーフ?アウト?申立前に問題となりうる支出の境界線
では、具体的にどのような支出が「問題ない」とされ、どのような場合に「注意が必要」となるのでしょうか。ここでは、ご自身の状況を客観的に判断できるよう、具体的な例を挙げてその境界線を探っていきましょう。
原則OK!「本人のため」の正当な支出例
以下の支出は、ご本人の生活や療養のために必要不可欠なものであり、基本的に問題視されることはありません。これらは正当な財産管理の範囲内と言えるでしょう。
- 医療費や介護サービス費:病院での治療費、薬代、訪問介護やデイサービスの利用料など。
- 本人のための食費や日用品費:ご本人が食べるための食費、衣類、おむつ代など、日常生活に必要な物品の購入費用。
- 施設への入居一時金や月額費用:老人ホームや介護施設などへの入居金や、毎月の利用料。
- 本人の税金や社会保険料の支払い:住民税、固定資産税、国民健康保険料、介護保険料など。
要注意!後から説明を求められる可能性のある支出例
一方、次のような支出は、たとえ悪意がなくても、後見人や家庭裁判所から「これは何のためのお金ですか?」と説明を求められる可能性が高いものです。必ずしも不正とは限りませんが、客観的な説明が必要になることを覚えておきましょう。
- 数十万円以上の高額な現金引き出し:使途が不明瞭なまとまった現金の引き出し。
- 親族へのまとまった金額の送金:お祝いやお小遣いの範囲を大きく超えるような送金。
- 本人名義の口座から親族の生活費やローンの支払い:ご本人の財産から、申立てをする親族自身の生活費や住宅ローンなどを支払っているケース。
- 相場より高額なリフォーム費用や物品購入:ご本人のための支出であっても、その金額が社会通念上、不相当に高額な場合。

【重要】「立替金」の精算は証拠を残すことが鉄則
ご家族がご本人のために、一時的に費用を立て替えて支払うことは、非常によくあるケースです。しかし、この立替金の精算が、後々のトラブルの火種になることも少なくありません。
大切なのは、ご本人の口座から立て替えた分のお金を受け取る際に、「いつ、何のために、いくら立て替えたか」を客観的に証明できる証拠を残しておくことです。具体的には、支払った際の領収書やレシートをできるだけ保管し、簡単なメモでも良いので、何の費用だったかを記録しておきましょう。特に数万円以上の比較的大きな支出は要注意です。
これらの証拠を申立ての際にまとめて提出することで、後見人への引き継ぎもスムーズになりますし、「勝手にお金を引き出した」といったあらぬ疑いをかけられるリスクを避けることができます。親族が費用を立て替える際の注意点は、ご自身の負担を軽くするためにも知っておくべき重要なポイントです。
もし不適切な支出があったら?最悪のシナリオと対処法
もし、これまでの支出の中に気になる点があった場合、それを放置してしまうとどのようなリスクがあるのでしょうか。ここでは、起こりうる最悪のシナリオと、そうならないための対処法についてお話しします。過度に怖がらせたいわけではなく、正しい知識を持つことで、冷静に対応していただきたいのです。
後見人からの「不当利得返還請求」というリスク
後見人には、ご本人の財産を守るという大切な義務があります。そのため、就任後に過去の取引を調査し、法的に正当な理由なくご本人の財産が誰かに渡っていると判断した場合、その財産を取り戻すために行動する法的責任を負っています。
これを「不当利得返還請求」と呼びます。たとえあなたに悪意がなかったとしても、「客観的に見て本人のためにはなっていない」と判断される支出は、後見人から「そのお金を返してください」と請求される可能性があるのです。これは、親族間のお金の管理で起こりがちな失敗の一つであり、問題を軽く考えることの危険性を示しています。
他の親族とのトラブル、そして相続への影響
申立て前の不透明なお金の動きは、ご本人が亡くなった後の「相続」の場面で、さらに大きなトラブルに発展する可能性があります。
他の相続人から「生前に財産を不当に使い込んだのではないか」と疑いの目を向けられ、遺産分割協議(相続人全員で遺産の分け方を決める話し合い)が紛糾してしまうケースは少なくありません。そうなると、精神的な負担はもちろん、解決までに長い時間と費用がかかってしまいます。申立て前の段階で問題をクリアにしておくことは、将来の家族間の争いを防ぎ、円満な相続を実現するためにも極めて重要なのです。
緊急性が高い場合は「審判前の保全処分」も
少し専門的な話になりますが、ご本人の財産が今まさに第三者によって不当に使い込まれているなど、緊急性が非常に高いケースでは、「審判前の保全処分」という手続きを利用できる場合があります。
これは、成年後見開始の審判を待たずに、裁判所が暫定的に財産の管理人を選任するなどして、ご本人の財産を緊急的に保護する制度です。例えば、悪質な業者との契約で不動産が売却されそうな危機が迫っている場合などが考えられます。このような複雑な事案にも対応できる専門家の存在を知っておくだけでも、いざという時の安心材料になるでしょう。
参照:家事事件手続法(審判前の保全処分(各論)に関する検討事項)
不安なまま申立てをしないでください。司法書士があなたの味方です
ここまで様々なリスクについてお話ししてきましたが、それはあなたを不安にさせるためではありません。むしろ逆です。リスクを知ることで、正しい対処法が見えてくるからです。そして、その対処法とは、決して一人で抱え込まないこと。不安なまま申立てを進めるのではなく、ぜひ一度、私たち専門家にご相談ください。

正直に話すことが、あなたとご家族を守る最善策です
過去のお金の使い方に、もし少しでも気になる点があるのなら、それを隠さずに専門家に話していただくことが、結果的にあなた自身と大切なご家族を守る最善の策となります。
司法書士は、あなたを問い詰める立場ではありません。私たちはあなたの味方です。むしろ、事前に懸念点を共有していただければ、申立ての際にこちらから裁判所へ事情を丁寧に説明したり、必要な資料を準備したりと、先手を打った対応も考えられます。正直に話していただくことで、私たちはあなたと共に最善の解決策を考えることができるのです。
下北沢司法書士事務所が相続まで見据えてサポートします
私たちの強みは、目先の申立て手続きを代行するだけではない点にあります。その後の後見業務、さらには将来必ず訪れる相続の問題まで、長期的な視点であなたとご家族をトータルでサポートいたします。
法律的なサポートはもちろんですが、心理カウンセラーの資格も有しておりますので、手続きを進める中でのご不安な気持ちにも寄り添うことができます。お金の管理で真剣に悩んでしまうあなたは、そもそもとても真面目で、ご家族思いの優しい方です。世の中には、気にしない人もたくさんいます。そんなあなたの誠実な想いを、私たちは決して無駄にはしません。
エリアも東京だけでなく、埼玉県・千葉県・茨城県・神奈川県で後見人の就任実績があり、ご親族が後見人になる場合でも家庭裁判所への提出書類のサポートをします。
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下北沢司法書士事務所 竹内友章

東京都世田谷区北沢にある下北沢司法書士事務所は、相続手続き、遺言作成、相続放棄、会社設立、不動産売却など、幅広い法務サービスを提供しています。代表の竹内友章は、不動産業界での経験を持ち、宅地建物取引士や管理業務主任者の資格を活かし、丁寧で分かりやすいサポートを心掛けています。下北沢駅から徒歩3分の便利な立地で、土日も対応可能です。お気軽にご相談ください。

