配偶者の死後、再婚を考えているあなたへ。相続登記は待ったなしです
今日は若くして配偶者を亡くされた方向けのコラムです。配偶者を亡くした悲しみの中、義両親との関係性も非常に難しくなるでしょう。しかし、相続の問題を考えると義両親との遺産分割協議は避けて通れないものになるケースも多いです。特に再婚をお考えの方は、更に問題が難しくなります。
亡き配偶者様と暮らしたご自宅などの不動産がある場合、相続手続きは避けて通れません。そして、お子様がいらっしゃらないケースでは、亡き配偶者様のご両親、つまりあなたにとっての義両親様も法律上の相続人となります。
「新しい生活のために、この家は売却したい…」
「でも、義両親とは少し疎遠になっている…」
「再婚の話をしたら、どう思われるだろうか…」
このような、法的な問題と感情的な問題が複雑に絡み合い、どう切り出してよいか分からず、一人で悩みを抱えていらっしゃる方は少なくありません。
しかし、この問題はもう先延ばしにできない側面もあります。2024年4月1日から相続人が多数・不明でも大丈夫!相続登記義務化の解決事例でも解説している通り、相続登記が法律で義務化され、正当な理由なく手続きを怠ると罰則が科される可能性も出てきました。あなたの新しい一歩を晴れやかな気持ちで踏み出すためにも、この課題に真正面から向き合う必要があります。
この記事では、司法書士として多くの相続問題に携わってきた経験から、あなたが直面している状況を乗り越え、円満に不動産の相続手続きを進めるための知識と具体的な方法を解説します。
参考:【法務省/相続登記の義務化】不動産を相続したらかならず …
【司法書士の実例】再婚を前に、亡き夫の両親との相続を乗り越えたAさん
以前、当事務所にご相談に来られたAさん(40代女性・仮名)の事例をご紹介します。Aさんは8年ほど前にご主人を亡くされ、お子さんはいらっしゃいませんでした。亡きご主人と共有名義で購入したマンションがありましたが、新しいパートナーとの再婚を考える中で、そのマンションの売却を希望されていました。しかし、ご主人の持分は義両親も相続するため、手続きが課題となっていました。当事務所でAさんと方針を協議し、義両親様へ丁寧にご連絡を取った結果、皆様のご理解を得て、最終的にマンションをAさん単独の名義とする相続登記を無事に完了することができました。後述しますが、義両親への相談を最初は依頼者様から持ち掛けていただいたのも大きなポイントでした。詳しい説明は司法書士に任せるにしても、交流のある親族には(大変でも)依頼者様からお話しいただいた方が良いです。話しにくい場合は、手紙でも良いでしょう。また、今回は義両親から承諾を得られましたが、得られない場合は売却して現金で清算する計画と依頼者さんは考えていました。このように、うまく行かなかったときの次の手段を考えておくのも重要です。
なぜ義両親が相続人に?知っておくべき法律の基本
「亡くなった夫の財産なのに、なぜ義両親が関係してくるの?」と疑問に思われるかもしれません。この疑問を解消することが、円満解決への第一歩です。ここでは、相続に関する法律の基本的なルールを分かりやすく解説します。

子どもがいない場合の相続順位
民法では、誰が遺産を相続するかについて「相続順位」が定められています。亡くなった方(被相続人)の配偶者は、常に相続人となります。そして、配偶者以外の相続人には、以下のような順位があります。
- 第1順位:子ども(子どもが先に亡くなっている場合は孫)
- 第2順位:親(親が先に亡くなっている場合は祖父母などの直系尊属)
- 第3順位:兄弟姉E�(兄弟姉妹が先に亡くなっている場合は甥・姪)
あなたのケースのように、亡くなった配偶者との間にお子様がいない場合、第1順位の相続人が存在しないことになります。そのため、相続権は第2順位である「亡き配偶者の親(直系尊属)」に移ります。これが、義両親様が相続人となる法的な理由です。
あなたと義両親の「法定相続分」は?
では、具体的にどのくらいの割合で財産を相続する権利があるのでしょうか。これも法律で「法定相続分」として定められています。
配偶者と第2順位の親が相続人となる場合、その割合は以下の通りです。
- 配偶者:3分の2
- 親(直系尊属):3分の1
この「3分の1」は、親の人数で均等に分けます。つまり、義父様と義母様がお二人ともご健在の場合は、それぞれ「6分の1」ずつ(1/3 × 1/2)の権利を持つことになります。
例えば、亡き配偶者様名義の不動産の価値が3,000万円だったとしましょう。この場合、法律上の権利は以下のようになります。
- あなた:2,000万円(3,000万円 × 2/3)
- 義父様:500万円(3,000万円 × 1/6)
- 義母様:500万円(3,000万円 × 1/6)
この法定相続分は、あくまで法律上の目安です。最終的には、相続人全員での話し合い(遺産分割協議)によって、誰がどの財産を相続するかを自由に決めることができますし、もし遺言があれば遺言通りに相続するのが基本です。しかし、特に遺言がない場合は「法律上の権利」をお互いが理解しておくことが、冷静な話し合いのスタートラインとなります。

放置は更に問題が複雑に・・・。相続登記をしない3つの末路
「義両親と話すのは気が重い…」「もう少し落ち着いてから考えよう…」と、手続きを先延ばしにしたい気持ちはよく分かります。しかし、この問題の放置は、あなたの未来にとって百害あって一利なしです。ここでは、相続登記をしない場合に起こりうる、3つのシナリオをご紹介します。
末路1:【義務化の過料】最大10万円の罰金が科される
前述の通り、2024年4月1日から相続登記が義務化されました。これにより、「相続の開始及び所有権を取得したことを知った日から3年以内」に相続登記を申請することが法的な義務となったのです。
もし、正当な理由なくこの義務を怠った場合、10万円以下の過料が科される可能性があります。これまでは「いつかやればいい」で済まされていた手続きが、今は明確な期限と罰則のある「やらなければならないこと」に変わったのです。感情的な問題とは別に、法律違反のリスクがあることをまず認識してください。
末路2:【売却不可】再婚の資金計画が根本から崩れる
あなたが再婚後の新生活のために不動産の売却を考えているなら、これは最も直接的なリスクです。不動産を売却するには、その前提として、不動産の名義が現在の所有者(あなた)になっている必要があります。
亡き配偶者様との共有名義のままでは、売却することはできません。相続人全員で遺産分割協議を行い、その内容に基づいて相続登記を完了して初めて、あなたは買主と売買契約を結ぶことができるのです。
手続きを先延ばしにすればするほど売却のタイミングは遅れ、「新しい家を買うための頭金が…」「新生活の準備資金が…」といった、あなたが描く未来の資金計画そのものが根底から崩れてしまう恐れがあります。
末路3:【相続人が増殖】義両親の他界で関係者が倍々に…
これが、時間経過がもたらす最も恐ろしいリスクです。もし、あなたが手続きをしないまま、義父様や義母様が亡くなられたらどうなるでしょうか。
その場合、義父様や義母様が持っていたはずの相続権は、さらにその方々の相続人へと引き継がれます。これを「数次相続」と呼びます。具体的には、亡き配偶者様の兄弟姉妹(あなたにとっての義理の兄弟姉妹)が新たな関係者として登場することになります。
もし、義理の兄弟姉妹も亡くなっていたら、その子どもである甥や姪までが相続関係者となります。
これまでほとんど交流のなかった、あるいは顔も知らない親族が、あなたの家の相続権を主張する権利を持つことになるのです。関係者が増えれば増えるほど、話し合いは困難を極め、遺産分割協議をまとめるのは絶望的になります。問題は時間と共に解決するのではなく、雪だるま式に複雑化し、解決不可能なレベルにまで悪化してしまうのです。詳しくは数次相続の相続放棄|遺産分割の代用にする際の注意点の記事でも触れていますが、こうなる前に行動することが何よりも重要です。

円満解決の鍵は「連絡方法」。司法書士が実践する気遣いのコツ
リスクを理解した上で、次なる課題は「では、どうやって義両親に連絡すればいいのか」という点です。このデリケートな問題は、相手との現在の関係性によってアプローチを変えることが極めて重要です。当事務所では、ご相談者様の状況に合わせて、以下のような方法をご提案しています。
交流がある義両親へ:まずは、あなた自身の言葉で
もし、義両親様と交流があり、時々連絡を取り合っているのであれば、いきなり専門家から書面が届くのは得策ではありません。「何かあったのか」「事を荒立てるつもりか」と相手を身構えさせてしまい、かえって話がこじれる原因になりかねません。
このような場合は、まずあなたご自身の言葉で、(緊張するでしょうが)お電話などで連絡を入れるのが良いでしょう。その際、長々と話す必要はありません。
「実は、〇〇(配偶者名)名義の家のことで、相続登記の手続きが必要になりました。法律で義務になったみたいで…。また後日、お願いしている司法書士の先生から正式なご案内がいくと思うから、よろしくお願いします」
このように、まずは「相続登記という手続きが必要になった」という事実を伝え、専門家から連絡がいく旨を予告しておくのです。このワンクッションを置くだけで、相手の心の準備ができ、その後の手続きが驚くほどスムーズに進みます。
交流がない・疎遠な義両親へ:司法書士が「最初の窓口」に
一方で、義両親様と長年疎遠であったり、連絡先は知っているものの、どこか気まずさがあったりして、ご自身で連絡することに強い心理的負担を感じる場合もあるでしょう。そのようなときは、決して無理をする必要はありません。
私たち司法書士は、あなたに代わって「最初の窓口」として、相続手続きのご案内をすることができます。ご相談でお伺いする情報は厳重に管理し、司法書士の守秘義務に基づき外部に漏らすことはありません。まず、あなたからこれまでの経緯や義両親様との関係性、お人柄などを詳しくお伺いします。その上で、相手方の心証を損なわないよう、丁寧で配慮の行き届いた文面をあなたと一緒に考え、作成します。
専門家という第三者が客観的な立場でご連絡することで、感情的な対立を避け、相続登記が法律上の義務であるという事実を冷静に受け止めてもらいやすくなるというメリットもあります。あなたの精神的なご負担を軽減し、円滑なコミュニケーションの橋渡しをすること。それも私たちの重要な役割です。
あなたの新しい一歩のために。司法書士ができること
ここまでお読みいただき、ご自身がやるべきこと、そしてその難しさを感じていらっしゃることでしょう。複雑な法律手続きとデリケートな親族関係。この二つが絡み合う相続問題は、一人で抱え込むにはあまりにも重い課題です。
あなたの新しい人生への一歩を、過去のしがらみでためらう必要はありません。当事務所は、相続登記の手続きや関係者様への窓口対応などを通じて、皆様の課題解決をサポートします。
面倒な戸籍収集から遺産分割協議書の作成まで一括代行
相続手続きには、想像以上に煩雑な事務作業が伴います。
- 亡き配偶者様の出生から死亡までの連続した戸籍謄本
- 相続人全員の現在の戸籍謄本
- 不動産の登記事項証明書や固定資産評価証明書
これらの書類を全国の役所から収集するだけでも、大変な時間と労力がかかります。私たちは、これらの書類収集から、相続人全員の合意内容を法的に有効な形でまとめる「遺産分割協議書」の作成、そして法務局への相続登記申請まで、すべての手続きをあなたに代わって行います。あなたは、煩わしい作業から解放され、ご自身の未来のための時間を使うことができます。
義両親とのやり取りにおける精神的な負担を軽減
そして、何よりも大きなメリットは、精神的な負担が軽くなることです。特に、当事務所の代表は心理カウンセラーの資格も保有しており、単なる手続きの代行に留まらない、あなたの「心」に寄り添うサポートを信条としています。
義両親様とのやり取りにおいて、私たちはあなたの「緩衝材」となります。法的な観点からだけでなく、あなたの不安や辛さ、そして未来への希望を深く理解した上で、円満な解決への道を一緒に考え、提案します。手続きのストレスからあなたを解放し、バランスの取れた解決策を見つけ出すこと。それが、私たちが提供できる最大の価値です。
あなたの新しい人生は、もう始まっています。その大切な一歩を、相続問題でつまずくことのないよう、私たちが全力でサポートします。エリアも事務所のある世田谷区近辺だけでなく、江東区や墨田区、板橋区なども含めた東京23区、小平市や三鷹市などの東京都下、千葉・埼玉・神奈川・茨城などから多くご依頼をいただいております。
対応エリアはこちら↓
対応エリア | 相続手続、遺言、相続放棄、会社設立、不動産売却なら下北沢司法書士事務所
もし少しでもご不安な点があれば、一人で悩まず、まずは無料相談で、あなたの状況をお聞かせください。ぜひお気軽にお問合せ下さい!
下北沢司法書士事務所 竹内友章

東京都世田谷区北沢にある下北沢司法書士事務所は、相続手続き、遺言作成、相続放棄、会社設立、不動産売却など、幅広い法務サービスを提供しています。代表の竹内友章は、不動産業界での経験を持ち、宅地建物取引士や管理業務主任者の資格を活かし、丁寧で分かりやすいサポートを心掛けています。下北沢駅から徒歩3分の便利な立地で、土日も対応可能です。お気軽にご相談ください。

