相続放棄した兄弟…法定相続情報一覧図に書くべき?
相続手続きを円滑に進めるために、戸籍謄本の束の代わりとなる「法定相続情報一覧図」。この制度も一般の方に広く認知されるようになってきました。しかし、いざご自身で作成しようとすると、思わぬ疑問に突き当たることがあります。
先日、当事務所にご相談くださった吉祥寺にお住まいのAさんも、そんなお一人でした。相続対象の不動産があったため、管轄の東京法務局府中支局に提出する法定相続情報一覧図を作成しようと試みたのですが、途中で手が止まってしまったのです。
「家庭裁判所で正式に相続放棄の手続きを終えた弟がいるのですが、この弟のことは一覧図に記載すべきなのでしょうか?」
あなたも今、Aさんと同じような疑問や不安を抱えて、このページにたどり着かれたのかもしれません。相続しない人がいるケースは決して珍しくありませんが、その場合の正確な書き方となると、自信を持って判断するのは難しいものです。
ご安心ください。この記事を最後までお読みいただければ、相続放棄、相続欠格、相続人排除など、財産を相続しない人がいる場合の法定相続情報一覧図の作成方法について、明確な答えと具体的な記載例を得ることができます。一緒に、その疑問を解消していきましょう。
結論:相続放棄・欠格・「取得しない合意」の場合は記載/廃除(相続人排除)は記載しない
早速、結論から申し上げます。相続放棄、相続欠格、あるいは遺産分割協議によって結果的に財産を取得しない場合でも、法定相続情報一覧図から省略することはできません。一方で、推定相続人から廃除(相続人排除)された方は、法定相続情報一覧図に記載しません。
「え、相続しないのにどうして?」と疑問に思われるかもしれません。その理由は、この制度の根本的な目的にあります。
一覧図の目的は「相続関係の証明」であり「財産取得者の証明」ではない
ここが最も重要なポイントです。法定相続情報一覧図は、「最終的に誰がどの遺産を取得したか」を証明するための書類ではありません。その目的は、あくまで「被相続人(亡くなった方)が亡くなった時点で、法律上の相続人は誰と誰であったか」を、戸籍情報に基づいて公的に証明することにあります。
金融機関や法務局といった手続き先がこの一覧図で確認したいのは、「遺産を受け取った人」ではなく、「そもそも遺産分割協議や相続登記の申請に参加すべき当事者が全員揃っているか」という点です。相続放棄をした人も、亡くなった時点では紛れもなく相続人の一人でした。だからこそ、一覧図には必ず記載する必要があるのです。
この制度の全体像については、法定相続情報証明制度の概要で体系的に解説しています。

もし記載しなかったら?法務局で修正を求められ二度手間に
では、もし相続放棄した人などの記載を省略して一覧図を法務局に提出したらどうなるのでしょうか。答えは明白です。法務局の担当者から、添付した戸籍謄本との整合性が取れないことを指摘され、一覧図の修正や再提出を求められる可能性が高いです。
「せっかく時間と費用をかけて戸籍一式を集め、慣れないパソコンで図を作成して法務局まで足を運んだのに、結局やり直しになってしまった…」これでは、徒労感が大きいだけでなく、相続手続き全体が遅延してしまいます。場合によっては、戸籍調査の段階から見直しが必要になる可能性すらあります。貴重な時間と労力を無駄にしないためにも、ルールに則った正確な記載が不可欠なのです。
(参考:法定相続情報証明制度の具体的な手続について – 法務局)
【ケース別】相続しない人の法定相続情報一覧図の書き方と記載例
それでは、ここからは「相続放棄」「相続欠格・排除」「遺産分割協議」という3つの具体的なケースに分け、それぞれの記載方法を詳しく解説していきます。ご自身の状況に合わせてご確認ください。
ケース1:相続放棄した場合の記載方法
最も多くの方が悩まれるのが、この「相続放棄」のケースです。家庭裁判所で相続放棄の申述が受理された人がいる場合、一覧図にはどのように記載すればよいのでしょうか。
答えは、「他の相続人と全く同じように記載する」です。
一覧図に「相続放棄」といった文言を追記したり、特別な記号を付けたりする必要は一切ありません。他の相続人と同様に、氏名、生年月日、続柄、住所(任意)を記載します。

では、相続放棄したという重要な事実は、何によって証明するのでしょうか。それは、法定相続情報一覧図とは別の書類で証明します。具体的には、家庭裁判所が発行する「相続放棄申述受理証明書」を、一覧図とセットで金融機関や法務局に提出することで、「この人は一覧図には載っているが、相続権は放棄しています」と証明するのです。
あくまで一覧図は「死亡時点の相続関係」、相続放棄申述受理証明書は「その後の権利変動」と、それぞれの書類の役割が明確に分かれていると理解してください。なお、数次相続で相続放棄が絡むような複雑なケースでは、特に専門的な判断が必要となります。
ケース2:相続欠格・相続人排除の場合の記載方法
次に、相続権を失う特殊なケースである「相続欠格」と「相続人排除」についてです。これらは混同されがちですが、一覧図への記載方法において決定的な違いがあります。
- 相続欠格とは:被相続人を殺害したり、遺言書を偽造したりするなど、法律が定めた特定の非行があった場合に、当然に相続権を失う制度。
- 相続人排除とは:被相続人が、虐待や重大な侮辱などを理由に、家庭裁判所への申立てによって特定の相続人の権利を剥奪する制度。
この2つのケースでは、記載の有無が次のように分かれます。
【相続欠格の場合】
相続欠格の事実は、戸籍には記載されません。そのため、法定相続情報一覧図の扱いは相続放棄の場合と同じです。つまり、欠格者も他の相続人と同様に一覧図に記載します。そして、相続欠格の事実を証明するためには、その事実を記載した遺産分割協議書や、場合によっては確定判決の謄本などを別途用意する必要があります。相続財産を隠すなどの不正行為が欠格事由にあたる可能性もあります。
【相続人排除の場合】
一方、相続人排除は、家庭裁判所の審判が確定すると、その事実が戸籍に記載されます。戸籍に「推定相続人から廃除」と記載された方は、法律上、相続開始時点で相続人ではなかったとみなされます。したがって、法務局の取り扱いでは、相続人排除された方は法定相続情報一覧図には記載しません。
この違いは非常に専門的なポイントであり、ご自身で判断するのは難しい部分です。戸籍を正確に読み解く知識が求められます。
ケース3:遺産分割協議で財産を取得しない人の記載方法
最後に、「相続権は放棄しないが、話し合いの結果、特定の財産や全ての財産を今回は取得しないことにした」というケースです。例えば、「不動産は長男が相続し、預貯金は長女が相続する。次男は何も相続しない」といった合意が成立した場合がこれにあたります。
この場合も、考え方は相続放棄のケースと全く同じです。
遺産分割協議で結果的に財産を取得しなかった人も、他の相続人と同様に法定相続情報一覧図に記載します。
誰がどの財産を取得し、誰が取得しなかったか、という事実は、一覧図ではなく「遺産分割協議書」によって証明します。この遺産分割協議書に相続人全員が署名し、実印を押印することで、その内容が全員の正式な合意であることを証明するわけです。遺産分割協議書は、相続手続きにおける最も重要な書類の一つと言えるでしょう。
(参考:主な法定相続情報一覧図の様式及び記載例 – 法務局)
まとめ:複雑な相続こそ、司法書士への相談が解決の近道です
今回は、相続しない人がいる場合の法定相続情報一覧図の書き方について、ケース別に解説しました。重要なポイントは、「法定相続情報一覧図は、あくまで被相続人が亡くなった時点での相続関係を証明する書類である」という一点に尽きます。
相続放棄、相続欠格、遺産分割協議で財産を取得しないといった事情は、一覧図とは別の書類で証明する、と覚えておきましょう。(ただし、戸籍に記載される相続人排除は例外です)
相続放棄や相続欠格といった特殊な事情が絡むケースでは、戸籍の正確な読み解きと法律知識が不可欠です。書類作成は、複雑な相続手続きのほんの入り口に過ぎません。その先には、遺産分割協議など、さらに多大な労力と精神的な負担を伴うプロセスが待ち構えていることも少なくないのです。
もし、少しでも「自分だけで進めるのは不安だ」「手続きが複雑でよく分からない」と感じたら、一人で抱え込まずに、ぜひ一度、私たち専門家にご相談ください。特に、相続を専門とする司法書士は、手続き面の知識だけでなく、実際に実務を遂行してきた経験があります。
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