相続で遭遇する「話が通じない人」とは?
相続の手続きを進めようとすると、時としてこちらの想像をはるかに超える「話が通じない人」に遭遇することがあります。
- 遺産分割の話をしたいのに、理不尽な要求ばかり繰り返して一歩も進まない。
- 何十年も前の家族間の出来事を持ち出し、感情的にこちらの話を遮ってしまう。
- こちらの提案や説明にまったく耳を貸さず、自分の主張だけを一方的に展開する。
もしあなたが今、このような状況に置かれ、途方に暮れているのであれば、この記事はきっとお役に立てるはずです。相続手続きにおける「難しい人」とのやり取りは、精神的に大きな負担を伴います。しかし、適切な知識と対処法を知ることで、その負担を大きく減らし、解決への道筋を見つけることは可能です。
この記事では、司法書士である私が実際に経験した困難な事例を交えながら、なぜ彼らがそのような言動をとるのかという心理的な背景から、具体的な対処法までを詳しく解説していきます。一人で抱え込まず、まずは解決のヒントを探してみませんか。相続手続きの全体像については、相続手続きの理不尽さ・難しさ|専門家がストレスを減らす方法で体系的に解説しています。
司法書士が体験したクレーマー相続人とのやりとり実録
それは船橋市の方からのご依頼でした。ご主人が亡くなられて、お子さんがいない方です。相続による自宅の名義変更、そして預貯金の手続きがご依頼内容です。きけばご主人の兄弟とはほとんどお付き合いがないとのこと。私はいつもどおり、戸籍を調査し相続人を確定、住所も調査しみなさまに案内文を送ります。案内文にはみなさまに遺産分割協議に応じるお考えがあるかどうかアンケートをつけます。全員が配偶者の方に相続させる形で遺産分割協議をすると返事がありました。そこから皆様に作成した遺産分割協議書を郵送します。お一方だけ、なかなか返送いただけません。それからも何回かお手紙を送った時反応がないのでどうしようかなと思っていたころです。その日、私は世田谷区内のお客様のご自宅で打ち合わせをしていました。すると非通知で電話がかかってきます。スマホの音を切り忘れてたなと思い、とりあえず電話にでるといきなり男性の怒号でした「なんで何回も電話してるのに出ないんだ!」ちょっと会話にてこずりそうだったので私は目線で今打ち合わせのお客さまに断りをいれました。にっこりほほえんでくださったので申し訳ないなと思いながらも電話の方に集中を切り替えます。どうも電話の相手は例の件で連絡がとれない人だったようです。どうやら非通知で何回か電話をしていたようなのですが、正直ここは個人事務所の弱点です。会社と違っていつでも誰か電話に出れるような人員を確保できておりません。通常は取れなかった電話はかけなおしますが非通知はかけなおしませんし、なにかの迷惑電話だと思って気にも止められていませんでした。相手が分かったら、ひとまず目の前の打ち合わせに戻ることにします。「すみません。今、他の方と打ち合わせ中です。折り返すので電話番号を教えてください!」「じゃあ声に出さずにメモを取れ!オレの個人情報を知らない人に知られるなよ。」ひとまずその場はメモだけ取り、後で折り返すとこのように叱責されます。
「何回も手紙をよこすとはなんだ!電話するのが礼儀だろう!」
「いや・・・すみませんが電話番号は知らないです」
その人は事前に送ったアンケートの電話番号記入欄も空欄になっていました。
「だったら調べろ!とにかく挨拶にこい!!」
指定されたのはその方のご自宅の近くである駅でした。近くの喫茶店に入ると
「手紙の書き方がなっていない。オレの知り合いの弁護士や司法書士にも聞いたがオマエはおかしい!!」などとしばらく叱責が続きます。私は相槌を時折はさみながらも反論はせずに聞いています。やがて相手の方はこういいました。
「オレがハンコを押さないとお前は困るのだろう。だったらその態度はなんだ!」
手土産などをもってきて欲しかったのか、それかそもそも遺産分割協議書に際して好条件を引き出そうとしたのかは分かりません。私はここではじめて相槌以外の事を話しました。
「確かに仕事としては遺産分割協議に相続人の皆様が合意していただかないと進みません。ただ協議に応じるかどうかは皆様の自由意志です。私の立場でお願いをするのは適切でないと考えています」
そしてこう続けます。
「私の至らない点については申し訳ありませんでした。ただ、あなたは今回の相続についてどのようにお考えなのかは教えていただけないでしょうか。そうすれば、あなたのお考えを他の相続人の方に伝えることができます。」そうすると相手は「別にお金が欲しいわけじゃない。おまえの仕事がなってないからそれを指摘しただけだ」
「それでは、改めて遺産分割協議書のお渡しします。もしもこの内容でよろしければ、遺産分割協議書にご署名と押印の上、印鑑証明書と一緒に返送してください」
「わかった。」
一応、口頭では遺産分割協議に応じるようです。その日はそれで終わり、しばらく待ちましたが協議書の郵送がありません。私は日を分けて何回か電話しましたが電話に出ません。すると、ある日押印した遺産分割協議書などが送られてきました。お会いして3週間後のことです。全て終わって依頼者様に報告すると本当に嬉しそうな顔をなされ労をねぎらってくださいました。頑張ってよかったなと思える瞬間です。このような複雑な案件も、相続専門の司法書士であれば、粘り強く対応することが可能です。

なぜ彼らは「クレーマー」になってしまうのか?その心理とは
「なぜ、あの人はあんなに理不尽なことを言うのだろう?」と、相手の言動に振り回され、疑問に思う方は少なくないでしょう。実は、その攻撃的な態度の裏には、単なる金銭欲だけではない、複雑な心理が隠されていることが多いのです。
相続をきっかけに感情的になってしまう方の心理を理解することは、冷静な対応への第一歩です。特に疎遠な相続人とのやり取りでは、相手の心理を読み解くことが特に重要になります。
背景にあるのは「不公平感」と「承認欲求」
クレーマー気質の言動の根底には、長年にわたって蓄積された「不公平感」や「承認欲求」が渦巻いているケースがよく見られます。
- 「自分だけが長年、親の面倒を見てきたのに、他の兄弟と同じ分け前なのは納得できない」
- 「いつも家族の大事な決定事項から、自分は外されてきた」
- 「亡くなった親は、いつも兄(姉)ばかりを可愛がっていた」
このような過去の家族関係における不満や疎外感が、相続という「最後の清算」の場で一気に噴出するのです。彼らの要求は、単にお金が欲しいというよりも、「自分の貢献を認めてほしい」「自分の存在を尊重してほしい」という、歪んだ形でのSOSなのかもしれません。こうした根深い感情的な対立は、金銭的な条件交渉だけでは解決が難しいのが実情です。
手続きへの不安が生む「攻撃」という防衛反応
もう一つの大きな要因は、相続手続きそのものへの「不安」や「無知」です。普段馴染みのない法律用語や複雑な手続きを前にして、「専門家に言いくるめられるのではないか」「知らないうちに不利な条件を飲まされるのではないか」という強い恐怖心に駆られることがあります。
その恐怖心が、自分を守るための「防衛反応」として、先制攻撃のような高圧的・攻撃的な態度に繋がるのです。相手を威圧し、マウントを取ることで、自分が不利な立場に立たされるのを防ごうとしている、と解釈することもできます。つまり、彼らの攻撃的な態度は、実は自身の弱さや不安の裏返しである可能性が高いのです。

感情的な相手に効く「聞く力」|司法書士が実践する対処法
相手の心理背景を理解した上で、次はいよいよ具体的な対処法です。感情的になっている相手を論破しようとすることは、火に油を注ぐだけです。私がマンション管理会社のコールセンターでの勤務経験や、心理カウンセラーとしての学びを通じて実践しているのは、まず相手の感情を受け止める「聞く力」です。基本方針としては、ひととおり相手の話が終わるまで黙って聞くことにしています。もし相手が要求をはっきり言わない場合でも、このアプローチは有効です。
ステップ1:まずは相手の言い分をすべて受け止める
対応の基本方針は、とにかく「傾聴」に徹すること。相手がどれだけ理不尽なことを言っていても、途中で話を遮ったり、反論したりせず、まずは最後まで話を聞き切ります。コールセンターでの経験上、怒りの感情のピークは、実はそれほど長くは続きません。最初の数分間、相手が感情をすべて吐き出すのをじっと待つことで、相手は徐々に冷静さを取り戻していきます。
大切なのは、「あなたの言い分は、まず一旦すべて受け止めましたよ」という姿勢を示すことです。これにより、相手は「自分の話を聞いてもらえた」と感じ、少しずつ対話のテーブルに着く準備ができてくるのです。
ステップ2:事実関係と感情を整理して伝える
相手が話し終えたら、次のステップに進みます。聞いた内容を、こちらで整理して相手に返すのです。
「なるほど、〇〇という点について、長年ご不満に感じていらっしゃったのですね」
「つまり、ご要望としては△△という内容でよろしいでしょうか」
このように、相手の主張の中から「感情」の部分と「事実(要求)」の部分を切り分け、確認する作業を行います。このプロセスを通じて、相手自身も自分の主張が客観的にどう聞こえるかを認識し、感情的な部分と具体的な要求事項が整理されやすくなります。これは、建設的な遺産分割協議を進める上で非常に重要なステップです。
ステップ3:法的な知識と相手方の要望の整理
相手の感情のガス抜きがある程度でき、冷静な対話の土台が整った段階で、初めてこちらから法的な論点と現実的な解決策を提示します。
「お気持ちは十分理解いたしました。その上で、法律上の考え方としては〇〇という形になります」
「○○様の要望としては「~のようにしたい」とお考えとのことでしょうか。
司法書士は、個別のケースごとに法律上の相続分(法定相続分)に基づいた相続額を説明することができます。基準を示し、それが相手にも基準だと認識してもらえれば、相手方の要望が整理される可能性が高くなります。

難しい相続こそ専門家へ。司法書士に依頼するメリット
ここまでお読みいただき、難しい相続人とのやり取りがいかに複雑で、精神的な消耗を伴うかをご理解いただけたかと思います。「自分一人で対応するのは、やはり難しいかもしれない…」と感じられたのではないでしょうか。
このような困難な状況にこそ、専門家である司法書士にご依頼いただく大きなメリットがあります。
- 精神的負担の劇的な軽減
専門家が連絡の整理や必要書類の作成・手続きの進行管理を担うことで、あなたの精神的負担を軽減できます。これが最も大きなメリットと言えるかもしれません。 - 法的に適切な手続きの実現
感情的な対立の中でも、法律に則った公平で正確な手続きを冷静に進めることができます。後々のトラブルを防ぐためにも、これは不可欠です。 - 時間的コストの大幅な削減
煩雑なやり取りや書類作成をすべて任せることで、あなたは本来の仕事や生活に集中することができます。
私はマンション管理会社のコールセンターで勤務経験があり、その時の経験がこうしたクレーマー気質の方の対応に役立っています。さらに、このような状況にも対応できるよう心理カウンセラーの資格も取得し、法律と心理両面に配慮しながら仕事をしております。こうした経験もあるので、お付き合いのない相続人とのやりとりが必要な相続手続きはぜひお任せください。法的な手続きはもちろん、あなたの心の負担も軽くするお手伝いをいたします。必要に応じて、他士業との連携体制も活用し、手続き全体が円滑に進むようサポートします。東京はもちろん、千葉・埼玉・神奈川など首都圏のご依頼に対応しています。
まずはお気軽にご相談ください。
下北沢司法書士事務所 竹内友章

東京都世田谷区北沢にある下北沢司法書士事務所は、相続手続き、遺言作成、相続放棄、会社設立、不動産売却など、幅広い法務サービスを提供しています。代表の竹内友章は、不動産業界での経験を持ち、宅地建物取引士や管理業務主任者の資格を活かし、丁寧で分かりやすいサポートを心掛けています。下北沢駅から徒歩3分の便利な立地で、土日も対応可能です。お気軽にご相談ください。

