相続人死亡時の法定相続情報の書き方|数次・代襲相続を解説

相続人が亡くなっている…法定相続情報はどう書く?【司法書士が解説】

「相続の手続きは、できるだけ自分でやってみよう」。そう思って準備を始めたものの、思わぬ壁にぶつかってしまう方は少なくありません。

以前、当事務所にご相談くださった杉並区のAさんも、そんなお一人でした。事務的な作業がお好きで、ご自身の相続手続きもご自身で進めようと、法務局で使う「法定相続情報一覧図」の作成に取り掛かりました。しかし、すぐに手が止まってしまったのです。

相続人であるはずのAさんのお兄様(Bさん)が、すでにお亡くなりになっていたからです。さらに、Bさんにはお子さんもいらっしゃいました。「亡くなった兄のことは、どう書けばいいんだろう?」「その子どもは?」。調べていくうちに、どんどん分からなくなり、「もし間違った書類を作ってしまったらどうしよう…」と、大きな不安を感じて当事務所のホームページからお問い合わせをくださいました。

あなたも今、Aさんと同じように、亡くなった相続人の記載方法で頭を悩ませていらっしゃるのではないでしょうか。ご安心ください。そのお悩みは、決して特別なことではありません。多くの方が同じポイントでつまずかれます。

この記事では、司法書士である私が、Aさんのようなお悩みを持つ方のために、以下の点を分かりやすく解説していきます。

  • 「数次相続」と「代襲相続」の決定的な違い
  • それぞれのケースで、法定相続情報一覧図をどう書けばよいのか
  • なぜ、そのような書き方をする必要があるのかという根本的な理由

この記事を読み終える頃には、頭の中のモヤモヤが晴れ、ご自身のケースで何をすべきかが明確になっているはずです。一緒に、一歩ずつ進んでいきましょう。

【結論】カギは死亡時期!数次相続と代襲相続の違い

法定相続情報一覧図の書き方で迷ったとき、最も重要なポイントはたった一つです。それは「亡くなった相続人が、今回の相続の始まりである被相続人より『後』に亡くなったか、それとも『前』に亡くなっていたか」という死亡時期の順番です。

このシンプルな違いが、手続きを「数次相続(すうじそうぞく)」と「代襲相続(だいしゅうそうぞく)」という、まったく異なる2つの道に分けるのです。

数次相続と代襲相続の違いを比較する図解。被相続人の死亡後に相続人が亡くなるのが数次相続、前に亡くなるのが代襲相続であることを示している。

まずはこの大原則を理解することが、混乱から抜け出す一番の近道です。それぞれのケースについて、もう少し詳しく見ていきましょう。法定相続情報証明制度の全体像については、別の記事で体系的に解説していますので、そちらもご参照ください。

数次相続:相続発生「後」に相続人が亡くなったケース

数次相続とは、被相続人が亡くなって相続が開始した「後」に、遺産分割協議などが終わらないうちに相続人の誰かも亡くなってしまい、次の相続が始まってしまう状況を指します。

例えば、「お父さんが亡くなり(一次相続)、その遺産分割の話がまとまらないうちに、相続人であるお母さんも亡くなってしまった(二次相続)」というようなケースです。相続が数珠つなぎに発生していくイメージですね。

ここで大切な原則があります。法定相続情報一覧図は、あくまで「被相続人が亡くなった“時点”での相続関係を証明する」ための書類である、ということです。

お父さんが亡くなった時点では、お母さんはご存命で、間違いなく相続人の一人でした。ですから、お父さんの法定相続情報一覧図には、後から亡くなったお母さんもしっかりと相続人として記載する必要があるのです。これが、数次相続における書き方の基本ロジックとなります。場合によっては、数次相続で相続放棄をした方が、別の相続で再び相続人になるという複雑な状況も起こり得ます。

代襲相続:相続発生「前」に相続人が亡くなっていたケース

一方、代襲相続とは、被相続人が亡くなるより「前」に、相続人となるはずだった子や兄弟姉妹がすでに亡くなっている場合に、その人の子ども(被相続人から見れば孫や甥・姪)が代わりに相続人になる制度のことです。

例えば、「おじいさんが亡くなったが、相続人であるはずのお父さんは、それよりも前に亡くなっていた」というケースがこれにあたります。

この場合、相続が開始した時点(おじいさんの死亡時)で、お父さんはすでにお亡くなりになっています。つまり、お父さんは“相続人ではない”のです。そのため、おじいさんの法定相続情報一覧図に、お父さんの名前が相続人として記載されることはありません。

その代わりに、お父さんの相続権を引き継いだ子ども、つまりおじいさんから見た孫が相続人として一覧図に記載されることになります。これが代襲相続です。

「相続が始まった時に生きていたかどうか」。この一点が、記載の有無を分ける大きな違いなのです。

【ケース別】法定相続情報一覧図の具体的な書き方と記載例

それでは、理論がわかったところで、数次相続と代襲相続、それぞれのケースにおける法定相続情報一覧図の具体的な書き方を見ていきましょう。ご自身の状況と照らし合わせながら、確認してみてください。

数次相続の場合:亡くなった相続人もそのまま記載する

数次相続のケースでは、法定相続情報一覧図の書き方は比較的シンプルです。一番最初に確認すべきことは、被相続人より先に亡くなっているか、後に亡くなっているかです。後に亡くなっている場合は数次相続となり、法定相続情報一覧図には亡くなった方の情報を記載します。

ポイントは、被相続人が亡くなった後に亡くなった相続人も、他の存命の相続人と同じように「氏名」「生年月日」「続柄」を記載するという点です。通常、亡くなった方の欄に「(死亡)」と書いたり、死亡年月日を記載したりはしません。

数次相続における法定相続情報一覧図の記載例。被相続人の死亡後に亡くなった妻も、存命の長男と同様に相続人として記載されている。

なぜなら、先ほども触れたように、法定相続情報一覧図は「被相続人の死亡時点」の相続関係を証明するものだからです。その時点では相続人全員がご存命だったので、そのまま記載するのが正しい方法となります。

ここで、非常に重要な注意点があります。それは、「この一覧図を見るだけでは、記載されている相続人が今、ご存命なのか亡くなっているのかは判断できない」ということです。亡くなっている相続人も、ご存命の相続人も、一覧図上では全く同じように表記されるからです。

そのため、金融機関などで手続きをする際には、亡くなった相続人については、その方が亡くなった事実を証明するために、別途その方の死亡が記載された戸籍謄本などが必要になります。あるいは、その亡くなった相続人を「被相続人」とする、もう一つの法定相続情報一覧図を作成して証明することになります。これが、数次相続の手続きが複雑になる大きな理由の一つです。場合によっては、相続人全員の合意を証明するために遺産分割協議証明書という形式をとることもあります。

代襲相続の場合:「被代襲者」と記載し、代襲相続人を書く

代襲相続のケースでは、少し特殊な書き方をします。被相続人より先に亡くなっている場合、その方は相続発生前に亡くなっているので、そもそも相続人ではありません。そのため、法定相続情報一覧図には「相続人」としては記載せず、「被代襲者」として表示します。

具体的には、被相続人より先に亡くなった相続人(子など)の欄には氏名を書かず、代わりに「被代襲者(〇〇 死亡)」と記載します。〇〇には、先に亡くなった方の氏名を記入します。そして、その線の下に、代わりに相続人となる子ども(被相続人の孫など)の情報を通常通り記載します。

代襲相続における法定相続情報一覧図の記載例。被相続人より先に亡くなった長男は「被代襲者」と記載され、その子供である孫が「代襲者」として記載されている。

なぜ氏名を書かないのかといえば、相続が始まった時点ですでに亡くなっており、「相続人」ではないからです。そして、なぜその子どもが記載されるのかといえば、親の権利を引き継いで「代襲相続人」として相続する権利があるからです。

数次相続の記載例と見比べていただくと、その違いがはっきりとお分かりいただけるかと思います。孫が相続人となるケースでは、この書き方をしっかりと覚えておきましょう。

より詳しい様式や記載例については、法務局のウェブサイトも参考になります。

参照:主な法定相続情報一覧図の様式及び記載例 – 法務局

数次相続が大変な理由|なぜ専門家への相談を勧めるのか

ここまでお読みいただき、代襲相続に比べて数次相続の手続きが複雑そうだと感じられたかもしれません。その通りで、数次相続はご自身で進めるには非常に大変なケースが多いのが実情です。

単に「複雑です」と言うだけでは分かりにくいので、具体的に何が大変なのかを挙げさせていただきます。

  • 必要な戸籍謄本の数が爆発的に増える
    一次相続の被相続人の出生から死亡までの戸籍に加え、二次相続の被相続人(亡くなった相続人)の出生から死亡までの戸籍も必要になります。戸籍を集めるだけでも、膨大な時間と手間がかかります。
  • 相続人の数が増え、関係性も疎遠になりがち
    一次相続の相続人に加え、二次相続の相続人(例:おじ・おば、いとこなど)も話し合いに参加する必要があります。普段付き合いのない遠い親戚と遺産分割というデリケートな話し合いをまとめるのは、精神的に大きな負担となります。時には、戸籍調査で知らない相続人が発覚するケースも少なくありません。
  • 遺産分割協議が難航する
    相続人が増えれば、それだけ意見の調整が難しくなります。誰がどの財産を相続するのか、全員の合意を取り付けるのは至難の業です。
  • 被相続人ごとに法定相続情報一覧図が必要になることも
    先述の通り、手続きをスムーズに進めるためには、一次相続の被相続人の一覧図と、二次相続の被相続人の一覧図、それぞれを作成する必要が出てくる場合があります。

これらの膨大な作業と精神的なストレスを考えると、数次相続が発生している場合は、お早めに専門家である司法書士にご相談いただくことを強くお勧めします。

ご自身で挑戦した経験は無駄になりません【司法書士からのメッセージ】

ここまで読み進めてくださったあなたは、きっとご自身でなんとかしようと、一生懸命に情報を集め、手続きに挑戦されたことと思います。その結果、この記事にたどり着かれたのかもしれません。

「難しくて、結局専門家に頼むことになってしまった…」と、もし少しでも残念に思われているとしたら、そんな風に思う必要は全くありません。むしろ、一度ご自身で法定相続情報一覧図を作ろうと試みたそのご経験は、私たち司法書士にご相談いただく際に、この上なく貴重なものになるのです。

なぜなら、手続きの難しさや、どこでつまずいたのかを身をもって体験されているからです。そのご経験があるからこそ、私たちが専門的なご説明をしたときにも、「ああ、あの複雑な部分のことか」と、すんなりとご理解いただけます。話の飲み込みが格段に早くなり、よりスムーズに、そして納得感を持って手続きを進めていくことができるのです。

あなたの努力は、決して無駄ではありません。それは、問題をより深く理解するための大切なプロセスだったのです。

下北沢司法書士事務所は、単に手続きを代行するだけではありません。ご相談者様がこれまで抱えてこられた不安や、ご自身で頑張ってこられたお気持ちをしっかりと受け止め、尊重することを大切にしています。代表司法書士は心理カウンセラーの資格も有しており、法律的な問題だけでなく、手続きを進める中での心の負担にも寄り添える事務所でありたいと願っています。

もし、少しでも「一人で進めるのは限界かもしれない」と感じられたら、どうかその頑張りを認め、私たち専門家を頼ってください。あなたのその経験を力に変えて、最善の解決策を一緒に見つけていきましょう。エリアも東京23区だけでなく、首都圏に対応しています。エリアに対する考え方はこちら↓

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