故人の預貯金口座、どこにあるか分からずお困りではありませんか?
ご家族が亡くなると、相続手続きへの対応が必要になります。その第一歩で多くの方がつまずくのが、「故人の預貯金口座がどこに、いくつあるのか全く分からない」という問題です。
「通帳やキャッシュカードが見当たらない」「ネット銀行を使っていたかもしれない」「生前、お金の話はあまりしてこなかった…」
こうした状況で対応に迷う方は少なくありません。当事務所では、東京のほか千葉や埼玉、神奈川で相続手続きを承ってきましたが、故人がどの金融機関に口座を持っていたか分からず、財産調査が難航するケースは少なくありません。
さまざまな地域で仕事をしていると、思いのほか「地域に根差した信用金庫や地方銀行」がたくさんあることに気が付きます。そして、やはり被相続人の方も地域に根差した金融機関に口座を持っていることが多いです。しかしその他にも、意外と自分の地域にあまり馴染みのない金融機関に口座を持っていることもあります。もしかしたら、ご自宅を引っ越す前に住んでいた地域で作ったものかもしれません。相続手続きの時、亡くなった方がどこの金融機関に口座をもっていたか分からないことはよくあります。今日はそんな時に活用できるかもしれない割と最近できた制度をご紹介します。マイナンバーと紐づけが必要なことから、実際に実用的になるのはもう少し先かもしれませんが、そういうものがあるということを知っているだけで違うと思います。
そのような場合に利用を検討できるのが、2025年4月から始まった「相続時預貯金口座照会制度」です。この制度を知っておくことで、故人の預貯金口座を調べる際の選択肢が増えます。
この記事では、この新しい制度の具体的な使い方から、利用すべきケースの見極め方、そして知っておくべき注意点まで、相続手続きの専門家である司法書士が分かりやすく解説していきます。この記事では、故人の預貯金口座を調べる際に確認すべきポイントを整理します。故人の大切な財産をきちんと把握するための全体像については、相続財産調査で体系的に解説しています。
相続時預貯金口座照会制度とは?全体像を30秒で理解する
これまで、故人の口座を探すには、心当たりのある金融機関一つひとつに戸籍謄本などの書類を持参し、個別に照会をかけるしかありませんでした。これは時間と手間がかかる作業です。
「相続時預貯金口座照会制度」は、この手間を軽減できる仕組みです。預金保険機構を通じて、全国のほとんどの金融機関(銀行、信用金庫、信用組合、労働金庫、農協・漁協など)に対し、故人名義の口座がないかを一括で問い合わせることができるのです。
ただし、この制度は万能ではありません。何ができて、何ができないのかを正しく理解しておくことが重要です。

| 項目 | この制度で分かるか | 解説 |
|---|---|---|
| 口座の有無 | ○ 分かる | どの金融機関のどの支店に口座があるかが分かります。 |
| 口座番号・種類 | ○ 分かる | 口座番号や、普通預金・定期預金といった種別が判明します。 |
| 預貯金の残高 | ✕ 分からない | 残高を知るには、判明した金融機関へ別途「残高証明書」を請求する必要があります。 |
| 取引履歴 | ✕ 分からない | 入出金の履歴も開示されません。別途、取引履歴の開示請求が必要です。 |
分かること:金融機関名・支店名・口座番号など
この制度を利用すると、預金保険機構から「照会結果通知書」が届きます。この通知書には、故人名義の口座が存在した金融機関について、以下の情報が記載されています。
- 金融機関名
- 支店名
- 預貯金の種別(普通、定期、当座など)
- 口座番号
これらの情報が判明するだけでも、相続における銀行手続きの大きな一歩となります。どの金融機関に照会すべきかを把握するための手がかりになります。
分からないこと:預貯金の残高・取引履歴
最も重要な注意点は、この照会で預貯金の具体的な残高や、過去の取引履歴は一切分からないということです。
あくまで「口座の存在を特定する」ための制度であり、財産の総額を把握するものではありません。遺産分割協議を進めたり、相続税の申告をしたりするためには、この制度で判明した金融機関に対し、個別に「残高証明書」や「取引履歴」の発行を請求する手続きが別途必要になります。「この制度だけで相続財産目録の作成が完了するわけではない」ということを覚えておきましょう。
(参考:被相続人の銀行口座が不明な場合の調査方法)
3分で診断!この制度、あなたのケースで使うべき?
便利な制度ですが、手数料もかかりますし、必ずしも全てのケースで最適な方法とは限りません。ご自身の状況で利用すべきかどうか、簡単なチェックリストで診断してみましょう。
【利用を推奨】こんな方は、まず制度の利用を検討しましょう
以下の項目に一つでも当てはまる方は、この制度を利用するメリットが大きいと考えられます。
- 通帳やキャッシュカードがほとんど見つからない
口座の存在を示す物理的な手がかりがない場合、この制度は非常に有効です。 - 故人がネット銀行やスマホアプリをよく利用していた
通帳レスの口座は存在を把握しにくいため、一括照会が役立ちます。 - 故人が几帳面な性格ではなかった、財産管理に無頓着だった
ご自身でも忘れているような「休眠口座」が見つかる可能性があります。 - 相続人が遠方に住んでおり、金融機関を一つずつ回るのが難しい
全国の金融機関を一度に調査できるため、時間と交通費を大幅に節約できます。 - 相続税の申告が必要で、財産の把握漏れをできる限り避けたい
申告漏れはペナルティのリスクがあります。網羅的な調査の一環として活用することで、相続税申告の正確性を高めることができます。
【慎重に判断】こんな方は、別の方法が早いかもしれません
以下のような状況の方は、この制度を使わなくても、より早く安価に調査が進められる可能性があります。
- 故人が利用していた主な金融機関の通帳やカードが手元にある
すでに口座を特定できているため、各金融機関へ直接、残高証明書を請求する方が効率的です。 - 取引先が地元の特定の金融機関のみと確信が持てる
取引先が1〜2行に絞れている場合も、個別照会の方が早いでしょう。 - 相続人全員が故人の財産状況を正確に把握している
家族間で情報が共有できている場合は、無理に利用する必要はありません。
ただし、「把握しているつもり」でも、忘れている口座がある可能性はゼロではありません。少しでも不安があれば、念のために利用を検討する価値はあります。

【5ステップ】相続時預貯金口座照会制度の具体的な使い方
利用を決めたら、必要書類や受付方法を確認しながら、手順に沿って進めます。ここでは、申請から結果を受け取るまでの流れを5つのステップで具体的に解説します。
ステップ1:必要書類を準備する
まず、申請に必要な書類を集めましょう。基本的には以下の書類が必要です。
- 被相続人(亡くなった方)の死亡の事実が記載された戸籍(除籍)謄本
- 申請者が相続人であることがわかる戸籍謄本
(被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本など) - 申請者の本人確認書類
(運転免許証、マイナンバーカードなど顔写真付きのもの) - 申請者の印鑑(認印で可)
【司法書士のワンポイントアドバイス】
戸籍謄本の収集は、相続手続きの中でも特に手間のかかる作業の一つです。もし事前に法務局で「法定相続情報一覧図の写し」を取得しておけば、大量の戸籍謄本の束の代わりに、その証明書1枚で手続きが可能になる場合が多く、非常にスムーズです。
ステップ2:金融機関の窓口で申請書を提出する
書類が準備できたら、申請窓口となる金融機関へ向かいます。この制度の受付は、預金保険機構から委託を受けた全国の銀行や信用金庫などで行っています。故人が取引していなかった金融機関でも申請できるのがポイントです。お近くのメガバンクやゆうちょ銀行などで手続きすると良いでしょう。
窓口で「相続時預貯金口座照会制度を利用したい」と伝え、申請書と「個人情報の第三者提供に関する同意書」を受け取り、必要事項を記入します。記入ミスがあると照会に失敗する可能性もあるため、戸籍や住民票の記載通り、正確に記入しましょう。
ステップ3:手数料(5,060円)を支払う
申請時には、手数料として1件あたり5,060円(税込)が必要です。この支払いは、申請時に窓口で行うのが一般的です。
ここで非常に重要な注意点があります。それは、照会の結果、該当する口座が一件も見つからなかった場合でも、原則としてこの手数料は返金されませんということです。だからこそ、前のセクションの診断で、本当にこの制度を利用すべきか慎重に判断することが大切になります。
ステップ4:照会結果通知書を待つ(約1〜2ヶ月)
申請手続きが完了したら、あとは結果を待つだけです。申請後、預金保険機構が全国の金融機関へ照会を行うため、結果が手元に届くまでにはおおむね1ヶ月から2ヶ月程度の時間がかかります。
結果の通知方法は、書面または電磁的方法によるものとされています。郵送で受け取る場合に備え、申請書に記載した住所で確実に受け取れるようにしておきましょう。
ステップ5:通知書の内容を確認し、次の行動計画を立てる
無事に「照会結果通知書」が届いたら、まずは記載されている内容をしっかり確認しましょう。どの金融機関のどの支店に口座が存在するかが一覧で記載されています。
この通知書は、ゴールではなく、あくまで「次のステップに進むための地図」です。この情報をもとに、具体的な財産目録の作成や、各金融機関への残高証明書の請求といった、次の行動計画を立てていくことになります。
【重要】制度利用における3つの注意点と対策
この制度を利用するにあたり、事前に把握しておきたい3つの重要な注意点と、その対策について解説します。
注意点1:マイナンバー未紐付けの口座は「存在しない」と表示される
この制度を利用する際に特に注意したい点です。この制度では、預金保険機構が被相続人の本人特定事項をもとに住基ネットからマイナンバーを取得し、そのマイナンバーが付番された預貯金口座の情報を金融機関に照会します。そのため、口座は存在するものの、マイナンバーが登録(紐付け)されていない口座は、照会しても「該当なし」として扱われてしまいます。
【対策】
この制度の結果だけで判断しないことが重要です。「該当なし」という結果が出ても、口座が絶対に存在しないと断定せず、後述する「昔ながらの方法」での調査も必ず並行して行いましょう。特に制度が始まって間もない現在(2026年時点)では、マイナンバーが紐付いていない口座の方が多い可能性も十分に考えられます。
注意点2:申請がきっかけで口座が凍結される可能性がある
相続人から照会申請があったという事実は、各金融機関に伝わります。金融機関が名義人の死亡を正式に把握すると、不正な引き出しなどを防ぐため、その口座は凍結されるのが一般的です。
【対策】
公共料金やクレジットカードの引き落とし、家賃の支払いなどに故人の口座が使われていないか、事前に確認しておきましょう。もし引き落としがある場合は、支払い方法の変更手続きなどを済ませてから照会申請を行うことで、生活への影響を最小限に抑えることができます。預金口座の凍結を解除するには、いずれにせよ正式な相続手続きが必要になります。
注意点3:利用できるのは「死亡から10年以内」
この制度には利用期限があり、被相続人が亡くなってから10年以内に申請する必要があります。様々な事情で長年相続手続きが放置されていたようなケースでは、利用できない可能性があるので注意が必要です。
【対策】
相続が発生したら、財産調査を含め、なるべく早めに手続きに着手することが大切です。これにより、利用できる制度を最大限に活用し、スムーズな相続を実現することができます。
通知書が届いた!結果に応じて次にやるべきこと
照会結果通知書を受け取った後、どう動くべきか。多くの人が迷うこの「結果受領後」のステップについて、「口座が見つかった場合」と「見つからなかった場合」の2つのシナリオに分けて解説します。
【口座が見つかった場合】各金融機関で残高証明書を取得する
通知書に口座情報が記載されていたら、次の目標は「残高の確定」です。以下の手順で進めましょう。
- 各金融機関へ連絡
通知書に記載された金融機関の支店(または相続専門部署)に電話し、「相続が発生したため、預貯金の残高証明書を取得したい」と伝えます。 - 必要書類を確認・準備
金融機関によって必要書類が若干異なる場合があるため、必ず事前に確認しましょう。基本的には、照会申請で使った戸籍謄本一式や本人確認書類などが再度必要になります。 - 窓口で手続き
予約の上、窓口で「死亡日時点での残高証明書」の発行を依頼します。この残高証明書が、遺産分割協議や相続税申告の基礎となる重要な書類となります。
この後の相続の銀行手続きは、金融機関ごとにルールが異なり、平日日中の対応が求められるなど、多忙な方にとっては大きな負担となることも少なくありません。
【該当なしの場合】昔ながらの方法で口座の手がかりを探す
「該当なし」という結果が出た場合でも、追加の調査を検討する余地があります。前述の通り、マイナンバーが紐付いていない口座は検知されないため、昔ながらの地道な調査を試みましょう。
- 自宅や貸金庫の徹底的な捜索
古い通帳、キャッシュカード、証書、金融機関名の入ったカレンダーやボールペンなど、あらゆるものが手がかりになります。 - 郵便物の確認
故人宛の郵便物を1年分ほど確認してみましょう。銀行や証券会社からの取引残高報告書、満期の案内、利息の通知などが見つかることがあります。 - 各種支払いの履歴確認
固定資産税の納税通知書に口座振替の記載がないか、年金の振込通知書に振込先金融機関が書かれていないかなどを確認します。 - デジタル遺品の確認
故人が使っていたパソコンやスマートフォンのブックマーク、銀行アプリ、金融機関とのやり取りメールなども重要な手がかりです。預貯金だけでなく、株式などの資産が見つかることもあります。
複数の手がかりを確認することで、口座の存在が判明することがあります。
それでも口座が見つからない…司法書士に相談できること
「相続時預貯金口座照会制度を使ってみたけれど、結果は『該当なし』だった」「昔ながらの方法で探してみたけれど、これ以上は手がかりが見つからない…」
自力での調査に限界を感じた時、あるいは手続きの複雑さや平日に時間を取れないといった物理的な問題に直面した時は、専門家への相談も選択肢になります。
司法書士は、相続手続きに関する書類収集や各種手続きについて支援することができます。
具体的には、以下のようなお手伝いが可能です。
- 相続人調査と戸籍謄本の収集代行
- 相続財産調査(預貯金、不動産、有価証券など)の代行
- 各金融機関とのやり取り、残高証明書の取得、解約手続きの代行
- 遺産分割協議書の作成サポート
- 不動産の名義変更(相続登記)手続き
相続財産調査から遺産の分配まで、一連の煩雑な手続きをまとめてお任せいただく「遺産承継業務」をご依頼いただければ、時間的・精神的な負担の軽減につながる場合があります。特に、相続財産やご実家が遠方にあっても手続きは可能です。
何から手をつけていいか分からない、という漠然とした不安の段階でも構いません。下北沢司法書士事務所では、お客様が必要な手続きを確認できるよう、初回のご相談を無料でお受けしています。まずはお気軽にお話をお聞かせください。
下北沢司法書士事務所 竹内友章

東京都世田谷区北沢にある下北沢司法書士事務所は、相続手続き、遺言作成、相続放棄、会社設立、不動産売却など、幅広い法務サービスを提供しています。代表の竹内友章は、不動産業界での経験を持ち、宅地建物取引士や管理業務主任者の資格を活かし、丁寧で分かりやすいサポートを心掛けています。下北沢駅から徒歩3分の便利な立地で、土日も対応可能です。お気軽にご相談ください。

