「書類が廃棄済み…」法定相続情報が作れず、手続きが止まっていませんか?
「お父様の住民票の除票ですが、保存期間を過ぎているので廃棄済みです」
役所の窓口で淡々とそう告げられ、頭が真っ白になってしまった…あなたも今、そんな状況にいらっしゃるのではないでしょうか。「必要な書類がないなんて、この先の相続手続きは一体どうすればいいんだろう」「銀行や法務局の手続きが、すべて止まってしまうんじゃないか」と、暗闇の中に一人で取り残されたような、強い不安と焦りを感じていらっしゃるかもしれません。
でも、どうか安心してください。あなただけではありません。特に、亡くなられてから年数が経っている方の相続では、同じ壁に突き当たるケースは決して珍しくないのです。そして、最もお伝えしたいのは、たとえ役所で「廃棄済み」と言われたとしても、手続きを諦める必要は全くない、ということです。
この記事では、司法書士である私が、実際に何度も経験してきたこの絶望的な状況を乗り越え、無事に相続手続きを完了させるための具体的な解決策を、順を追って分かりやすく解説します。読み終える頃には、あなたの不安は希望に変わっているはずです。一緒に、解決への一歩を踏み出しましょう。
【実例】住所を証明できなくても、相続手続きは完了できます
「本当に大丈夫なの?」というあなたの疑問にお答えするため、まずは私が実際に担当させていただいた事例をお話しさせてください。これは、机上の空論ではなく、現実に起こったお話です。
杉並区にお住まいのAさんから、「平成11年に亡くなった父の相続手続きをお願いしたい」とご相談をいただきました。相続登記の義務化も始まり、ずっと気になっていた足立区のご実家の名義変更と、手つかずだった銀行預金の手続きを、この機会にきちんと済ませたいとのことでした。
私は早速、専門家が持つ「職務上請求」という権限を使い、相続手続きに必要な戸籍謄本や住民票の除票の収集を開始しました。しかし、数日後、役所から郵送されてきた書類を見て、すぐに問題に気づきました。亡くなったお父様の最後の住所を証明するはずの「戸籍の附票」が、保存期間経過を理由に廃棄されていたのです。
さらに、Aさんにはお父様より少し後に亡くなられたご兄弟もいらっしゃり、その方の住所を証明する書類も同様に取得できませんでした。
でも、当事務所にはこのようなケースでどう対応すべきか、専門家としての知識と経験がありました。
まず、亡くなったお父様については、一覧図に「最後の住所」が書けない代わりに「最後の本籍」を記載し、「なぜ住所が書けないのか」を証明するために役所から「廃棄証明書」を取り寄せ、これを添付して法定相続情報一覧図の申出を行いました。結果、法務局はこれを問題なく受理し、住所の記載がない法定相続情報一覧図が完成しました。
そして、この「住所記載なし」の一覧図を使って、無事に相続登記とすべての銀行手続きを完了させることができました。
この事例が示すように、たとえ重要な書類が廃棄されていたとしても、状況に応じた資料の準備と手順を踏むことで、手続きを進められる場合があります。

なぜ?住民票の除票や戸籍の附票が「廃棄」される理由
そもそも、なぜ公的な書類であるはずの住民票の除票(亡くなった方の住民票)や戸籍の附票(住所の履歴が記録された書類)が「廃棄」されてしまうのでしょうか。それは、これらの書類に法律で定められた「保存期間」があるからです。
住民票の除票や(除)戸籍の附票には保存期間があり、自治体によって「平成26年4月1日以降に除票となったものは150年」など、一定の時期以降に保存期間が延長された取扱いが案内されています。そのため、例えば平成20年に亡くなった方の場合、平成25年にはすでに保存期間が満了し、役所によっては廃棄されていてもおかしくない状況だったのです。
法令改正等により、住民票の除票や(除)戸籍の附票の保存期間は延長されており、いつ除票になったか等の条件によって「150年保存」となる取扱いが案内されています。しかし、重要なのは、このルールは未来に向かって適用されるということです。つまり、法改正が行われる前に、すでに5年の保存期間が過ぎて廃棄されてしまった書類は、残念ながら元には戻りません。
あなたが直面している「廃棄済み」という事態は、役所のミスや特別なトラブルではなく、古い相続では法律上起こり得ることなのです。まずはこの事実を冷静に受け止めることが、次の一歩に進むための第一歩となります。
参考: 住民基本台帳法施行令の一部を改正する政令等について(通知)(総務省)
【解決策】住所が証明できなくても法定相続情報は作成できる
では、いよいよ核心部分です。被相続人の最後の住所を証明する書類が取得できない場合、どうすれば法定相続情報一覧図を作成できるのでしょうか。答えは、驚くほどシンプルです。
法定相続情報一覧図には「最後の住所」を記載するのが基本ですが、法務局の案内では、申出人の選択により「最後の本籍」も記載できるとされています。最後の住所を証する書類が取得できない場合は、取得不能である事情が分かる資料を添付するなど、個別事情に応じた対応を取ったうえで申出を行います。このテーマの全体像については、法定相続情報証明制度の概要で体系的に解説しています。
ポイントは「最後の本籍」の記載
法務局が定めている法定相続情報一覧図のルールでは、被相続人の欄には「最後の住所」を記載するのが原則です。しかし、それを証明する書類が取得できないケースを想定し、例外的な取り扱いが認められています。
一覧図は「最後の住所」を基本として作成し、必要に応じて「最後の本籍」も併記します。住所を証する書類が取得できない事情がある場合は、その事情が分かる資料を添付するなどして、法務局に申出を行います。これにより、「住所は証明できませんが、代わりに本籍地を記載します」という形で申出が可能になるのです。なお、相続放棄した人がいる場合でも、一覧図への記載方法は変わりません。
申出時に添付する代替書類とは?
ただし、単に一覧図の記載を「最後の本籍」に変えるだけでは不十分です。「なぜ、原則である住所を記載できないのか」その理由を、法務局に対して客観的に証明する必要があります。
その理由を補強する資料として、市区町村によっては、書類が保存期間満了等で発行できない旨を示す証明書類を交付している場合があります。
- 廃棄証明書:「ご請求の住民票の除票(または戸籍の附票)は、保存期間満了により廃棄したため発行できません」ということを公的に証明してくれる書類です。
- 不在住証明書・不在籍証明書:「その住所にその氏名の人は住民登録されていません」「その本籍地にその氏名の人は在籍していません」ということを証明する書類。これも、書類が存在しないことの間接的な証明になります。
これらの書類を法定相続情報一覧図の申出書に添付することで、法務局の担当者は「なるほど、証明書が取得できない正当な理由があるのだな」と納得し、手続きを進めてくれるのです。役所での戸籍収集は、相続人が多いと特に複雑になりがちです。

相続人の住所はどうする?記載は任意です
ここで、よく混同されがちな「相続人の住所」についても整理しておきましょう。被相続人の住所証明が問題になっていると、相続人自身の住所についても不安に思われるかもしれませんが、心配は不要です。
法定相続情報一覧図において、相続人の住所を記載するかどうかは「任意」、つまり自由です。必ずしも記載しなければならないものではありません。
- 住所を記載するメリット:不動産の相続登記を申請する際に、別途、相続人の住民票を提出する必要がなくなります。
- 住所を記載しない場合:相続登記や銀行手続きの際に、その都度、相続人の住民票を求められます。
冒頭のAさんの事例のように、他の相続人の住所証明書も廃棄されているようなケースでは、無理に住所を記載せず、空欄のまま一覧図を作成することも可能です。特に相続人が多い場合は、全員の住民票を集める手間を省くために、あえて記載しないという選択も考えられます。
「住所記載なし」の法定相続情報で手続きは本当に可能?
解決策が見えてきた一方で、「被相続人の住所が書かれていない、いわば不完全な書類で、本当に相続登記や銀行手続きができるのだろうか?」という新たな疑問が湧いてくることと思います。ごもっともな心配です。ここでは、実務上の運用について具体的に解説し、あなたの最後の不安を解消します。
相続登記(不動産の名義変更)での使い方
不動産の名義変更(相続登記)において、法定相続情報一覧図は2つの役割を期待されています。
- 相続関係を証明する役割
- 被相続人の最後の住所を証明する役割
今回作成した「住所記載なし・本籍記載」の一覧図は、このうち(1)の「相続関係を証明する役割」は完璧に果たせます。戸籍謄本の束の代わりとして、問題なく使用できます。
しかし、(2)の「最後の住所を証明する役割」は果たせません。そのため、この部分を補う別の書類が別途必要になります。具体的には、以下のような書類を法務局に提出します。
- 上申書:「住民票の除票等が廃棄済みで取得できないため、登記簿上の名義人と被相続人は同一人物に相違ありません」といった内容を相続人全員で証明する書類。相続人全員が実印を押し、印鑑証明書を添付します。
- 権利証(登記済証):不動産を取得した際に発行された権利証があれば、それが本人であることの強力な証明になります。
- 固定資産税の納税通知書など:被相続人宛に送付されていた納税通知書なども、補強材料となる場合があります。
たとえ権利証が見当たらないような最悪のケースでも、「上申書」を作成することで対応可能です。このように、代替手段を組み合わせることで、相続登記は問題なく完了できます。
銀行など金融機関での預貯金解約手続き
銀行などの金融機関における預貯金の解約手続きでは、状況はさらにシンプルです。
多くの金融機関が法定相続情報一覧図に求めている主な役割は、「相続人が誰であるかを確定する」ことです。金融機関が法定相続情報一覧図に求める目的は「相続人の確定」であることが多い一方で、必要書類や確認方法は金融機関ごとに異なります。そのため、一覧図に被相続人の住所が記載されていない場合でも受付されるケースはありますが、事前に金融機関へ確認しておくのが確実です。
実務上の感覚としても、「住所記載なし」の法定相続情報一覧図が原因で銀行手続きが滞ったという経験は、今のところありません。
ただし、金融機関ごとに内部のルールが異なる可能性はゼロではありません。最も確実なのは、手続きに行く前に一度電話を入れ、「被相続人の住民票の除票が廃棄済みで取得できず、最後の本籍を記載した法定相続情報一覧図を持参しますが、手続きは可能でしょうか?」と確認しておくことです。この一手間が、無駄足を防ぎ、スムーズな手続きにつながります。ゆうちょ銀行の相続など、金融機関によっては特殊なルールがある場合もあります。

古い相続で書類が揃わない…一人で悩まず専門家にご相談ください
ここまで、書類が廃棄されてしまった場合の具体的な解決策を解説してきました。解決への道筋は見えたものの、同時に「これを全部、自分一人でやるのは大変そうだ…」と感じられたのではないでしょうか。
その感覚は、とても正しいものです。戸籍一式を正確に読み解き、役所で代替書類を取得し、法務局の様式に合わせて一覧図を作成し、さらには相続登記のために上申書を用意する…これらは、専門的な知識と経験がなければ、非常に時間と手間のかかる作業です。
もし、少しでも不安を感じたり、手続きの途中で手が止まってしまったりした場合は、どうか一人で抱え込まないでください。私たち司法書士は、このような困難な状況を解決するための専門家です。
ご依頼いただければ、煩雑な戸籍の収集から、法務局や金融機関との折衝、そして最終的な相続登記の完了まで、すべての手続きをあなたの代理人として責任を持って進めます。「どの専門家に相談すべきか」迷った時も、不動産が絡む手続きの司令塔となる司法書士が最初の窓口として最適です。
エリアも東京23区だけでなく、千葉・神奈川・埼玉など首都圏のご依頼に対応しております。
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下北沢司法書士事務所 竹内友章

東京都世田谷区北沢にある下北沢司法書士事務所は、相続手続き、遺言作成、相続放棄、会社設立、不動産売却など、幅広い法務サービスを提供しています。代表の竹内友章は、不動産業界での経験を持ち、宅地建物取引士や管理業務主任者の資格を活かし、丁寧で分かりやすいサポートを心掛けています。下北沢駅から徒歩3分の便利な立地で、土日も対応可能です。お気軽にご相談ください。

